「あら、いやん、やめてぇ」
そんな言葉だったら可愛いだろう。しかし、彼女は。
「嫌嫌嫌!!助けて!!誰か、誰かー!」
と本気で叫ぶのだ。傍から見れば強姦としか思えない声を上げて、しかも本気で逃げようとする。
それをそのまま逃がしてしまうと、お互いに物凄い後悔と罪悪感が生まれる。だから。
「いい加減に諦めよ」
全力で殴りかかってくる拳を押さえつけてでも、組み敷かなければならない。
本当はもっと優しく愛したいのに。そう思うがくぽと。
本当は素直に身をゆだねたいのに。そう思うルカ。
互いの心が痛いほど通じているため、二人の夜は刃傷沙汰になってしまう。
「あうっ………!」
びくんとルカがのけぞって、白い喉が晒される。その喉にはがくぽの付けた荒い跡がいくつも残っている。
がくぽの手でもってしても収まりきらない大きな胸を下から持ち上げるようにすくい、手のひらを汗ばんだ肌に重ねる。
「嫌、離して!変態っ、気持ち悪いっ」
ぴったりと手のひらに吸い付く胸は、まるで付きたての餅のように柔らかく形を変える。
柔らかな双丘の頂上に、髪の毛と同じ桜色の蕾。
「いやあああっ!やだ、やめて!」
「何が変態か。では変態に撫でられて悦んでおるそなたは痴女か」
「やだあああっ!やだ、やだっ!」
蕩けるような柔らかい胸の先端は、弾ける直前の果実のように固く尖っていた。爪の先でちょっと撫でるだけで乳首がわなわなと震える。
「痴女だなんて、酷い、酷い………!大嫌い!どいて、もう離して!………あっ、あ」
親指の腹で軽く撫でる。ルカの背中がびくんと反り返った。それと同時にがくぽの腰に膝蹴りが入る。がくぽは思わず呻いた。
「………。この程度で逃げられると思うな」
「そ、そんなつもりじゃ、ああっ!いやあっ!」
乳首のてっぺんにある僅かなくぼみに爪を立てる。ルカの体が大きくうねった。腰がガクガクと震え始める。
「離してよ!この変態!ばか!こんな、こんなことして楽しいだなんて、最低!!」
振り上げる拳を避けながら叫ぶルカの顎を掴まえる。無理矢理に舌をねじ込むと、一瞬体が止まった。
その隙に片手をルカの腰に忍ばせる。びくん、と揺れてルカが唇を離そうと顔を大きく振った。
「んんっ、ん―――!」
じたばたと動く体をまさぐりながら、がくぽの指先が股間へ伸びる。ルカの拒絶がいっそう激しくなった。
ひだを確認して指で挟み込む。中指を折り曲げて、閉じた隙間のなかに強引に指の先端をねじ入れる。
「ああっ、あ、あ………」
もぎ取るように唇を離してルカが目を固く閉じた。幾重にも涙の跡が顔に残り、真っ赤な顔はぐしゃぐしゃだった。
それでも美しいと思う。その頬に舌を這わせる。
「お願いだから、もう、やめて………」
がくぽの腕にルカの爪先が食い込む。がくぽも満身創痍だった。
逃げる腰を押さえつけてゆっくりと指を侵入させていく。ひだの奥はかすかに濡れていて、がくぽはそれを広げるようにひだの内側へ擦りつける。
「痛っ、痛い!やだ、気持ち悪い!こんな、こんな真似をしてっ………!」
涙をたたえた目で睨みつけるさまは、まるっきり強姦される女の目だった。
「嫌い、大嫌い!あなたなんて、死ねばいいんだわ!」
ルカが叫ぶたびに、指先がきゅうっと締め付けられる。締め付けて、奥へ誘い込み、深い場所までいざなう。
「いい音がしてきたな、ルカ」
「ひぐっ」
丹念な愛撫でルカの腰から力が抜ける。指先がぬめり始め、動きを容易にさせた。
「覚えておるぞ。ルカは濡れ始めると背中が一面の桜色になるからな」
「いやあっ!変態!死ね!」
つつ、と背中に手を伸ばす。白い肌は桜色に染まり、胸の間に汗が浮かぶ。
腰の骨から背中へ、脇へと撫で上げるとルカは分かりやすく全身を跳ね上がらせた。
「はううっ………だ、め………」
「胸も良いが、そなたは背中が好きなのじゃろう?暴れなければ舐めあげて悦ばせてやると言うのに」
「あ、あ………そんな、そんな………」
びくびくと足の先まで痙攣している。背中を指先が行ったり来たりしているだけでルカの体が悦んだ。
「うんっ!」
ぽん、と水音を立てて指が抜かれる。名残惜しそうにルカの内壁がそれを追って小さな水を吹き出した。
「たすけて………」
掠れた声で体を動かそうとするより早く、がくぽがルカの体をうつぶせに押さえつける。
一面の桜色に染まった背中。髪の間からかすかに見えるうなじまで色づいて、腰は蕩けて動けない。
「ああああっ!」
後ろから肩に口付けて歯を立てる。そのまま肩甲骨へ、背筋へと舌を落とす。ルカの蕩けた腰からとめどなく泉が溢れた。
両手で体を抱え込み、手で乳首をいじめながら片方の手は脇腹をしつこいくらいに撫でる。
「あ、あ、だめ、ひうっ………」
ルカの弱点を責め尽くして、自身をあてがう。
閉ざされていた秘所はぱっくりと口を開け、先端をにちゃりとくっつけただけで誘いこむような動きをみせた。
「欲しておるのが丸見えじゃぞ、ルカ」
「いやっ!もういや!おかしくなる!!」
がくぽは大きく細く息をついて、ゆっくりと己を沈め始める。ルカの口から短く早い呼吸が漏れる。
「腰を使わずとも、勝手にそなたが案内してくれておる。さすがのルカも根負けしたか」
「うぐう………う、く」
ひと思いに突き立てたい気持ちをどうにか抑え、じっくりとひだを味わって侵入する。
がくぽ自身を包み込み、マッサージして奥へ優しくいざなう。腰が抜けるほどの快楽ががくぽを襲う。
「はあ、はっ………いや、あ………」
熱っぽい声が漏れるたびに全体がきゅうっと締め付ける。締め上げ、揉み込み、濡れ切った水がまとわりついて滴る。
「くう………生娘だった体が、だいぶ馴染んだな………」
「あ、ああっ、ん―――!く、苦しい、あ」
八分目まで挿入して、がくぽがルカの腰を持ち上げた。
「さて………またルカの弱点を探そうか」
「はあっ!?あ、何を、やだっ!」
我に返ったように声がひっくり返った。
ごり、と自身をルカのなかで蠢かせる。
「痛いっ!や、やめ」
「ここではないか………では今度はこちらだ」
「あうっ、や、だめ、このっ………!」
ルカのなかで暴力的な肉が探り始める。壁に押し付けられ、全体を歪められ、最奥を突き始める。
「やだぁっ!!変態、離して、もうやめて!!」
叫んで暴れているルカにお構いなしに内部を探索し、やがて
「!」
びくんっ、とルカの体が跳ねた。
乳首が一気に固まって立ち上がり、一瞬気を失ったかのような目。全身の筋肉が硬直して、ルカの体から抵抗の色が消えた。
「ここだな」
がくぽが低い声で囁いた。
「な、何………」
言い終わるより先に、ルカの目の前が真っ白になる。
自然と腰が浮き上がって、体の抑えが効かなくなる。
「え………あ………」
不安そうな声のあと。
「ああああっ!!だめだめえええっ!」
全身から火花を散らすように叫んだ。
「だめ、いや、何、何これっ………!!あ、あああっ!!」
ただ抜き差しされるだけでも壊れるくらいの快楽があったのに。
自分では分かりようのない自分の弱点。生まれて初めての経験にルカの頭が情報を処理できない。
「が、がくぽさっ………!あ、いやああっ!何、どうして、何これっ!!」
最奥への道の手前。わずかに他と違うひだの形。そこを執拗に責められる。
浅く、時に形が歪むほど強く。ぐりっ、と硬くえぐられては擦り上げる。
「はああああっあん、あ、あああっ!」
快楽を求めて腰は浮き上がり、抜き差しのたびにごぷりと音を立てて水が流れる。
今までよりも強く締め上げて吸い込むひだに、がくぽの顔も歪んだ。
「ふ、う………手加減を、せぬか」
腰から頭まで駆け上がる快感。がくぽはルカの体をいっそう強く抱くと、腰を使い始めた。
「あ、あんっ!あ、あ………だめ、だめぇ………」
大きな胸が揺れ、口がぱくぱくと動く。白く長い手足がシーツの上を舞う。
「がくぽさんっ………わ、私、ずっと………ずっとイってるっ………!恥ずかしいっ、もう、やだっ!」
先程からがくぽを激しく誘うのはそのせいか。律動のなかでルカの声を聞く。
「ルカ………!まだ、先が………あるぞ!」
細い腰ごと打ち付けるように突き立てる。ルカの声はもう何を言っているのか分からない。
「あ、ああああっ、だめ、これ以上は、だめ、がくっ、がくぽさ………!や、あ………ひうううっ!」
ぎゅうっと今までよりも強くがくぽを締め上げ、一瞬ののち。どくり、と締め上げが解放されてとめどない泉に流される。
「―――!!―――」
ぷっつりと糸が切れたようなルカの体に、がくぽもまた己を注いだ。
「………………」
がくぽの腕に無数についた引っかき傷。ルカはそれを指でなぞってうつむいた。
「………すみません」
「お互い様じゃ」
ルカの体にもがくぽのつけた跡がある。
最初は周囲も驚いたが、今では「そういうものか」と諦観されている。
刃傷沙汰でも、それでも自分たちの形はそういう形だ。
「………しかし、あれは応える」
がくぽがため息をついて遠い目をした。
「な、何ですか」
「言葉の綾であることは百も承知じゃが………」
眉を下げてちょっと情けない顔になった。
「寝所で「死ね」は辛い」
「………!!す、すみません」
ルカの顔が真っ赤に色づいて、泣きそうな顔になる。
「いや、まあ、拙者が慣れれば良いのじゃ」
その顔を見てがくぽが慌てて言葉を繋いだ。
上目遣いで口を尖らせているルカの顔を両手ではさんで笑う。
「………。そうです。あなたも慣れればいいのです」
つんと可愛い口がすねた声を出す。
「私に言いましたよね?慣れれば良くなると。だったら慣れてください」
「むう。反論できぬ」
両手のなかにある可愛い顔を見てこぼす。知らないうちに自分も同じ顔になっていたらしい。ルカが笑った。
「すねないでください」
「口付けを所望する」
「死んでくださいませんか?」
「慣れぬ!その言葉は慣れぬぞ」
駄々をこねてしょんぼりするがくぽの口に、ルカの柔らかい唇が触れた。