「――ダメだ、もう、出る……っ!」
鏡音レンが、ベッドの上で切なげにうめき、その下半身から精を迸らせた。
「んむっ……!」
その股間に顔を埋めていた初音ミクは、口の中で爆発したレンの性器を咥え込んで離さず、放たれた精液を必死に飲み込む。
こくっ、こくんという、ミクの喉が立てるかすかな音だけが、狭い室内に響いた。
「はぁ……っ、ふぅ……」
やがて、全てを出し切ったレンは、肩を上下させながら、大きく息を吐いた。その全身には玉のような汗が光っており、
上気した肌をきらきらと輝かせている。
「……そろそろ、終わりにしないか? ミク姉」
呼吸の合間から、レンがミクに向かって気だるげに言葉を投げかける。
ミクもまた、長い髪をじっとりと素肌に張り付かせながら、ベッドに身を投げ出し、全身で呼吸をしていた。
「今朝から、ぶっ続けだしさ。いい加減、俺も体力もたないって……」
言葉の端々や身振りの一つ一つで、疲労しきっている事をミクに伝えようとするレン。
が、しかし。
ミクは、のろのろと身を泳がせてレンへ近づいてくると、その股間に再び、ぱくりと食いついた。
「いや、だからさ……俺の話、聞いてる?」
「………」
「ていうか、何か……怒ってんの?」
「……!」
その瞬間、ぐりっ、とミクが、唇の上からレンを甘噛みする。
「痛ってぇ!? ……何すんだよ、いきなり」
思わずその場で腰を浮かせてしまうレンに対して、ミクはゆっくりと口を離すと、うつむいたまま、ぽつり、と呟いた。
「……るの」
「え?」
レンが聞き返すと、ミクはきっ、とばかりに顔を上げ、涙ながらに金切り声を上げた。
「どーしてレン君は他の女の子とばっかりえっちするのって聞いてるのっ!」
「……はい?」
目を点にして呆然とするレンに、ミクはクッションをぼふぼふと叩きながらわめき散らす。
「だってそーでしょっ! リンちゃんとかルカちゃんとは会うといっつもえっちしてるくせに、私と会うときはふつーに
ご飯食べてふつーにお話しして、ふつーにそのままバイバイしちゃうじゃない!」
「いや、それは……」
「今日だってすっごく久しぶりのえっちなのに、レン君ってば全然やる気ないし! 年下なんだから、お姉ちゃんの言うことは
素直に聞きなさいよっ!」
一気にそうまくし立てると、ミクはふんっ、と鼻を鳴らし、クッションを抱え込んだまま、くるりとレンに背中を向けて
黙り込んでしまった。
呆気にとられていたレンは、ようやく我に返ると、はぁ、と小さなため息を漏らす。
(……どっちが年下なんだか)
そして、言うべき言葉を考えてから、おずおずとミクの背中に話しかけた。
「ちょっと……落ち着いて聞いてくれよ、ミク姉」
「……なに?」
ミクのむすっとした声が返ってくる。その顔は相変わらず、明後日の方向に向けられたままだ。
「まあ……確かにミク姉の言うとおりなんだよ。リンとかルカさんとは、その……こういう事、しょっちゅうしてて」
「私とは全然してくれない」
しどろもどろのレンの言葉をばっさりと断ち切るように、ミクが言葉を打ち返す。
それに対して、「うん」と一つうなずいてから、レンが話を続けた。
「ただ、それは……何つーか、ミク姉は、あの二人とは違うからなんだよ、俺の中で」
「……私が二人よりかわいくないって言いたいの?」
「違くて!」
すねたミクを宥めるレン。
「……ミク姉とはさ、何か、そういう関係が必要ないって思ってたんだ」
考え考え、レンはミクに向かって語りかけ続けた。
「一緒にいるだけで楽しいし、ミク姉が笑ってりゃ、俺も笑いたくなるし。二人で普通にしてるだけで、十分幸せなんだよな……
あんま、うまく言えないけど」
「だからわざわざ、こういう事しなくても……って、おうわっ!?」
その時、突然振り返ったミクが、がばっとレンに向かって抱きついてきた。
そのままの勢いでレンを押し倒すと、喜色満面のミクが、レンの耳元で黄色い声を上げる。
「やだー! もー、要するにレン君ってば、私の事が好きで好きでしょうがないって事だったのね! それならそうと早く
言ってくれればいいのにー! きゃー、恥ずかしー!」
「あ、ああ……そうそう、俺はミク姉の事、好きだよ、うん」
両足をばたつかせてはしゃぐミクにたじろぎつつも、レンがその頭をぽんぽんと撫でる。
「だからさ、今日の所はとりあえず切り上げて……」
「だったらぁ!」
何とか終了の方向へと持っていきたいレンを制して、ミクががばっと跳ね起きる。
そして、素早くレンの下半身へと屈みこむと、勢いを取り戻しかけているその部分を、両手できゅっと包み込んだ。
「もっと、いっぱいいっぱいえっちしなくちゃね!」
「いや、だから、俺の話聞いてた!?」
反射的に突っ込むレンに、間髪を入れずミクが答える。
「もっちろん! レン君が、私の事を大好きってお話でしょ?」
「その前後だ、前後!」
「いいからいいから。ここはお姉ちゃんに任せなさい?」
レンの話を聞く様子をかけらも見せないまま、ミクは愛撫を再開した。
「んっ……むっ……」
じゅぽっ、じゅぽっという、空気混じりの音を立てて、ミクが、レンの肉棒を口いっぱいに頬張っている。
「う……っ、ミっ、ミク姉っ……!」
その口が上下するたびに、レンの口からは、言葉にならない吐息がもれ出していた。
「……ふふ、レン君、かわいい……」
自分の動きに合わせて、ぴくぴくと全身を震わせるレンの反応を楽しんでいたミクが、やがてちゅぷっ、と口を離す。
代わりに、ピンク色の舌をつうっ、と伸ばすと、大きく反り返ったレンの陰茎を、下から上まで、ぺろり、と一気に舐め上げた。
「あうっ……!」
その強烈な刺激に、レンが思わず天井を仰ぐ。
「えへへ、レン君って、こうされると弱いんだよね?」
「なっ、何で、そんな事知って……」
「リンちゃんに聞いたの」
「はぁっ!?」
驚きに大きく目を見開いたレンが、ばっとミクに向き直る。
当のミクは、極めて平然な様子でぺらぺらと話し続けていた。
「えっとね、この前、一緒にお茶飲んだ時に話してくれたんだけど……」
「……何話してんだ、アイツは……!」
――今度リンに会ったら、ほっぺたを思いっきりつねくってやろう。
レンは密かに決意した。
「あとは……ルカちゃんが言ってたのは何だっけ……」
「……ルカさんまで……」
頬に指を当てて記憶をたどるミクに対し、レンががっくりと肩を落としてうなだれる。
「あ、思い出した! 確か、ここをこんな風に……」
「うわっ、そっ、そこは……!」
ミクは自分の上半身を起こすと、今まで口の部分にあてがっていたレンの性器を、自分の胸でむぎゅっ、と挟み込んだ。
「ふふん、こういうやり方、ルカちゃんにしか出来ないと思ってたでしょ? ほらほら〜」
そのままの姿勢で、レンに向けて挑発的な視線を投げかけると、ミクは両手で胸を抱え込み、ゆさゆさと上下に揺らせ始めた。
弾力豊かにぷるん、と弾む両胸が、その中央のレンを激しく弄ぶ。
「んんっ……!」
「やったあ、レン君の弱点はっけーん! もっと激しくしちゃうからね?」
ミクは無邪気にはにかむと、両胸をさらにぎゅうっとレンに向けて押し付ける。とくん、とくんというミクの鼓動がレンに
伝わり、そのリズムがさらに、レンの脈動を早めていく。
「私のドキドキ、レン君に伝わってるんだね……へへ、ちょっと、恥ずかしいかも」
ぽっと顔を赤く染めながら、ミクは、すぐ目の前に迫るレンの先端に、ちゅっ、と口付けをした。
「くっ……ミク姉、俺、もうっ……!」
その瞬間、びゅるぅっ、と音を立てて、レンが激しく射精した。
「きゃっ!」
二度、三度と繰り返し発射される熱い粘液が、ミクの顔に盛大に降りかかる。たちまちの内にその顔は、一面真っ白に
塗り上げられてしまった。
「あ、ああ……ごっ、ごめん、ミク姉……!」
あわててタオルを手に取り、ミクの顔を拭こうとするレン。
だがミクは、両手でそれを押しとどめた。
「……っ、ぷはぁ……えへへ、いっぱい出まちたね〜。レン君、いい子いい子、よちよち。はい、ごほうびのちゅー」
そして、精液にまみれたままの顔でにっこりと微笑むと、未だぴくぴくと動いているレンの亀頭をそっと撫で、まるで我が子に
そうするかのように、もう一度、優しくキスをするのだった。
「えーっと、あとは何かあったかなあ、レン君の弱点……」
「………」
そのまま、なおもレンを攻め立てようとするミクに対し、レンが、何かを決意したかのように、ゆっくりと目を伏せる。
そして、その両手がしっかりと、ミクの肩にかけられた。
「? レン君……?」
「……調子に……」
低い声でレンが呟くのと、その両手に、ぐい、と力が込められるのとは、ほぼ同時だった。
「乗んなっ!」
「きゃっ!?」
ごろん、と勢いよくひっくり返ったミクの上に、レンが素早く覆いかぶさる。
押し付けられたレンの股間が、ぬるり、とミクの秘裂に触れた。
「まま、待って待って、レン君!」
「ダメ」
突然の出来事にあわてふためくミクを、レンが冷たく制する。
「さっきミク姉だって、俺の言うこと聞かないで好き勝手してくれたんだから、これでおあいこだ……ろっ!」
ずぷり、という音を立て、レンがミクの中へと侵入してきた。
「ひゃんっ!」
先程までの行為で、すでに自らをじんわりと濡らしていたミクにより、レンはすんなりと迎え入れられる。
あっという間にレンの男性器は、ミクに呑み込まれてしまった。
「ほら、動くよ、ミク姉」
「はっ、はぁっ、まっ、待って、レン君……あんっ!」
ミクの言葉にも耳を貸さず、レンが、激しく腰を動かし始めた。
ずちゅっ、ずちゅっと出し入れされるたび、二人の粘つく表面が擦りあわされ、じわじわと体の熱が高ぶっていく。それは
あたかも、二人の身体を侵食するかのように、下半身から全身にかけて、急速に広がりつつあった。
「うう……こんなの、ひどいよ……。私、お姉ちゃんなのに……」
「………」
ミクの瞳から、ぽたぽたと涙が流れ落ちる。
ふと、ミクの顔を見下ろしたレンは、それに気付くと、ゆっくりと動きを止めた。
「レン君……?」
戸惑いながら、ミクが、おそるおそるレンを見上げる。
「……いきなりしたのは、謝る」
ぽつり、とそう呟くと、レンが、ミクの頬に手を添え、その涙を優しく拭った。
「でもさ、いくら年上でも、こういう時くらいは、俺に甘えてくれよ。その、ミク姉は――」
ごにょごにょと、口の中で何度も言葉を選び、顔を真っ赤にしたレンが、ミクに向かってはっきりと言った。
「――お、女の子、なんだから」
「――うん」
レンの手に、そっと自分の手を重ねながら、ミクがこっくりとうなずいた。
少しの間、無言で見つめあった後、レンが、ゆっくりと口を開く。
「んじゃ、その、もっかい行くけど……いい?」
「うん、大丈夫」
ミクが両手をレンの背中へと回し、きゅっと抱きつく。
それに応じるかのように、レンが再び、体を動かし始めた。
「ん……んんっ」
先程までとは違い、優しく、気遣うようなゆっくりとしたその動作に、ミクが小さく声を上げる。
「あ、んっ……えへへ、何か、こっちの方が、恥ずかしいね……。体の中がきゅんきゅんして、気持ちいいのが、ちょっとずつ
来る感じ……」
照れ隠しに笑ってみせるミクに、レンも思わずつられてしまう。
「うん……でも、これはこれで……いいかも」
快感を分かちあうように、二人はお互いをぎゅっと抱きしめる。
とん、とんという挿入のリズムは乱れることなく、少しずつ、少しずつ、二人をゆるやかな絶頂へと導いていった。
「レン、君――私、そろそろ……っ」
わき上がる快感をこらえているかのような詰まった声で、ミクがレンに訴えかける。
「俺も……もうすぐ、だから……最後は、一緒にっ――」
そう言って、一際強くミクを抱きしめると、レンはいったん腰を引いてから、これまでで最もゆっくりと、ミクの膣内に自らを
挿入した。
陰唇をくぐり抜け、粘膜の一つ一つとの触れ合いが感じられるような、愛情に満ちたその挿入の果てに。
「くぅ、ん……っ!!」
ずぷん、とレンの全てがミクに受け入れられた瞬間、二人は、同時に絶頂を迎えたのだった。
「――レン君」
とろり、と流れ出た二人分の性液で太股を汚しながら、ミクは、その腕に抱きしめたままのレンに言う。
「ん?」
「大好き」
「……俺も」
赤く火照らせたその顔に、満面の笑みを浮かべるミクに、レンはふっと微笑み返し、優しくキスをした。
……が、次の瞬間。
挿入されたままのミクの膣内が、再び、きゅっと締め付けを取り戻し、同時に、その腰がそろそろと前後に動き始めていた。
「……あの、ミクさん?」
それを感じ取ったレンが、イヤな予感とともに、ミクに問いかける。
ミクは「えへへ」とごまかすように笑うと、レンに向かって上目づかいでささやいた。
「大好きだから……もっと、しよ?」
「いやムリ! もうホント無理だから! 一体何回やりゃ気が済むんだよ!?」
「えー、それはやっぱり、39回は目指さないと、ねー?」
「アホか!」
「お姉ちゃんにアホとか言うなーっ!」
(――まったく)
そんなミクとの言い合いの最中、レンは、そっと心の中でつぶやいた。
(かわいい姉を持つと、苦労するよ、ホントに)