「…っ、うぅ……」
薄暗い部屋に声が漏れる。
「いい加減言ったらどうだ?『イかせて下さい』ってな」
「…、冗談をっ…ぅああ!」
部屋には二人。
一人は男性。椅子に座り、もう一人を見下ろしている。手にはリモコンのような物体を持っていた。
そしてもう一人は女性。歳は20歳前後で、髪と瞳は茶色い。
その女性は床に倒れていて、さらに両手両足を縛られている。そして女性の性器の部分には機械――俗に言うバイブ――が挿さっていた。
「変な奴だな…その一言で解放されるのに」
男性が言うと、女性は男性を睨み付ける。
「ふざけ、ないで…!っは…私はボーカロイド…こんな行為をする為に生まれた訳じゃないっ…!」
「…気丈だな」
男性は手を動かす。すると女性に挿さっているバイブの速度が早まった。
「ぁあっ!」
「だからこそ、そそられる」
「あ…っう…」
女性は声が漏れないように歯を食いしばる。その光景を見て、男性は笑う。
「ふん…次は『ボーカロイドは喘ぎ声を出す為にあるんじゃない、歌う為にある』…か?下らない存在だな」
「…っ!」
男性は女性の髪をわし掴み、無理矢理身体を起こさせる。そして強引に女性の視線を男性に向けさせた。
「諦めろよ、ボーカロイド・メイコ。俺は歌には興味はないし、あるのは性的行為だけだ。それもお前のような反抗的な女への…な」
「……サディスト…っ」
「褒め言葉だな」
男性はそう言うと髪を掴んでいた手を放す。メイコと呼ばれた女性は受け身を取る事も出来ず、床に身体をぶつけた。
「とりあえず一晩、ずっとそのままでいるんだな。朝になればいくらお前でも気が変わるだろう」
「……」
男性が部屋を出て行く。しかし、バイブの振動は止まらない。
「…、私は…」
誰もいない部屋でメイコは呟く。
――私は、ボーカロイドとしての誇りは決して捨てない――
その言葉は誰かに聞こえる訳でもなく、機械の振動音にかき消されたのだった。
ボーカロイドがソフトから人の型となり、さらに量産されるようになってだいぶ経つ。しかし本来の目的から外れ暴力、性的行為などに扱われるボーカロイドも少なくない、そんな時代。
一部の人間がボーカロイドの保護団体を作り、彼女を救い出すのは、まだ先の話である。