■ナノピコ。(手乗りサイズ小ネタ)  
 
 
 
ある日、帰りが遅くなったマスターが連れ帰って来たのは。  
正に、手のひらに乗るくらい、小さなサイズの新しい住人だった。  
 
「は…初めまして。うたたねピコです」  
周りを囲まれ、マスターの両手の上でチワワの様に震える小さな姿は、これまでに無かった、衝撃で。  
マスターの意向で、今まで女性ボカロしか居なかった我が家へ初めて訪れた男子、だったハズが…。  
 
「うたたねクン、どうぞ」  
ドールハウス用に作られた、ミニチュアの…けれど本格的な、陶器で出来た食器類が並べられた、  
これまた小さいながらも立派な造形の椅子やテーブルが、中央に設置され。  
彼がちょこんと乗った食卓を囲みながら、食事をとり。  
マスターのパソコンに、直接ケーブルで接続をされている姿も何だか愛らしく。  
 
すっかり馴染んで…いつの間にか、自然に女子ばかりの輪の中に溶け込んでしまっていた。  
 
 
しかしそんなある日、マスターが倒れ。  
…けれど、一般女性と同程度の自分達の腕力では上手く動かせないと云う事態に、様相は一変した。  
 
「みんな、どいてッ…!」  
振り返ると、其処には。  
まるで別人の様に大人びた容貌をした、  
いわゆる…青年の姿をした、人型サイズのソノヒト、うたたねピコがいた。  
 
「ボクがマスターを連れて行くから、みんなは早く準備をして。…いいね?」  
一瞬、ミンナ呆気にとられて固まっていたが。  
テキパキと指示を出して行く姿に、気を取り直して、用意を済ませ…。  
 
 
翌日…病院のベッドで、過労がたたっての入院を言い渡されたマスターの横には。  
 
あれから、ひと晩。  
青年から少年の姿へと変わって過ごしている…彼と。  
女子全員とが居並んでの話し合いの場が設けられようとしていた。  
 
マスターいわく。  
「普段から大きなヤローがいたら、邪魔で仕方が無いが、いざという時、男手は必要」とのコトで。  
サイズ可変型ナノ仕様の彼が選ばれたのだ…とか。  
 
あきれている女子を後目に、  
当の男子は「大役を任された」と意気揚々と、役割をこなし。  
あまつさえ、マスターの世話までキチンと焼いている辺りが、何とも言えない。  
 
…しばらくは、当面このままの姿で。  
マスターが家に居ない期間は、私たち女子のボディガードも務めるそうだが、  
果たして、そう上手く行くものなのだろうか?  
 
まったくウチのマスターは、本当に何を考えてるのやら…。  
相変わらずの、困ったヒトで。  
 
 
終  
 
 

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