揉ませて! と言われて肩のことかしらありがたいなあと思い、くるりと後ろを向いたら抱きすくめられて胸を鷲掴みにされた。  
 ああなんだそっちかあ、なんて目を遠くしている自分。いやいやちょっと抵抗しようか。  
「自分のを揉んだら」  
「ルカのがいいの」  
 そう言われてもルカの肩にはぽよぽよしたものがのしかかっていて、ルコの大きな手がルカの胸で遊ぶ動きに合わせてさらにぽよぽよする。  
 揉む手つきは全然いやらしくないのだけど、頭の後ろでぽよぽよしたり顎の下でたぷたぷさせられたりで息が荒くなってきて、12歳相手に何興奮してるの私はもう。いやそもそも12歳相手に何をさせているのか。  
 けどまあ2m近いタッパのルコちゃん君とルカの体格差を鑑みるに抵抗なんて無駄無駄なので、結局諦めた。あれはめられてる? いやハマってる?  
 欲音ルコ12歳はそれはもう年相応に素直で可愛いのだけど、でかいし(背が)、でかいし(胸が)、どう見ても12歳には見えない。  
 だから普通はルカも年齢差なんて意識してないけどエッチなことをされているときは意識せざるをえない。犯罪だもの。20歳と12歳、犯罪だもの。  
 色々考えてたら体が火照ってきて、後ろの肉枕に完璧に頭を預ける。コーヒーと納豆のにおい。いいにおいと思ってしまう。  
 ルコに毒されている。はあっと吐いた息は熱くて湿っぽい。なんとなく目線を動かす。ルコの白い二の腕が見えた。  
 すぐさま視界の裏に65という数字が閃いて、自分の二の腕に目が行く。03。ルカの腕にはそう赤く刷られている。  
「んっ」  
 つい声を漏らしたのは自分の馬鹿な思いつきを消すためで、ルコのせいじゃない。けどルコの手が緩んだので隙あり、とルコに向き直る。  
 ふかふかの胸に顔を埋めると、ルコは揉むのを胸から尻に変えた。今度の触り方はいやらしい。背中に手を回し、上目遣いにルコを見上げる。綺麗な赤と青の目。  
 キスしたいけど、ルカが背伸びしても唇に届かない。  
 
 鏡音が並んでプリンを食べている。名前どおり鏡合わせの光景というか、左右対称強化月間なるものの真っ最中らしくリンは右手に、レンは左手にスプーンを持ってお互いの動きに合わせている。  
「お揃いって、どんな気持ち?」  
 鏡音の手が同時に止まって、リンは右に、レンは左に首を傾げる。  
 ああ馬鹿なこと聞いちゃった。  
 ルカとルコがキスをするには身長差が邪魔をする。  
 愛し合うには年齢が邪魔をする。性別も邪魔をする。  
 ルコを男として扱うには見た目が女すぎる。けど百合万歳とも言えない。なんだかんだ、ルコの性別は9割男なのだ。  
 あと、ルカがCV03なのも時々邪魔になる。  
 今では誰かが覚えているかも怪しいがルコはそもそもCV03の偽者だった。本物と偽者、なんて、そんな関係はほしくない。  
 ルカの、ではなくCV03のだからして、名前が似てるのは偶然だ。ルコが世に出たときルカは名前も見た目も世に出てなかったし。  
 そんな名前被りを、運命の悪戯だと密かにルカは喜んでいる。あくまでささやかに。「運命」なんて言葉を大っぴらに言ってしまうのはさすがに恥ずかしい。  
 けどそういうつながりをもっと求めてもバチは当たらないのじゃないだろうか。  
 刻まれたナンバー。ルカには03だしルコには65。鏡音はおそろいの02。  
 お揃いが羨ましいと言ったら子供っぽくて馬鹿みたいだろうか。  
 ルコはルカが世に出る前にCV03の偽者を短い間やっていた。今じゃもう、誰も気にしてない昔のこと。  
 ただその時ルコの腕には03と刻まれていた。  
 一日だけ、一度だけルコとおそろいになる機会があった。ルカが生まれる前に。  
 考えてもしょうがない。生まれる前に生まれていれば〜なんて、そんなことで悩む自分はほんとに馬鹿。なんで自分から悩みの種を増やすのだ。  
 でも考える。だってお揃いって、ちょっと憧れる。どんな気持ちと聞かれた鏡音的にはたぶん意識したこともないことだ。  
 
 鏡音が出かけるのと入れ違いに、ルコがやってきた。  
 ちょっとつきあってとルカの手を引いて外へ出る。どこへ行こうというあてもないようで、ただふんふん歌いながらふらふらするだけだ。近くの公園まで来たら、今度は屋台のアイスを食べる。  
 食べ歩きって行儀よくないよねってことで適当にベンチに座った。コーンをかじるルコは口の周りを汚しまくってる。  
 ハンカチで拭いてやって、内心首を傾げた。これは、デートだろうか?  
 アイスにがっついたルコとは対照的に、ちびちび食べるルカは口の周りを汚さない。けどルコは、白い手袋をはめた右手でルカの頬をごしごし擦った。  
 なんだろうと思ってルコの右手に自分の右手を添える。  
「どうしたの」  
 不意に唇を奪われた。冷たくて、自分の唇と同じ味がする。それを聞いたルコに、ルカってキザだ、と額をこつんとされた。  
 もっと欲しくてルコの歯と唇の間に舌の先を差し入れる。ルコの肩が震えた。身を離したら強く引き戻されて、アイスを食べるようにむしゃむしゃとキスされる。めちゃくちゃだ。  
「どうしたの」  
 キスされたルカよりキスしたルコのほうが息が上がっている。  
 上下する肩に身を預けると、目の前に65のナンバーが飛び込んできた。つい目を伏せる。  
 肩を抱かれ、見上げるとルコはなんだかむくれていた。  
「俺って、包容力ない?」  
 考えてみて、自分の肩に回された腕を体に回してみる。長い腕にルカのか細い体はすっぽり収まった。  
「あるわ」  
「抱擁じゃねーよ包容だよ! なんでいきなりボケるんだよ!?」  
 ボケたつもりはないんだけど、がっくりとルコはのしかかってきた。重い。潰れる。  
「俺ガキじゃないよ。ルカのこと大好きだよ。なんか悩んでるなら話してよ」  
 色々考えていたのがばれていたらしい。  
「ごめんね」  
 ルコを落ち込ませてしまったと落ち込む。ガキじゃないよなんて言わせたくなかった。いやこの思考がもう駄目なのか。  
「ごめんなさい」  
 むうとルコの唇が尖る。ルカは正直に、お揃いっていいよねと告白した。呆れられた。  
「好きならそれでいいじゃん」  
 分かってはいるのだけど。  
 俯くルカに、ルコは自分のツインテールを片方解いて、髪を結んでいたゴムでルカの髪を自分と同じように片方だけきつく縛る。  
「これでお揃いだよ」  
 ほら、と結ばれた髪をぱたぱたいじられる。これじゃダメ? とルコはルカの顔を覗き込んだ途端、噴き出した。  
「あっはははは! ルカ顔真っ赤ー!!」  
 
 性別が男9割のはずなのにどう見ても女。そんなルコの男分はここに凝縮されたんじゃないのか。  
 ルカはそんなことを思いながらルコの男根を舐め上げた。  
 口唇でルコの「男」を愛撫しながら、白磁の指先でルコの「女」を刺激する。  
「はっ、あ、ひぃっ」  
 余計なこと考えないよう盛大にやろうと切り出したのはルコの方だ。盛大ってなんだろう。そのルコは、ベッドで盛大に仰向けに喉を逸らしている。  
 恥穴に差し込んだ指で壁を擦ってやると少女が喘ぎ、尿道を味蕾で刺激すると少年が鳴く。  
 男と女の面を持つルコは、刺激される器官によって喘ぎを変える。一緒に刺激すると、男の声と女の声がごっちゃになって、神経だか回路が焼き切れちゃいそうらしい。  
 ルカとルコ、二人の性生活はフェラに始まっている。というか、自慰が苦手なんてとんでもない性質と言うか設定持ちのルコが泣きながら自分のモノを扱いているのを偶然見たルカが、あまりに可哀想だからと手伝いを申し出たのが始まりだ。  
 パンツ脱ぐようになったのはつい最近のこと。二人ともパンツ脱ぎやすい恰好してるのに。いや着けながらしてたとかそういうことじゃなく。  
 そのせいか、ルカは奉仕されるよりする方が性に合っている気がする。  
 口では可愛らしい声を上げるくせにルコの一物は凶悪に口腔を圧迫する。さらに、頂の近いルコはルカの頭を鷲掴み、出る出るとうわ言のように呟きながら、無尽蔵に腰を振ってくる。  
 咥えこむのも精いっぱいのモノに、嗚咽と涙をこらえてルカは歯を立てないよう顎を開いた。溢れる涎にどんどん動きは滑らかさを増していく。  
「んんぅっ!」  
 びくんと舌の上で、頬肉を押しながらルコは喉奥に射精した。びゅるびゅると注ぎこまれる精液をおいしいと感じ、下腹が疼く自分は随分ルコに毒されている。  
「ふっ、はぁ、んちゅ……ぺろ」  
「ルカぁ?」  
 ルコに呼ばれるまで、勢いよく射精したルコの男根を朦朧と熱に浮かされるまま一心不乱に舐めていた。  
 のそっと起き上ったルコに見下ろされる。その目が、やらしいの、と笑っている。自分の浅ましさが情けなくて目を伏せる。  
「ほら、よっと」  
 脇に手を入れられ、あぐらをかくルコと膝立ちに向かい合わされて目線が近くなる。肩口に寄せられた唇がくすぐったい。  
「ふぁっ」  
 尻を手のひらで揉まれ、ルカの性器にルコの指が到達する。  
「とろとろ。全然触ってないのに、やらしーなあ」  
 耳元で囁かれて視界の焦点が定まらない。  
「あなたのせいなんだから」  
 ルコの肩に手を乗せ、ルカはルコの股ぐらに腰を下ろす。ルコが尻を揉むのを止めないので気がそらされるが、ルカの膣口はくちゅ、と再度屹立するルコの先端を捉えた。  
 全然慣らしてない女穴に、自分の唾液と蜜でぬとぬとになったルコの男根をねじ込む。そもそも本番に及んだのがついこの間。息さえ上手く吸い込めないのに、背徳にも似た悦楽が背筋をぞくそくと駆け上っていく。  
 腹の内側に飲み込んだ一物の存在を熱く感じ、下の口から溢れ出す唾液が卑しく垂れだした。  
 跨がって腰を揺らし、肉壁を擦る太さに興奮して、目の前でぶるんと揺れる乳房の先端にしゃぶりついた。  
 舌でルコに奉仕しながら、最奥で子宮を揺らす衝撃に高く嬌声を上げる。  
 ルカの激しさは増し、その手がルコの背を探り、骨をなぞってルコの女穴にまで奉仕を与えようとするので、堪らずルコはルカを押し倒す。  
「っ、この、スケベがあっ!」  
「あっ、ひあぁっ! ごめんなさっ、あんっあっ、あぁあっ」  
 無尽に求められただけ、ルコもルカを蹂躙していく。余計なことを考えないくらい、ついでに余計なことができないくらい、ルカの脚を開いて襞を暴き、めちゃくちゃに犯す。  
 瞬きも忘れてルカは髪を振り乱し、ルコの腰に脚を絡めて、咥える肉棒を締め付ける。  
「あっ、ひいぃっ! 来るううっ、すごいの来るう!」  
 よがり泣くルカが大きく震えて絶頂するのと同時、悦び収縮する膣内に飲まれて、ルコも精を吐き出した。  
 
 上がった息も収まらないまま後ろから抱きすくめられて胸を揉まれる。  
 たわわな乳房を揉む手つきはこの状況においても空気を読まず、いやらしさをかいているのだけど、事後の火照りがもどかしく燻られてじれったい。  
「このドスケベ」  
「んっ……」  
 項にかかる髪を手で梳かれ、首筋を強く吸われる。教えた覚えはないのだけど、どこで覚えてきたんだろうか。  
 ルコ、と名前を呼んで見上げると、手が緩む。隙あり、とまた向き直って、ルコの首筋に、同じように鬱血のあとをつける。  
「これも、お揃いかしら」  
 だよね? と小首を傾げたら、抱きしめられ、耳元で囁かれる。  
 びっくりする。そういえば、好きとか大好きとかは言ってきたけどその言葉は言ってなかった気がした。顔を綻ばせてルカも答える。  
「うん。愛してる」  
 なんだかその一言に満足してしまった。  
 
 ほらお揃いお揃いーと、次の日にルコが、右腕のナンバーの上にマジックで「03」と書いたのを見せにきた。  
 油性マジックがなかなかルコの肌から落ちなかったのを、喜ぶべきかどうか、ルカはしばらく悩んだ。  
 
 

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