「はぁ、今日もお仕事大変だったなぁ」
今日珍しく夜までのお仕事で、帰りにハク姉から一升瓶を貰った。
……といっても私はまだ飲めない年齢なので少し困っていた。
自宅の引き戸をノックすると音もなく戸がに開き、シテヤンヨちゃんが顔を出す。
その後ろからは、してやにょちゃんがトテトテと近づいてきて飛びついて来て、お帰りの挨拶をしてくれる。
「やにょ!やにょ!」
「ヤンヨ」
「あはは、ただいま! ってやにょちゃん駄目よ、やにょちゃんには飲めないの」
「やにょ? ふええええぇぇ〜〜」
「ヤンヨ」
ヤンヨはやにょを両脚で抱え、ちゅっちゅとキスをしてあやしている。
甘えてばかりだったシテヤンヨが、してやにょが来てからすっかりお母さんみたい。
泣き疲れたのか、安心したのか、してやにょはそのあと直ぐ寝てしまった。
「ヤンヨ」
居間まで私を連れてきたヤンヨは、ラップのかかった食事を勧めてくれる。
今日は疲れたので温めずに食べる事にした。
まだ私は全然なのに、冷めても美味しい食事を作ってくれるヤンヨちゃんは凄いと思った。
ヤンヨちゃんと向かい合って、ちゃぶ台に座りご飯を食べる。
満腹になった頃、ふとハク姉の一升瓶が目に入った。
「ねえ、ヤンヨちゃんはお酒飲める?」
「ヤンヨ」
コクリとうなづくのを確認して一升瓶を開け、コップに注ぐと甘い香りが部屋中に広がった。
ヤンヨは少し香りをかぎ、ニヒルな笑いを私に向け脚を使って器用に飲み干す。
少し色っぽい笑みを私に浮かべ、擦り寄ってくる。
「ヤンヨっ!」
「わぁくすぐったい!」
ヤンヨは私の肩胛骨の辺りを軽くほぐすと、親指で背骨の両脇をなぞる。
その是妙なタッチに、抵抗することも出来ずに身もだえしてしまう。
「やだ……やんっ きもち良……いっ!」
首にヤンヨの脚が絡まり、頸椎回りに心地よい圧迫を加えてくれる。
そして愛撫する様に私の額にキスをし、さらさらの頬を擦りつけてくるのだ。
「だめよぉ、気持ちいい」
「ヤンヨ……」
私はヤンヨに身を任せ、やがて意識が薄れていった……。
翌日、スズメの歌に目を覚ますと、やにょと両側からヤンヨに絡みつき膝枕をしていた。
ヤンヨからは、ほの甘い桃の香りがして、とても気持ちが良かった。
川の字で眠るのって凄く良い〜……。
「……ん? なんだか凄く体が楽になってる?」
ヤンヨは寝ぼけている、やにょと私からすり抜け台所へ行ってしまった。
トントンと小気味良いリズムが気持ちよくて、ついまたウトウトする。
「シテヤンヨ〜♪ ダカラモット〜♪」
直後にカン、カンとフライパンを叩く様な音がして叩き起こされる。
顔を洗って台所に行くと、美味しそうなオムレツとご飯、ソーセージ、それと野菜スープと牛乳が並んでいた。
「ヤンヨッ!」
「う〜、おはやんよ〜」
「やにょ」
腹八分目まで食べた私たちに、ハク姉のお酒が出されて……? ってこれは桃のジュース?
桃の果糖によって凄く頭がスッキリする。
「ヤンヨ!」
「行ってきます!」
「やにょ!」
こうやって、私はまた今日も元気に歌っています。
おわり