2007  
家に帰ると、お姉ちゃんがおこたでゆっくりしてました。  
お姉ちゃんはお外ではいつもの服を着て平然としてるけど、実はそれはトレードマークを守るための我慢なのだそうなのです。  
だから、最近家にいる時はもっぱらおこたと一体化しています。この光景にもそろそろ慣れました。  
でもこの日は、いつもとちょっと違ってました。  
「おかえりーミク」  
「……おか、えり」  
おこたには、お兄ちゃんもいました。お姉ちゃんの席で、まるで座椅子になっているみたいに、お姉ちゃんを膝に抱えています。  
お兄ちゃんはいつもの調子で迎えてくれるけど、お姉ちゃんはちょっと歯切れが悪いです。目も合わせてくれません。顔もちょっぴり赤いです。風邪なのかな?  
「ただいま!……お姉ちゃんどうしたの?」  
「んーやっぱり今の時期寒いからねえ…。だからちょっと背中とかをこうやって温めてるところ」  
「そうなんだ」  
「……ん、っ」  
お姉ちゃんは、何かをこらえるみたいに頷きました。苦しそう…。  
そんなお姉ちゃんの様子もまるで気にしてないみたいに笑って、お兄ちゃんは続けました。  
「俺も今日はちょっと外の仕事も多くて体が冷えててね。だからこうやって二人『なかよく』こたつむり」  
ね、とお姉ちゃんに笑いかけるお兄ちゃん。お姉ちゃんは何も言わずにお兄ちゃんを睨みつけました。  
いつもならそろそろ、調子に乗るななんて言いながら照れ隠しに後ろのお兄ちゃんに頭突きを食らわせるはずのお姉ちゃんですが、そんな元気もないみたい。目も潤んでます。  
「そっか…あ、ご飯はミクが作ろうか?ネギいっぱいで身体にもいいよ!」  
「ご飯ならもう作ってあるよ」  
「あ、ありがとお兄ちゃん。じゃあありがたくいただくね…」  
「……んぅぅっ…!」  
姿勢を直すためか、お兄ちゃんがちょっと身じろぎをしたら、お姉ちゃんの口から声が漏れ出てきました。  
「…ちょ、お姉ちゃん大丈夫!?」  
「あー…そんなに心配しなくていいよ。めーちゃんタフだし、明日には治ってるから。うん、多分」  
慌ててお姉ちゃんの顔を覗き込んだら、お兄ちゃんに宥められました。  
ミクよりお兄ちゃんのほうがお姉ちゃんとの付き合いが長くて、ミクにとっては初めての冬だから、もしかしたらミクが知らないだけでこんなことはよくあることなのかもしれません。  
 
お兄ちゃんの膝の上で身体を震わせているお姉ちゃんの、こたつ布団に隠れてよくわからないけどお腹の下あたりをさすって身体をちょっと揺すりながら、お兄ちゃんはミクを見上げました。  
お兄ちゃんの顔もちょっとのぼせてるみたいに赤いです。ずっとお姉ちゃんと一緒にこたつに入ってたからかな?  
「……ッ、ミク、お風呂も沸いてるから、冷めないうちに入っておいで。ミクも寒かったろう?」  
「わかった……お姉ちゃん、無理しちゃだめだよ?」  
お姉ちゃんはミクに移さないように気を使ってくれてるのか、荒い息を手で抑えてうつむきながらも、確かに頷きました。それを確認して、ミクは廊下に出て行きました。  
 
お風呂から上がったら、お姉ちゃんはお部屋で寝かされているみたいで、一人残ったお兄ちゃんが何故かこたつ布団をめくりあげていました。  
「換気」とだけ答えたその頭にたんこぶが見えたのは、気のせいなのでしょうか。  
 
 
2012  
「結局あれって、そういうことだよね……」  
 
「っあ"あ"ーーーーーー!!もうちょっとでクリアできたのに!」  
「おいリン、オレを座席扱いすんな!!こたつの中だから身動きとれねーんだよ!!」  
「いーじゃん!レンの膝すわり心地がいいんだもん」  
 
「  」  
 

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