彼女の手首は細く、自分がちょっと触れただけであっさり折れてしまう気がする。
「面白いことを言うねぃ、ドレクセルは」
その村にずっと住み着いているという女医者は、声を立てて快活に笑った後、独特の口調でそう言った。
そして、機械との戦闘でケガをしたドレクセルの腕に包帯を巻いていく。
「触れただけで人の腕は折れぬよ。力を込めねば、ね」
「そうかい、おまいさんがあんまり細っこくてな。……綺麗に巻くもんだ」
「それ、医者を馬鹿にしてるのかい?」
女は笑いながら言う。
ドレクセルの体は大きすぎて、村である建物の中に入れない。
不自然に植物の根が張った砂漠の砂の上で足を伸ばしながら彼女の治療を受けていた。
そばには先ほど撃破した機械の残骸が転がってある。
「さあ終りだ。私は中に戻らなくちゃいけない。なにか入り用の品はあるか?」
椅子代わりにしていた植物の太い根から立ち上がって聞いてくる。
「それよりお礼にちゅーしてやるぜ、ヨキさん」
「さかるものじゃないよ」
つれなかった。慰めるようにアムルタートがすり寄ってくる。ちょっと泣きそうになった。
「俺はしばらくこの村に居るよ」
扉を押し開けて、建物の中に入っていく彼女の背中に声をかける。
聞こえなかったかもしれない。彼女は振りかえらなかった。