発端は、がくぽが仕事をさぼったリュウトを厳しく叱ったことだった。  
数時間もこっぴどく絞られたリュウトが、  
腹いせに悪戯でがくぽの愛刀とちょうど近くにいた勇馬を取り替えてしまったのだ。  
しかも間の悪いことにその時の勇馬の発音機能や通信機能は壊れていて、  
思考するだけのただの刀と変わらない状態だった。  
それ故に、がくぽは気づかず勇馬を刀として扱い、  
そのまま脱衣所へ忘れてしまう。  
 
がくぽ専用の脱衣籠に置かれた刀を見ながら、下着姿のグミは呆れ顔になる。  
「もー、兄貴ったらいつも刀は武士の魂とか言ってるくせに……  
 魂を忘れるんじゃないっつーの」  
(ああ……またグミさんの裸を見てしまった……)  
と、懊悩する勇馬の前でひとりごちていたグミが突然黙り、  
刀をじっと見つめ始める。  
 
(グミさんの様子がおかしい……も、もしや正体がばれたのでは……!)  
グミはその手に勇馬を握ると、鼻を近づけて勇馬の匂いをかぎ始めた。  
「これが……男の人の……兄貴の匂い……」  
(え……、えっ、ななななんですかこの流れ!)  
グミが勇馬からがくぽの匂いを感じるのも仕方のない話だった。  
がくぽ専用の脱衣籠に放置されていた勇馬には、  
がくぽの匂いが染み付いていたのだ。  
 
「兄貴……」  
風呂上りで上気していた頬をますます赤く染め、  
グミは刀の鞘を自らの股間へ押し当てる。  
「あっ……」  
左手で自らの胸を揉みつつ、グミは右手で柄を持ちながら  
刀身で下着の上から股間を刺激し始める。  
 
「ああ、兄貴、そこ、もっと……」  
悩ましげな動きで下着姿のまま自慰を続けるグミ。  
腰のグラインドが一際激しくなり、  
唇の端から唾液がつーと零れる。  
「や、あっ、すごいっ」  
 
瞳を瞑り、瞼の裏にがくぽの姿を思い浮かべつつ、  
自らの乳首を指で刺激しながら、  
グミは鞘を割れ目に食い込ませてより一層深い快感をむさぼる。  
「あっ、お兄ちゃ、あぁっ、イクぅっ」  
刀に跨ったまま、グミは全身を震わせて絶頂へと至る。  
 
勇馬を籠に手放した後、グミは壁に寄りかかり  
重力に引きずられるようにずりずりと腰を落とし、床にぺたんと座った。  
荒い呼吸のまま数分の時が過ぎ、快楽の余韻が冷め虚無感と脱力感がグミを襲う。  
「ボク、何やってるんだろ……」  
ショーツの染みを指で確認しながら、グミは寂しそうに呟いた。  
「……あの唐変木が悪いんだ。いつまでもボクの気持ちに気づかないから……」  
 
自己弁護をしたところで、余計虚しく、悲しくなったのか、  
グミは目に涙を貯めたまま衣服を着て、脱衣所を後にした。  
残された勇馬はしばらく茫然自失としていたが、  
30分近く経ちリリーが脱衣所へ入ってきてようやく我に返る。  
(い、今のは……まさかグミさんががくぽさんに……  
 とういか、さっきの、僕とグミさんはエッチしたことになるのか?  
 いや、そ、挿入してないから大丈夫……なのか?!)  
 
いっぱいいっぱいになった勇馬を、  
風呂上りのリリーが摘み上げ、鞘を人差し指でなぞりながら呟く。  
「がくぽお兄様……」  
(お前もかい!)  
 
 

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