「――んんっ……! 私、もう、ダメっ……!」  
 
 かぼそい声で喘ぎながら、ルカが、その身を弓なりにびくんびくんと反らせる。  
 「くっ…僕も………!  
 それと同時に、彼女と繋がっている僕の下半身も限界を迎え、ほどなく、ルカのほの暖かい体内で射精に至った。きつく張った  
性器の中を、精液が通り抜けていく快感に身を任せつつ、僕は「……ふぅ」とため息をつき、ごろりとベッドに寝転がる。  
体中の汗が冷えていくのを感じながらぼんやりと天井を見つめていると、やがて、絶頂の余韻から解き放たれたルカが、僕の  
胸板にそっと顔を寄せてきた。  
 「……素敵だったわ」  
 火照った顔と潤んだ瞳で、僕を見上げてつぶやくルカ。そんな彼女の表情に僕はどぎまぎしてしまい、  
 「うん……ルカも」  
 と、言葉少なに返事をする。  
 「ふふっ」と小さく笑うとルカは、僕の手をそっと取り、静かに目を閉じた。  
   
 
 「ずいぶん汗をかいちゃったわね。ふき取らないと、風邪を引くわ」  
 
 ルカはそう言って身を起こすと、タオルを求めてベッドの上を見回した。  
 「さっき使って、その辺に置いたはずだけど……。よかったら、新しいのを出そうか?」  
 僕は立ち上がってベッドから降りると、確か洗濯したばかりのタオルがあったはず、などと思いながら押入れの戸に手をかける。  
 「ううん、大丈夫。ベッドの下に落ちてて……あら?」  
 ベッドの端から身を乗り出し、タオルを拾い上げようとしていたルカが、突然、何かに気付いたように声を上げた。  
 「どうしたの……って、ああっ!」  
 とりあえず洗い立てのタオルを用意した僕はくるりと振り向き、ルカがベッドの下を覗き込んでいるのを見てぎくり、とした。  
 
 マズい。  
 ベッドの下には、『アレ』が。  
 
 「……なあに、これ?」  
 ごそごそと暗がりに手を突っ込み、『ソレ』を引っ張り出したルカが、きょとん、とした表情で見つめている。  
 ……およそ30センチほどの高さを持つ、円筒状の物体。素材は柔らかなラバー製であり、片方の底面に空いた穴の内側は、  
複雑な凹凸形状を成している。  
 ぐにぐにと指でつつきながら、僕の方に物問いたげな視線を送ってくるルカ。僕は観念して、お腹の底から声をしぼり出した。  
 
 「……お、オナホール……です」  
   
 いや。  
 別にどうしても隠さないといけないようなモノではなかったのだ。僕も彼女も、そういう玩具を恥ずかしがるような年齢でも  
ないのだし。  
 なのにこの胸にわきあがってくる、得体の知れない罪悪感は、もはや男の本能とでも呼ぶしかないのだろう。  
 
 「……ふうん、これがねー。話には聞いたことがあるけど、本物を見たのは初めてだわ」  
 僕の『自白』を受けた後も、ルカは興味津々といった顔つきでベッドに座り込み、オナホールをしげしげと観察している。  
そのそばで、なぜだか恥ずかしいような、いたたまれないような気分の僕は、ルカから顔をそむけたまま、所在なさげに立った  
ままでいた。  
 「ねえねえ、コレってどうやって使うの?」  
 なのに彼女は、そんな僕の複雑な男心も理解せず――いや本当は理解したうえでわざとやっているのかも知れないが――  
出し抜けにこんな質問を投げつけてくるのだった。  
 「ど、どうやって、って言われても……」  
 へどもどしながら、僕はつっかえつっかえその器具の使用方法を説明する。  
 「……なるほどね、よくこーいうの思いつくものね、男の人って」  
 「いや、開発者の性別までは、僕は知らないけども……」  
 説明を受けたルカは、なおも興味深そうに、独特の形をした挿入口にぶにゅ、と指を突っ込んだり、セットになっている  
ローションのボトルをちゃぷちゃぷと振ってみたりして遊んでいる。その様子を見ているうちに、僕は、なんだかもう、  
たまらなく気恥ずかしくなってきてしまった。たぶん、顔も真っ赤になっている気がする。  
 「も、もういいでしょ? とりあえず、元のところに戻して――」  
 
 「ねえ」  
 
 僕の頼みを打ち切るように、ルカが短く言葉を放つ。  
 それと同時に顔を上げ、僕に向けられたその表情は、この上ないニヤニヤ顔だった。  
   
 「今から私と、コレを使ってゲームをしない?」  
 
 いったい何を言い出すのか、という僕の内心の不安をよそに、ルカが楽しげな口調で言う。  
 「げ、ゲームって?」  
 「そう、ゲーム。これから私が、このオナホールを使って貴方を気持ちよくさせてあげる。具体的には、コレを貴方のあそこに  
  かぶせて、上下に往復させるのを1回として数えるの。で、それを100回繰り返す間、射精せずにがんばれたら貴方の勝ち。  
  ガマンできずに途中で射精してしまったら私の勝ち、っていうのはどう?」  
 「………」  
 何というか。  
 非常にくだらない、いかにもバカップルが思いつきそうな遊びというか。  
 自分がそのバカップルの当事者でなければ、苦笑いを浮かべるしかなさそうな提案だった。  
 「……ちなみに、その、勝ち負けにはどういう意味が?」  
 「そうね……ごほうびも無しじゃ張り合いがないし……負けた方は、勝った方の言うことをなんでも聞かなきゃいけない、って  
  いうのはどう?」  
 敗者は勝者に絶対服従。  
 これは、なんとしても勝たなければ。……というか、なんとしても、敗者になることだけは阻止しなければ。  
 ルカの、時に無茶振りとも言えるような、過去の数々のわがままを思い出し、僕はぶるり、と身震いをした。  
 「どうする?」  
 相変わらずのニヤニヤ顔をたたえたままで、ルカがこちらを見上げている。  
 僕はひとつ、はあ、と嘆息すると、力なく返事をした。  
 
 「……やるよ」  
 
 ――どうせ、断ったら断ったで、無条件で無茶振りを強いられるだけなのは目に見えているのだから。  
 
   
 「それじゃ、ここに座ってちょうだい」  
 ルカが左手で、自分の座っているベッドの縁をぽんぽんと叩いた。言われるがままそこに腰かけると、密着したルカの体から  
漂う香りが、ふわり、と僕の鼻先をくすぐる。  
 「こうやって、ローションをホールの中に注入して……」  
 両手にそれぞれオナホールとボトルを持ち、ボトルの方をぎゅっ、としぼる。透明な粘液が勢いよく飛び出し、またたく間に  
オナホールの中に満ちていった。  
 「あ、えっと、ローションはお湯か何かで温めてから入れた方が……」  
 「別にいいじゃない? どうせビンビンに勃起したおちんちん入れて出し入れするんだから、すぐにあったまるわよ」  
 こともなげにルカがさらりと言う。ベッドの上で、僕に抱かれている時の彼女はわざとしとやかな言動を演じている節があるが、  
普段の彼女の発言は、その、なんというか、実に放埓なのだった。  
 「……十分入ったわね。あとは、こうやって空気を抜いて……」  
 ボトルをベッドサイドのテーブルに置き、ルカが両手でオナホールを握ると、ぶじゅ、という音と若干の気泡とともに、  
挿入口から少量のローションがあふれ出した。  
 「これで、準備オッケー、よね?」  
 「あ、うん」  
 くりん、と問いかけるように向けられた視線に、素直にこっくりとうなずき返す僕。  
 「……それじゃあ、と」  
 僕の隣に座っていたルカが左手を伸ばし、僕の腰に回す。そのまま自分の方にぐい、と引き寄せると、右手に持ったオナホールを  
僕の股間へとあてがってきた。  
 「う……!」  
 先ほどのひとときだけでは収まっていなかった僕の性欲の象徴が、ぬるり、という感触に、ぴくりと反応する。  
 「うふふ……」  
 その反応を目ざとくとらえたルカが、小さく笑いを漏らす。すでに勝ち誇っているかのように。  
 
 ……いや、多分、大丈夫だ。100回くらいなら、耐えられるはず。  
 そうでなければ、男として情けない。  
 僕がそう心の中で決心すると同時に、  
 
 「はじめっ♪」  
 
 ずぷんっ、というかすかな音と共に、僕の陰茎はオナホールに飲み込まれていった。  
   
 「く……うっ」  
 
 たちまちの内にまとわりつく、どろりとしたローション。上下左右から締め付けられるような、ラバーの感触。それらに思わず、  
僕は小さなうめき声をもらす。  
 けれど。  
 「……あら? 思ったより冷静なのね、つまんないの」  
 一息ついて、すぐに平静を取り戻した僕に対して、ルカがつぶやく。  
 「そりゃまあ、何度か自分で使ってるものだからね……」  
 いくらよく出来ているといっても、しょせんは玩具。繰り返し使っていれば、その限られた刺激にも慣れてしまおうというものだ。  
 「まあ、すぐに終わっちゃうよりは楽しめるわよね……それじゃ、動かすわよ?」  
 そう宣言しながら、ルカがオナホールをずず、と持ち上げる。股間にぴったりとくっつけられていた挿入口から、ねば、と  
ローションが糸を引くのが見えた。  
 「いー…ち、にーい、さーん……」  
 「は……くっ……」  
 そのまま手を上下に動かしつつ、ルカがカウントを始める。室内にはしばらくの間、彼女のささやきと僕の嗚咽と、じゅぷじゅぷと  
いう淫らな水音だけが響いていた。  
   
 「17、18……ふうん、まだまだ余裕、って感じの顔してるわね?」  
 ルカの問いかけに、僕はまあね、と軽く笑ってみせた。今のところ、ルカの手によるオナホール責めはきわめてゆっくりであり、  
じわじわと高められている感覚はあるものの、すぐに射精に至ってしまうほどのものではなかった。むしろ、耳元で甘くささやかれる  
彼女の声の方が、よほど僕の感情を揺さぶってくる。  
 「……だったら、これでどうかしら」  
 そう言うとルカは、オナホールを持った右手だけはその場に保ったまま、すっと腰を浮かせてベッドから降りる。  
 「ちょ、ちょっと……?」  
 当惑している僕の目の前に回りこむと膝を屈め、開いた僕の両膝の内側にちょこん、と収まってしまった。見下ろせばそこには、  
肉筒に包まれた自分の男性器と、そのすぐそばで、ぴったりと頬を寄せるようにして上目遣いでほほえむルカの顔が並んでいる。  
 「うわっ……!」  
 「ふふ、なかなか刺激的でしょ? ……19、20……」  
 いたずらっぽく微笑んで、ルカがゲームを再開する。確かにそのビジュアルには、とても綺麗な物を汚している時のような、  
背徳的な快感があった。  
 時折ぺろり、と舌を出し、口淫を思わせる仕草を織り交ぜつつ、ルカの攻撃は続く。徐々にこみ上げてくる性欲の塊に対して、  
僕は必死でブレーキをかけ続けた。  
   
 「……39、よーんじゅう、っと……」  
 
 カウントが40回を数えたところで、ルカがふう、と一つ息をついた。  
 「結構がんばるわね……そろそろ、楽になっちゃったらどうかしら?」  
 妖しげな笑みを浮かべながら、ルカが僕を誘惑する。確かに、ぱんぱんに張り詰めている性器の感覚はもどかしいものだったが、  
ここで屈するわけにはいかなかった。  
 「まだまだ……全然大丈夫さ」  
 首を横に振りつつ、逆に笑いかけてみせる僕。正直なところ、半分くらいは強がり混じりなのだけど。  
 そんな僕の様子に、ルカが、手を顎に置いて考え込んでいる。その表情は真剣そのものだ。  
 ……こんな事にそこまで本気にならなくても、とも思うが、口には出さない。  
 「……きっともう、『気持ちいい』だけじゃ、貴方を追いつめることはできないのね……なら」  
 そう言って立ち上がると、ルカは再びベッドへと登った。どうするつもりなのか、と思っていると、  
 「貴方もベッドに上がってちょうだい? で、そっちを向いて、足はこう……」  
 なんやかやと、僕の体勢に細かく注文をつけてくる。言われた通りにする僕。  
 ベッドの足元側、外に面する窓に向かって膝を立てて座ったところで、ルカがシャッ、とカーテンを引き開けた。  
 そこには。  
 
 「う、うわ……」  
 
 夜の闇と、室内の照明。それらの作用によって、窓にはめこまれたガラスは、鏡となって部屋の内部を映し出す。  
 そして今、僕の正面には、裸で股間にオナホールを突き立てたままの姿の、僕自身が見えているのだった。  
   
 とてもじゃないが正視することに耐え切れず、僕はふい、と目をそらす。すると、  
 「ダメよ」  
 いつの間にか僕の背後へと回りこんでいたルカが、耳元でささやいた。そして両手足を僕の体へとからみつかせ、はがいじめに  
するような格好となる。  
 「ちょ、ちょっと、ルカ……!」  
 
 「しっかり自分を見つめなさい。女の子にこんなオモチャでいいように弄ばれている、みっともない貴方自身の姿を」  
 
 その声音はとても澄んでいるのに、低く、重い。  
 僕の心を支配するかのように、鼓膜を通じて全身に流れ込んでくるかのようだった。  
 
 「……よんじゅう、いち、42……」  
 ルカが再びオナホールを手に取り、カウントを再開する。僕はされるがまま、目の前に映る自分の姿から目を離せずにいた。  
 だらしなく広げた脚の中心部で、ごちゅっ、ごちゅっと繰り返される抽送。背中に伝わる、ルカの体温と豊満な乳房の感触。  
先程よりもペースを増しつつ、下半身から絶え間なく上りつめてくる、粘性の快感。  
 「55、56……ふふ、そうよ、いい子ね……」  
 それら全てとルカのささやき声とがあいまって、僕の頭はまるで催眠術にでもかかっているかのように、次第にぼう、と  
かすみ始めた。  
   
 「はっ、はぁっ……」  
 「ふふ……ななじゅう、はーち♪ ななじゅう、きゅーう、……はーち、じゅう♪」  
 
 楽しげに、からかうように、鈴を転がすようなルカの声が耳元で響く。  
 その手の動きも、もはや僕の反応を掌握しているかのように、強く、弱く、自在にオナホールを操作する。  
 「ほらほらぁ、そろそろイッちゃったらいいんじゃない? おちんちんの先っぽから、びゅぅって気持ちいいの出したいでしょ?」  
 頭が痺れる。身体が痙攣する。もはや射精が目前に迫っているのは自分でもわかっていた。  
 だけど、男の意地にかけて、ここまで来て負けるわけにはいかない。  
 「……ふ、うっ……」  
 僕は一つ気合いを入れ直し、冷静になるよう努めた。確かに限界は近づいているものの、ここで一度落ち着くことができれば、  
あと20回くらいは耐えられるはずだ。  
 「……ふうん、まだギブアップする気はないのね?」  
 念を押すようにルカがそう聞いてくる。僕は目をつぶったまま、こくこくと無言でうなずく。虚勢を張るような余裕はすでに  
失われていた。  
 それを認めると、ルカが僕の背中から身を引き離す。支えを失った僕の体はベッドにどさり、と仰向けに倒れこんだ。  
 立ち上がったルカは寝転ぶ僕の顔を一瞥すると、下半身の方へと回りこみ、ぺたんと座り込む。ちょうど、突き立った  
オナホールの根元に、自分の秘裂をぴったりと寄せるような格好だ。  
 それは僕から見て、まるきり騎乗位の様子そのものだった。  
 「……だったら、ラストスパートで、止めをさしてあげようかしら」  
 ルカがぼそりとつぶやくと、がっしりとオナホールを握る。ぎゅむぅ、という圧迫感が両側面から伝わってきて、僕の陰茎が  
びくん、と震えた。  
 
 「……行くわよ?」  
 そしてルカは、今までにない高速で、オナホールを激しく上下にしごき始めた。  
 「うぅっ! ……くっ!」  
 「81っ、82っ、83、んっ……!」  
 カウントを続けるルカの声が荒い吐息まじりになり、同時に下半身の方から、ぺたん、ぺたんっという音が聞こえてきた。  
 見れば、オナホールの上下動にあわせて、ルカが大きく腰を動かしているのだった。彼女の形のいい下半身が僕の股間に  
叩きつけられるたび、その音が響き渡る。  
 「……きゅう、じゅうっ!、91……!」  
 カウントの方は90を超えた。あと10回だ。あと10回だけ、耐えしのげば僕の勝ち。  
 僕は下半身にぐっと力を込める。オナホールの内側で大きくそそり立っているであろう肉棒の神経を緊張させ、容易に  
鈴口が開かないように保った。  
 「92、93、94……!」  
 じゅぼっ、ぼじゅうっと、挿入口からローションを撒き散らしながら、ルカは手を動かし続ける。ちらりと彼女の下半身を  
見やれば、空いたもう片方の手で、自分の陰唇をくちゅくちゅとねぶり回しているようだ。興奮の極みにあるのは僕だけでなく、  
彼女もまた同じらしい。  
 そして、ついにその時は訪れる。  
   
 「……97、98、99……」  
 ルカの上ずったような声が、99回目を告げる。正直に言って、僕の頭はすでにかき回されたように朦朧としていたが、それでも  
彼女の声だけは、ちゃんと聞こえ続けていた。  
 最後の一回を惜しむように、ルカの手がぴたり、と止まる。  
 
 「………ひゃ〜……」  
 
 そして、ペニスの根元まで、深くくわえ込んだオナホールをじわじわと持ち上げ――降ろした。  
 
 「……くっ、と」  
 
 これで、100回。  
 ゲームの結果は、僕の勝ち。  
 
 「……ふぅぅぅ………」  
 
 僕は思わず、安堵のため息をもらす。体中の緊張がほどけていくような気分だ。  
 危ないところだったが、何とか耐え切ることができてよかった。責められ、焦らされ、扱きに扱かれた僕の肉棒は射精寸前で  
おあずけを食らってしまうことになったが、「負けたほうは何でもいう事を聞く」という約束で、もう一戦、彼女に付き合って  
もらえばそれで――  
 そんな風に、僕がぼんやりと思いふけっていた矢先だった。  
   
 突然のことだった。  
 ルカが、僕の股間にはまっているオナホールをずるるるっ、と一気に引き抜き、ベッド上に投げ捨てたかと思うと、ぐい、と  
腰を持ち上げて、陰茎にまたがるようにしてしゃがみ込んだのだ。  
 「なっ……!」  
 何が起こっているのかわからず、目を白黒させている僕に対して、ルカは一瞬だけ、きら、と挑戦的な目付きを投げつけて  
きながら、  
 
 「―――あと、10回っ!」  
 
 と叫び、一気にその腰をずぷんっ、と降ろしてきた。  
 「うあぅっ!」  
 極限まで勃起し、天井に向かってまっすぐに突き立っていたペニスはしかし、いとも簡単にルカの体に飲み込まれてしまう。  
先ほどまでの無機質なラバー製の穴とは違う、彼女自身の熱い体温に満ちた肉襞が僕を襲った。  
 「はっ、はんっ、んんぅっ!」  
 息をつく暇もないままに、ルカが腰を打ち付けてくる。じゅるる、と引き抜かれた陰茎は即座にずぷり、と彼女の陰唇の  
内側に消え、こすり上げられる肉棒全体が、かあっと熱を帯び始める。一度弛緩させた僕の神経はそれに耐え切れず、頭に響く  
ような特大の快感を断続的に送り込んできた。  
 「あはっ、ほらっ、ほらほら、どうっ? イッちゃうでしょう? イッちゃいなさいっ!」  
 自らの乳房をむにゅう、と鷲づかみにしながら、ルカが喘ぐ。それと同時に下半身がぐりんっ、と回転し、膣肉がきゅうっと  
締め付けを増す。もう、どうあがいてもこらえる事のできない絶頂感が近づいていた。  
 
 「んんんんんっ!」  
 
 ルカの一際甲高い嬌声と共に行われた、最後の挿入。  
 彼女の一番深いところで、僕は果てた。  
 
 
 ――ちょうど、僕と彼女のゲームが、110回目を迎えたところだった。  
   
 
 「……何、あれ」  
 
 僕の射精から、遅れること数回。自身もまた絶頂を迎え、くたり、と僕の体にしなだれかかっているルカに対して、僕は  
荒げた呼吸の合間から、途切れ途切れに問いかけた。  
 「何って……何のことかしら?」  
 「さっきの……最後の、『あと10回』だよ。100回っていう約束だったんじゃ……」  
 「だって負けたら悔しいじゃない?」  
 しれっと、悪びれもせず、あっさりと言ってのけてはばからないルカ。これだけ堂々とした態度をとられると、こちらとしては  
あきれて物も言えなくなってしまう。  
 「それに」と、ばさりと髪をかき上げながらルカが続ける。  
 
 「あんなニセモノで何百回イジられるよりも、私のナカの方が何十倍も気持ちよくさせられたでしょう?」  
 
 僕の胸の上にあごを乗せ、ルカがじっとこっちを見つめてくる。  
 「……っ」  
 彼女と目を合わせていることに耐えきれず、僕は何も言わずに視線を外した。  
 図星をつかれた人間が、誰でも等しくそうするように。  
 「ふふ」  
 口元に含み笑いをたたえたルカが、首を伸ばして僕に接吻する。彼女の柔らかな唇が、僕を慰めているように感じられた。  
 
 「――で」  
 「え?」  
 「貴方に聞いてもらう命令だけど……どんな事がいいと思うかしら?」  
 ルカの言葉を聞いて、僕は思わずがく、と全身の力が抜ける思いだった。  
 「いやいや! え!? さっきのって僕の負けなの!?」  
 「当たり前じゃない。結局ガマンしきれずに射精しちゃったんだから」  
 「いや、それでも100回目まではちゃんとガマンしたのに……!」  
 「はいはい、男の人がつべこべ言い訳するんじゃないの。みっともないわよ? そうね、まず一つ目は――」  
 「複数件あるの!?」  
 
 そして、あれこれと言い募るルカの言葉を遠くに聞きながら、僕は小さくため息をもらすのだった。  
 
 
 ――もう二度と、ルカの興味を引くようなものを、自室に隠すのはやめようと心に誓いながら。  
 
   

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