「――おはよう、ルカ」  
 
 きらめく陽光が差し込む部屋で、青年はさわやかに挨拶を投げかける。  
 揃いのティーカップに、ポットから紅茶を注いでいた巡音ルカは、ふっと顔を上げると、女神のようにたおやかな笑顔を  
浮かべた。  
 
 「――おはようございます、あなた」  
 
 
 「――今日は、ずいぶん早くからお越しくださったんですのね。あいにく、お茶の準備がまだ整っていないのですが……」  
 「構わないさ。ゆっくり待たせてもらうよ」  
 青年はソファーに腰かけると、ゆっくりと背もたれに背中を預ける。ルカが部屋の窓を開けると、差し込んでいた朝日は  
わずかに輝きを増し、ふわり、と吹き抜ける風が、レースのカーテンを涼しげにはためかせた。  
 「もうすっかり、秋の空気になって参りましたわね……。木々の彩りが鮮やかで、素敵な季節ですわ」  
 しばしその場に佇んだままで、うっとりと外の風景を眺めるルカ。  
 そんな彼女のそばに、いつの間にか青年が並んで立っており、そっと、ルカの肩に手を乗せた。ルカの桃色の髪が、さらり、と  
その腕に触れる。  
 「そうだね。――でも君は確か、夏にも同じことを言っていなかったかい? それに、春にも、冬にも」  
 そして、ルカをじっと見つめる。  
 「ええ……だって」  
 その視線に気付いたルカも、青年を見つめ返した。その瞳の中には、情熱的な輝きがまたたいている。  
 
 「いつでも、あなたが隣にいてくれるから――」  
 
 そっと、二人は口づけを交わした。互いを労り、慈しみあうような、優しい接吻を。  
 二人にとっては永遠と思える一瞬ののち、唇を引いたルカは、目の前の、最愛の相手に向けて、にこり、と微笑んだ。  
 
 
 「――そろそろ、お茶がいい具合に蒸らされた頃ですわ。冷めない内に、いただきましょう?」  
 
 「今月も、お仕事はお忙しくていらしたの?」  
 
 差し向かいでテーブルを囲み、青年とルカが朝の一杯を優雅に楽しむ。  
 「ああ、なかなかね。そろそろ大詰めってところなんだが……」  
 かちゃり、とカップをソーサーに戻した青年が、大儀そうにテーブルに肘を突く。  
 「最後の一手が、上手くいくかどうか」  
 「そう……」  
 真剣な表情の青年に、ルカがやや、心配そうな顔つきになる。  
 「相変わらず、難しいお仕事をなさってるのね」  
 「でも、やりがいはあるよ。これが成功すれば、素晴らしい事になるっていう確信だけは、抱いているからね。……不満が  
  あるとすれば、ただ一つ」  
  テーブルに落としていた視線をすい、と差し上げる青年。それはルカの視線と重なり合って、二人の心をつなぐ道となる。  
 「こうして君に会えるのが、たったの月に一度であること。それが唯一にして、最大の不満だ」  
 苦々しげに、青年がそうつぶやく、  
 「あなた……」  
 青年のその様子に、ルカは、少しの困惑を覚える。  
 
 ――自分は、彼のために、何をしてあげられるだろう。  
 
 そう考えたルカは、ゆっくりと手を差し延べ、青年の手に覆いかぶせる。  
 「そう仰っていただけるのは、わたくしにとって、これ以上ない喜びですわ。けれど……」  
 そして、ほんの少しだけ力を込め、励ますようにその手を握った。  
 「どうかあなたは、ご自分のなさるべき事だけを見つめていてください」  
 はっきりとした口調で、ルカは青年にそう告げる。  
 「ルカ……」  
 「わたくしの事でしたら、お気になさらないでください。あなたが傍にいない時、わたくしは常に、あなたへの想いを  
  募らせております。そしてまた、再びお目にかかれた時には、その想いの全てを、あなたに捧げることを誓います」  
 ルカの手が、さらにぎゅっと力強く、青年へと訴えかけた。  
 
 
 「信じてください――会えない時間が、育てる愛情を」  
 
 「……ありがとう、ルカ」  
 
 青年がルカの手を握り返し、その表情に笑顔が戻る。  
 「そうだね。君の言うとおりだ。僕は僕の使命を果たすまで、立ち止まるわけにはいかない。それを思い出させてくれて、  
  ありがとう」  
 改まった様子で、青年がルカに頭を下げ、感謝の意を示した。  
 「そんな、わたくしはただ……」  
 「だからこそ」  
 思わず恐縮してしまうルカに、なおも青年が言葉を続ける。  
 「だからこそ、せめて君と二人きりでいるこの時だけは、僕も、他の事を全て忘れたいんだ。全て忘れて、君と語り合いたい。  
  君を――愛したい」  
 照れや恥じらいのない、直接的な感情をぶつけられ、ルカが幾分、その頬を赤く染めてどぎまぎする。  
 「ま、まあ……」  
 「だから――今日も」  
 かたん、と椅子を引き、青年は立ち上がると、ルカを促すように、改めてその手を差し出した。  
 
 「歌ってくれるかい――ルカ」  
 
 それに応え、しなやかなその手を青年に預けるルカ。  
 
 「……わたくし如き者でよろしければ、喜んでお受けいたしますわ」  
 
 青年と歌姫のその姿を、舞い込む風が優しく包んだ。  
 
 
 ――ルカは歌う。大空を舞う小鳥の夢を。草原に咲く花の美しさを。  
 ただ、彼の笑顔のために。  
 
 二人で過ごす時間は矢のように飛び去り、窓から差し込む陽もいつしか、鮮やかな橙色を帯び始めていた。  
   
 「よかったよ……ルカ。君は最高だ」  
 ソファに体を沈み込ませ、うっとりとまどろんでいた青年が、絞り出すようにゆっくりと、しかし興奮に上ずった声で言う。  
 「……ありがとうございます」  
 その正面には、青年一人のために、全身全霊で歌い続けたルカの姿があった、  
 息を荒げて頬を上気させ、体中を大きく弾ませながら呼吸をするその姿はしかし、なおも気品と高潔さを失わずにいた。  
 「……願わくば、この歌が少しでも、あなたの心を癒せましたことを……」  
 胸にそっと手を当て、ルカが深々と頭を下げる。  
 その所作の一つ一つを見逃すまいとするように、青年はルカを注視する。そして、ルカが顔を上げると同時にすっと立ち上がり、  
何も言わずにルカを抱きしめた。  
 「あ……」  
 力強いその抱擁に、ルカが目を細め、身を預ける。全身から伝わる彼の体温が、火照ったルカの体に沁み渡り、とくん、とくんと  
いう静かな鼓動だけが響いていた。  
 「君は最高だ」  
 青年が、もう一度繰り返す。  
 ルカは言葉を返さず、自らも彼の背中へと手を回すことで、それに応えた。  
 
 「……さあ」  
 やがて青年は、ルカの背中から手を解き、代わりに、ルカの頬へひたり、と添える。  
 
 「今度は、僕の番だ」  
   
 「……っ」  
 その言葉に、ルカがほんの少しだけ息を飲む。  
 目の前に迫る彼の顔は、真剣そのものといった表情でルカに向けられていた。  
 「ルカは僕への想いを、歌で表してくれた。だったら僕も、僕のやり方で、君への愛を伝えさせてもらいたい」  
 青年の、力強い一言一句が、ルカの内側に積もってゆく。  
 それが心の喫水線を超えた時、ルカは瞳を潤ませて、静かにうなずいた。  
 
 「……はい、わたくしも、あなたの愛が知りたい。……あなたに、愛して頂きたいのです……」  
 
 ふっと、青年が優しく笑いかけ、ルカの耳元に唇を寄せて、ささやいた。  
 
 「――準備をしておいで、ルカ」  
 
 (……彼、少しは元気を取り戻してくれたかしら)  
 
 シャワー台の下に立ち、その肢体をすみずみまで清潔に洗いながら、ルカは思う。シャワーホースから勢いよく放出される  
温水が、浴室のタイルに跳ね、激しい水しぶきの音を立てていた。  
 月に一度の交流の日、青年は、いつもどことなく疲労した様子で現れる。  
 それが彼の勤める仕事による物だという事は、ルカも知っていたが、その内容までは青年から聞いていない。  
 だがルカは、知らなくとも構わないと思っていた。彼が話さないのであれば、それはきっと、自分達二人にとって、共有する  
必要の無い事柄なのだ。  
 
 (……そう、わたくしはただ、あの人を支えてあげたいだけ……)  
 体中の石鹸を流し落とすと、ルカはシャワーを止めた。水滴が、ぽたり、ぽたりとルカの長い髪から零れ落ちる。  
 (わたくしの歌は、全て彼に聞かせるためのもの。それに、この体も……)  
 ルカは自分の体を見下ろし、その、肌理の細かい白い肌を、そっと撫でた。  
 (……わたくしの体を捧げる事で、彼が、精神的に充足するというのなら――)  
 それで十分だった。  
 傍らのバスタオルを手に取ると、ルカはシャワー室を後にした。  
 
 「……お待たせ致しました」  
 
 タオルを体に巻きつけ、ルカが部屋へと戻ってくると、青年は、持ち込んできた自分のバッグのファスナーを閉じ、棚へと  
戻しているところだった。  
 「それじゃあ、僕も汗を流させてもらうよ」  
 「はい、どうぞお使いになってくださいませ」  
 すっと手を出し、シャワー室の方へ青年を促すルカ。それに従い、青年は部屋を横切る。  
 だが、部屋の中ほどで、その動きがふと止まった。  
 「……そのままでいたら、風邪を引いてしまいそうだな。僕のシャツを着ているといい」  
 そう言って、青年は上着を脱ぐとルカの正面に立ち、腕を背後に回して、ふわり、とルカの肩にそれをかけた。  
 「これで、少しはいいだろう」  
 「ありがとうございます」  
 ルカが微笑み、ちらと肩に視線をやる。  
 着せられた上着からは、ほのかに彼の体と同じ香りが漂っており、それは決して、不快感を伴うものではなかった。  
 まるで、彼の腕に包まれているような錯覚を覚え、ルカが静かに目を閉じる。  
 
 「……今日は、僕たちにとって、とても大切な日だ」  
 
 青年はそう言い、再び、ルカを抱き寄せた。  
 「大切な……?」  
 青年の胸に頭を預けたルカが、彼を見上げる。その後頭部に、彼の手が触れた。  
 「そうさ。僕たちの今後を大きく変える、忘れられない日になるはずだ」  
 静かな口調で続けながら、青年がルカの後頭部をまさぐる。五本の指と、幾束ものルカの髪の毛が複雑に絡まりあう。  
 「だから……」  
 動き続けるその指が、髪の毛の奥に紛れ込んでいる、ルカの動作停止スイッチにかけられた。  
 
 
 「ひとまず、今はおやすみ、ルカ」  
 
 
 ぱちん、という小さな音と同時に、ルカの視界は急速に暗闇に覆われていき、その意識が途切れた。  
 
 
 「……うう、ん………」  
 
 次に目を覚ました時、ルカの目の前にあったのは、やはり青年の笑顔だった。  
 「やあ、気がついたかい、ルカ」  
 ベッドの上で、仰向けに寝そべるルカを見下ろしながら、彼が言う。  
 「……あ……れ? わたくし、一体、どうして――」  
 記憶のはっきりしないルカの言葉が、一瞬混乱する。  
 そんなルカをなだめるように、青年が、ルカの肩にそっと手を置いた。  
 「大丈夫だよ。ルカは何も、気にする必要はないんだ。ただ、ありのままの君でいてくれれば、それでいい」  
 そして、徐々に体を沈め、ルカの裸体に自らの体を寄り添わせてくる。  
 「……で、でも……」  
 未だ、不安の拭えないルカは思わず周囲を見回す。  
 そこは間違いなく、先ほどまで二人の時間を過ごしていたルカの部屋であったが、窓から差し込んでいた日光はすでに去り、  
外には夜の闇が垂れ込め始めていた。  
 いったい自分は、どれほど眠ってしまっていたのか――その事を、ルカが青年に尋ねようとした、その瞬間、  
 
 「っ!」  
 
 その唇が、青年によって塞がれた。  
 
 「ん……ふむぅっ……」  
 力強く、まるで噛み付くかのような口付けだった。  
 青年がルカの唇に激しく吸い付き、差し込んだ舌をルカの口内で上下左右に跳ね回らせ、ぴちゃぴちゃという音を立てながら、  
自らの唾液を染み込ませる。さらに、ぬるりとルカの舌を絡めとると、その表面で自分の舌を、二度、三度と往復させていった。  
 「んぷっ……あな、たっ……! 激し、すぎっ……!」  
 青年の突然の行為に、戸惑うルカ。だがそれを意にも介さず、青年は口淫を続ける。  
 やがて互いが、はぁっ、という熱い吐息を漏らしながら唇を引き剥がした時には、その周囲が、唾液でてらてらと輝いていた。  
 
 「……愛しているよ、ルカ」  
 
 だしぬけに、青年がルカに向かってささやく。  
 「君を、愛している。君は、僕にとっての全てなんだ」  
 真上から見下ろす青年の瞳には、一点の曇りも無く、そこに映りこんだルカ自身が、はっきりと見えそうなほどに澄んでいた。  
 「はぁっ、はぁ……あな、た……」  
 息を整えながら、とろん、と緩んだ顔でルカが青年を見上げる。  
 
 「君は、どうだい?」  
 
 青年のその問いかけに、ルカは、ありのままの気持ちを言葉として紡ぎ、口から放った。  
 
 
 「わたくしも……あなたを、愛しています。あなたは、わたくしの全て、です――」  
 
 (今日の彼……何か、いつもと――違う)  
 
 ベッドの上で、青年と肌を重ねあわせるルカの胸に、そんな感情が去来する。ほんのささいな違和感が。  
 とは言っても、彼の行為そのものは、普段と変わりない。先ほどの口付けこそ、驚くほどに激しいものだったが、それ以降の  
愛撫に関して言えば、普段の青年らしい、心にじわり、と浸透してくるかのような、優しさを伴ったものだ。  
 そう、違和感の原因は、彼の『行為』ではなく――  
 
 「――どうかな、ルカ? 気持ちいいかい?」  
 
 『言葉』にあった。  
 
 「……ええ、とても。まるで、あなたに触れられる度に、わたくしの体が燃え上がっているよう……」  
 
 そう答え、ルカは、青年の体にぎゅっと抱きつく。だが、やはりその心の中からは、違和感が拭えないままだ。  
 普段、ルカとの夜を過ごしている間、青年は、ほとんど口を開かなかった。言葉などなくとも、彼の目が、手がそれ以上に雄弁に、  
ルカへの愛を語っている事を、信じて疑わない様子で。  
 そしてそれを受け入れるルカも彼に倣い、なるべく声を押し殺して、表情や振る舞いで感情を表すよう、努めてきた。  
 そんな、言葉がないからこそ、より素朴で純粋に伝わる感情を、ルカはとても愛しく大事に思っていたのだ。  
 けれど、今夜の彼は。  
 
 「――今夜はもっと、全力で君を愛し抜かせてもらう――覚悟はいいかい、ルカ?」  
 「はい……どうかわたくしを、あなたの手で高みへと導いてくださいませ……」  
 
 そんな風に、しばしばルカへ『問い』を与えかけてくる。  
 その事だけが、ルカの心に奇妙なわだかまりとなっていた。  
 
 「口で、してくれるかい――ルカ」  
 
 やがて、青年がルカにそう求めてくる。  
 それも普段通りであれば口には出さず、自然な表情や身振りでルカに伝えられていた事だ。  
 
 「……承知いたしましたわ」  
 
 そう答え、ルカが青年の下半身へと顔を寄せる。そこにそそり立つ肉棒に向けて、ちゅっ、と口付けをした。  
 「ん……はぁ、ふぅん……」  
 唾液を絡めた舌を突き出し、ルカはその全体を上から下へと舐め回す。ごつごつとした感触が、粘液にまみれてぬるぬると  
滑らかになって来た頃を見計らい、ルカは大きく口を開け、その先端をくぷぅっ、と咥えた。  
 「ふ、むっ……」  
 じゅぽっ、じゅぽっという音を立て、ルカが顔を前後に振る。それに合わせて口内の陰茎は頬肉にこすり付けられ、その  
熱い柔肉によって、休むことなく刺激され続けた。  
 
 「ああ……とてもいいよ、ルカ」  
 座った姿勢の青年が、呻き声にも似た吐息をもらし、股間に埋められているルカの頭をそっと撫でる。  
 そして、またしてもルカに問いかけてきた。  
 
 「ルカは、どんな感じだい?」  
 
 「んぷぅ……ん、はぁっ」  
 どことなく、要領を得ないその聞き方に内心戸惑いながらも、ルカはちゅぷぅ、と、粘液の糸を引きながらペニスから口を離し、  
短く呼吸を整え、答える。  
 「ふぅ……っ、わたくしも、若干身体が火照ってまいりました……。まるで、口内で情熱的な交合が行われているかのような  
  錯覚を覚えております……わたくしの咽喉と、あなたの――」  
 その刹那。  
 ルカは突然、自身の口が、他人のものに置き換わったような感覚に捉われた。  
 
 
 「――オチンポとで」  
 
 青年が、ふっと小さく笑う。  
 
 「え……!?」  
 
 一瞬の後、自分が発した言葉に気付いたルカが、信じられないといった表情で、激しくうろたえる。決してそんな言い方をする  
つもりではなかったはずなのに。  
 「ありがとう、ルカ。もういいよ。今度は僕の番だね」  
 そんなルカに構わず、青年はルカに身を起こすよう促す。座ったままの姿勢で脚を大きく開かせると、その奥の秘裂に、そっと  
指を這わせてきた。  
 「ん……」  
 先ほどの混乱が解けていないルカではあったが、身体が火照りを覚えていたのは紛れもない本音であり、青年が愛撫を始めると  
すぐに、甘い声を上げ始めた。  
 ぬっ、ぬっと青年の指が、ルカの膣内へ侵入し、また出ていく。その動きを繰り返すうちに、膣肉は次第にほぐされていき、  
じゅわり、と湿り気を帯びてきた。  
 「感じてるんだね……ルカ」  
 ぼそり、と青年が小さくささやく。  
 「あっ、んんっ……はい、体の芯を、直接弄ばれているような感覚ですわ……あなたの指が、わたくしの――」  
 そう答えるルカの口元に、またしても奇妙な違和感が走る。  
 
 「オ、オマンコと、触れ合う、度に・・・」  
 
 再び、意図せず飛び出したその言葉に、ルカは大きく目を見開き、ぶるぶると震え出した。  
 
 「どこが気持ちいいんだい?言ってごらん」  
 
 (……!)  
 青年の口から飛び出したその言葉に、ルカは自分の耳を疑った。まさか、彼がそのような悪戯じみた事を言うとは。  
 ――しかし。  
 
 「オマンコの、一番奥です……」  
 
 続けて自分が発していた言葉には、耳を疑うどころの話ではなかった。  
 (わ、わたくし、なぜこんな事を言って……!)  
 自分の意思を無視して放たれるその声に、ルカはただならぬ恐怖を感じる。  
 何かがおかしい。何かが――狂っている。  
 そんな煩悶をよそに、ルカの口は勝手に猥雑な言葉を紡ぎ続ける。  
 「一番奥の、少し突き出した部分……そこを弄られると、オマンコ全体に、熱くて気持ちいいのが広がってきて、すぐに  
  イっちゃいそうになってしまうんです……」  
 「そう、なら……」  
 ルカの告白に、青年は表情一つ変えないまま、その部分を探り当てると、しゅっ、しゅっと激しく擦り上げた。  
 「あんっ!」  
 びくん、とルカの身体が跳ね上がる。  
 確かに告白そのものはルカの意思とはかけ離れていたが、その言葉は真実であったらしく、先ほどまでとは比較にならない  
ほどの、激しい刺激がルカを襲った。  
 
 愛撫をやめないまま、青年がなおも言葉を重ねる。  
 
 「今、どんな感じだい? 正直な気持ちを聞かせて欲しいんだ」  
 
 (……だ、ダメっ!)  
 反射的に、何かをしゃべり出しそうになる前に、ルカは両手で口を押さえた。  
 もうこれ以上、妙な事を口走りたくはなかった。  
 だが、抵抗も空しく、もごもごと激しく暴れまわる口は、手の隙間を縫って、大きく声を張り上げてしまう。  
 
 
 「イイですっ……! とても気持ちイイですぅっ……!   
  突っ込まれた指の爪が、わたくしのオマンコ肉を優しく引っかいてきて、自然とトロトロの蜜が溢れてしまいますっ……!  
  もっとわたくしのいやらしい肉穴を、奥までほじくって下さいませぇっ!」  
 
 
 自分の発した言葉に、ルカはしばし、茫然としてしまう。  
 ややあって、その目にじんわりと、涙が浮かんできた。  
 (どうして……どう、して――)  
 あまりの恥辱に、今すぐ消え入りたい気分になってしまうが、青年の視線が、そんな彼女を捉えて離そうとしない。  
 結ばれた視線の一端、ルカの瞳から、一滴の涙が静かにこぼれ落ちた。  
 
 (どうしてそんな目で、わたくしを見るの……?)  
 
 突如として露見した、ルカの淫蕩な本性を責めているのだろうか。それにしては、その表情にはあまりにも、怒りの感情が  
欠落しているように、ルカには思えた。  
 怒りだけでなく、悲しみも、蔑みもない。  
 
 ただ、観察しているかのような、冷たい視線だった。  
 
 「さあ……そろそろいいね」  
 
 つぷり、と指を引き抜いた青年が体勢を変え、二人は座ったままで向かい合い、その下半身が接触した。  
 (い、いや……)  
 ぐりっ、と押し付けられた肉棒に、ルカは知らず、ずず、と身を引いてしまう。  
 ――いつもの夜であれば、それは、ほんの少しの緊張を伴った、快い期待が湧き立つ瞬間であるはずだった。  
 だが、今は違う。  
 胸の内にせり上がって来るものは、ただ、正体の見えない不安ばかり。  
 なおも下半身を進ませながら、青年が、感情のこもらない瞳でルカを見据えた。  
 
 「どうしてもらいたいかを、僕に、伝えてくれ。君の口から、はっきりと」  
 
 「んんんっ!」  
 再び、ルカが素早く自分の口をふさぐ。  
 その手の下で、唇が、舌が、咽喉が、ざわざわと蠢く。それをこらえる為に、ルカはぎゅっと目を閉じ、顔中に力を込めて、  
何とか歯を食い縛ろうとした。  
 「さあ、言うんだ、ルカ」  
 だが、どんなに抗おうとも、彼の言葉に逆らう事が、どうしても出来ない。  
 「うぅん……っ!」  
 そして、ついに逆らいきれず、ルカがふっ、と力を抜いてしまった瞬間。  
 
 「ハメ倒してくださいぃっ!」  
 
 部屋中に響き渡るような大声で、その口が叫んでいた。  
 
 「お願いですっ! 今すぐわたくしにオチンポハメして下さいっ!  
  先ほどから、わたくしのオマンコが涙を流して寂しがっているんですぅっ! これ以上お預けされたらわたくし、  
  オマンコ狂いで死んでしまいそうなんですっ! どうかわたくしの下のお口に、あなたの極太オチンポとザーメンミルク  
  大量にごちそうして下さいませぇっ!」  
 
 一息にそう言い切ったルカは、はぁっ、はぁっと荒い息をつきながら、ぐっと顔をそらした。あまりの恥ずかしさに気が  
遠くなり、もう、青年の顔を、まともに見ることが出来なかった。  
 
 「よく言えたね、ルカ。それじゃ、望み通りにしてあげよう」  
 
 ずむんっ、という、鈍い衝撃が、ルカの下半身に走る。  
 「……はぅんっ!?」  
 ルカが目を見開き、ばっと自分の下半身に目をやる。  
 青年の男性器が、すでに半分以上、ルカの中へみちみちと挿入されていた。  
 (そっ…んなっ……! いきなりっ……!)  
 思わず喘ぎ声を上げそうになるルカだが、すんでの所でそれを飲み込み、唇をぎゅっと結んだ。  
 間違っても、もう二度と喋り出したりしないように。  
 「それじゃあ、動くよ?」  
 そう宣言するが早いか、青年が激しく腰を使い出した。ずるり、ずずぅっと抽送を繰り返し、ルカの体を容赦なく責め立てる。  
大きく張った亀頭が膣内をぐぃっ、と引っかき、ルカの体に稲妻のような刺激が走る。  
 (んぅぅぅんっ……! くぅんっ……!)  
 だがそれでも、ルカは頑なに口を開こうとしない。  
 発散出来ないままに、体の中に蓄積されていく快感と、ただひたすら戦い続けていた。  
 
 「ルカ」  
 腰使いを止めないまま、青年が短く呼びかける。  
 それだけで、目の前に浮かび上がる不安を察したルカは黙ったままで、首を必死にぶんぶんと振る。懇願するかのような目で、  
青年に訴えかけながら。  
 だが、その訴えは、彼には届かない。  
 
 「……どうだい?」  
 
 「アクメ来てますっ!」  
 間髪を入れず、ルカの口が答えた。主人に忠実な飼い犬のように。  
 
 「オチンポが出たり入ったりするたびに、わたくしの頭の中までぐちゃぐちゃにかき回されてるみたいで気持ちよすぎますぅっ!  
  このままイカせてくださいっ! このままイカせて、わたくしのいやらしいマン汁シャワーブチ撒けながら絶頂迎えるところ、  
  あなたにご覧になって欲しいんですぅっ!」  
 
 ルカの絶叫が、部屋の中で反響する。それらの声は全て、ルカ本人の耳へと入り込み、彼女自身を苛んでいく。  
 「わかったよ」  
 青年が、腰の動きを速めた。ずんっ、ずんっと力強く突き上げられ、ルカの腰ががくがくと踊る。  
 膣内の愛液はその分泌量を増し、限界が近い事を、ルカ自らに伝えようとしていた。  
 
 (どうして……どうして、こんな……)  
 
 しかしもはや、ルカの精神は、半ばこの場に留まってはいなかった。  
 ただ、悪夢にも似た非現実感の海にゆらゆらと漂い、その身を委ねる事以外、何も出来る事はなかった。  
 
 「あひぃぃっ! オチンポ大好きっ、オチンポ大好きぃっ! イキますっ! わたくしイキますぅっ! オチンポでオマンコ  
  何度も何度もブチ抜かれて、みっともないアヘ顔晒してイッちゃいまひゅぅぅっ!」  
 
 びくびくっ、と、ルカの身体が一際高く跳ね上げられ、その背中が大きく反り返った。  
 同時に、突き出した股間からは、ぶしゃあっ、という音を立てて、湯気が立ち上りそうなほどに熱い潮が吹き上げられた。  
 (あぁ……)  
 そのままかくっ、かくんと二、三度膝を揺らした後、ルカの体は、べしゃり、とその場に崩れ落ちた。その股間から太股に  
かけて、ぐっしょりと愛液がまみれている。  
 それを気持ち悪く思いながらも、ルカは、次第に意識が薄れるのを感じた。  
 出来る事ならば、このまま、気を失ってしまいたかった。  
 もう、こんな悪夢からは逃げ出したかった。  
 ――そんなルカの微かな、ほんの微かな願いは、次の瞬間、青年によって無残にも打ち砕かれる。  
 
 「……まだ、眠るには少し早いよ」  
 
 (……え?)  
 青年の手が、ぐい、とルカの下半身にかかり、それによって、ルカの意識は再び覚醒させられる。  
 力任せにルカの体をうつ伏せにすると、青年はその腰を持ち上げ、大きく後ろに突き出させた。そして。  
 その中心、先ほどとは違う箇所に、ぴたり、と彼の性器の先端が触れるのを、ルカは感じた。  
 
 「さあ、言ってごらん、ルカ」  
 
 青年の声がする。  
 優しげな言葉とは裏腹に、氷のように冷たい、ぞっとするような声が。  
 
 「君は今、『どこに』僕のモノを入れられたい?」  
 
 ルカの体が、わなわなと震える。  
 そして、その口が力なく開かれた。  
 
 
 (もう、やめて――)  
 
 「クソ穴ですッ!!」  
 
 咽喉も裂けんばかりに、ルカの声が割れる。  
 
 「わたくし本当は、アナルファックの星から来たアナルファック大好き星人なんですっ! ですからお願いです、わたくしの  
  涎こぼしまくりの直腸いっぱいにオチンポ頬張らせてくださいっ! アナルにガチマラブチ込んでひいひいヨガり狂わせて  
  くださいませぇぇっ!」  
 
 絶望感に、ルカは、目の前の視界が眩むのを感じた。  
 青年は静かにうなずくと、未だ硬さを衰えさせないままの剛直を、ルカの後ろから真っ直ぐに突きつける。そして、肉穴へ向けて  
ずぶぶ、と差し込んだ。しかし、さすがにその部分のすぼまりは強く、一度は入った亀頭が、ぬるり、と弾かれてしまう。  
 
 「ああああ、早く、早くぅっ! 早くあなたのペニ棒で、わたくしのクソ穴ホジホジお掃除してくださいませっ!  
  おちんぽのカリ首でわたくしのケツ管の汚れゴリゴリ引っかいて全部かき出してほしいんですうっ! 早くチンポっ!   
  おちんぽっ! ちんぽちんぽちんぽちんぽぉぉっ!」  
 
 まるで焦らされているかのようなその動きに、ルカの口が発狂しそうな裏声で喚き散らす。  
 青年はもう一度、ルカの腰をがっしりと抱え込むと、自らも体の重心を落とす。  
 そして、今度は一気に、ぐぶぅっ、と、ルカの肛門を貫いた。  
 
 「あはぁぁぁんっ! きたぁっ! ケツチンポ来たぁぁっ! アナルのお口でオチンポいっぺんに咥えちゃったのぉっ!」  
 
 ルカが随喜の声を上げる。  
 そのまま青年がずんっ、ずんっと腰を動かし始める頃には、その口から発せられる言葉はさらに猥雑さを増していき、もはや、  
ルカ自身にすらその意味が理解できない域にまで達していた。  
 
 「チンポぉっ! オチンポありがとうございますっ! ドスケベルカのお尻にご馳走オチンポ頂いちゃいましたぁっ!   
  ケツハメ食らったアナルの中のお肉がオチンポ様に遊んでもらえてお汁ダラダラ漏らして悦びすぎちゃってますぅっ!  
  あああイキますイキますイキますっ! わたくしの頭のお花畑でクルクルパーのお花満開になっちゃいますっ!  
  どうかわたくしのデカ尻のビラビラ肉穴にあなたの肉汁べっとりのオチンポ様でラブラブちゅっちゅしてその先っちょから  
  いやらしい噴水どばぁってブチ撒いてわたくしのスケベな下水管の元栓バカになっちゃうくらい壊してぇぇっ!!」  
 
 疲労と快感に頭が霞み、もう、自分が何を言っているのかも聞こえなくなった頃、ルカは絶頂を迎えた。  
 
 (・・・っ!)  
 
 ずぶん、と青年の陰茎が力強く打ち付けられた瞬間、体中の熱が下半身に集中し、弾け飛ぶ。  
 それと同時に青年も射精に至ったらしく、ルカの体の中で、びくん、びくんとペニスが脈づいていた。  
 
 
 (――ああ、神様、お願いです)  
 
 すでに、自分が壊れかけてしまっている事を悟ったルカは、腸内に吐き出された精液の熱を感じながら、祈りを捧げる。  
 
 
 (次に生まれ変わる時には、どうぞわたくしに、心などという余計な物を、お与えにならないで――)  
 
 「はぁ……は……ぁっ」  
 
 ようやく言葉の奔流が止まり、ルカはその身を、ぐったりとベッドに横たえた。  
 全身が、ひどく汗をかいており、それが急速に冷え、体中の体温を奪っていく。  
 それに併せるかのごとく、自分の思考が、まるで潮が引くように減退していくのも、ルカには分かった。  
 もう、自分に何が起こっているのかを確かめる気力も、それを青年に問いただすだけの精力も残されてはいない。  
 ただ、途方もない疲弊感だけが、ルカの心と体に絡み付いていた。  
 
 「……ぅ………」  
 
 せめて、せめてもう一度だけ、青年に力強く抱きしめてもらいたくて。  
 口を険しく結んだまま、ルカは、青年に向かってのろのろと腕を伸ばす。  
 
 「……さて、と」  
 
 だが彼は素知らぬ顔でベッドを降りると、棚の上の自分のバッグを開け、中から何かを取り出していた。  
 録音装置のようだった。  
 それを操作する青年の姿が、次第にぼやけ始める。ルカの目蓋は閉じられかけていた。  
 
 「……やっぱり、君は最高だ、ルカ。僕の目に、狂いはなかった」  
 
 最後の瞬間、青年がルカの方を振り向いた。  
 これまで一度も見せた事のない、満面の笑顔がそこにあった。  
 
 
 「今まで、本当にありがとう」  
 
 
 
 「―――何を読んでるんだ?」  
 
 
 とある施設の一室で、男が部下に尋ねている。  
 「ああ、お疲れ様です。……いえ、他部署から周ってきた、実験報告書なんですけどね」  
 部下はきい、と椅子を下げると男に向き直り、手に持っていたファイルをぱしぱしと叩いた。  
 「先月まで、うちの施設の一部を貸し出してたでしょう?」  
 「ああ、そう言えば」  
 「あれが、僕と同期の職員が担当者だったみたいで、ちょっと気になりまして」  
 ふむ、と男がうなずいた。  
 「実験内容は?」  
 「何でも、ボーカロイドの作詞機能のテストが目的みたいで……。対象に、ある程度の語彙をインプットした上で、それらを  
  一定のベクトルに方向付けてやった時、どれだけの言葉を自発的に生成できるか、って内容らしいです」  
 男は目を閉じ、頭の中で、部下の言葉を反復する。  
 それから、片手に持っていたコーヒーカップを机に預け、その手を部下に差し出した。  
 「……ちょっと、俺にも見せてくれるか」  
 「ええ、いいですよ。……そいつ、新人の頃から、変わり者で有名でしてね。その実験にも、発案の段階から関わってた  
  らしいです」  
 受け取ったファイルを開き、男はページをめくって目を通していく。  
 「……なるほどな。こういう手段を使ったわけか」  
 「上手くやったもんですよねえ」  
 部下が腕を頭の後ろで組み、椅子の背もたれにぐぐ、と寄りかかった。スプリングがぎしりと軋む。  
 「ボーカロイドの作詞機能において基幹を成すのは、もちろん一定レベル以上の感情係数なわけですけど、それをこんな方法で  
  構築するなんて、少なくとも、僕には出来ない発想ですね」  
 そして、ぱっと身を乗り出すと、男に向かって熱のこもった口調で言った。  
 「僕らも何か、今までにない、画期的な計画を立てるべきなのかもしれませんね。……どう思います?」  
 その問いかけには答えず、男は黙ったまま、ファイルを全て読み終える。  
 それをぱたん、と閉じると、部下に返しながらぼそり、と呟いた。  
 
 「……お前さんに任せるよ。俺にはもう、そんな、新しい事を思いつく頭はないからな」  
 
   
 「なあ」  
 「何です?」  
 
 「ボーカロイドの幸せってなんだと思う?」  
 
 出し抜けの、男の質問に、部下が驚いてその顔を見上げた。  
 「ええ? ……それはやっぱり道具なんですから、その機能を、人に十全に使い込んでもらうこと……じゃないですか?  
  持ち主の意志に準じて、その使命を全うするのが、正しいありようだと、僕は思いますけど」  
 その答えを受けて、男はしばし、眉をひそめて考え込む。  
 「そうだな……そうだよな」  
 「何か、別の考えがおありで?」  
 男の妙な態度に、部下が訝しむように質問を返す。  
 
 「……いいや、俺も、その通りだと思うよ」  
 
 男は、首を左右に振ってそれに答えた。  
 「俺たちは全員、そういう精神に基づいて、ボーカロイドをよりよい道具にするために活動してる。――使い手のためにな。  
  いまさら、再確認する余地もない理念だ」  
 そうですよね、と応じて、ファイルを傍らに置いた部下は、椅子を引いて机に向かい直すと、自分の作業に戻った。  
 
 
 (そう――道具として、使い手の役に立つことが、ボーカロイドにとって、何よりの幸せだと――)  
 薄暗い部屋の中で、ぼんやりと、青白い光を発しているモニターを眺めながら、男は思う。  
 
 
 (そうでも自分に思い込ませなきゃ、やってられやしないからな)  
   
 
   
   
 「――おはよう、ルカ」  
 
 部屋にやって来た青年は、ルカに向かってさわやかに挨拶を投げかけた。  
 
 「………」  
 
 その声に、ルカは無言のまま、今まで横たわっていた床から、のろのろとした動作で身を起こした。ぐしゃぐしゃに乱れた  
桃色の髪が、ばさり、と顔にかかる。  
 それを振り払おうともしないルカの格好は、下着すら身に付けていない、生まれたままの姿だった。  
 ――事後観察のために、ルカが連れてこられたこの部屋には、穏やかな陽光が差すこともなく、紅茶のカップも、またそれが  
置かれるべきテーブルすら存在しない。  
 あるのはただ、冷え冷えとしたコンクリートの床と、壁と天井のみだった。  
 
 
 「――おはようございます、オチンポ様」  
 
 
 ルカが口を開いた。  
 死んでいるかのような目で。  
 
 「本日も、オチンポ様におかれましてはご機嫌麗しゅう。  
  わたくしはオチンポ様にお訪ね頂けるのが待ちきれず、浅ましくも今朝から十三回に及ぶオナニーに耽っておりました。  
  そのせいで、わたくしのオマンコはすでにマン汁で溢れ返り、アナルもはしたなくヒクついて疼いております。  
  この、哀れで卑しき愚かなる恥知らずのメスブタに、どうか慈悲深き罰を―――」」  
 
 
 ――その言葉は、いつ果てるともなく、延々と続けられるのだった。  
   
 

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