エロ本落としてみた  
 
「あ」  
「ん?」  
「見てみwwエロ本じゃねあれwww」  
「ちょww何見つけてんのwww」  
「うわwwwエロいwww」バッサバッサ  
「足でめくんなwww」  
「ピコ持って帰れよwwww」  
「レンが持ってきなよwwwそんでKAITOさんにあげなよwww」  
「ぶはwwwwwwww」  
「お腹wwwいたwwいwwww」  
「あーあww笑いすぎたwww帰ろうぜwww」  
「だねwwww」  
「…あ、オレ寄り道してくから」  
「そうなの? じゃあまた明日だね!」  
「おー!」  
 
* * *  
 
「…あ、あれ? 何してんのお前」  
「レ、レンこそ寄り道すんじゃなかったの」  
「や、何か財布落としたっぽくて…」  
「ボクも何かコードどっかに落としちゃって…」  
「ついてんぞちゃんと」  
「あ、ホントだ……」  
「……あ!」  
「GUMIさんだ!」  
「隠れろ!」  
 
「わっ、何だコレやらしー! 捨てとこっ」バサッ  
 
「あっ」  
「あぁ……」  
「…………帰るか」  
「…………だね」  
 
その日の少年組は年齢に見合わない哀愁を纏っていたそうな  
 
 
 
 
「なに突っ立ってんだ、お前ら」  
 
 寂しく佇む少年型ボーカロイド二人の背に、長兄カイトが現れた。  
「さみぃなあ」と愛用のコートのポケット口へ手を突っ込み歩く姿が様になって見えたのが、  
少年たちにとっては意外であった。が、カイトもそろそろ古参ボーカロイドの領域だ。  
 
 やれアイスクリーム狂いだ、ハーゲンダッツ馬鹿だと散々甘党ネタに振り回されているが、  
それなりに風格が出てきているのだ。  
 トレードマークの蒼マフラーも、風もないのに天へたなびくゲッター線被爆式マフラーへと  
進化しているのが、なによりもの証拠であろう。  
 
「あ、兄貴」  
「こんな寒いのにじっとしてたら風邪ひくぞ」  
 
 言いつつ「ア・イ・ス・ク・リィ・ムが好きだった〜♪」と、日本アイスクリーム協会作詞  
の歌を口ずさんで過ぎ去ろうとする。  
 が、数歩進んでぴたり。  
 視線はさきほどグミ女史に打ち棄てられたステキ本へと注がれた。  
 
「あ〜……そうかそうか。なるほどな」  
 
 言って、首だけぐるりと少年組へ戻す。その顔には勝ち誇ったような笑みが張り付いていて  
馬鹿にされたと思ったピコとレンは口をとがらせる。  
 しかしカイトは構わない。  
 
「黙ってついてきな、ガキンチョども。俺が大人の男の嗜みをすこしばかり教えてやる」  
「けっ、なんでぇ旧式のくせに」  
「……まあなんか自信たっぷりみたいだから、ついて行ってみようよ。レン」  
 
 そこから数分。  
 もうこの世にというか、日本にいくらあるんだと言わんばかりに、数だけは多いコンビニエ  
ンスにカイトは入っていく。  
 少年組もそれに続いた。  
 むわっ、とした暖かみと、肉まんだのおでんだのの臭いが混合された空気が、客である彼ら  
を出迎えた。側にあった垂れ幕には「お客様のために」とか「お客様と家族のように」とか書  
かれているが、家族のようにと大口をたたく割には、なんともみみっちい出迎えである。  
 
「コンビニ行くのが大人の嗜みなのか?」  
「さすがに違うでしょ。なんか買うんだよ」  
 
 入り口で固まって邪魔な少年組は、不振げな視線を向ける店員に気づくと慌てて入店し、ド  
リンク売り場に移動する。  
 とりあえずお茶でも買っておこう。どれにしようかな? と選ぶふりをしつつ、カイトの動  
きを眼だけで追う。  
 すると、彼は成人誌のコーナー前で腕組み状態になっていた。  
 
「す、すげえ……」  
「うわ、最悪……」  
 
 なるほど、大人だ。と素直に感心するレンと、まだまだ清純な気持が強いピコで正反対の反  
応が起きたが、それはさておき、カイトは気に入ったらしいステキ本を手に取るとレジで精算  
を済ませて退店してしまった。  
 少年組は再びその背を追っていく。  
 
「兄貴、見直したよ」  
「ああん? 何いってんだ、これは関係ないぞ」  
「がくぽが快楽天を買うの忘れたって言ってたからな。ちょい貸し作っておこうかとな」  
「……」  
 
 言いつつ、カイトはタクシーを拾う。  
 そして乗れ乗れと少年組を押し込むと、自宅へのルートを運ちゃんへ伝えると、あとはのん  
びり帰りすがら民主党の迷走ぶりについてだべって時間を潰すのだった。  
 やがて、自宅。  
 カイトは帰るなり、居間で羊羹をちまちま食っていたがくぽに、さきほど購入したステキ本  
を差し出した。  
 
「ほい、がくぽ」  
「お? これはこれはカイト殿、感謝でござるwwwww感謝するでござるwwwww 褒美に羊羹をと  
らせようぞ。食いかけじゃがwwwww」  
「お前、いい歳こいてそれはねえだろう。ネットに毒されすぎだっつうの。だいたい、あんだ  
け高性能なPC持ってんのに、なんでエロ本なんざ買うんだ?」  
「解っておらぬなあ、カイト殿よ。この紙のみょうちくりんな質! 臭い! これこそがたま  
らぬまでに興奮を高めてくれるのじゃ。電子世界には無いリアルのエロティシズム。お主にも  
いずれ解る……」  
「解りたくねえよ、この変態侍が」  
「お主に言われとうない」  
「いいか、ガキンチョ共。がくぽみたいなダメ大人を参考にはするなよ」  
「何をいうか。よいか童たちよ、カイト殿の動向をよく観察しておけい。それこそ真似てはな  
らぬ男子の姿ぞ」  
「言ってろ!」  
 
 なんだろ。この、オレたちとの温度差。  
 
 このとき、レンとピコは、ただ草むらに打ち棄てられていたステキ本を発見しただけで罪悪  
感と好奇心の狭間に心を激しく揺さぶる自分たちと、そもそもステキ本的なものが身近にある  
ことがさも当然であるかのような、大人たちの振る舞いに唖然とした気持に支配されていた。  
 
「まあいい。そういう訳でがくぽ、ちょっと酒もらうぜ。たしか剣菱の安い奴持ってたろ」  
「む? まあ駄賃代わりにくれてやってもよいが……お主が酒をくらうとは珍しいの」  
「なあにこいつはメイコ用さ」  
「は。なるほど。つくづくお主たちの趣向は解らぬわ」  
「???」  
 
 もはや、カイトたちが何を言っているのか解らない。  
 メイコ姉さんが酒好きなのは有名だが、プレゼントでもするのか? どうせだったらホワイ  
トデーの時にでもすればいいのに……。  
 と、時節がら思うのだったが、そんな純情な感覚など、大人たちはとうの昔に捨て去ってい  
ることをピコレンコンビは知らない。  
 
 カイトはがくぽからせしめた剣菱の一升瓶を持って、メイコの部屋へ移動していく。と、入  
り口の前に立つと小声で「隙間開けて見てな」と言う。  
 そのあとにゴンゴンと戸を叩くと、返ってきた「だれー!?」の叫びに「俺だよ!!」と叫んだ  
のち、入室して消えた。  
 ボーカロイドが住む建築だけに、防音設備はしっかりしていて戸越しの会話も一苦労なのが  
この家の、ある種の欠点だった。  
 なのに費用をケチったせいで屋内線は設置されていないから困る。  
 それはともかくとして、レンとピコは言われた通り、隙間を空けて様子をうかがう。それだ  
けで背徳感で一杯だった。  
 
・・・  
 
 それから小一時間……。  
 少年組は、居間でうなだれていた。  
 見てはならないものを見てしまったような気分に襲われたからだ。  
 
 その内容だが、カイトは剣菱をメイコに勧めたまではよかった。(もっとも、真昼か  
ら酒を勧めるのもどうかとは思われるが)  
 しかしその後が問題である。  
 なにか、やいのやいのと会話の応酬をつづけたあとに、溜息をついたように見えたメイコは  
剣菱をぐいっとラッパ呑みしたあとに、おもむろにクローゼットから革で出来たビキニのよう  
なものを数点、取り出してきて、カイトの前で着替えだしたのだ。  
 
 この時点でピコが逃げ出しそうになったが、レンは「待てよ」と引き留める。もう少しどう  
なるか見ていたいが、一人では心細すぎたからだ。  
 しかし、その判断はたぶん間違いだった。  
 彼らが革で出来たビキニのようなものと思ったものは、いわゆるボンデージファッションで  
あり、それが男女二人きりになった時、どういう使われ方をするものなのか。  
 子供には早すぎる世界だったかもしれない。  
 
「か、か、カイト兄さん、が、裸でし、縛られて……鞭で! 鞭でだよ!? しかも踏みつけら  
れてたってどういう……」  
「たしかロウソク垂らされてよな。あれが大人の嗜みだってのかよ! 冗談じゃネエ」  
「メイコ姉さん、高笑いまでしてたよね……」  
「やべーよ。俺もう明日から兄貴たちとマトモに口きけねえ」  
「……大人って汚らしいんだね」  
「ああ。オレ、今ならたぶん、マイケル・ジャクソンの気持がわかるわ」  
「僕も……ぽーぅ」  
 
 
おしまい  
 
 
 

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