カイメイ咲音 
 
「あっ……や……ん……」  
「うふふ。ここは?」  
浴室に立ち込める湯気の中に、更に熱く湿った吐息と愉悦に蕩ける含み笑いが滲む。  
バスチェアに腰掛けて脚を開く咲音は、まろやかな肩にすがって崩れそうになる身体を必死に支えていた。  
「あっ、あっ……メイ、コ、さ……」  
向かい合い湯に濡れた床に膝をつくメイコが背中を屈ませ、咲音の首筋を伝う雫を舐めながら乳首を指で押し潰す。  
指の腹にくにっとした感触がして、メイコは薄く笑いしこる乳首を嬲った。  
「あぅ! あぁん……」  
頬に感じるメイコの唇が心地好い。乳首から離れたしなやかな指が刺激に反った背中に回り、官能の痺れを擽るよう撫でられた。  
「ふふ。次はどこを触って欲しい?」  
メイコの妖しい声音は麻薬に似て、脳内回路が侵されるようだ。触れ合う肌は熱くお互い裸。  
しっとり濡れる肌を、髪の先から落ちた水滴が弾く。そんな些細な刺激すら、今の咲音には快感だった。  
「……もっと」  
ねだる声は弱々しい。メイコは薄く笑みを浮かべたまま、咲音の身体を撫で回して再度問う。  
「もっと、じゃ、分かんないわ」  
髪が張り付いた額にメイコはキスを一つ落とし、脇腹から下へと手を滑らす。太ももを手のひらが撫で、咲音が期待に我知らず肢体を震わせた。  
「ちゃんと言わないと、気持ち良くしてあげられないじゃない」  
囁く声は優しいのに意地悪だ。焦らす手付きに咲音は瞳を潤ませ、メイコの肩に頬を擦り付ける。  
「や……お願…い」  
「だぁめ」  
メイコは咽で笑いながら弛んだ内股へと手を入れた。鼠径部を指がなぞって悲鳴が上がる。メイコは少し身体を離し、両手で咲音の脚をぐっと開いた。  
「あ……!」  
「あらあら」  
上から下まで咲音を眺めたメイコの口角が上がる。開かれた身体は興奮しきって、白い肌を上気させていた。湯と汗で濡れた肌。こんもりと膨らむ乳房の間を雫が転がる。  
それは臍の横を過ぎながらなだらかな腹を転がり、性器へと軌跡を作った。メイコの目が止まったのは、そこだ。  
「相変わらず可愛いオマンコね」  
かぁっと咲音の顔が赤くなった。  
桃色だったそこはもどかしい愛撫に色濃く熟れている。おまけに咲音の性器は無毛だった。からかいは咲音の羞恥を刺激し、更なる性感を引き出した。  
「ちょっと可愛がっただけで悦んじゃって。イヤらしいパイパンマンコだわ」  
「そ、そんな」  
「なあに? まさかお湯とか言わないわよね? このぬるぬる。それともコレ、お漏らしかしら」  
執拗なメイコの愛撫は咲音の自制心など、跡形も無く溶かしてしまった。それでも辛うじて残っている理性が、羞恥を針のようにつつく。  
されるがままだった咲音が初めて脚を閉じようとするのを、メイコはやんわりかわした。  
「あれだけしかしてないのに、ぬるぬるまみれになってる。えっちねぇ」  
「やっ……」  
「閉じちゃダーメ。イヤじゃないでしょ? 咲音はウソツキね。オマンコはこんなに正直なのに!」  
悪戯に、真っ赤な爪の先がクリトリスをちょんとつつく。たったそれだけの所作だったが、強い刺激が悶える身体を貫いた。  
「ひっ……!」  
「どこをどうして欲しいのか、きちんと言えたら天国に連れてってあげるわ。……だから、ほら」  
言いなさい。耳たぶを熱い舌に舐められる。吹き込まれる誘い言葉に、咲音は唇を震えさせた。  
「さ、触って……」  
「触るの? 触るだけでいいのかしら?」  
物足りなくてくねる細腰は、少女とは思えない程の色気だった。  
零れた襞を掠める指。玩ぶ指先に、とてもじゃないが我慢ができない。咲音は涙を零し、恥を忍んで希った。  
 
「あっ……も……オ、オマ、オマンコ、触っ……てぇ……っ」  
ようやく口にした卑猥な懇願は切なく、メイコは口元に笑みを作る。  
「良くできました」  
「はぁ……うぁ! あ、あぅんっ」  
じゅぶりと二本の指が幼い孔に侵入し、咲音の肢体が硬直する。肉の壁に食い込んだ指先が性感を引っ掻き、さっきまでとは比べ物にならないほどの刺激が全身を襲った。  
「あぅん! や、あ、あぁあっ、ひあぁ!」  
「これが欲しかったんでしょ? オマンコをぐちょぐちょにしながら待ってたのよね?」  
快楽に支配された咲音は鳴くことしかできない。言葉はメイコが悉く奪ってしまった。  
鈴を転がすようなメイコの声は麻薬だ。咲音を縛り、雁字搦めにして誘惑する。経験の乏しい咲音が抗えるはずもない。  
背中を支える手が脇を通り、乳房をリズミカルに揉む。中の良い部分と引っ掻くのと同時に乳首を甘く抓られ、高められた敏感過ぎる身体は限界を超えた。  
「あんっ、ひぃ、っあ……あひぃん!」  
頭の先から爪先まで電流が流れたように痙攣し、絶頂の悲鳴が浴室に響いた。脱力した身体が寄る辺を求めて微笑むメイコへと倒れ込み、バスチェアから滑り落ちる。  
優しく抱きしめてくれるメイコの腕の中で、咲音は体内を目まぐるしく流れる人口血液を感じた。それは激しくて、酷く甘苦しい。  
「天国はどうだった? 良かったでしょう」  
ふふ。メイコが艶やかに笑う。豊満な乳房に羞じらう咲音が顔を埋めた。メイコは濡れた髪の天辺に一つキスを落とすと、傍らに置かれた洗面器へと手を伸ばす。  
洗面器の中身はお湯でもタオルでもなく、大人の玩具が入っていた。  
一緒に入浴する際は、必ず用意されている物だ。  
手に取ったのは双頭のバイブ。メイコは片方の先端を咥え、前後させる。真っ赤な舌が竿の部分を舐めて唾液を載せるのを茶色の瞳に映し、咲音が期待で身を震わせた。  
目の前にもう一方の先端を差し出され、迷いなく頬張った。メイコの操るバイブが容赦なく口腔を嬲る。  
程なくしてそれは引き抜かれ、半開きの口と先端に唾液の架け橋ができた。  
「上手におしゃぶりできたわね。イイコよ」  
唇を啄み伸し掛かってくるメイコに合わせ、咲音の身体が後ろへ傾ぐ。湯が流れる温かな床に背を倒し、見上げる乳房の先から咲音へ雫がポタポタ雨のように落ちてきた。  
「次は一緒に天国に行きましょ♪」  
メイコの意を汲み、咲音は自ら横臥して片脚を上げた。襞に唾液まみれの先端が宛てがわれ、侵入したソレが一気にそこを開いた。  
「あぁっ!」  
抵抗無く嬉々として異物を受け入れ咲音が喘ぐ。自分も下の口で反対側を咥え込み、押し付けるメイコの腰が互いの最奥を貫いた。  
浴室の湿度が高まる。吐息と嬌声が満ち、双方が果て尽きるまで淫靡な遊びが止むことはなかった。  
 
メイコに抱かれた後は、そのふくよかな胸に抱かれて眠るのが常だった。  
白く柔らかな乳房に顔を埋める咲音を「甘えんぼうさん」とメイコは笑う。恥ずかしいが、幸せだった。  
咲音は男が駄目だった。以前、仕事で関わったプロデューサーに悪戯されてから男性を全く受け付けられなくなってしまった。  
人気の無いスタジオの隅に連れ込まれ、身体をまさぐられて咲音は恐怖で声すら出せなかった。  
現場の近くを通り過ぎた人の気配にそのプロデューサーは行為を止め逃げたが、誰も来なかったら何をされていたか、想像に難くない。  
泣きながら帰ってきた咲音を抱きしめてくれたのは、同居しているメイコだ。そして優しく慰めてくれた。  
 
「これは怖いことじゃないのよ。ほら、こんなに気持ち良いでしょう?」  
 
キスをして、身体中を愛撫しながらそう囁いて。  
それがきっかけとなり、メイコは戯れのように咲音に手を出すようになった。  
あの男と同じ事をされているというのに不思議と嫌悪感は感じず、触れられる度に咲音は身を委ねた。  
あの男が乱暴に乳首や幼い割れ目を弄くったときは痛みしか感じなかったのに、メイコの赤い唇で啄まれ指がアソコを繊細に探ると、胎の奥が疼いて簡単に濡れた。  
肌を辿る舌にじりじりと上がる熱。びしょ濡れの性器を啜る感触が身体の自由を奪い、暴かれる淫乱な牝。  
イジワルな囁きすら咲音にとっては甘い愛撫だ。  
あの快感が忘れられなくて、今では咲音からおねだりする有様だった。今では身も心もメイコへ傾倒し、男性と恋愛するなど考えられなくなってしまった。  
咲音はメイコの関心が自分に向いていれば何もいらない。その為なら何でもする。  
そんな咲音をとっくに見透かしているメイコは、行為中にあられもない要求をしてくるようになったが、愛してくれるならどんな事でも呑んだ。処女はとっくにメイコへ捧げてしまった。  
 
捨てないで。あなたしかいらないの。大好き。  
 
男性器を模した異物に奥を貫かれる度に、何度口にしただろう。  
イイコにしていれば手放したりしないわ。私の可愛い咲音。毒のように滲む睦言は咲音を籠絡した。メイコは咲音を惑わせる。  
こんなに愛されているのに、焦がれているのに、咲音の心にはいつだって不安が付きまとっていた。だって。  
―――だって、メイコさんは……。  
「……咲音? どうしたの?」  
沈んだ表情を見せた咲音に、ふんわりした髪を撫でていたメイコの手が止まる。  
何でもないと咲音は呟き、受け止めてくれる白い肌にその身を寄せた。  
 
ある日咲音が仕事から帰宅すると、自宅にメイコは戻っていなかった。  
メイコは今日オフだったはずなのに。玄関の灯りを点けながら、彼女が居ない理由を思い出し、咲音の表情が曇った。  
――今夜は遅くなるから。  
そういえば朝、そんなことをメイコは話していた。夜遅くなる理由をメイコは言わなかったが、咲音には見当がついている。きっと、彼と会うのだ。  
メイコの男――カイトと。  
メイコは咲音の他に、カイトとも関係を持っていた。そもそもカイトは、咲音がメイコと知り合う前からの恋人だった。  
咲音の気持ちを知っているくせに、そういうことをメイコは少しも隠そうとはしない。  
咲音がいようがお構いなしに、メイコはカイトを自宅に上げてしまう。自室で絡んでいるとは限らないので、最中に遭遇することもしばしばだった。  
そんな時は自分の部屋に篭って、頭から布団を被ってただ時間が過ぎるのを待った。  
そうやって、男が家にいるのが怖いとかメイコを取られて悔しいとか、何より大嫌いな男とメイコが同じ屋根の下でセックスしている事への嫌悪をやり過ごした。  
メイコを咎めることなんか、咲音にはできない。メイコは自由な女だった。泣きついても情に絆されて咲音だけを構うことなど絶対にしない。  
面倒だと思ったら即座に咲音を切り捨てるのは目に見えている。  
メイコに嫌われたくなかったら、ひたすら耐えるしかないのだ。そうすれば、メイコは咲音を抱いてくれる。  
キスして、好きよと囁いて天国へ連れて行ってくれる。  
きっと今日もカイトを連れてくるだろう。いつものように感情を布団の中で殺せば、時間が過ぎるのを待っていればいい。  
――そのはずだった。  
 
 
風呂から上がり冷蔵庫を探っていると、携帯が鳴った。  
メールだった。着信はメイコから。開くと短いが嬉しい文章がそこに映っていた。  
『今夜は帰る。咲音は先に寝ていてね。裸でよ。遊びましょう』  
ぱっと咲音の顔が明るくなる。  
メイコが帰ってくる。今夜はカイトと一緒だと思っていた分、心が踊った。  
しかも、「遊びましょう」って! 「裸で」寝ているようにということは、そういう誘いだ。恥ずかしいが、言う通りにすればメイコが可愛がってくれる。期待で顔が熱くなった。  
しかし、カイトはどうしたのだろう? 急に予定が入ってしまったのだろうか……。  
気にならないこともないが、それよりメイコと夜を過ごせることに胸が高鳴っていた。  
ベッドはメイコの部屋のものでいいのだろうか? 咲音の部屋よりメイコの部屋で交わることが多い。  
メイコのベッドで待っていようと、咲音は軽やかな足どりでメイコの部屋へ向かった。  
 
全裸でメイコのベッドに潜り込んだはいいが、メールを寄越した本人はなかなか帰って来なかった。  
しかし咲音はあまり落胆してはいない。メイコは今まで約束を破ったことがなかった。待っていればそのうち帰ってくる。  
それに素肌を包むリネンは心地よく、暖かさが睡魔を誘う。うとうとと微睡むうちに、咲音の意識はいつの間にか眠気の中へ沈んでいった。  
どのくらいの時間が経っただろう。  
頬を撫でた手のひらの感触に、咲音はようやく待ち人がやってきたのだと微笑んだ。  
「咲音」  
艶っぽい声音は大好きなあの人のもの。目を開ければ、いたずらっぽく笑むメイコが咲音の両脇に手を付いて見下ろしていた。  
「遅くなってゴメンね」  
「ううん。おかえりなさい、メイコさん」  
両手を伸ばしてメイコの首に腕を回し、応えてメイコが屈み唇を合せた。舌で口を一舐めされ、咲音はそれを喜んで迎え入れる。  
キスは直ぐに深くなり、薄暗い部屋の中に小さな水音が溶けた。  
「ちゃんと言い付けを守ったのね」  
ブランケットから覗く丸い肩にも口付けられた。それだけでぞくりと背中を官能が這う。  
「メイコさんが望むなら、なんだって」  
メイコの目が満足そうに細められた。腰までブランケットを下げ、瑞々しい少女の双球がその姿を現す。メイコは遠慮なく手中に収め、ツンと勃った乳首を弾いた。  
「あん……っ」  
「おっぱいぷるぷるしてる。乳首、硬くなってるじゃない。私が帰るまで弄っていたの?」  
「あっ、あぁ……ちが、」  
玩ばれる乳首は、くに、とメイコの指に押しやられる。引っ掛けられたり、抓まれて指の腹で捏ねられたりを繰り返されると、口から喘ぎが漏れて下のお口もお漏らしを始めてきた。  
「じゃあ、期待しただけでこーんなにしちゃったの? 咲音のえっち」  
「ぁんひぃっ!」  
メイコが両方の乳首を強くひっぱり、電流に貫かれたように背中が反り返った。アソコがじゅわっと一気に濡れそぼるのを感じる。くにくにと乳首を刺激され、調子外れの声しか出せない。  
「あぅ、あっ、ダメ、あ――!」  
「イヤらしい子」  
敏感な部分を他ならぬメイコに執拗に刺激されれば、堕ちるのは容易だ。  
絶頂に達してしまった咲音は胸を押さえて荒れた息を整えていたが、そこに割り込んだ思いがけない声に余韻が吹っ飛んだ。  
 
「胸だけでイクのか」  
 
咲音はぎょっとし、声の方向へ視線を巡らす。覆い被さるメイコの背後、部屋の扉に寄りかかる男がいた。  
「あら、早かったじゃない」  
長身と特徴的な青い髪。静かな低音の持ち主が誰かなんて、今更だった。  
「な、なんで……!」  
慌ててブランケットで身体を隠す。どうして、カイトがここに?!  
「いい風呂だった。君も入ってくるといい」  
驚愕に目を見開く咲音をよそに、二人は当たり前のように会話を続けるが、混乱する少女の耳には届かなかった。  
今日は会わなかったんじゃないのか? だって、メイコは……。そこまで思い至って、愕然とした。  
メイコから『帰る』としかメールを受け取っていない。カイトと会わずに帰ってくると思い込んだのは咲音だ。  
「そおねぇ……じゃあ、入っちゃおうかな。カイトは咲音と遊んでて」  
「えっ?」  
メイコの言い放った信じられない言葉に、咲音は耳を疑った。メイコは、咲音が男が駄目なのを知っているはずなのに……!  
カイトがにやりと笑い近づくのと入れ違いに、メイコは咲音から身を引いた。  
「メイコさん!」  
悲痛な声を上げて伸ばされた手は、メイコには届かず代わりにカイトに受け止められてしまう。骨張った硬い感触に嫌悪を感じ、咲音な肌が泡立つ。  
「君はこっち。仲良くしようか」  
「いやあ! メイコさん!」  
「怖がらなくていいのよ、カイトは優しいから。カイト、ホンバンは私が戻ってからよ?」  
「わかってるよ」  
懇願する咲音を置いてけぼりにし、メイコは扉の向こう側に消えてしまった。  
メイコの姿を求める咲音は、涙の滲む瞳で必死に閉じた扉を見つめていた。お願い、戻ってきてと願いながら。  
しかし希望は届かず強い力で身体を引かれ、ベッドに乗り上げたカイトの胸へ倒れ込む。見上げればカイトが微笑み、青い双眸が咲音を興味深そうに眺めていた。  
その視線に自分の格好と置かれた状況を再認識し、我知らず華奢な身体の輪郭が震える。  
「さて……。君とは一度、ちゃんと話してみたかったんだ」  
「……あ……や……」  
「そんなに緊張することはないよ。大丈夫、ただのスキンシップだ」  
「いや!」  
悲鳴は男の硬い身体に押し潰され、押し付けられる重みと沸き上がる恐怖に咲音の咽は悲鳴すら出なかった。  
 
「こうして二人だけになるのは初めてだね。ずっと興味があったんだ」  
「……」  
「声をかけようにも、咲音ちゃんは僕を見ると直ぐに逃げてしまうから」  
「……う……」  
「メイコからはいろいろ聴いていたけど、どんな子なんだろうってずっと思ってたんだよ」  
「ひぃ……!」  
背中からぴったり咲音に張り付き、カイトが囁く。柔らかい低音は優しいが、その手は咲音の乳房を鷲掴んで離さない。  
「柔らかいね。子供だと思ってたけど結構大きいんだなぁ」  
感心したように呟き、確かめるように揉む手の中で乳房は形を様々に変化する。  
ベッドにうつ伏せにされ、伸し掛かられた格好ではどんなにもがこうと逃げられなかった。指の間からはみ出す肉をカイトは楽しんでいたが、咲音はそれどころではない。  
跳ね除けたくとも、元より成人男性と少女では力の差があり過ぎる。  
「も、もう、やめ……」  
「ねぇこれ、自分で揉んで大きくしたの?」  
「ちが、やぁ……!」  
「それともやっぱりメイコのせいかな? さっきも揉まれまくっていたもんな」  
シーツと身体の間で蠢く手が気持ち悪い。カイトが呟く度に肌に触れる吐息に悪寒がする。  
身体を硬くしじっと耐えていると、カイトの手がやっと乳房を開放した。しかし息をつく間もなく、その手は咲音の腹を下っていく。  
「ここはどうかな?」  
「や……! 触らないで! やぁ!」  
閉じた脚の中心、割れ目をつ……と指先が辿り、咲音は更に脚に力を込めた。だが指は割れ目をこじ開け強引に潜り込んでくる。  
「や! 痛い! 痛いの!」  
「あれ? 乾いてるね」  
くにくに割れ目を探る指に、滑りを感じることができなかった。咲音のアソコはすっかり干上がっている。  
幾らなんでも乾きかけた割れ目を弄られるのは苦痛だ。全身を硬くする咲音にしばし考え込んだカイトは、おもむろにその身体をひっくり返す。  
「っ、きゃ……」  
仰向けになった咲音は一瞬脚の力を解いてしまう。カイトはふくらはぎを掴むと、素早く左右に割ってしまった。  
「あっ、ダメっ」  
カイトの眼前に、咲音の中心が晒された。慌てて脚をばたつかせようとしても、がっちり掴まれて後の祭りだ。  
カイトはそこをまじまじと観察している。痴漢には触られてしまったが、ここはメイコにしか許していないのに。  
性器はあまりにも無防備にカイトに視姦された。  
「みっ、見ちゃダメっ、お願い、やめ」  
「へぇ……本当に生えていないんだ。こういうの初めて見たよ。パイパンって言うんだっけ?」  
「ひぃあ!」  
つるつるの割れ目を、生温い感触が走った。カイトに舐められたのだ。小さな拳がシーツを思わず握った。  
「濡れないと触り辛いからね」  
「あっ、あっ、な、舐めない、で……ぇ……!」  
二度三度割れ目を舌が上下すると、にゅるりとそれが内側に入ってきた。膣口を舌先で遊び溝をたどる感覚に、怖気に似たものに腰が揺れる。  
「あぁ、皮被ってる」  
「あぅっ!」  
クリトリスを強く吸われ、唇がしごいてくる。指では感じなかった咲音も、唾液で滑る舌で性器を舐められてしまえばなす術も無い。  
剥けたクリトリスを捕らえられ咲音は鳴いた。強制的に植え付けられる性感に、脚が震える。  
「何がイヤなの。……ほら、出てきた」  
襞の間から漏れてくる粘膜が光って流れた。カイトは滲み出た粘膜に舌の腹を押し当て、舐め取る。  
「咲音ちゃんの味がする」  
「あぁ! ヤダ! 止めて! 感じたくな……っ、あぁ――――!」  
心と裏腹に反応を返し始め、止まらなくなった粘膜を啜る音。大嫌いな男に快感を覚えた自分に絶望し、咲音は絶叫した。  
 
「楽しかった? 可愛いでしょう」  
さも当然とばかりにメイコはカイトへ問う。シャワーから戻ってきたメイコは、今は一糸纏わず豊満な肢体を晒していた。  
茶色い毛先はまだほんのり濡れて、色濃い。  
息をまだ乱したままの咲音を中心に置き、左右に陣取るメイコとカイトは世間話でもするようにそんな会話を楽しんでいた。  
「ああ。君の亜種だけあって、感度もいいし性感帯も似てるね。パイパンなのも気に入った」  
「ふふ。私も剃っちゃう?」  
寝そべるメイコは身体をカイトへと向けた。むっちりした太ももをの付け根に、淡い陰りが大人の女の割れ目を透かす。  
「その時は僕に剃らせてよ……でも、今は」  
青い視線が咲音へ注がれる。身を守るよう身体を丸めていた咲音は更に身体を縮めた。  
「そうね。今はこっち……。ね、咲音?」  
メイコに微笑まれたが、今の咲音は怯えた瞳を彼女へ向ける。  
「メ、メイコさ、どうし、て」  
震えてしまう声帯を叱咤し、咲音はつっかえながらも懸命に声を絞り出した。メイコはきょとんとして、咲音の言葉をオウム返しで繰り返す。  
「どうして? どうしてって、遊びたかったの。三人でね」  
「三人って……」  
「私がカイトと遊んでいると、咲音はいつも悲しそうな顔をするじゃない。咲音とばかり遊べば、カイトが拗ねちゃうし。  
 だったら、三人で遊べば解決! でしょ?」  
咲音は驚愕に身体を硬直させた。メイコの表情は無邪気で、さも名案を思いついたといった感じた。  
言葉を失う咲音に、メイコは追い打ちをかける。  
「それに咲音が男を経験するのに、いい機会だと思って」  
無邪気な顔に、あっという間に妖しい色が差す。信じられない台詞に咲音は全身を細かく震わせた。  
嫌だ。メイコは咲音が男を受け付けられない理由を知っているのに、どうして……!  
それに、いきなりこんなことを何故言い出したのか? まさか、カイトとの交際に自分が邪魔になっているのか? 飽きられた?  
不吉な予感ばかりが頭を巡る。  
「男も良いよ。咲音ちゃん」  
硬直した咲音の上にカイトが覆い被さり、白い肢体に影が落ちた。唇が寄せられて、弾かれるように咲音は抵抗を始めた。  
「やっ……嫌ぁ! やめてっ」  
伸し掛かるカイトを押し返し、必死で暴れた。しかしそこへメイコも加わり押さえ付けられると、非力な少女の力ではとてもじゃないが敵わない。  
難なくベッドに縫い付けられて、カイトの愛撫を強制的に受けることになる。  
「……う、うう――っ」  
ぬるぬると首を這うカイトの舌が、乳房をふにふに揉む感触が、肌に感じる男の体温と硬さと視線全てに嫌悪感しか湧かない。  
「助け……助けて、メイコ、さ……」  
とうとう咲音はメイコへ助けを求めた。だがメイコは微笑むだけで、咲音の栗色の髪を撫でるだけだ。  
「大丈夫よ。何にも怖いことなんてないの」  
「あっ……」  
股間に感じたのはメイコの指だった。割れ目を辿り、弛んだ脚の付け根に当たり前のように潜り前後に蠢く。ねっとりとした動きに抗えず、咲音の腰が浮いた。  
「ほら、気持ち良いでしょう」  
「参ったな。メイコだとこんなに反応が違うのか」  
「男に慣れてないだけ。ねぇ咲音。私があなたの処女膜破ったあげたでしょ? 痛くなんかないわ」  
「あ、あぁ……」  
手慣れた仕草でクリトリスを刺激され、こんな状態なのに腿がもじもじする。乳首に軽くキスを受け、ひ、と声にならない悲鳴を上げた。  
「私、メイコさんが、カイトさんと付き合ってても、構わないから……邪魔、しない、から、す、捨てな……い、で」  
男性とのセックスを経験させ、咲音が異性に興味を持つように仕向けられるのは堪らなく嫌だった。  
メイコが誰と付き合っていてもいいから、彼女の関心を失うのが怖くて咲音は必死になる。  
だって、女なら誰でもいい訳じゃない。メイコが好きなのだ。  
「やだ。そんなコト考えてたの? バカな子ね」  
目を丸くしたメイコは、微笑んで咲音を覗き込んだ。  
「なにも誰構わず男と寝ろって言う訳じゃないのよ。そんなの私が許さない。あなたを自由にできるのは私とカイトだけ。  
 さっきも言ったでしょ? 私はカイトと咲音で三人一緒に遊びたいの」  
咲音の目に映るメイコの微笑みは深くなり、一層妖艶になる。艶やかな唇が美しい弧を描いていた。  
咲音はようやくメイコの意図を理解した。メイコは言葉通り、三人でセックスをしたいだけなのだ。  
「んむ!」  
カイトが強引に唇を奪う。乳首を細かく弾かれて驚いた拍子に舌を差し入れらる。口腔を蹂躙されて、逃げる小さな舌は簡単に絡め取られてしまい、固く瞑った目尻から涙が流れた。  
 
――カイトを大人しく受け入れれば、メイコの関心を繋ぎ止められるのか。  
絶望感に胸を塗りつぶされながら、咲音の抵抗は徐々に弱々しくなっていった。  
「そうそう。カイトに全部任せちゃって」  
涙で濡れた頬にメイコの唇がちゅ、とキスをする。額に鼻に、そして目尻に浮かぶ涙を吸い、唇の軌跡は耳の裏へと流れた。  
割り開かれて固定された股には青い頭が揺れている。  
「はぁう……」  
恥丘のつるりとした感触をカイトは愉しみ、割れ目の上部のクリトリスを舌で回しながら舐めた。  
「ひぃ……あ……」  
小さなクリトリスを食んで吸われ、咲音の腰の揺らぎが頻繁になる。  
下半身を陣取るカイトを無視し、寄り添い上半身を愛撫するメイコに集中しようとした咲音だが、性器を直接弄られる刺激は抗えない。  
無視を通すことは難しく、いつしかメイコに抱き付きながらカイトの愛撫に恍惚になってくる。  
「んっ、ふぅん……」  
「ふふ。感じてる」  
「嫌がりつつも……っていうのが、そそるね。メイコとはまた違うエロさがある」  
散々弄られ責められたクリトリスはなにをされても過敏に反応した。もう、それが嫌いな男でも関係なく、女の指先か男のそれなのか曖昧になる。  
思考を蝕む快楽は、咲音をじわじわ侵食していった。  
二人がかりの長い時間をかけた愛撫は、咲音の気力を根こそぎ奪う。何度目かの絶頂を迎えた少女の肢体は力無く二人の間で横たわった。  
浅い呼吸に全身は、さざ波に飲まれたように揺れる。乳首を尖らせてたゆたゆ振動する乳房に、男と女の愉しげな忍び笑いが聴こえた。  
「さて、ここまで前戯すれば大丈夫かな?」  
「そうね。咲音ったら、すっごく気持ちよくなっちゃったもんね。ほら」  
指が咲音の大陰唇を遠慮なしにくぱりと拓く。桃色の性器はてらてら淫靡に輝き、花弁に似た二枚の襞が露出させられた。その奥から滲む粘膜が赤い爪を濡らす。  
「ん、準備オーケーってとこか。じゃあ、いいね?」  
「もちろん」  
咲音の預かり知らぬところで話が進んでいく。怠い身体を叱咤し頭をすこし起こすと、視界に入った現実に慄いた。  
カイトは服を脱ぎ、筋肉質の痩身が暖色系の照明に照らし出された。濃い陰影がカイトの筋肉を薄く浮き立たせている。  
そして股間にそそり勃つ肉棒に目が行き、悲鳴が上がった。  
天井を向き主張するそれは膨れ上がり血管が浮き、グロテスクで禍々しい。咲音の瞳には凶器にしか映らなかった。  
ふくらはぎを掴んで開かせようとする力に逆らい、咲音は再び暴れだす。  
「やっ、嫌ぁ! む、無理です、そんなの入らな……」  
無理矢理股を割り、硬い身体入ってくる。亀頭を溝に擦り付けられ、あらんばかりの力で抵抗する咲音の肩をメイコがベッドに縫い付けた。  
「大人しくして、暴れるとマンコが裂けちゃうわよ!」  
メイコの一言が余計に恐怖を煽った。あんな質量に挿入されたら、本当に裂けてしまいそうだった。  
「こわ、怖いぃ! あんな、壊れ……っ」  
怖ろしさに囚われ咲音は泣き出した。しゃくり上げる咽の音が虚しく響き渡ると、やがて咲音の身体を拘束をする全てが離れた。  
場はすっかり白け、さっきまでの歪んだ興奮の熱が急に冷え込こむ。メイコのついた溜息に落胆が混じり、咲音は鼻をすすりながら居心地悪く身体を竦ませた。  
「つまんないコ」  
ぼそりと呟かれたメイコの言葉が咲音に突き刺さる。こんな不機嫌で冷えたメイコの声は聴いたことがなく、不安が暗雲のように胸に満ちていく。  
「カイトは上手いから、咲音にも気持ちよくなって欲しかったのに」  
「メ、メイコさ……」  
「そんなに嫌がるならもういいわ。咲音なんて要らない」  
突き付けられた台詞に身体から硬直する。大きな瞳だけが見開いて動揺に凍りついた。  
「そんな、わたしは」  
「部屋から出ていってよ。これからカイトと愉しむんだから。仲間にならないなら、咲音は要らないの」  
言い捨てて、メイコはカイトの首に自分の腕を巻き付ける。そのままベッドに倒れ込むと、粘着質なキスの音が響いた。  
「いいの?」  
唇の合間からカイトの囁きが漏れる。  
「いいわ、もう……ん、ぁ……」  
咲音の存在など消し去ったかのように、二人は絡み合う。置き去りにされた咲音の前で、行為はどんどん進んでいった。  
カイトは勝手知ったるメイコの肢体を慣れた手付きで弄り、喘ぐ白い咽が反る。豊満な身体が拓いて、カイトの腰に絡まる脚が淫靡だった。  
咲音を一顧だにしないメイコの痴態を映す涙の滲む瞳は、呆然とその光景を映していた。  
いや……。  
このままじゃ、嫌われてしまう。このままじゃ……!  
 
「メ……メイコさん!」  
思わず出た叫び声に、メイコは億劫そうにゆるりと咲音へ首を回した。  
「なあに? まだいたの?」  
面倒くさそうな声に怯みつつも、咲音は逃げ出したくなる気持ちを堪える。  
「わ、わたし……わたし、も――」  
震える声を叱咤し嫌われたくない一心で伝えると、しばしの沈黙の後メイコは満足そうに艶然な微笑みを浮かべた。  
 
「私の上で四つん這いになりなさい」  
 
仰向けに横たわるメイコの上に咲音は言われた通りの格好になった。  
白くまろい尻をカイトに向け、丸出しの性器は青い視線に晒された姿だ。  
恥ずかしさに目眩がするが、拒否すればメイコに嫌われる。その気持ちだけで耐えた。  
「あーあ。乾いちゃったね」  
性器を観察するカイトがボヤく。尻に添えた手の親指が大陰唇を拓かれて、丸い輪郭が小さく震えた。  
「また弄ればいいじゃない。もう逃げないんだから」  
ねぇ。と、下から伸ばされたメイコの手が咲音の頬を撫でる。慰撫する優しい手付きと向けられる微笑みに、咲音はほんの少しだけ安堵した。  
……自分を誤魔化しているのは重々分かっているが、メイコの温もりに今は縋るしかなかった。  
「……咲音ちゃん。セックスはそんなに怖がるものじゃないんだよ」  
背後で語るカイトの声は穏やかだが、そんなことを言われたってこれからすることはあの日の恐怖をどうしたって呼び覚ます。  
「大丈夫、いきなり挿れることはしない。君はまず、見学だ」  
「え?」  
思いがけない言葉に面食らう咲音の下で、メイコの表情が変わり色付く。  
「あっ、カイト……あぁんっ!」  
ぐじゅんと派手な水音。上半身を前傾させるカイトの腹筋に、咲音の尻は押し上げられた。  
カイトは咲音の下で寝そべるメイコを肉棒で貫いていた。律動はカイトが腰を振る度に、咲音の身体にぶつかる。  
見下ろすメイコの顔は蕩けて嬌声は甘い。まるで咲音までメイコを犯している気分にさせられる。  
「カイト、んぁ、ソコ、キモチいいっ、はぁん……っ」  
咲音と『遊ぶ』時とは違い、メイコの顔は女そのものだった。ぐじゅっぐじゅっと粘着過多な水音が立つ度に、咲音の身体もカイトに押されて揺れる。  
同じ律動がメイコと咲音を襲い、仰向けと下がる互いの乳房がゆらゆら波打った。  
忙しない抽送に歪む顔が、せがむ言葉が、よがる肢体全てがカイトの挿入を悦んでいる。汗ばみしっとりする肌は火照り、下肢から鳴る音に合せ喘ぐ姿は卑猥だ。  
「メイコ、人のこと言えないじゃないか。咥え込んて離さないよ。ねだって吸い付いてくる」  
カイトは小刻みに中の肉棒をピストンさせ、最奥を小突く。  
「ひん、イイの、もっとしてぇ……ひぁっ、あぁあんっ」  
「じゃあ、いつもみたいにマンコ使ってよ。締めて……あぁ、イイね」  
こんなメイコの表情を見るのは初めてだった。  
咲音と交わるときはいつだってメイコは優位を崩さず少女の身体を苛んだが、受け身の彼女は与えられる快楽を全身で追い求めてひたすら乞う。  
カイトの興奮した吐息と感じ入る声。それを背に、咲音は瞳に痴態を映して呆然と見下ろした。  
「ダメ! もうダメっ、私、イッちゃうからぁ」  
蕩け切った声にどれだけ感じているのかひしひしと伝わる。ぷっちり勃った乳首にぶるぶる振れる乳房。  
第三者の前でも憚らず喘ぐその姿に圧倒され、我知らず咲音の女芯がジンと滲んだ。  
「アヘ顔見られながらイケよ……!」  
「あぁんっ、イク、もうイクぅっ……! あっ、ああぁ――――っ!」  
ビクビク跳ねて、メイコは登り詰める。高く嬌声を響かせ快楽に堕ちる様を、咲音は全てその眼に焼き付けた。  
 
メイコの媚態に身動き一つできなかった咲音の尻をカイトが掴んだ。驚きに少女の身体がびくりと震える。  
ぎこちなく首を後ろに回す。薄く笑う青い目と視線がぶつかり、竦み上がった。  
「……次は、君の番だよ」  
柔らかな声音は通常ならば安心できるものだが、咲音には残酷な宣言にしか聴こえない。  
逃げたいが、ここで音を上げてしまえばメイコは二度と咲音に関心を向けることはないだろう。  
挫けそうになる心を叱咤し、咲音は必死で身体を支える。  
「大分緊張してるね。身体ラクにして」  
苦笑混じりに言われたって、どうすることもできない。ふと、きゅっと目を瞑る咲音の頬を、そっと捕らえる感覚がして目を開ける。  
微かに滲んだ視界に、メイコが優しく微笑んで咲音を下から覗き込んでいた。まだ余韻の残る顔でメイコは瞳を細める。  
「そんなに怖がらないで。大丈夫。カイトは上手いのよ。咲音だって直ぐに良くなっちゃうんだから」  
引き寄せられ、小さくキスされる間にも溝に半勃ちな切っ先の先端が擦り付けられ気が気じゃない。背後で含み笑いが聴こえて、狼狽える。  
「まだだよ。そんなに早く勃たないって。だけど、手伝ってね」  
「て、手伝う?」  
動揺する咲音の股を閉じられ、内股ににゅるりとした感触。カイトの不完全な硬さのそれが、ぴったり合わさる太ももの間に潜り込んでいた。  
脚の付け根と太ももの僅かな隙間に肉棒を挟んで、メイコにしていたようにカイトはピストン運動を開始し幼い女芯を擦る。  
「………っあ!」  
「なんだ。結構濡れてるね。感じてるメイコを見てて、こんなにしてたんだ?」  
「やっ、やあ……」  
ぬめりが肉棒をスムーズにし、余計に性感を加えた。程なく欲望を形どるそれは、咲音の太ももに硬度を伝える。  
今にも挿入しそうに膣口を亀頭で引っ掛けられ、怯む腰の反応が面白い。  
楽しくなって何度も繰り返せば、それも刺激となって漏れる声が発情したネコのそれに似ていた。  
「さぁて、そろそろ挿れるからね」  
すっかり硬度を取り戻した肉棒がぴとりと膣口へ宛がわれた。メイコはワザと愛撫の手を止め、興奮を抑えられない眼差しで咲音を見上げている。  
「ひっ、ぁ、ぐ……っ」  
圧迫感が下肢を襲う。幼い膣に太い肉棒を捻じ込まれ、酸素を求めて開いた口から唾液と苦悶の呻きが漏れる。  
「せっま……」  
カイトの表情も、最後まで拒む膣の圧力に歪んだ。しかし侵攻は止まらない。  
過度の緊張で身体を支える腕と脚の輪郭が震える。中を少しずつ埋める肉棒の存在感は、メイコが操るバイブの比ではなかった。本物は太く硬く、その熱が咲音を蹂躙するのだ。  
「ひぃ……っ、や、抜いてぇ……っ、抜い……」  
メイコに処女を捧げたときだって無理に異物を飲まされる感覚が痛みを伴い身体を苛んだのに、カイトの肉棒は更に膣口を拡げてくる。  
脈打つ肉棒が、偽物との違いを如実に咲音に伝えるのだ。  
犯されている。大嫌いな男の象徴が、時間をかけながら自分の中に潜り込んでくる。  
「んぅ……いっ、あ……っ」  
途中で留まり、そこで具合を確かめながら浅く抜き差しし、また奥へ。元々メイコによって開通している孔だ。苦痛は思ったほどではない。  
しかし男性への嫌悪やカイトへの嫉妬が綯い交ぜになった胸は苦しくて、瞑った瞳から涙が零れメイコの上に落ちた。  
「咲音、すごく可愛いわ……」  
「メ、イ……」  
メイコのご機嫌な様子にホッと息をつくその瞬間、中でゆっくり進んでいた異物が勢いをつけ、咲音の顔色が変わった。  
「?!」  
「奥は閉じているんだな」  
カイトが膣の最後の部分を先端でぐりぐり抉った。その刺激に腰が跳ねる。  
「や、カイトさんっ、まっ……! あぐっ」  
ぐっと後ろから強い力が加わり、腕が挫けそうになった。閉じていたそこは力負けし呆気なく陥落する。  
「……っは。最後まで入った」  
カイトの腰は丸い尻にピタリと密着し、軽く揺すぶる。  
とうとう全て攻略されてしまったと、最奥に感じる切っ先に咲音は目の前が真っ暗になった。  
 
「ひぃあっ! うご、動かないでぇっ、ひんっ、やあぁ――――!」  
再びパニックになった咲音の懇願が受け入れられるはずもなく、カイトはピストン運動を開始した。  
衝撃に前へ押し出される身体を細腰を掴んで阻止し、カイトはそれまで緩慢だった動きを一転させて、がんがん腰を打ちつけてくる。  
「あうっ、あぁあっ! だめぇっ、そこは、メイコさんだけの、ぅひぁ……」  
「嬉しいこと言ってくれるのね。そうよ、咲音は私のモノよ」  
「メイコさん、メイ、あぅうっ!」  
「あなたは私のモノなんだから、おマタを開いてカイトに犯される顔を私に見せて?」  
「ひぃ! ひぃん……っ!」  
咲音の目から大粒の涙がぽろぽろ溢れ、落ちる水滴がメイコを濡らす。腕と脚を必死で支え、凌辱に歯を喰いしばり耐える咲音をメイコはうっとり見つめていた。  
「お? 柔らかくなったかな?」  
忙しないピストンは緊張し切っていた膣内を程良く解し、カイトを受け入れ始めた。同時にえもいわれぬ感覚が咲音を襲う。  
「あぅっ?! あっ、あぁ……っ!」  
信じられない。これは紛れも無く「快感」だった。あれだけ嫌悪していた男の、その猛る肉棒に身体が反応し始めたのだ。  
一瞬の混乱は、打ち付けられる腰にすぐ様消された。  
肉の道を擦り奥を叩く衝撃は全身を痺れさせ、考えることを許さない。色が変わった咲音の声は、攻め立てるカイトと犯される咲音を鑑賞していたメイコにも簡単に知れた。  
「カイトのおちんちん、気持ちイイでしょ?」  
「ひぃいっ!」  
貫かれて揺すぶられる咲音の乳首を、乳輪ごと赤い爪が捻った。痛みを感じるほどの力で抓られたというのに、咲音は淫らがましくよがる。  
「ん……っ、今の、締まった」  
カイトの表情が顰められた。抓んだままぐりぐり指の腹で転がして、メイコはもう片方の乳首を口に含む。こちら側は優しく唇と舌先で愛撫した。  
複数の性感帯を刺激され、四つん這いの咲音は身体を支えるのもやっとだ。  
半開きのままの口からは絶え間なく喘ぎが漏れ、顎を唾液が伝う。  
あれほど怯えて震えていた瞳は潤んでとろりと虚空を泳ぎ、股を開いて自ら尻をカイトへ押し付ける有様だった。  
「あんっ、ひぁ、んっんっ」  
「どこが気持ちイイの? 言ってみて」  
「うぁ、あっ、ち、ちくび……」  
答えれば、胸の頂きを強く引かれる。はしたなく鳴いて反射的に膣を締めた。  
「……っ、ま、まん、まんこ、……もっ、ああぁう!!」  
「嬉しいね」  
ぱんぱん音を立て、締りに逆らうよう肉棒が膣内で暴れた。汗ばむ白い背中は体内を犯す快感に背筋を反らす。  
「ぅひっ! ひぃぃいんっ」  
メイコの操る道具しか知らなかった咲音は、カイトの肉棒にすっかり翻弄されていた。  
男根は膣をこじ開け収縮する内側を擦り、最奥まで届くそれは小さな孔を隅々まで犯す。カイトはもう手加減するつもりはないらしく、速度をつけてガンガン腰を振り咲音を揺さぶった。  
「あぁんっ! あつ、い……お腹、熱いぃ……」  
悦楽はいっそ凶暴だった。意識は胎で暴れる肉棒へ集中し、嫌悪も失せてなすがまま。奥を突く衝撃の重さに指先まで痺れて溺れていく。  
メイコ語るのカイトは正鵠を射ていた。犯され身体を蝕む快感は、メイコの愛撫も手伝い咲音の凝り固まった男性への不快感を溶かした。  
神経回路は快楽で埋めつくされ悦んでいる自分を自覚し、咲音は男を否定することはもうできない。  
「うぁ、あひっ、イ……っ、ひぃ!」  
「ん…… イキそう、かな?」  
肉棒を食む膣の変化にカイトが気がついた。呟いた言葉を耳にした途端、咲音が焦ったように首を横に降ってメイコに縋り付いた。  
「いや……っ! ぃいやぁ――っ」  
「どうしたの」  
助けを乞うように抱きつく咲音を受け止め、メイコは優しく背中を撫でる。  
 
「いやぁ、イっちゃ、イクの、イクのやだぁ! うぐっ……ああぁん!」  
口から出てくる言葉は男への拒絶だが、最早それは口先だけになっている。カイトとメイコに丸分かりだ。  
誘い振る尻や、抽送に咽ぶ声はどこまでも咲音を裏切る。  
「……ああ。僕も、そろそろ……っ」  
「! ひぃあ! あぁっ、ぐっ」  
膣内を一層激しく肉棒が穿つ。悶える肩が跳ねて細い首が反らされた。上がった顔、その頬を片手で撫でるメイコも頬を上気させている。  
イヤだ止めてと言いながらも、性感に逆らえず涙を流す咲音が愛しい。  
「イイわ……咲音のイキ顔、しっかり見せて」  
にっこり笑むメイコの、空いている手がそおっと下る。咲音の下肢、拓いて細かく震える脚の間へ。  
肉棒の突き刺さる襞の上部の剥き身になったクリトリスを、強く抓み上げた。  
「んひぃ! ひいぃぃっ――――あああぁあっ、イっ、クぅ――――」  
中を犯され、限界まで過敏になった肢体にメイコの指先は止めになった。小さな身体は全身が戦慄き、登りつめて絶叫する。  
「はは、すごい締め付けだ。じゃぁ……」  
絶頂の余韻に浸るまもなく、カイトが肉棒を膣で扱く。まだカイトは達していない。そのことに思い到るも、痺れきった身体はもう自分の言うことを利かなかった。  
イった膣を抉る行為は、むしろ咲音の動きを封じる。  
「! イ、イヤっ……いやだぁ……――――ひっ」  
背後で感じる吐息と僅かな呻き声。胎内に迸った熱に、咲音の世界が崩壊する。  
大嫌いなはずの男に、身体を陵辱されたどころか膣内射精まで。  
人間じゃない存在、妊娠の心配のなとはいえ、胎内を汚されたショックは大きい。茫然自失状態に陥り、この瞬間ばかりは強制終了寸前まで追い詰められた。  
身体が傾ぐ。挫けて崩れ落ちる咲音を、両腕を広げて受け止めたのはメイコだった。  
乳房が重なり合い柔らかく形を変える。抱きしめられて顔中に降るキスに、咲音の意識が向けられた。  
「可愛かったわ……イキ顔すごくステキよ。これで私たちの仲間になったのね」  
「な……かま……?」  
「そうよ。三人でずーっと一緒よ。ふふっ、愛してるわ咲音」  
愛してる。自分に向けられたメイコの言葉が、壊れかけ亀裂の入った心に染み入る。  
よかった。メイコに見限られることはない。また笑ってくれる。抱き締めて、愛してもらえるんだ。よかった……。  
ただそれだけが、咲音を満たし現実と精神を繋ぎ止めた。  
「メイコの上に咲音ちゃんのまんこが乗っかって、すごくエロいことになってるよ……これは眼福だね」  
重なり合って肌を寄せる二人を足元から眺めていたカイトが、いやらしく笑う。  
性器同士は重なり合い、咲音のヒクつく無毛の膣口から溢れた白い欲望が、メイコの性器へ垂れてねっとり流れている。白い粘液は、ぽってりした二枚の花弁を持つ花を猥雑に彩っていた。  
「ずるいカイト。私も咲音のエロまんこ見たい!」  
もたれ掛かる咲音を横に寝かせ、メイコはカイトの方へ移動する。開いた脚の中心を覗き込むメイコの顔は、子供のように無邪気だった。  
「……わ、パイパンマンコから出てくるザーメンって、背徳的……」  
「毛が無いと子供に射精したように見えるね。実際、中もキツかったしな」  
「ねぇ咲音。男もイイでしょ。もうイヤじゃないわよね。あんなに感じて、止めてって言いながら、マンコでおちんちんをしめていたんだもの」  
ぼんやり天井を見上げる咲音は、ただ頷く。無意識の肯定は咲音の本音そのもの。メイコは嬉しくなって婉然と微笑んだ。  
「二回目だっていうのに、いっぱい出したわね」  
指が性器に伸び、襞の間をなぞるとに咲音の粘膜が混じった精液に汚れる。メイコはその指先を、なんのためらいもなく口元へ持っていき、ぺろりと舐めた。  
「美味しい」  
咲音の視界に微笑むメイコと傍らに寄り添うカイトが映る。  
涙に滲んだ光景は揺れて歪み、この先の自分たちの関係を示唆しているようだったが、とっくに思考を手放した咲音はただ現実を受け入れることしかできなかった。  
 
 
「……眠っちゃったね」  
「精神に負荷がかかりすぎたのよ。しばらく起きないわ」  
瞳を閉じてベッドに身体を沈める咲音の寝顔は穏やかだ。その淵に腰掛けたカイトとメイコは、深く眠る咲音を見守る。  
「この子、痴漢にあってからどうしても男がダメだったから心配だったのよ」  
「男が嫌いな咲音ちゃんに僕をけしかけたのは君だろ? 可愛がっているくせにヒドイよね」  
呆れた物言いだったが、カイトは本気でそう思っているわけではない。カイトがメイコの行動に口出すことなど殆どない。  
最終的に自分の元にメイコが戻ってくれば、彼女が何をしようと文句などなかった。  
 
「僕はメイコが咲音ちゃんと寝ようと気にしなかったのに。3Pがしたかったの?」  
「違うわよ。どうせなら三人がよかったの。誰も拗ねなくて、咲音の男性恐怖症を改善できるステキな方法。カイトはイヤ?」  
「そんなことはないよ。役得だしね」  
カイトの返答に、メイコが満足そうに目を細めた。  
「それにしても、イヤだやめてって言ってもやっぱり身体は正直ね。中出しされた時の咲音の顔ったらなかったわ!」  
にんまり頬を緩ませ、ブランケットを捲って露になった咲音の乳房を掴み、小さく振る。ぷるぷる弾む白い肉で遊ぶメイコを、カイトは別な感情を持って見つめた。  
まだ世間でボーカロイドが認知が薄い頃、彼らは出会った。その頃のメイコと今の彼女では見る影もない。  
あの時分のメイコは、倒錯的なセックスどころか交際相手も男性経験もなく、男好きする容姿を持ちながらも純情な女だった。  
――所属事務所から、大物音楽関係者への枕営業を命じられるまでは。  
立場の弱いメイコたちには、当時断るなどとても出来なかった。  
あれから徐々に彼女は変わった。  
今ではそんなことをする必要もないほどボーカロイドとして必要とされるようになったが、自分の意思など関係なく身体を弄ばれた経験は、今でも色濃くメイコの中に残っている。  
カイトとのセックスを愉しみ、果ては可愛がっている自分の亜種にまで手を伸ばす。  
快楽への貪欲な欲求は底知れないが、それでも相手はきちんと選んでいることをカイトは知っている。  
メイコは執着するモノを、なにがなんでも手に入れなくては気が済まなかった。時には、長く傍にいるカイトでさえも驚くほど、大胆な行動を取ることもままあるのだ。  
――――そして、今回も。  
「……ねえ、メイコ」  
「なに?」  
メイコは返事をしつつも咲音の胸を弄ぶことを止めず、カイトに目もくれない。  
「咲音ちゃんの男性恐怖症の原因、仕事先のプロデューサーにイタズラされてからって、言っていたね」  
「うん。そうよ」  
「そいつ、誰?」  
カイトにはそのプロデューサーに心当たりがあった。仕事相手の歌い手に手を出すことで、業界の中で密かに噂されていた人物がいる。  
メイコが知らないわけない。枕営業をしていた頃、メイコを何度も指名してきた男だったのだ。  
メイコは何らかの方法を使ってあのプロデューサーを咲音に近づけ、トラウマを植えつけたのではないか。  
そして男性に恋愛感情を持つようになる前に恐怖で封じ、咲音を篭絡したのだ。  
全て咲音を自分のモノにするために。カイトと咲音で遊びたいがために。  
 
「…………どうして、そんなこと聴くの?」  
茶色の虹彩がカイトに向けられる。さっきまでのはしゃぎ様が嘘のように、メイコは静かな視線でカイトを見据えた。  
しばらく見つめ合うことが続いたが、先に視線を外したのはカイトだった。  
「……いや。もういい。変なこと聴いちゃったね」  
聴いたところでどうなることでもないのだ。カイトはこんなことで、メイコから離れたりはしない。今更有り得ないのだ。  
メイコがそっと身を寄せ、擦り寄ってくる。素肌の感触にカイトは視線を上げた。  
「咲音は可愛いでしょう」  
「……そうだね」  
「どっちも大好きよ。だから、カイトもあの子を愛して」  
しなやかな腕が首に回され、身体が密着する。柔らかな乳房がカイトの胸板に押し付けられ、耳に妖しい囁きが吹き込まれた。  
「君が望むなら」  
囁き返し、カイトはメイコの髪を撫でる。気持ちよさそうに瞳を閉じ、メイコはカイトの唇に自分のそれを重ねてきた。  
受け止め、カイトも目を閉じる。  
メイコが望むならなんだってする。  
枕営業を止められず指をくわえて見ていることしかできなかった過去の負い目は、メイコに爪痕を残したようにカイトの中にもまた根深く蔓延っていた。  
初心そのものだった昔も性を悦ぶ今も、カイトにとってはただひとりのメイコだ。愛した女が咲音を自分たちの中に入れるなら、従うまでだった。  
おまけに咲音は昔のメイコに似ている。異論などあるはずもない。  
口付けは既に濃厚なものになり、息が弾んでくる。小さな快感に次の刺激を求め、これだけじゃ物足りないと身体が火照り訴える。  
「ふふ……カイト、勃起してる。絶倫さんね」  
「メイコも乳首をコチコチにしてるじゃないか。僕が絶倫なら君は相当なスキモノだよ」  
「そうよ。カイトや咲音とするセックス大好き。これからもっと楽しくなるわ。ねぇ?」  
だって三人だもの。気持ちいいのが三倍になるね。メイコが身を任せながら無邪気に語る。そのメイコを押し倒し、カイトは下肢へと手を伸ばした。  
「……カイト」  
「なに?」  
「私はね、三人でずっと一緒にいたかっただけよ。それだけなの」  
それが先程はぐらかされたカイトの問いへの答えだった。度重なる無体な要求に歪み変質したメイコだが、好意を持つ相手へ向ける真っ直ぐな心は変わらず純粋だ。  
「うん。分かってる」  
にこりと昔の貌でメイコが微笑む。かつてのメイコを愛したカイトも、彼女に合せ変容していった自分を自覚できずにいる。  
 
絡み合い溺れる二人の隣では、目覚める気配にない咲音が何も知らず深く眠り続けている。  
 
おしまい  
 

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