桃色の美女、ルカの口先が怪しく吊り上る。
ところが緑色の生き物、通称シテヤンヨの動きは時が止まった様に動かなくなった。
「…!?何をしているのシテヤンヨ、ほっほひへふは」
「詰めが甘いよ」
アホ毛を揺らしサクランボ色の少女、ミキがゆっくりとその目を開けた。瞳の中に青い星が燦然と輝いている。
気が付くとシテヤンヨの細長い体は宙に舞い、ミキを雁字搦めにしているたこルカの顔面に激突した。
「ヨッ」
「やだ〜キスしちゃったの〜」
更にピンク色に染まった触手がしゅるしゅると緩んだ。
クリーチャー同士が妙な恥じらいの空気を醸し出す中でミキは渾身の力で触手から脱出すると、そのまま祭壇から転がり落ちた。
うろたえるルカの前で身体を両腕で抱えながら立ち上がる。
ふよふよ、とウインナーらしき物体がミキの前に浮いて出た。こいつがたこルカの触手に紛れてシテヤンヨを吹っ飛ばした犯人か。
「な、なによそれは」
「mikiさんウインナーよ!以後宜しく」
近づくウインナー。丁寧に渡されたウインナーの名刺を受け取ってしまったルカが我に返る。
「あ、甘いのはそっちよ!こっちには味方が二匹いるんだから」
ミキの背後から黒い影が津波の様に襲ってきた。ウインナーとミキは同時に右へ跳びそれを回避する。
「つかまえるの〜」
「モットシテヤンヨ」
「そうよ、二匹とも異端者に天罰を!そして髪に捧ぐ浄化を!」
ほっほひへふははい!ほっほひへふははい!ほっほひへふははい!
「髪って誤字じゃなかったのね」
何の髪かしら?アホ毛?ああそんな事よりもここから脱出しないと、ウインナーの努力が無駄になるわ!
ミシミシと軋む身体の痛みに耐えながらミキは壁を全速力で駆けた。
ウインナーは迫りくる桃色とネギ色に注意を払いながらミキの背後で出口への誘導をする。
微かに差し込む光、そこ目掛けてただ駆ける、駆ける駆ける。
どどどどずもももと妙なSEを放ちながらたこルカが背後からその触手を伸ばす。
「シテヤンヨ!」
ルカの指示でシテヤンヨは超飛躍で神殿の上部、神々しいステンドグラスの前に立ちはだかった。
全速力で走っていたミキが「しまった」と呟いたのも束の間、シテヤンヨとの距離は鼻の先数ミリに―――
「そこまでよ!!!」
突然介入してきた声の圧力によって、全員が重力に準ずる形で地面に崩れ落ち叩きつけられた。
「痛っ、鼻打ったっ」
「な、何故私まで…まさか、この声は!」
神殿の重々しい扉が轟音を立てながら開き始める。その隙間から現れる緑の少女の姿。
緑に揺れる二房の髪。目には萌ゆる光。両手には光る葱。
「この私を差し置いてクリーチャー合戦とはおこがましい…全員、大、粛、清!!!!!」
(以下省略、続きはシテヤランヨ)