今年のロンドンは雪だった。  
 
私がアルと出会って、そろそろ一年。  
初めて出会った時も、そう、こんな雪の日。  
 
 
私は、色々あって会社を一年半で辞め、ロンドンに英語留学してきたのだけれど  
私の名前は、フランス語で卑猥な意味になるらしく、クラスでからかわれてた。  
そんなとき、味方に付いてくれたのが、ルーマニアから来た彼だった。  
とても愉快な彼だったから、そのうち私も孤立せずにクラスに溶け込めるようになった。  
だから彼と男女の仲になるのに、時間はかからなかった。  
 
でも、私の方が年上で、彼は初めてだったのに、私は初めてじゃない  
そんな自分に引け目を感じていた。  
だから、今年のクリスマスには、アルに後ろのはじめてをあげる事に決めた。  
 
 
すっかり手馴れてきたアルの手が、私の肩を、背中を胸をゆっくりとなでる。  
彼の手の温度に私の肌が震える。  
彼の顔が近づいて、私の唇と彼の唇が触れる。  
はじめはゆっくりと唇の体温を確かめ合い、やがて舌が絡み合う。  
舌が絡み合い、肌を寄せているうち、私の方の準備もすっかり出来ている。  
 
 
うつぶせになって、お尻を高く上げる。  
これまで準備してきたのだから、きっと大丈夫。  
…でも正直言えば、少し怖い。  
こちらの人は、みんな普通にしてるってクラスメイトは言ってたけど。  
 
 
アルは、聞いてるだけで心地よくなる低い声で  
そんな無理はしてくれなくても、君の事は好きだ、と言ってくれて  
うつ伏せの私を背中から抱きしめてくれる。  
 
 
その一言で、私の覚悟が決まる。  
彼をそっと支えて、私のはじめてに導く。  
 
 
はじめは、練習のために入れてきたものと変わらないと思った。  
でも、彼の体温を直接感じるのは全然違う。  
そして、とてもキツい。  
まだ三分の一ぐらいしか入っていないはずなのに  
硬く、太い彼のペニスに、私の後ろの穴が悲鳴をあげてる。  
額に汗が出ているのが分かる。  
彼が心配そうに、後ろから全身を愛撫してくれ、無理はしなくていいと言ってくれる。  
でも、私が決めた事だから。  
 
 
そうしてしばらく後ろから抱きしめてもらっているうちに  
私の緊張もほぐれてきて、痛さよりも彼に満たされている感じが強くなってくる。  
だから私は、もっと進んで、と言った。  
彼が、ゆっくりと、私の後ろの穴の中を進んでくる。  
一度も誰かを迎えた事のない後ろの穴に。  
一度は引きかけた額の汗が、また噴出しているのを感じる。  
腸の中が妙な圧迫感に満たされ、トイレに行きたくなるような  
前に挿れている時とは違う奇妙な感覚。  
そして、とても熱い。  
彼の生きている体温を、腸で直接感じている。  
彼のペニスが私の穴を押し広げ、私の中を熱で満たしていく。  
 
 
私は、動いて、と言う。  
彼は、壊れものを扱うように、慎重に、でも徐々に大きくなっていく動き。  
あいかわらず私の額には汗が張り付いている事に気づいていたけれど  
少しずつ、子供の頃、排便をした時のような快感が幾度も繰り返される感覚に  
悦びをおぼえつつある自分に気づく。  
 
 
彼は私の名前を呼びながら、後ろから私を抱きしめ  
そして私のクリトリスに手を伸ばす。  
 
 
痛さと奇妙な快感とアルの声に、私はだんだん訳が分からなくなり  
アルの名前を呼んでいるのか、何か言葉を叫んでいるのか分からなくなる。  
彼に英語で返事をしているのか、日本語で叫んでいるのかも分からなくなる。  
彼が私の中に押し入る圧迫感がおしよせ、ひいていくリズムだけが私を支配する。  
そして、そのリズムがだんだん早くなる。  
 
 
…気が付くと、私は、アルの大きな胸板の上にしがみついて涙を流していた。  
いつの間にか、少し眠ってしまっていたみたい。  
アルは、痛くて泣いているのじゃないかって、ずうっと髪を撫でながら心配していたけれど  
違うの。  
これは、あなたに、ようやく私のはじめてをあげられた嬉し泣き。  
 
 
外では雪が降り続いてた。  
 

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