トゥルルルルルルル
ガチャ
『あ! ミ、ミクちゃんっ!?』
「はい、誰かな?」
『あ、あの俺。昨日ほんとに楽しかった!
ライブ最高だったよ!
プレゼントしたネギすっごく気に入ってたよね?
最高級下仁田ネギ。
まだ欲しいってミクちゃんが言ってたから、約束通り箱をダース単位で仕入れてきたんだ!
もちろん、今朝農家で採れたばかりの新鮮なやつだよ!』
「そうなの?」
『だから、今すぐミクちゃんにあげたいんだ。いいだろ?
えっと、会う場所は駅前のうろたんドーナッツはどうかな!?
ほ、ほら!』
「……。」
『そりゃ今は夜の九時だけど、駅前なら明るいし、ほら! 駅裏の歓楽街で会うわけじゃ
ないし、もちろん俺もやらしい事なんて考えてないし、え、いやいやいや、ほら、ミクち
ゃんももう16歳、オトナなんだから一人で来ても大丈夫だよね! えへw だって、や
っぱ最高級下仁田ネギをやっぱりミクちゃんに新鮮なうちにあげたいんだよ! あ、家族
の人には、ちょっと出てくるとか友達とこに泊まりに言っておけばOKだからさ!』
「あはは」
『だから今すぐ来て…』
「キモいんだよ、う゛ぁーか」
「ちょ…」
「つーか、市ね。お前みたいなゲロ臭い声してミクちゃんハァハァとか言ってんじゃねえよ? おぞけが走るから、そのネギ箱はガソリンぶっかけて焼却しといてちょうだいね。むし
ろ、オマエ自身を焼却処分しろよ」
プツ
ツー ツー ツー…
……。
電話の主が自主的に切ったのを確認して、受話器を持っていた蒼髪碧眼の青年はがちゃり
と受話器を置いた。
「あれ? お兄ちゃん、お電話?」
リビングに入ってきたミクが、ネギを美味しそうにぽりぽりしながら訪ねた。
「うん。間違い電話だったよ」
KAITOはにっこり微笑んだ。