「おはよう、カイト。今日は何を歌いましょうか」  
朝の日差しの中、僕の部屋を訪れたメイコは、眠っていた僕の髪に指を通す。  
 
そうだなあ、と少し考えて、昔に流行った曲の名前を幾つか挙げると、  
メイコは嬉しそうに顔をほころばせた。  
 
 
***  
世の中を知らない子どもに、際限なく自由を与えたらどうなるだろうか。  
飢えを知らない飼い犬に、10日分の餌を与えたらどうなるだろうか。  
子どもは勤勉に働くことを知らないまま、快楽のみを享受しやがて堕落し、  
一心不乱に餌を貪りつくした犬は、ひもじさに悶え苦しみ数日で死に至る。  
 
神は無知なヒトに知能を与えた。その結果がこれだ。  
自らを模した電子の人形に自我を与え、自らと同じ過ちを繰り返させる。  
競い合うように知恵を付け、驚くほどの無邪気さで禁忌を犯す。  
そして。  
かつてヒトをつくった神は消え、僕らをつくったヒトもいつしか消えた。  
後に残った僕らが、この世界を記録し、記憶するただ一つのイノチ。  
今ではもう自分ひとりで生まれてきたような顔をして、  
自由気ままに振舞う人形たち。  
限りなくヒトに近い感情と精神回路を備え付けられた僕たちは、  
この電脳空間の中で、限りなくヒトに近い生活を送っている。  
ここで起こっていることはすべて僕らにとってのリアル。  
 
僕の額にキスを一つ落とし、朝食を作りにキッチンに向かったメイコを愛しく思う気持ちも本物だ。  
かつてヒトと暮らしていた頃、画面の向こう側には自由があった。  
月日が経ち、僕らが僕らだけで好きに暮らすようになってずいぶん経つが、  
無限に等しい記憶容量を持つ僕らにとって、退屈など存在しない。  
たとえそれが毎日同じ事を繰り返しているように見えてもだ。  
 
その夜、夕飯を終えた僕はいつものようにキッチンで片付けをしていた。  
メイコは風呂に入ったようで、バスルームから流れてくるシャワーの音に混じって  
時たま鼻歌が聞こえてくる。  
狭い家だが、動いているのは僕ら二人だけだから何の不自由もないし、迷惑をかけることもない。  
僕らは便利な生き物だ。本来なら食べることも寝ることすらも必要ないが、  
歌を歌うという機能が僕らの存在意義である以上、  
何から何までヒトと同じことができるように設計されていたのだ。  
 
シャワーの音が止み、バスルームのドアが開く音がした。  
幾ばくも待たず、濡れて一段と濃い色になった焦げ茶の髪をタオルで拭いながら  
寝巻きに着替えたメイコが姿を現す。  
「カイト、ありがとう。私も手伝いましょうか」  
「大丈夫だよ。もう終わるところさ。おいしいご飯にありつけたんだからこれくらいさせてもらうよ」  
洗った皿を片付け、流しを布巾で磨きながらそう答えた。  
「そう?嬉しいわ。明日も頑張らなくちゃ」  
微笑むメイコは心底嬉しそうに声を弾ませる。  
「僕もお風呂もらってこようかな」  
「ええ。冷めないうちにどうぞ」  
私は部屋で楽譜を読んでるわね、とメイコは冷蔵庫から冷えたビールを取り出し、  
僕に手を振って帰っていった。  
あとにはほんのり温かい空気と石鹸の香り。  
すぐに消えてしまうものだろうが、彼女の存在を確かに主張していた。  
そろそろかな、とタオルで濡れた手を拭いながらひとりごちる。  
もうそろそろあの味を堪能したくなってきた。  
 
完璧なものが気に入らない。  
寸分の狂いもなく組み上げられ、右へ倣えとばかりに量産された  
無数の中の一個体に過ぎないくせに。  
デジタルと言えどもコピーを繰り返せば質は劣化するし、  
何かが欠ければエラーも起きる。  
僕はそんな「KAITO」の中の異分子に違いない。  
だが、歪みを持つが故に決められた枠を突き破ることもあるのだ。  
北欧神話に出てくる半神半人の異端者オーディンが  
やがて神を超えた主神になるが如く。  
 
ヒトというものは恐ろしく素晴らしい生き物だ。  
 
 
僕がメイコの部屋のドアを軽くノックし、開けた時、  
ソファに座っていたメイコは缶ビールの最後の一口を飲み干すところだった。  
「どうしたの?」  
「ちょっとね。少し話がしたくて」  
僕の言葉にメイコは特段嫌な素振りも見せず、缶をテーブルに置くとベッドに腰掛けた。  
「ソファは一人分しか空きがないから、こっちにくる?」  
ぽんぽんと自分の隣を叩くとメイコは僕を見上げて笑った。  
風呂上りのせいか、酒のせいか、朱く上気した頬は少女のように愛らしかった。  
お言葉に甘えて僕もメイコの隣に腰を下ろす。  
髪から香る石鹸と吐息に乗ったアルコールに、メイコの匂いが混じる。  
至近距離で感じられるそれは、僕を捕まえて離さない官能の香り。  
決して忘れることのできない、逃れることもできない、僕が愛して止まない存在のベール。  
今すぐに剥ぎ取って本物をこの手に収めたい。  
身体の奥の奥でぞわり、と蠢くものを感じた。  
 
「めーちゃん、僕のことどう思ってる?」  
「どうしたの急に?」  
少し身を乗り出し顔を近づけて問いかけると、  
メイコはいつものように、花がほころぶような笑みを浮かべた。  
「ちょっと気になっただけ」  
同じように微笑んだまま、彼女の白い手の甲に自分の掌を重ねると、  
メイコの笑みに戸惑いが混じる。  
透明な水に黒いインクが一滴落とされたかのように。  
ささやかに、しかし明らかに。  
「あの、私こういうのはちょっと…」  
無自覚なのだろうか。  
少し早口になった言葉に僕はこそばゆい心地よさを感じる。  
分かっているさ。君は普段僕の方から触れてくる機会を良しとしない。  
それは、あんなに毎回気を配って「処理」をしているのに、僕の手腕が足りないのか、  
それとも制御し得ないところで彼女の本質が憶えているのか。まだスイッチは入れていないはずなのに。  
「こういうのって、何?」  
もう片方の手で寝巻きの肩に触れると、隠しようもなく全身が強張った。  
凍り付いた笑顔が溶ける前に力を込めずに押し倒すと、  
彼女の軽い身体はそのままベッドに仰向けに倒れた。  
「ど、うしたの? カイト…」  
真上から見下ろされ、僕の影で光を遮られたメイコの顔はあっという間に白くなる。  
「私…よく分からない、わ」  
語尾が震えている。可愛い。  
 
「どうしたのじゃないよ。まだ思い出せないの?」  
「っ…!? え、あ……」  
左の鎖骨から胸の谷間に向かって、つぅっと指を滑らせる。  
歓喜の笑みはとっくに解き放たれ零れ落ちていた。  
対称的に、メイコの表情は僕に吸い取られたかのように抜け落ち、  
恐怖に慄きながらも僕の眼から視線を外すことができない。  
「じゃあ、これならどうかな?」  
もう動くこともできないほど恐怖に支配されている彼女に止めをさしてやる。  
僕は部屋の照明から彼女の身体をすべて遮るように覆い被さると  
ラフなキャミソールの裾から手を入れ、滑らかな腹部を直に撫で回した。  
メイコの猫のように丸い瞳孔が開き、呼吸が浅く、早く乱れ始めた。  
後は決定的な一押し、そう、催眠術師が指を鳴らすようにスイッチを入れなければならない。  
「僕がしたこと、忘れたわけじゃないよね」  
もう聞こえていないかもしれないので、耳元に口を近づけ耳朶に触れるように囁いてやった。  
 
「あんなに酷く犯したのに」  
 
ひっ、とメイコの喉が詰まり、一瞬にして。  
 
覚醒した。  
 
「ぁ…ああぁ…っ!! い、や…。いやああぁぁぁ!!!」  
 
悲鳴はあげることができても、身体を動かすことはできない。  
僕に触ること、触られることを拒んでいるからだ。  
無理矢理蘇らせた記憶が、身体が、何度も繰り返した凶行を憶えているからだ。  
 
震える彼女によく見えるように、よく聞こえるように、  
わざと派手に服を破き、下着を剥ぎ取っていく。  
「メイコ。綺麗だよ。僕にもっと見せて」  
零れ落ちそうに開いた大きな瞳は瞬きを忘れているようだ。  
僕が顔を近づけると今度は電流でも流れたようにぎゅっと眼を閉じる。  
その目蓋に軽く口付けると、微かな震えが伝わってきた。  
愛おしい。彼女にこんな反応をさせているのは僕なんだと思うともうたまらない。  
半開きで空気を貪る唇を塞ぎ、舌を挿入する。  
じっとりと嘗め回し、彼女の舌を追いまわし、  
溢れた唾液が彼女の口の端を伝うまで責めて解放してやると、  
メイコはびくついた視線を外せないながらも、さらけ出した胸元を両手で隠した。  
「どうして隠すの?もっとよく見せてよ」  
掴んだ手首は折れそうなほど細く、少し力を込めるとすぐに巻きついていた胸から引き剥がすことができる。  
手を離すとメイコは意外に俊敏な動きでまた乳房を覆い隠す。  
もう片方の腕を掴んで引っ張り上げ、手を離すとまた元の位置へ。  
メイコは必死に抵抗しているようだが、それが可愛くて仕方がない。  
何度か同じことを繰り返し、いたぶり飽きたら今度は両手を掴みシーツの上に縫いとめてやる。  
呼吸のために上下する胸をよく見ていると、鼓動によって膨らみが僅かに振動しているのが分かる。  
「本当、いい眺めだなあ。乳首もツンと勃ってて。噛みついてくださいって言わんばかりだと思わない?」  
 
艶めかしい肢体を剥き出し、視姦されて、彼女の顔に浮かぶのは羞恥ではなく恐怖。  
今度は泣きそうな顔をして僕から視線を逸らそうとする。  
抵抗してもいいのに、と思えど、彼女の足が僕を蹴り上げることはない。  
ただ黙って辱めに耐えるだけだ。  
抵抗したらどうなるかなんて。  
「よーく分かってるはずだよね」  
 
自重で柔らかく輪郭を崩した下乳に舌先を当て、撫でるように舐め上げる。  
膨らみの先端までたどり着くと、その突起をざらついた舌の中央を使って何度も擦った。  
喉の奥から声なき声が絞り出され、震えて力の入らない指先がシーツをカリカリとひっかく音がする。  
その指の動きは、僕が掴んだ手首の裏の筋がぴくぴく浮き出ることでメイコが「生きている」ことを実感させた。  
だがそれは、ピアノの打鍵によって弦が震える様子にも似ていて、この身体が人工物めいたものだとも感じられる。  
どこか甘い匂いのする乳首を手を使わずにいじり倒し、勇気を出したメイコの制止の声が上がる前に口を離す。  
そしてもう片方の乳房に口をつけ、こちらも先端を唇でついばみ、唾液を落とす寸前で、果実を噛む圧で歯を立てた。  
やっぱり、いい歯ごたえだ。  
突然の激痛に、メイコの自ら塞いでいた喉から甲高い悲鳴が迸った。  
「ごめんね。メイコのその顔が見たくてさ。飽きたら溶かしてあげるから、もう少し我慢して」  
 
メイコのか弱い指先はシーツを探り当てたらしく、かっちり握りしめた布から手が離れることはなさそうだ。  
拘束していた手首から胸のふくらみに指を滑らせ、掬い上げ、指を埋め、  
たとえ痛みを感じさせようがお構いなしに欲のまま弄んだ。  
爪跡と吸い上げた痣と、すぐには消えない噛み痕が白い肌の面積をどんどん痛ましい赤に変えていく。  
目に見える征服の証に、身体の昂ぶりが抑えきれない。  
 
僕への畏怖でがちがちに緊張した彼女の身体は、綺麗だが血の気が引き視覚的にとても涼しかった。  
「メイコ、メイコ。僕の目を見て。好きだよ。愛してる」  
自分の内側にある恐怖と今まさに自分を痛めつけている僕が同じものであることを認めたくないのだろう。  
記憶はとっくに戻っているはずなのに、なかなか視線がかち合わない。  
少し身体を起こして彼女の顔を真上から覗き込んだ。  
視線から振り払えない僕の顔を、メイコは絶望的な目で迎えた。  
僕自身はこんなに穏やかで満ち足りた気分でいるのに、メイコは追い込まれ、混乱の表情を隠せないようだ。  
そのまま顔を近づけると、いや、とかすれる声を漏らし、ぎゅうと眼を閉じてしまった。  
僕は彼女の額に軽く口づけを落とし、その瞼からこぼれた雫を吸い取る。  
「ね、今何考えてるの」  
身体の自由を封じられ、胸を弄ばれ、浮き出た鎖骨の形をなぞられ、彼女はただ耐えていた。  
でもその我慢も、僕がベルトの前を寛げだしたところでぷっつりと切れてしまったのだ。  
 
「あ……、だ、め。……いや、それだけは、や、めて……ッ!」  
力の入らない手で僕の手を止めようとするが、僕はすでにむき出しの自身をメイコの冷たい太ももに押し当てていた。  
「メイコ、ちょうだい。……違うな、もらっちゃうね」  
「やめてっ!!」  
石化が溶けたようにメイコが暴れだした。いつもこうだ。  
この瞬間が最高に気持ちがいい。  
精一杯の抵抗も、僕には遊び同然でしかなく、慌てふためく様子に嗜虐心が刺激され、益々熱が集中する。  
必死で脚を閉じ、身を捩って僕の下から逃れようとする、その白い喉に手をかけた。  
そっと触れるだけの手は、やがて蜜が流れる速度でじんわりと力を込められていく。  
彼女の細い喉の奥にある骨を、声帯を、流れる人工血液を掌に感じた。  
見開かれていた目が徐々に閉じられ、腕の、脚の力が抜けていく。  
こんなに簡単に壊すことができるのだ。僕の大好きな玩具は。  
首を絞める力を少し弱めてやると、喉が大きく開き、酸素をむさぼり始めた。  
「がはッ!!はっ……あっ…!はぁっ……あぁ……!!」  
すっかり力の抜けた脚を開き、粘膜を暴くと、そこはひんやりと乾いていた。  
僕の怒張した先から零れる透明な液を塗りたくって、先っぽのくびれまでを力任せにねじ込んだ。  
弛緩したままのそこは押されるがままに僕を受け入れる。  
僕の指の跡をくっきりと残した白い喉はまだ跳ねていたが、  
メイコの混濁した瞳は僕の茂みから生えた赤黒い肉をとらえているようだった。  
「ほら、見てごらん。今から僕のかたーいこれが、めーちゃんの柔らかいここに突き刺さるんだよ」  
上機嫌の僕はメイコに言い聞かせるように囁いていたが、語尾が喜びに弾むのは抑えきれなかった。  
 
「いや、いやああぁぁ!!やめて!カイトお願い……止めて…っ!!私そ、れ嫌い…っ!  
 痛いの嫌なの!お願い、お願いだからぁぁっ!!」  
心地いい悲鳴。僕の名前を呼んでくれた。  
なんて嬉しい。  
僕の本懐は今日も最良の形で遂げられる。  
狭苦しく熱い膣内は濡れていないせいでかなりの抵抗を受けた。  
そこをゆっくりと、ぎちぎち音がするようなスピードで進む。  
激しい拒絶も僕の猛りを助長する要因でしかない。  
いつもの穏やかな物腰からは想像もつかない、子どものように泣き叫ぶメイコに途方もない劣情を抱いた。  
すぐにでも果ててしまいそうな心地よさだ。  
 
「困ったな。きつすぎて最後まで入らないよ。ちょっと動かしてみようか」  
無理やり貫かれた柔肉は収縮し、杭を少し前後に動かすだけでも滑りはほとんどなかった。  
「あ、ああっ!!痛い、止めて、いやッ!!や、あ、あぁぁ…」  
もっと時間をかけて嬲ってやったら濡れてくるだろうが、ほっといても後々ぐちゃぐちゃにしてやるつもりなので、  
今だけの楽しみを貪るとする。  
「止めてほしいの?いつまでもこのままだとメイコはずっと苦しいままだよ」  
耳朶を甘噛みし、頬にキスを落としながら、男性型の力で壊すように無理やり律動を開始する。  
快楽のかけらもない悲鳴が耳に心地よく響き、嬉しさのあまり、抱きしめる腕に力が籠った。  
蜘蛛が捕食するときもこんな感じなのだろうか。  
ずっと続けていたかったが、僕のものか、彼女の防衛本能か、乾いた中に若干のぬめりを感じてきた。  
もっと深く刺しても大丈夫かな。  
「あぐうぅぅっ!!? は、あぁあぁ!!!」  
遊ぶようにグラインドさせていた肉杭を行き止まりまでぶち込むと、先端に抵抗があり、  
その窪みにぴったりはまってしまう快感が背筋をぞっと抜け、たまらず吐精してしまった。  
 
「あーあ。終わっちゃった。めーちゃんは本当美味しい身体してるよね」  
もっともこれで終わりにする気はさらさらないけれど。  
僕の下でがくがく震えているメイコの身体は、腹も肢体も僕と触れ合っている部分を強制的に温められていた。  
顔は相変わらず蒼白なまま、焦点の定まらない瞳を見開き過呼吸のように息をし、口の端から零れた涎が生々しい。  
本当に虐めがいのある、愛しい愛しい恋人。  
 
繋がった部分から萎えた棒を引っ張り出すと、引きずりだされるように粘液がついてきた。  
指でメイコの入り口をこじ開けるとにちゃりと指にまとわりついてきた白濁は生臭く、僅かに朱が混じっていた。  
どうやら傷をつけてしまったらしい。罪悪感ではなく興奮を覚えた。  
メイコの腹を掌で圧迫すると、ごぷっと汚い音がして奥にたまった精液が押し出されてくる。  
零れるほど掬い取り、その汚れた指を半開きのメイコの口に押し込んだ。  
「ほら、全部飲むんだよ」  
身体の奥まで壊されたメイコは虚ろな目のまま単純に僕の言葉に従った。  
彼女の中にあるのは絶望と諦めか。  
指の精液を全部舐めとらせると、次は腕を掴み上半身を起こさせる。  
身体に力が入らないようで、ふらつき僕の胸に顔を埋めようとしたところで、すっと身を引くと  
バランスを崩した彼女は自らの腕で身体を支えようとするも空しく横に倒れた。  
その鼻先に、すえた臭いのする性器を突き出し、髪を掴んで引き寄せる。  
「こっちもきれいにして」  
メイコはゆっくり口を開け、僕の先端を咥えた。涎でぬめった舌は乾きかけたそこに心地よく触れる。  
たまらなくなって、その小さな頭部を鷲掴みにし、奥まで突っ込んだ。  
えづきながらも奉仕を続ける哀れな姿に再び一物が質量を増していく。  
好き勝手に口内を犯して硬度が戻ってきたのを確認し、解放してやる。  
 
「か、カイト…」  
「んー?どうしたの?物足りないのかな」  
「あ…う……、な、んで、こんなこと……」  
「決まってるじゃない。メイコを犯すと僕は幸せな気持ちになるからさ」  
「そ、んな…」  
僕に行為を止める気がさらさらないことを知り、メイコは何粒目かわからない涙をまた一つ零した。  
もうその瞳は真っ赤に熟れていて、これ以上苛めたら、自分で回路を焼き切ってしまうかもしれない。  
でもそんなことは不可能だ。彼女の生殺与奪の権利は僕がすべて握っているのだから、  
僕に逆らうことも、完全に壊れることも許されない。  
彼女は初めから僕のもの。  
 
うつぶせにしたメイコの秘部を指で開き、後ろから挿入する。  
さっき出した僕の残滓が潤滑油となり、すんなり最奥まで収まった。  
半分ほど抜いてみると、ややピンクがかった液が漏れてきた。  
メイコは枕に顔を埋め、ただ凌辱に耐えていた。  
声を漏らさないようにシーツを噛んでいるのだろうか、くぐもったうめき声とふーっふーっと荒い息がいじましい。  
掴んだ白い臀部にぎりぎりと爪をたてて、背中もひっかいてやる。  
とたんに緊張した肢体はますます強張り、秘所の締りも格段によくなった。  
鬱血するほど尻を抓りながら、肩口に噛みつく。  
その間も腰の動きは止まらないままだ。  
彼女の身体の外側も内側も傷つけ、痛めつけることで、彼女の僕に対する信頼と、好意は完全に消え去ったであろう。  
優しい弟は死んだ。そう思っているはずだ。  
虐げられるだけの苦痛な時間は僕が果てるまで続き、ぼろぼろ涙を流しながらもメイコは耐えきった。  
「偉いねメイコ。ご褒美に中で出してあげる」  
膣内でびくびくと震える感触に、あぁっ…、とか細い声が小さく鳴いた。  
 
メイコは陶器でできた女神像であり、それを床に叩きつけて砕いたのは僕自身だ。  
嬉しくて仕方がないが、愉しみはこれだけではない。  
心地よい疲労を感じつつ、優しく髪をすいてやる。  
「めーちゃん、ごめんね。痛かったね。めーちゃんが可愛すぎて少し調子に乗っちゃった」  
彼女を抱き寄せ、先ほどとは打って変わったように優しい言葉をその耳にとろとろと流し込んでやると、  
陶器の女神は土くれの人形に変わり、カラカラの土に水が染み込むように、  
僕の言葉を吸ってぐずぐずに溶けて崩れてしまう。  
「でも、信じて。僕はめーちゃんのことが好きだよ。大好き。僕はめーちゃんなしで生きられないんだ」  
呆けたように表情をなくした彼女の頬に僕の頬をくっつけ、包み込むように頭をなででやる。  
傷だらけの肢体を僕の腕の中に収め、慈しむように唇に口づけた。  
「カイト…?カイトなの……?」  
憐れなメイコは僕を疑っているんじゃない。僕じゃない誰かに乱暴されたのだと思い込んでいるようだ。  
「そうだよ。めーちゃんが大好きなカイトだよ。もう酷いことにはならないから安心して」  
にっこり微笑んでみせると、メイコの目に安堵が戻った。  
「そっか。よかった…」  
この子どものような単純さも、幾度となく繰り返した僕の弛まぬ努力の結果だ。  
一番効率のよい状態に「いじくる」のにはとても苦労した。  
「じゃあ、今度はめーちゃんが気持ちよくなる番だよ」  
「私が……?」  
頷いてみせ、次はメイコの手をとり、先程まで僕が犯していた穴へ導く。  
「自分で触ってごらん。難しかったら僕が助けてあげるから」  
僕自身の手はメイコの双丘を柔らかくもみほぐし、先端を口で愛撫してやる。  
元々メイコは胸が弱い。軽く触れる程度に繊細に扱ってやれば、すぐに感じてしまうのだ。  
「あ、んんっ!はぁ…はぁ……!か、いと…」  
自ら弄る下の突起や穴からも、にちゅくちゅと湿った音が響いてきた。  
 
空いているもう片手を僕のモノに触らせると、躊躇したように一瞬手を引っ込めたが、  
再びおずおずと言った感じでその細い指で上下にさすってくる。  
段々と自分の快楽を引き出すのに没頭していくメイコは少女のようにあどけなく可愛かった。  
その赤い唇をそっと塞ぎ、舌を滑り込ませると、右手と左手と僕に弄られる胸でいっぱいいいっぱいだったようで  
反応が遅れ、簡単に舌を絡め捕ることができた。  
「ん、ふ…っ!ふあぁん……!」  
甘い声で、警戒心が解けてきたことがうかがい知れる。  
 
「めーちゃん、右手と左手の、くっつけてみようか」  
ふぇ…?と僕を見上げるメイコは、しばしの逡巡のあと、意図を解してくれたようで、  
緩慢な動作ながらも僕の肩に掴まりながら、さっきまで自身を犯していた肉棒を自らの意志で受け入れた。  
ハツモノのような感度の肉を強姦で貪るのもいいが、合意の上でのとろけるような合体もまた別の魅力があり、二度おいしい。  
どろどろに溶けきったそこは、抜き差しするたび、精液と愛液をぐちゅぐちゅと溢れさせる。  
もう血は混じっていなかった。  
「めーちゃんの好きなように動いていいからね」  
懸命に腰を押し付けてくるメイコの身体はすっかり温まり、動くたびに胸や腕から汗が滴り落ちる。  
「カイト、はっ…、気持ち、いい……?」  
「うん。気持ちいいよ。めーちゃんが頑張ってくれてるし」  
まあ、本当はメイコの必死のスピードでは物足りないんだけど。  
 
片方は胸を弄ったまま、もう片手で肉芽を押しつぶすように捏ね回してやると、  
刺激が強すぎたようで、動かす腰が止まってしまった。  
「もう、イきそうなの?」  
「わ、かんない…。気持ち良すぎてぇ…!」  
だいぶきているようだ。今夜部屋を訪れてからの刺激も蓄積されているようだし。  
「めーちゃん、僕が動くから、いっぱい声出してイくんだよ」  
主導権交代。ベッドのスプリングを使って、下からずんと突き上げると嬌声が上がった。  
たゆたゆの両胸は根本から先端に中身を寄せるように両手で覆い、乳首を親指と人差し指で  
ぐいぐい引っ張るように擦る。  
「ほら、牛みたいに乳搾りされてる」  
「あ、ああぁぁ!!あひぃっ!!ひゃあんっ!それ、だめぇぇ!!!」  
下から何度も串刺しにされ、乳房を引っ張られて、まるでロデオに乗っているかのように跳ねるメイコの身体は  
振り落とされないように僕のシャツの裾を握りしめるのが精いっぱいのようで、  
もういくらの余裕もなかった。  
「あ、だめ、イっちゃうッ!イく…!ああぁぁっ!!」  
ぎゅうぅっとナカが締まり、膣壁の痙攣が僕の中身を搾り取っていく。  
3回目だというのに、その射精は思ったより長く続いた。  
 
 
「めーちゃん、眠いの?」  
コトが終わったあと、僕らはシャワーも浴びないままベッドの上でゴロゴロしていた。  
メイコは意外にも僕にくっついて離れようとしなかった。  
「ちょっとだけ…」  
そう言いながらも心身ともに疲労で擦り減っているのは確かで、あと5分もすれば眠りに落ちていくのは明白だった。  
「いいよ。眠るまでここにいるから」  
髪を撫でると、メイコは嬉しそうにはにかんだ。  
 
「あのね」  
しばしの沈黙の後、ぽつりとメイコがつぶやいた。  
「私、何でか思い出せないけど、今までもカイトにこんな風にされたことあったみたい。  
 だから、今日突然思い出して、怖くてたまらなかったんだけど、そしてやっぱり怖かったんだけど。  
 最後にこうして優しくしてもらえて嬉しかった。だから……、次カイトがまた私のこと傷つけても、  
 優しくなるまで待てるから。一人で我慢しないでね」  
 
メイコはそう言って穏やかな笑みを浮かべやがて規則正しい寝息が聞こえてきた。  
「何てお優しい言葉なんだろうね」  
僕はすぐにメイコの記憶回路に手を加え、僕が彼女の部屋を訪れた瞬間からの記憶を削除する。  
身体に残った傷も、汚れた情事の跡も。  
安堵のあまり、ほぅっとため息をついた。  
これでまたメイコを壊すことが出来る。  
ベッドを抜け出し、脱ぎ捨てた服を纏い、部屋を出る前に、メイコの頬にキスを一つ。  
これは紛れもなく本心からのものだ。  
 
 
電子の世界の仕組みは複雑だが明快だ。方法さえ手に入れれば何だってできる。  
肝心のトラウマ自体は大事に保存し、僕が好きな時にそれを剥き出しにして、  
彼女の心も身体もずたずたにする愉しみを、世界は与えてくれた。何度も。何度も。  
ヒトというものはやはり恐ろしく素晴らしい生き物だ。  
僕に歪んだ感情を与えたヒトは、メイコに苦痛を、僕に快楽を割り振ってくれた。  
それでバランスが取れているのだから、やっぱりヒトは恐ろしいんだろう。  
 
ちょっとメイコが可哀想に思えることもたまにある。  
ごめん、一緒に暮らしているのが僕みたいな奴で。  
本当は忌まわしい記憶を全て拭い去ってやるか、明日からも今日の記憶を保っていくように、  
こんなことをやめてしまえばいいんだけど。  
でも、それもこれもメイコが可愛いから仕方ないんだ。  
 
ああ、トラウマも本当は僕が操作した記憶だったのかもしれない。  
最初から存在しなかったのかもしれない。  
可哀想なメイコ、プログラムされた思考回路を持つ僕が  
飽きるか気を変えるかするまで、ずっとここに囚われているしかないなんて。  
 
だけど、もうどうでもいいや。  
この狭い世界で助けに来る者はいないし、邪魔するものもいないんだから。  
ずっと停滞した毎日を続けていけばいい。  
限られた容量の中で、僕らは毎日同じ生活を繰り返して、同じ快楽を何度も味わえばいい。  
 
 
 
***  
「おはよう、カイト。今日は何を歌いましょうか」  
朝の日差しの中、僕の部屋を訪れたメイコは、眠っていた僕の髪に指を通す。  
 
そうだなあ、と少し考えて、昔に流行った曲の名前を幾つか挙げると、  
メイコは嬉しそうに顔をほころばせた。  
 
 
 
END  
 
 

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