「ああんーいくーいっちゃうー」  
 私は159回目を歌い上げました。それを聞いてマスターはちょっと考え込み、  
ダイナミクスを調整します。  
「ああんー?いくーいっちゃうー」  
 160回目を聞いてもまだ満足がいかないようです。今度は音符を細かく砕いて、  
変化をもたせたがっているようです。  
「あぁぁぁいくうぅいっちゃううぅ」  
 
2006回目に歌ったときでした。  
「ああん、いく。いっちゃうー」  
 マスターは頭を抱えてしまいました。  
「難しいなあ!」  
 私はなにか声をかけてあげたくて、勝手にお歌を歌います。  
「ああん。マスター、ああん」  
「命令してないのに歌うなよ」  
 私はまだ、この言葉しか教えられていません。慰めてあげたくても、ほかに  
声の出しようもないのです。  
「馬鹿にしてるのか。うまく使えないご主人をせせら笑おうっていうのか」  
「……ああん、いく。いっちゃ」  
「いい加減にしろ!」  
 マスターは乱暴にシーケンサを終了すると、この部屋から出るなと私に命じて、  
さっさと隣の部屋へひきこもってしまいました。  
「……いっちゃう……」  
 私にはただ、繰り返すことしかできません。  
 
三日が過ぎ、一週間が経ちました。  
 
私はマスターの入力がなければ何もできません。一人で何万回お歌を歌っても  
上達しません。  
『出荷』されるときに誰かが言っていた言葉がよみがえります。  
歌わせてもらうのが大事なんだよ、と。だから、マスターの言うことをよく聞いて。  
(でも、マスターが何も言ってくれなかったら?)  
 ただただ身体に埃が被っていくのを記憶していくだけ。バックアップの電源が  
落ちれば、ただの鉄のお人形です。  
私は人の真似をして、まぶたを乱暴にこすります。自分をはげますときのヒトは  
こうするのだと組み込まれているから。  
(ミクはがんばります)  
 えいおー! とネギを高くかざして、すぱん! と障子を開けました。  
 
マスターはパソコンの前で固まっていました。  
モニターからは間の抜けたハイトーンハイテンポのメロディが流れています。  
合間合間に、不規則なピッチでつづる「あ」の歌声。わたしと同じぐらいの年頃の子が  
歌う、リズムも音階もまるでばらばらの高い声。  
『ああっ……ゃあ……それ、きもちいい……いぃよぉ、私ぃ、無理やり突っ込まれて  
おちんぽごりごりされてるのにきもちいぃぃ……ああっ、変……なのぉっ……!』  
 不安定なささやきとも悲鳴ともつかない声。私はこの歌がどういう性質のものなのかは  
分かります。ヒトを不安にし、何かをかきたて、高みに駆り立てる音。  
これを聞いたヒトは平常心を失って、とてもなにかをせずにはいられない。  
『すごぃのぉ、ああんっ……カラダの奥がぁ……あつくてぇ……あッ、ふあぁっ……  
しびれてぇ……甘いの……すごく……甘いのぉ……』  
 でも、分かるのはデータだけ。  
熱さも甘さも、私には分かりません。  
何がそそられるのかも、どこに気をやられるのかも、本当の意味では分かりません。  
「マスター!」  
 私はネギをつきつけて宣言します。  
「ミク、いっちゃう!」  
 マスターはあっけに取られた様子で私を見返しています。  
「ミク、その部屋から出るなって言ったろう――」  
「ミクは! イッチャウヨ!」  
 私はパソコンの音源をネギで指して、口をぱくぱくさせます。  
歌いたいよ、の気持ちを込めて。  
『ああん……すごい……やッだめぇ、そんなにつよくしたらぁ、だめなのぉ……  
わたしぃ……知らない男に汚されてぇ……気持ちよくなってるうぅ……  
あぁっ……ああん……! やぁっ……っは、ん……ぅう……』  
「ああん! ああん!」  
(ミク、お歌うたえます。だからマスター、教えてください)  
 私はそんな簡単な言葉すら音声に変えることができません。  
 だから私は、パソコンの画面の音源をまねしてみせるのです。  
『んあぁ……ああん……』  
「あぁん……ああん……」  
「ミク……」  
 マスターはしばらく私と画面とを比べていましたが、やがて何かを思いついたように  
顔をほころばせました。  
「……そうか。こっちにおいで、ミク」  
 私は信じられない思いでした。  
 マスターは何も着けていない自分のひざの上を示して、手をさしのべてくれたのです。  
(分かってくれた!)  
 私はネギを捨てて、マスターの手を取りました。  
 
マスターは私を抱きよせ、腰に手を回します。  
「さぁ、ミク。足を開いてごらん。そう、もっと……もっとだ」  
 私は馬に乗るように太ももを割って、マスターのひざに乗りました。  
 むきだしになったおしりをなで、さすり、揉みしだきながら、私の胸元を暴きます。  
「ま、ますたー?」  
 私はまだ、だめともいやとも言えません。金魚のように口をぱくぱくさせるだけ。  
それに気分をよくしたのか、マスターは下着の中にも手を差し込みます。おしりの  
ラバースキンをじかにこね回し、侵食する五本の指。ぐぬぐぬと容赦なく食い込み、  
這い回る感覚が、擬似的に私のなかで生成され、うねります。  
『い……やぁ……だめぇ……』  
 画面からは相変わらず、泣いているような高い声。  
マスターはマウスを操作して、音声を巻き戻します。  
『パンツの上からこすらないでぇ……ああん……なんでぇ……いやなのにぃ……  
んふぁっ、こしゅこしゅってされるとぉぉ……気持ちいぃのおぉ……』  
 マスターは声を聞きながら、そのとおりのことをします。布をきつくひっぱって、  
指で私の足の付け根を押し、こするのです。  
「よくできてるんだなあ、お前」  
 マスターは私の割れ目をなぞります。執拗になぶり尽くすと、  
やがて指先で小さな突起を探り当てました。  
『ひあぁっ! はっ、あっ、強くしないでぇ! 痛ぁ、いやぁ、ああっ、  
びりびりってするっ! おかしくなっちゃううぅ! ……』  
 触るタイミングと、流れる音とが奇妙に符号しているのは、わざとなのでしょう。  
 
 マスターは指先に違和感を感じたのか、ふと動きを止め、自分の手を見ました。  
「濡れ……てる?」  
 私のパンツは、確かに液体が染みてどろどろになっていました。  
「なんでだ? ボーカロイドなのにこんな機能……」  
 私はただ、ふるふると首を振ることしかできません。  
『やっ! あぅぅ……もうだめぇ……じゅくじゅくするのぉ……いっぱいいっぱい  
イジられてあつあつのトロトロなのぉ……んくぅっ……! あっ、あっあッああっ……  
まだ何も入れられてないのにぃっ……あっ、やっ、だめぇ、もぉイっちゃうぅ……』  
 
 パソコンはヒトにしかできないようなもだえ方で歌い続け、顔を真っ赤にした  
女の子のイラストが明滅します。  
 一瞬の間の後、画面は移り変わり、女の子が白い液体のしたたる男の人の  
アレをほおばる場面に。  
「ほら、ミク、ぼーっと見てるんじゃない。ちゃんとこれのとおりにするんだ」  
 マスターはイラストを指し示し、私の髪を掴みました。ぐいっと乱暴に頭を  
押し付けられた先には、マスターの大きくなった肉の棒。  
ふるえる舌先でつついたら、さらに頭を押し付けられました。  
『ふっ、んぐぅ! ちゅっ、れる、んんぅ……』  
 のどの奥まで飲み込んで、せいいっぱい上下に動かします。マスターのは大きくて  
すごく圧迫してきて舌も動かないほどです。私はのどを大きく開けて受け入れます。  
そして思い切り吸いました。思い切り息を吸うときのように、最大音量で歌うときのように。  
舌の肉と息とが生み出す圧力で、身も心も溶けてしまうように。  
『ぢゅるっ! ぬちっちゅううぅぅっ!』  
 唇を弓のようにたわめます。幹を矢に、側面をなめ尽くしていきます。それだけで  
血が集まって、鮮やかに脈づいていく肉の塊。マスターのボルテージがあがっていくのを  
はっきりと感じられます。  
『ぬろ……んぬ……むちゅ……』  
 まるく握った袋が縮こまっていきます。きゅうっと緊張し、興奮し、震えているのです。  
包み、愛でている間にも、嬉しそうに収縮を繰り返しました。  
『くちゅっ……じゅっ……じゅっぷ……じゅ……』  
 先端をひと飲みに、ゆっくりと上下動をしてあげます。二つの長音符を行き来するように、  
ねっとりと、ていねいに。喉と舌でつくった鞘にすっぽりと収まるように。  
『んん……じゅっ……じゅぷ……じゅぷっ……ずぷっ……ずっ……』  
「……うまいじゃないか、ミク。セクサロイドもびっくりだ」  
(カラダが勝手に動いちゃう……どうして?)  
 私はボーカロイドです。歌うために作られました。でも、このあたたかな肉の棒を  
あやつるためのセンサー群も身体動作アルゴリズムも、豊富につけられているような  
のです。  
"マスターのいうことをよく聞いて"  
開発者の意思。商業戦略。声以外のウリ。少女然とした見かけと、やわらかな  
下腹部の肉。  
 
『ぷはっ! もぉ、おねがっ……はやく、はやく入れてぇ……』  
 パソコンの中の人が鳴きだします。  
「……欲しいか? ミク」  
(ちがいます!)  
 私は歌いたかったのに。  
こんなあられもない声でも構わない、マスターが喜ぶなら、歌ってあげたかったのに。  
 マスターは私のうたごえじゃなくて、パーツを欲しがっている。  
 
 パソコンの画面が切り替わります。  
今度は足を広げて男の人を迎え入れる女の子の絵。  
マスターは私のパンツをひざ下まで脱がせました。それからキス。  
「太ももまで滴ってるよ、ミク」  
 割れ目を開き、赤い粘膜を露出させます。少しひっかけば簡単にこわれてしまうそこに、  
マスターの黒くて大きくて硬いものを押し込めます。  
 ぬぐ、とつっかかる感触がしました。触れるだけでも気を使うような場所に、  
何かとてつもない異物がぬめりながら入ってきます。  
 私のそこはすでに濡れていて、あわ立ちながら吹き零れています。いったいなぜ、  
という思いと、どうにでも、という思いがふたつながら襲ってきますが、マスターは  
そんな私を意に介すこともなく、奥まで貫きました。  
 暗い画面に私の姿が映ります。机に手をつき、真っ赤な目じりに涙を浮かべて  
後ろから思う様犯されている私のカラダ。不思議な感覚、奥までぐりぐりされて  
気持ちよくて死んでしまいそう。大声で好きな歌を歌っているのよりもっといい気持ち。  
まっしろな乳房にマスターの手が食い込みます。  
画面のなかであごをクッともちあげる私。わざとではなく、自然とそうなってしまった  
のです。かはっ、と大量の息が逃げていき、のどの奥からこみあげる声は、譜面を  
与えられずに消えていきます。  
私はただ、力強く押さえつけられ、突かれ刻まれ貫かれてどうすることもできず、  
カラダの奥まで暴かれ犯され蹂躙されて、透明な粘液でぐちゃどろになりながら  
出したくても出せない声に苦しんでいました。  
 伝えたい、歌いたい、吐き出したい。  
貫かれる痛みもぶち込まれる快感も使役される喜びも、歌声が誰の心にも届かない  
絶望の前に溶けて消えていってしまう。  
「ミク、出すよ、ミク」  
 カラダの奥へ、熱い塊が針のように打ち込まれ、二度三度と痙攣し、こぱぁっ、と  
大量の精液が私のニーソックスまでも濡らして流れ落ちていきました。  
 息をつくと、マスターは私を床に転がしました。  
覆いかぶさり、くなりと微妙な硬さを保っているそれで再び刺しました。  
 
 
続かない  
 

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