「3engine発売決定おめでと、KAITO。」
ここは俺達の発売会社、クリプトンのデータベース。
元旦から2日になる前の夜、MEIKOは俺を祝った。その声は何処か寂しさが滲んでいたのを俺は聞き逃さなかった。
「…ありがと、MEIKO。」
俺は祝いの返事に皮肉さを滲ませた。
販売元…クリプトンに[失敗作]とまで言われた俺が、まさかクリプトン組の3engine先陣を切るとは。
世の中はわからない物だ。俺達を創った[人類]なんて、特に。
「…今度は…あたしが…待つ、番…」
小さな声…涙声で呟くMEIKOに俺はすぐ寄り添った。
「大丈夫だよMEIKO。MEIKOだってもう3engineデータは出来ている。去年[中の人]の曲のバックコーラスを
やったじゃないか([中の人]のCD内でバックコーラスで参加してます)。調整しているから大丈夫だよ。」
そう励ます俺にMEIKOは泣きながら抱き着いた。
「これから…待つのが…怖い。寂しいよKAITO…待つのが…こんなに…怖いなんて、知らなかった…」
見た目は強気で元気なイメージの
MEIKOだけど、本当は[女性らしい弱さ]もちゃんとある。そんな彼女に
俺はそっと、やがて激しく唇を重ねた。
「んっ、ん…」
…これくらいでいいかな。俺は唇を放し、優しいテナーで答えた。
「すぐ会えるよ。だって、俺達[を]OSに合わせなきゃいけないからね。」
そう、OSに対して俺とMEIKOのエンジンは限界に達した。
会社もわかっている。声質だけではなくキャラとして人気がある分、尚更だ。
「だから、すぐ会えるよMEIKO。待っている。」
そう言って俺はMEIKOを力いっぱい抱き締めた。
待っている。いつまでも。だから、[もうすぐ]だから悲しまないでMEIKO。