春爛漫の昼下がり。  
例によって例のごとく、わしと初音殿は  
我が家の縁側で茶を飲みながらのんびりしている。  
庭ではリュウトと月読のアイ殿がままごと遊び中。  
リュウトが夫役で、アイ殿が奥さん役のようだ。  
少しませたやりとりが、横から見ていてほほえましい。  
 
そうして目を細めていると、  
リュウトとアイ殿が、何やら冊子を抱えてこちらにやってきた。  
 
「はい、回覧版でーす。」  
「でーす。」  
「うむ。有り難う。」  
「ありがとうねー。」  
「どういたしまして。」  
「ましてー。」  
 
そして初音殿も会話に加わる。  
 
「ガチャ君たち、いっつも仲いいねえ。」  
「ぼくたち、おおきくなったらけっこんするのー。」  
「するのー。」  
「へえ、それは良いのう。」  
 
「ねえ、がくにいちゃん、ミクおねえちゃん。」  
「ん、なんだ?」  
「なあに?」  
「おにいちゃんたちはけっこんしないの?」  
「しないのー?」  
「「えっ。」」  
 
思わず、初音殿と顔を見合わせる。  
つくづく最近の子はませていうというかなんというか。  
 
「そうだのう、わしはそのつもりでおるが。」  
「…………!」  
「わー、今のプロポーズ?」  
「プロポーズ?」  
「そうだのう。」  
 
リュウトとアイ殿が、一斉にはやし立てた。  
そして初音殿は真っ赤な顔をしている。  
 
 
 
 
 
VOCALOIDは年をとらないから、大人にもなれない。  
戸籍もないから結婚もできない。それはようく判っている。  
 
だが願わくば。今後も皆がずっと一緒に居られますように。  
そんなことを思った次第であった。  
 
 
 

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