「たいちょ〜!女の子が一人遅れて来るそうです!」
「そうか!ならばこうやって…ダメだ。ストップストップ、やり直し」
「はぁ?なんで止めるんだよ」
「お前の声に感情がこもってねぇからとめたんだっつの。考えてみろ?合コンで雌が一人遅れるんだぞ?」
「どゆこと、ソレ?」
「つまりだな、刀と鞘は同数無ければならんのだ!一振りでも抜き身の真剣が残れば、そこは合戦の場と化す!そりゃそうだ!誰しも鞘に納めたいし香りを嗅ぎたいのだから!はぁはぁはぁ、ああー興奮してきた」
「うわぁ…」
「そこ!ドン引きしない!」
「つーか俺、合コンなんてしたことないし」
「なあんですとぉ〜?くはっ、俺は悲しいぞっ。お前がそんな甲斐性無しだとはっ」
「うっせぇ」
「…よし、決めた!ちと待ってろ」
「?」
「…もしもし、メイコか?我が家のポークヴィッツに経験値を積ませるぞ。三人集めれ。…は?仕事?剥かなきゃ食べられないバナナを一皮剥かなきゃこっちの仕事が終わんないの!たのんだぞ!」
「おっ、おいおい!俺、行かねーぞ」
「ぬははは!ビビんなビビんな!!」
「マジ行かねーかんな!」
「おんやぁ?逃げるのかい?ならばこうだ!てけててってて〜(ドラえもん風)麻酔銃〜(大山のぶ代風)えいっ♪」
ズドン
「ぎゃー!」
「へっへっへっ…オラわくわくしてきたぞ(悟空風)」
目覚めるとそこは…飲み屋でした。
なるほど、俺が逃げられないように眠らせた上で会場に運んだわけか。犯罪だろ。
霞む目を擦りつつ身体を起こすと、見知らぬ外人と目が合った。
「おっ、目を覚ましたか主役君」
「…はへっ?」
麻酔が抜けきっていないのか、微妙に口が回りにくい。
つーか誰すかアンタ?
黙っててもなんなので、ここがどこかくらい聞いてみるか。
とか思っていると、トイレに行っていたらしく服で手をごしごしふきつつ、人に発砲する馬鹿登場。
「お〜起きたかチェリーボーイ!ここが今回の戦場、居酒屋アルカディアだ!」
「…」
麻酔開けのドタマに響くんで黙っててください馬鹿野郎そして可能な限り性急に死にやがれもしくはタイマンすっかゴルァ。
「はっはっはっ!そんな麻酔開けのドタマに響くんで黙っててくださいバカイトそして可能な限り性急に死にやがれもしくはタイマンすっかゴルァって思ってそうな面すんなよ!」
…あれ?俺、サトラレ?
「厨2病患者の思考など手に取るようにわかるわ!」
思考を読まれてうろたえる俺とサトリの馬鹿物を横目に、謎の外人が余裕で日本酒を飲みつつ割り込む。
「おいおい、こいつに合コン体験さすのが目的だろ?あんまイジメると拗ねちまうぜ」
「…えっと」
だからあんたは誰だ、と。
「おっと、紹介がまだだったな。この人は俺らの兄貴分、ボーカロイドのアダム、レオンさんだ!今日は俺共々サポートに回ってくれるからよっっく感謝しろよ!」
馬鹿が口を挟む。偉い人ならほっぽってトイレ行くな馬鹿。
「よろしくな、レン」
「…よろしくお願いします。レオン、さん」
初対面や年上には、さんを付ける。礼儀正しいほうが印象いいし。
だが、それを聞いて一瞬レオンが眉をひそめた。
「呼び捨てでいいぜ。そのほうがフレンドリーだろ?」
おお、さすが外人。フランク。
「えっ、ちょっ、俺にはまださん付けでしか呼ばせてくれないじゃないスか」
「お前馴々しいもん」
「ぎゃふん」
レオンとカイトは結構親しいようだ。
なにはともあれ、馬鹿よりは常識ありそうでなにより。
ん…あれ?もしかして俺、帰るタイミング逸しかけてる?
今更やべぇ!と思い軌道修正に取り掛かる。
「ちょっ、ちょっと待って!合コンとか以前に俺まだ未成年だからっ!酒とかは…」
「うちの店くち堅いから大丈夫っすよ〜」
水を運んで来た店員が口を挟む。
「だってよ」
「…」
法規を守れ無法酒場。
「はん、青い青い。酒場での法は一番目立った奴が決めるのだ!」
「だから心読むなっての!バカイト!」
「お前ら見てると面白いな。でもそろそろ女性陣くっから打ち合わせしたほうがいいぞ」