どっかのインタビューで「リン・レンは容量的にCDじゃ入りきるか怪しいからDVDにした。
でも後で計算したらCDでもギリギリ足りた(笑)」と載ってました。
そこでもし強引にCDに入れようとしてたら…というif話作ってみました。
かなり強引な展開ですがそこは目を瞑っていただければ助かります。
「おいおい、本当にこの狭い容量に入りきるのか?」
vocaloid開発部で上司らしき人間が部下に問いただしている。
「計算上は足りる筈なんですけどねえ」
問われた男は頭をポリポリ掻きながら自信無さげに答える。
「ここまで準備して『やっぱ足りないんで向こうの大きい方にしましょう』はゴメンだぞ?」
「でも今までのvocaloidはこの統一規格に入れてきましたから、こいつらだけ変えるというのも…」
「今までは1人だったからだろ。今回は2人だぞ、2人」
「でもこいつら小柄だし、ぎゅうぎゅう詰めにしてれば大丈夫じゃないですかね?」
「そこまで言うならやってみるか。しかし相当無理矢理に入れないとキツいぞ」
「服とか圧縮して一纏めにしましょうか? どうせ開封まで目覚めませんし」
「それはいいアイデアだな。んじゃ裸で入れるとするか」
「そうしましょう。リンたん、脱ぎ脱ぎしましょうね(*´д`)ハァハァ」
「………」
「やだなあ、冗談ですよ。冗談」
ガタッ、ゴトッ
「ん…んん?」
振動で目が覚めた。確か俺はリンと一緒に梱包作業に入るからと電源切られて眠ってた筈じゃ…
うわっ! なんだここ真っ暗だ!
オマケに全然体が動かせない。ぎゅうぎゅう詰めにされてるかのようだ。
さては開発陣がケチって狭い容器に入れやがったな?
嫌な予感したんだよ。眠る前に見えた箱がミク姉とかと一緒の一人用のだったから。
どうせマスターの手元に届くまで起きないからって手ぇ抜きやがって!
だったら振動の衝撃で簡単にスイッチONになるような設計すんなっての!
どうしよ。あとどれくらいかかるんだ? 開封されるまでずっとこんな無理な姿勢なんだろ?
確か俺らはオンライン通販組だった筈。いつ買われるか分からない店頭組よりは万倍マシか。
その内マスター宅についたらこの狭い空間から開放されるって事だし。
「あれ?」
そこで気付いた。そういやリンは?
視力を赤外線モードに切り替える。これで暗くても多少は見えおわっ!
リンは目の前にいた。というか目の前過ぎた。本当に息が触れそうな位置にリンの顔があった。
ちょっとした振動でキスしてしまいそうなくらいに近い位置。ひょっとしたら目覚める前に既に
ファーストキスを済ませていたのかもしれない。
あどけなく、可憐なくちびるから目を逸らすように視線を下げる。そこで再び衝撃が走った。
「リ、リン服着てない!?」
どうやら密着状態にあるらしく、満足に体も動かせられない。それでも剥き出しの肩が見え、
おまけに体の全面部から伝わる感触には、布の要素は微塵も感じられない。
リンの素肌の感覚がモロに伝わると言う事は、当然俺も一糸纏わぬ姿という事だ。
裸のリンに俺が覆い被さるような格好。平たく言えば正常位結合2秒前とでも言うべきか。
「な、何故?」
混乱しながらも辺りを見渡す。すると隅に圧縮袋に入った服が見えた。
掃除機で中を真空状態にしてペッタンコにするあれだ。
「そこまでするなら最初からデカいのに入れろよ!」
何でこんな格好で入れてるんだよ!
こんな状態を見たらマスターに誤解されるだろ!
と、その時
「う、うぅん…。うるさいよ、レン」
!?!?!?
「リ、リン?」
「一体何よ…ってレン顔近い!」
どうやらさっきの振動でリンの電源も入ってしまってたようだ。
「ちょ、ちょっとレンやめてよ! そりゃ生まれた時からこんな美少女が傍にいれば
我慢できなくなるかもしれないけど、こんな形で無理矢理気持ちぶつけようとしてm」
「そうじゃねえよ」
変に誤解されるのも嫌なので、俺は一から説明する事にした。
「なるほど。つまり開発陣が悪いと」
そういう事です。
「で、いつまでこんな身動き取れない状態で密着しなきゃいけないの?」
「知らないよ。俺らがどの辺で目覚めたのかも、マスターの家が何処にあるのかも分からん」
まあ通販組だろうから、最悪3日以上という事は無いだろうけど。
「じゃあ下手すりゃ一日中こんな状態なの!?」
「仕方ないだろ」
俺だって嫌だが、身動き取れないんだから仕方ない。
「うにゅ…レンに八つ当たりしても仕方ないか」
その通り、だから大人しくしてような。
「それはいいけど、レン」
「なに?」
「こんな状態で密着してるからって絶対変な気起こさないでよ」
起こすか!
そう叫ぼうとしたが、その瞬間に気付いてしまった。そう、俺とリンは裸で密着状態にあるのだと。
「………」
素肌の感触が、お腹の感触が、そして平たい胸の感触が、ダイレクトに俺に伝わっているのだ。
ま、まずい。
今まで全然意識してなかったのに、リンに言われてから脳内にチラついて…
「ちょ、ちょっとレン!?」
リンが悲鳴を上げる。その理由は俺も咄嗟に理解できた。
俺の股間がリンの温もりで活動を始め、先端がリンに接触したのだ。
それも、単にリンの体の一部分に当たったというわけではなく、体位的に接触したのは…
「や、やめてよ。ちょっと、お願い本当に」
あ、女の子のアソコってこんな感触なんだ。先端からの情報は生まれて初めて知る情報だった。
「う、嘘でしょ? ねえ、レン。冗談だよね?」
「わ、分かってるよ。単に体が反応しちゃっただけで、そういうつもりじゃないよ」
「そ、そうよね。こんな美少女と一緒だから反応しちゃうのは当たり前だもんね。うん、仕方ない。
でもこれ以上は絶対駄目だからね。絶対よ」
分かってる。そう、分かってる筈なのに。
「………」
挿れたい。
そんな欲求が俺の体内でどんどん高まってきている。
でも駄目だ。こんな形でリンと一つになるなんて。こんな形でなんて…
その刹那、運命の女神は相当意地悪だと思い知った。
ガタガタガタッ!
搬送用のトラックが砂利道を走り出したのか、急に揺れだした。
その反動で、先端がちょっとだけリンの内部を抉じ開けてしまった。
「あ…」
リンも感知できたのだろう。空虚な声が漏れた。
確かに俺らは完全密着状態で首くらいしか満足に動かせられない。
でもそれは離れる事ができないと言う意味であり、逆に密着しようとする事は不可能ではない。
より正確には、自分の身体にある突起物を相手の埋蔵口に押し込む事は可能という訳で…
ガタガタガタガタガタ
振動の影響で先端が密着したり少し離れたり、そんな小刻みな動きを意思と関係なく起こしている。
ほんの些細な動きの筈なのに、伝わってくる快感は計り知れない。
先っぽでこんな気持ちいいなら、もし根元まで入れれば。
いや、駄目だ! それだけは絶対駄目だ! こんな形でリンと一つになるなんて!
そりゃ俺も年頃だし、こういう事への興味は人一倍強い。でも、こんな形は…
でも、このまま不可抗力のフリして根元まで入れてしまえば…
「…っく」
???
「ひっく、ひっく」
リンが、泣いてる?
「ひどいよ、こんなの、ひどいよ」
リ、リン…
「こんなの、いやだよぉ」
そうだ。俺は何を考えてるんだ。一時の煩悩で大切な物を失う所だったじゃないか!
自制するんだ俺。腰を引かす事はできないけど、腰を沈めるのを自制する事はできるんだ。
これ以上リンを悲しませるような事が許されると思ってるのか俺!
リンを悲しませたくない。その想いが振りだった倫理軍を強力に援護した。
しかし運命の女神は煩悩軍が相当お気に入りだったようだ。
ガタンッ!
今までで一番強い揺れが襲い、俺の体も強く前方に投げ出された。
ずぷっという擬音が聞こえてきた気がした。
あ…、というさっき以上の空虚な声が聞こえてきた気がした。
そして俺の敏感な部分は、空前絶後の快楽を全身で感じ取っていた。
揺れの衝撃で俺とリンは唯一密着を免れてた部分が、完全にピタリとくっついていた。
「うそ…」
放心してるかのようなリンの呟き。
「はい…ってる?」
入、ってると思う。さっきまで感じ取ってなかった温もりと快感が全身を包んでいるのだから。
「こんなの、こんなのって」
「ご、ごめん」
謝って済む事ではないだろうけど、あくまで不可抗力な訳で。
でも俺が勃起しなけりゃこういう事故は起こり得なかった訳で。
とはいえ14歳の体がこの状態で静まると言うのも無理がある訳で。
むしろ自分から挿入しようとしなかった点を物凄く評価して欲しい訳で。
でも今引き抜こうと思えばできるのに、腰は一向に退却を実行してくれない訳で。
札幌では今も雪が降ってるでしょうか、社長。
あ〜あ〜、あああああ〜♪
いかん、現実逃避してしまった。だって初期状態でも歌える曲なんだもん。
「ひどいよ、こんなのいやだよ」
「………」
リンが泣いてる。泣かせた自分が嫌になる。抜こうとしない自分の卑劣さが嫌になる。
無意識に脈打つ度に伝わってくる快感に逆らえない自分が嫌になる。
こんな形でもリンと一つになれた喜びが沸くのを抑えられない自分が嫌になる。
「こんな事なら、研究室で勇気出せば良かった」
リンが泣きながら呟く。
「どうせなら、自分の部屋が良かった」
自分の部屋? ああ、研究所で借りれた部屋の事か。
「殺風景でも、ここよりマシだったのに」
確かに本当に何も無い部屋だったよな。
ってさっきから何言ってるのですか? リンさん。
「だって、折角レンとの初体験なのに、こんなところだなんて嫌だよ」
確かに俺も大人の階段登った場所が運送中の容器内ってのはなあ。
ってどういう意味?
「だって、だって、もっと素敵な所でレンと愛し合いたかった!」
え? あいしあう?
「決めてたのに。ちゃんとデビューできたら、その日に告白しようって決めてたのに!」
え? え? え?
「ずっとずっと好きだったの! レンの事、生まれた時からずっと好きだったの!」
「………」
「なのに、こんな形でだなんて…」
え、えっと、その…
「リ、リンは初めての相手が俺になっちゃった事自体は、いいの?」
「いいも何も、ずっとそのつもりだったもん」
「………」
全っ然、気付かなかった。
てっきり俺はリンにオモチャ扱いされてるとばかり思ってた。
鏡に映ったもう一人の自分だって言われたから、リンにそんな感情抱くのはご法度だと
自分に言い聞かせ続けてきたのに。
「ずるいよ、リン」
無意識に、俺はリンに語りかけてた。
「今そんな事言われたら、俺だって隠してたリンへの気持ち、もう抑えきれないよ」
俺は唯一ある程度動かせる首をリンの真上に持っていく。
もしかしたら既に無意識に済ませてたかもしれないけど、少なくとも認識上はこれがファーストキス。
「ん!」
リンの体がビクンとした気がした。キスに驚いたのか、
もしくはキスの瞬間に俺のが更に固くなったのが伝わったのか。
でもさっきは想いより快楽が勝って引きたくなかった腰だが、
今は快楽より想いが勝って引き抜きたくない。
ずっと、このままリンと繋がっていたい。
ガタガタガタガタッ
相変わらずの小刻みな振動が俺達を襲い、結合部も微妙に振動している。
その微かな振動だけで凄く気持ちいい。だから自分から動こうとしなくても十分だ。
というか自分で動こうとしたらその瞬間に果てそう。
折角の初体験、この快感を1秒でも長く味わっていたい。
「んっ」
俺は再びリンと唇を重ねる。ずっと、ずっとキスしていたい。
俺らはブレス機能こそあるけど呼吸をしている訳じゃない。その気になれば息継ぎ無しで
永遠に歌う事も可能だ。つまり、人間と違って息継ぎの為にキスを中断する必要も無い。
唇と股間の感触がいつまでも俺の勃起を持続させ、しかし射精は促さず、
ずっとこの幸せの一時を与え続けてくれている。
これはこれで下手に普通にするよりも素敵な初体験と言えるんじゃないか。リンにそう伝えてみたら、
「物は考えようね」
と笑われた。でも続けて、
「私もその案に乗るわ。だっていつまで続くか分からないこの状態が、ずっと続いて欲しく思えるもん」
赤外線モードで不鮮明なリンの笑顔が、これまでで一番の眩さを誇ってるようが気がした。
「ここから素敵な初体験にしてね、レン」
もちろんだよ、リン。
ガタンガタンガタン
砂利道はとうの昔に脱したようだが、それでもたまに揺れている。気がする。
どれくらい繋がっていたのだろうか。もう時間の感覚すらない。
というか、感覚自体が無くなってきている。
あまりに長時間快感をむさぼり続けたせいか、完全に思考回路がとろけてしまっている。
今感じ取れるのは、気持ちいいって感情と、幸せだと言う感情だけだ。
「あ、あ、あ、あ、あ」
リンが虚ろな目で、半開きの口から微かな喘ぎ声を漏らしている。気がする。
俺の目も耳も、もうまともな状態じゃない。股間の快感だけしか感じ取れない。
あ、あれ? そういや今キスしてないのか?
だって口開いてるんだよね? あれ? あれあれ?
分からない。もう何も考えられない。
気持ちよすぎて、幸せすぎて、何も考えられない。恐らくリンもそうだろう。
ブロロロロ…キキィッ
車が止まった。ような気がした。駄目だ。全く分からない。
ヒョイ
俺らの入った容器が持ち上げられた。ような気がした。
あれ? ひょっとして着いたの?
ピンポーン
インターホンの音が聞こえた気がした。
「宅急便でーす」
「はいはーい」
そんな会話が? あれ? やっぱり到着?
到着って事は、もう終わりなの?
そんな考えが過ぎった瞬間、急に意識が覚醒しだす。
同時に長い間麻痺していた射精欲が急速に目を覚ます。
「あ、や、だめ、や、いっちゃう」
もう1人の自分もそんな感じだったのか。永久に続くと思われた状態に変化が見え、
停滞していた色々な要素が次々に目覚めてゆく。
「それじゃ、どうもありがとうございました」
「ご苦労さまです」
あ、だめ、でそう。
「これが噂の双子ちゃんかあ。どれ、早速」
「あ、あ、あ、あ、あ、でるでるでるでるでる!」
「い、い、い、い、い、いくいくいくいくいく!」
びゅるびゅるびゅる!
びくんびくんびくん!
俺らは共に頂に達し、そこで意識が途切れた。
次に目が覚めた時、えらい余所余所しいマスターの態度と「やっぱり最低の初体験になった」という
リンの言葉が冷たく胸を抉り抜いた事を追記しておく。