***  
 
 
夢の中で、あたしはレンにエッチなことをされていた。あたしの大事な場所を、レンの指が掻き回して弄る。  
あたしはどうやら身動きがとれないようで、身体を熱くしながらレンの動きを見守っていた。  
ぐにゅぐにゅと入り口を拡げるように擦られて気持ち良い。もっと気持ちよくして、とあたしは黙ったままレンに向かって念じる。  
レンは何も言わずじいっとあたしを見つめると、小さく笑った。  
次の瞬間、質量を持ったものがあたしのソコに侵入してくるのを感じる。ああ、やっとキてくれた。  
あたしは嬉しくて腰を揺らす。きもちいい。レン、あたしきもちいい。  
 
「っひゃぅん…!」  
絶頂の瞬間に目が覚めて、軽かったはずの身体が一気にベッドに沈むような感覚がした。  
「…あ、あ、あっ」  
いやらしい夢からは解放されたはずの現実のあたしの中にまだ何かが入っている。  
それがぶるぶると震えると、肉が勝手に絡んでしまう。  
あたしが枕を抱えて身体を捩っていたらぎしりとスプリングが軋む音がして影が落ちた。  
「リン、おはよう」  
「あ…れ、れん、抜いて…ッ」  
にこっとレンは笑ってあたしの前髪を掻き上げるなり、額にそっと唇を触れさせた。  
その間にもあたしの中で止まらない振動が息を荒くさせる。この感触は初めてではなかった。  
レンがあたしを虐めるときによく使うおもちゃだ。  
「さっきイっただろ?寝てても気持ちよくなっちゃうんだね、リンの身体は」  
意地悪く言われて恥ずかしさに耐えられない。  
浅い眠りで現実の刺激とリンクしていたとは言え、夢の中でレンに触られて気持ちよかっただなんて自分でも信じられなかった。  
いつも夜中にあたしの身体を弄びにくる片割れのことなんて、大嫌いだったから。  
霞がかかりそうな頭で理解するに、今日はあたしが寝ている間に寝巻きを剥がれて秘部に玩具が挿入されているようだった。  
それに震えるあたしを悠々と見下ろすレン。レンがあたしで遊ぶのに、どんな理由やきっかけがあるのかなんて知らない。  
あたしがレンを嫌いなように、レンもあたしに嫌がらせをしたいだけなのかもしれない。寝込みばかり襲ってきて、卑怯だと思うけれど。  
ギュッとバイブを押し込まれて腰が跳ねた。あたしの中で無機質なそれが暴れて、ぬくもりなんて無いのにあたしの身体は熱くなってしまう。  
「あっ…やぁあ、らめえ…っ」  
「濡れてビショビショになってるよ。リンはおもちゃ好きだもんね、いやらしいなあ」  
「や…っ、やめて、やだあ、いっ、いっちゃうよぉ…!」  
内側が振動で掻き回されるのが気持ちよかった。滲む視界ではレンがくすくすと笑みを洩らしている。  
あたしが抱いていた枕を取り上げるとベッドの外に投げて、両手の指を絡めてシーツに押さえつけてきた。  
レンに見られているっていうのに、見られているからこそ、快感は背筋を駆け抜けていく。  
はしたなく脚を広げたまま、びくんと身体が痙攣した。  
「ぁあ、あっ、あああっ…!」  
「ふふ、リンのイキ顔かわいー」  
深い快感に溺れて上手く息ができないあたしにレンは優しく口付けてきた。きもちよすぎて苦しい。  
レンがスイッチを切ってくれない限り、あたしが何度イっても中のバイブはもっともっとと追い詰めるだけなのだ。  
二度も達して弛んだあたしの身体はすぐにまた絶頂に近付いてしまった。腰がびくんびくんと何度も無意識に跳ねる。  
あたしのもので濡れたシーツが冷たくなっているのをお尻がつく度に感じた。  
「らめ、れぇんっ、れんゆるしてぇ…ッ!」  
「何を許すのさ?僕は別に怒ったりしてないし。かわいいリンを見たいだけ…だよ」  
「やっ…やぁああ…!!」  
はだけられた胸元にレンが唇を寄せる。  
なぞる舌は勿体振りながらかたくなった頂点に辿り着いて、その舌先でぐにぐにとなぶってきた。  
ちゅうっと吸い付かれて身体から力が抜けるけれど、震える下半身の熱は上がるばかりだ。  
 
「あー、リンかわいい。ほんとかわいい。なんかもうバイブが羨ましくなってきた」  
「な、なに、なにゆって…」  
「リン、バイブ止めてあげたら僕のコレ入れてもいい?」  
僅かに首を傾げて、甘えるような表情でレンは言う。  
コレ…とレンが示したのは、彼の股間で不自然にズボンの布を押し上げている膨らみ。  
ウン、なんて頷けるわけがなかった。レンに指や舌や玩具で遊ばれることはあっても、ソレを入れられたことはない。  
だからあたしは今まで、心のどこかで安心と失望を味わっていたのだ。  
決定的に犯されることは無いのだろうという安心と、ただおもちゃにされているだけなのだという失望。  
…自分の中で妙な安定を保っていたはずのそのふたつが、レンの言葉で簡単にひっくり返ってしまう。  
いつの間にか振動は止まっていて、あたしは呼吸を繰り返しながら力の入らない下半身をだらしなくレンに預けていた。  
ずるりと異物が引き抜かれる感触に肩が震える。  
どれだけの間アレが中に入っていたのかはわからないが、満たしていたものを失って喪失感に見舞われた。  
レンはその手からボトリとシーツの隅に玩具を投げ落とすと、あたしの手を押さえながら器用に片手で自らの下半身を露出させる。  
初めて見たそれはカタチを模した玩具よりもずっとグロテスクで、恐怖と緊張で抗う声も出ない。  
「僕のでも気持ちよくなってよね、リン」  
「…ッ、や…」  
「それ、いくよー」  
レンはあたしの脚を広げるなりそり立った棒の先端をあたしに向けて、ぐにゅっと押し付けた。  
それなりの大きさの玩具によって度々開発され拡げられていたそこは特に狭いというわけでもなくて、抵抗も無くレンのものを呑み込み始める。  
機械と違って、熱い。頬を上気させてあたしを見下ろすレンが僅かに顔を歪めて息を吐いた。  
「はあ…リンの中って、こんなにきもちいいんだ…」  
「ふぁあっ、やめっ…、やだ、やだぁあ」  
「なんだよ、バイブの方が良かったの?」  
拗ねたようにそう言われてあたしは咄嗟に首を振る。規則的な振動を繰り返すばかりの無機質なアレは嫌いだ。  
けれど首を振った後に、今の応えはレンにとっては自分の肉棒を受け入れたことに対する肯定だと解釈されたらしいと気付いた。  
レンはあたしの濡れた目尻にキスしながら奥までを隙間無く埋めて、ゆるく笑む。  
「やっぱり本物の方が良いよね。ハジメテの感触はどう?」  
「う…ぅう…」  
「…まあ、入れようとしたのは初めてじゃないんだけど」  
レンが意地悪く囁いた言葉に、覚えの無いあたしは思わず彼を見遣る。  
反応を予想済みだったらしいレンは、くすくすと笑ってあたしの頬を両手で挟んで顔を寄せてきた。  
間近で見るレンの瞳に、情けない表情をしたあたしが映っている。レンはそのままちゅっと唇を触れさせた。  
「…寝てるリンに、こうやって初めてキスした日のこと」  
「な…えっ…?」  
「興奮しちゃってさ。リンのまんこと僕のちんちんでぐちゅぐちゅして遊んでたんだ」  
「……っ、しらない、あたし、そんなの知らないよ…っ」  
「リンが起きる前にやめたもん。僕ので痛くするのはかわいそうだったから、ちゃんと入れるのはきもちいいのに馴らしてからにしようと思って」  
それが、今。  
事の顛末を語って満足したらしいレンは、ちゅっちゅとあたしの身体にキスを落とし始める。  
あたしはと言えば、今までずっとあたしを性的に弄ぶだけだったレンのそもそもの目的を知って頭の中がぐるぐるしていた。  
入れる気は無いんだ、とずっと思い込んでいたけれどそうじゃなかったらしい。  
そうじゃなかった、と理解して―――安心している自分を認めたくなかった。  
だって、入れてくれて嬉しいなんて、そんな風に思ってしまうのはおかしい。  
レンの熱が中にあって、優しく身体を撫でられているのが嬉しいだなんて。  
ちらりとあたしを窺ったレンと目が合ったとき、あんまりに恥ずかしくってこれ以上無いくらい顔が赤くなるのを感じた。  
「リン、かわいい」  
「……っ!」  
「処女はバイブに奪わせちゃったけどさー。リンの初めての男は僕だね」  
「や、ぁあ、あっ…」  
レンはあたしに覆い被さって、腰を緩やかに揺らし始める。  
ずっと熱いままでとろとろになっていたそこがにゅるりとレンのものを滑らせると、二人同時にびくんと震えた。  
 
「あっは…すげ、きもちいい」  
レンが嬉しそうに言って胸がぎゅうっとなる。  
玩具の責めに喘ぐあたしを見るレンはいつも楽しそうだったけれど、今は少し余裕が無いみたいに見えた。  
あたしも昂る身体を止められそうにない。玩具を入れられたときの嫌悪感とはまるで違う。  
レンと繋がっているということは、あたしを酷く興奮させた。ぐちゅぐちゅと擦られると、快感に身体が震えて止まらない。  
「ぁん…あん、れん、ふぁあ…っ」  
「キモチイイときの顔、してるね、リン」  
「あっ…ちが…あたし、」  
「言って、きもちいーって。そしたらもっとヨくなるよ」  
レンは腰を緩やかに揺らす一方であたしの理性を強く揺さぶる。  
けれどあたしはレンに無理やり挿入されているのだ。  
それなのに気持ち良いなんて言ってしまったら、レンの行為を認めてしまう。赦してしまう。  
あたしは必死で疼く欲望を押さえつけて首を横に振った。それを見てレンが苦笑する。  
「意地っ張りだなあ、リンは。中はこんなにキュウキュウしてるのに」  
「はぅ……、はぁ、あ…」  
「じゃあ、リンがきもちいって言ってくれるまで頑張るよ」  
自信ありげに宣告されて、あたしはぞっとした。  
延々と続くバイブの責めよりも、レンに見下ろされながら性器でゆっくりと擦られる方が何倍もあたしの中心を熱くする。  
あたしに挿入したばかりのときよりも、レンのものが大きくなっているのを感じた。  
「中で出しちゃっても許してね?」  
レンはあたしの耳元で悪戯っぽく囁いて、腰の動きを僅かに力強くする。  
レンの先端が気持ち良い場所をくすぐって身を捩ると、あたしの反応を察したレンはぐにぐにと執拗に同じ場所を突くようにした。  
堪えようと思っていた声も上がってしまう。  
「ぁんっ、だめ…だめ、そこだめえ…っ」  
「リン…あぁ、ヤバイ、リンかわいい、リン」  
レンはうっとりと表情を綻ばせながらあたしの肌を撫でる。  
下半身は乱暴に動いているのに、その手つきでまるで愛されているようだと感じた。  
快感に震えるあたしのことをかわいいなんて言わないでほしい。恥ずかしい。  
ぎゅっと瞼を閉じて瞳に溜まっていた涙を溢したら、それと同時に中で熱が弾けた感覚がした。  
あたしはその衝撃に一瞬で目を開ける。  
「レン…!な、なかで…!」  
「ぅあ…ごめん…気持ちよくって…」  
「そんな…うぅ、奥熱いよぅ…」  
注ぎ込まれた熱さに、レンを受け入れたままのあたしのそこが痙攣する。  
びゅっびゅっと数度に分けて精を吐き出す間、あたしの腰を掴んだレンはとても幸せそうな顔をしていた。  
失望だとか絶望だとか、もうどうでも良くなった。お腹があったかい。思考が白に染まったあたしもなんだか幸せな気分になれた。  
「レン…」  
「リン、僕、まだ止まらない…」  
「レン」  
再度名前を呼んだあたしを見つめるレンに手を伸ばすと、首に腕を回して抱き寄せる。  
こぷりと結合部から液体が溢れる音がした。頬を擦り寄せると、レンは少し照れたのを隠すみたいにあたしの頭を撫でる。  
「あたし、レンに汚されちゃった」  
「…ごめんね」  
謝ったレンの声色にはまったく反省の色が含まれない。それどころか嬉しそうだとさえ思った。  
あたしの恥ずかしさなんてレンの知ったところではないんだろう。  
こんな汚れたあたしを受け入れてくれる人なんてきっとどこにもいない。レン以外は。  
「リン、だいすき」  
無邪気にレンが言う。あたしは、嬉しくて、思わずレンにしがみついた。  
脚を腰に絡めるとぐちゅっと音がしてレンの肉が刺さる。まだ十分にかたかった。  
レンはあたしのお尻を揉みながら、再び腰を揺らし始める。白濁の詰まったあたしの中からレンが突き入れる度に液体が溢れた。  
「っ、ひゃん、あっ…ぁ」  
「リン、たくさん可愛がってあげるから、いっぱいかわいくないて、ね」  
「れん…ぁんっぁあっ」  
単純なストロークなのに、酷く身体が熱くなる。  
レンはあたしを虐めるくせに、事実を告白された今では慈しむこころが伝わってきてそれに感じてしまう。  
レンと繋がっている時間が長くなるほど快感が増すのがわかって頭がどうにかなりそうだった。  
あたしの中も、まるでレンの熱に融かされているみたいだ。  
レンの視線はただただあたしに注がれていて、あたしが感じていることは全部筒抜けな気がして恥ずかしい。  
 
「リン、もっと強くしてみていいかなあ」  
「えっ、あっ」  
レンはそんなことを訊いたけれど、あたしに返答する権利が無いのはいつものことだ。  
レンはあたしの腰を力強く掴むと、ぬぷぬぷとゆっくり引き抜いた。  
小さく息を吐いた次の瞬間、かたい肉棒が一気にあたしの中の肉を擦る。  
「ぁあああっ!」  
肌がぶつかる音と同時に奥の方を突かれて、脚と背中が跳ね上がった。レンは何度も何度もその動きを繰り返す。  
「ぁあっ、あああっ、あーっ!」  
「ふは、リン、かわいい!すごいよ!」  
責め立ててくる快感にあたしはシーツを力一杯掴みながら必死で首を横に振る。  
乱れるあたしを見るのが楽しいのかレンの勢いが衰える気配は無く、突かれる度にあたしの奥がぎゅうっと疼いた。  
イってしまいそうで、あたしは身を縮ませてぱくぱくと声もなく喘ぐ。  
レンはそんなあたしを見て小さくくすりと笑うと、突然腰の動きを止めた。おなかのあたりが熱い。  
「リン」  
「あ…ぁあ、れぇん…」  
「リン?」  
「やめないで…いかせてぇえ…」  
「ん。かわいい」  
レンは満足したようにあたしの額にキスすると、奥のイイところをぐいぐいつつく。  
「あっ、ぁんっ」  
「きもちい?」  
優しく問われて、限界の近いあたしは思わず大きく頷いていた。もう我慢できない。  
最初から、レンにさわられるのはすごくきもちよかった。レンは安堵に頬を緩ませる。  
「よかった。うまくできてなかったらどうしようかと思ってた」  
「きもちいいよう…きもちいい…」  
「嬉しい。リン、僕もすごくきもちいいよ」  
きもちいいって言ってしまったらなんだかすごく気が楽になって、素直にレンの熱を受ける快感がとろとろに甘みを増した気がした。  
もっと欲しくて、あたしも慣れない動作でレンに合わせて腰を揺らす。それに気付いたレンはくすぐったそうに笑った。  
「リン、今度は一緒にイこう?」  
「あっ…イイよぉ、あたし、もうイきそう…っ」  
「僕も!」  
いろんな液体が混ざってどろどろに融け合ったそこはぐちゅ、ぬぷ、と音を立ててレンのものが出し入れされる。  
かたく大きくなったレンのものを包むあたしの中がふるふると震えていた。きもちいい。  
レン、玩具なんて使わずに最初からシてくれれば良かったのに。傷付いてたあたしが馬鹿みたい。  
こんなにきもちいいのに。レンのこと大好きなのに。  
余裕の無さそうなレンに手を伸ばしてあたしからキスをしたら、ぶるっとレンのものが震える感覚がした。  
「あっ、イく…っ!」  
びくん、と中の熱が跳ねて、先程も味わったようにびゅっびゅっと奥に熱が広がる。  
その刺激で全身が恍惚に痙攣してあたしも絶頂を迎えた。  
「ぁああっ…!ああ…!!」  
「うっ、あ…はぁあ、きもちいぃ…」  
肉壁がぎゅうっとレンのものを締め付けるとレンは快感に顔を歪ませる。  
中でレンの射精が続くまま抱き寄せられて、肌がふれ合うのがきもちよかった。  
しかし熱が下がってゆっくりと我に返ると共に、どうしようもない恥ずかしさが込み上げてくる。  
体を離そうとしたレンに顔を見られたくなくて、ぎゅうと抱きついた。  
「リン?」  
「も、もう、サイテー、レンの変態!」  
「えー?でも好きでしょ?」  
一瞬不思議そうにしたレンはあたしの意地にすぐに勘付いたのか、再び抱き返しながらからかうように言う。  
睨みつけてやろうかとちらりと視線を送ったら、にやにやと浮かべられた彼の笑みにあたしは悟った。  
すべて思惑通りだったのだ。あたしを傷つけたことも癒したことも、最初から、腕の中に囲うための。  
まんまと嵌められてあたしの方から手を回してしまっているじゃないか。  
 
あまりの悔しさに、今度こそ絶対に頷くもんか!とあたしは固く決意した。  
そんな気持ちもレンには簡単に揺さぶられてしまうんだろう、と心のどこかで自覚しながら。  
 
 
おわり  
 

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