私がカイトの大切なモノへ、とろり……と芳しい匂いを放つ液体をまぶしてあげると、
彼から切なげな吐息が漏れた。
我慢できないのね。
でも、まだ駄目。食べちゃうには早すぎる。
甘く、ねとつくソレを、ゆっくり焦らすように撫でまぜていく。
下準備は入念にしなくちゃね。
そうすれば、口に入れた時の何とも言えない、ゾクゾクする喜びが大きくなるのだから。
「め、メイコ、もういいだろ。早くしてくれ……」
「もう少しよ。ふふ、せっかちなんだから」
見せつけるように、ヌチャヌチャとやってやる。
ちょっと意地汚い気もするが、彼の精悍な顔立ちが好物を前にして
おあずけを食らった、犬のような顔に歪むのを見るのは楽しい。
普段はともすれば女みたいな所もあるのに、その食欲はやっぱり男のコね。
「メイコぉ」
ある程度まぜると、良い具合になった。
これ以上やっちゃうと美味しくなくなる。ここが限界だ。
準備完了……私は、我慢ではち切れそうになっているカイトへ微笑んだ。
「ん。もう良いわよ。さあ召し上がれ」
「い、いただきますっ! 〜〜ッウマイ!!」
カイトが至福の表情をつくった。
そりゃそうよね。
サーティワンのバニラに、ゴディバのチョコレートリキュールを混ぜ込んだ特製アイス。
彼が普段食しているスーパーカップとは、比べものにならない美味しさだ。
なにせお中元の時期なもので、知人というか知ボーカロイドからは日本酒だのウイスキー
だのが贈られてきて嬉しいが、贈り返す事を考えると、ちょっと財布が寒くも感じる。
その中にカイトが喜びそうなモノがあったので、スーパーニッカを飲みながら作ってあげたのだが
思った以上にツボったみたいだった。
よしよし、これでまた良いようにたかってやれるわね。