*・-・* そのままの君でいて *・-・*  
 
 
 
 
「ねぇー、アラン。また本を読んでるのぉ?飽きない?」  
不機嫌そうにとがらせたくちびる。小さな体、幼い顔つき。  
ころころと変わる表情、ほんの些細なしぐさのどれもが愛しい。  
しかし彼女は、何百年、何千年と生き続けている護神像。  
その証拠に、その体には忌々しい刻印が深く刻み込まれている。  
――人間と護神像。  
二人の間を隔てる大きな壁。  
それでも、互いに愛し合う気持ちに、なんら変わりはなかった。  
「飽きたりしませんよ。新しい知識を吸収することはとても楽しいです。  
 赤い血の神、護神像、なぜ機械と人間は憎しみ合っているのか。  
 この世の全てを知りたいと思うんだ。  
 君と世界中を周りたい。そして、君といつまでも一緒にいたい。」  
「うん。私も、アランと一緒に世界中を周りたい。  
 アランと一緒ならどこへだって行ける。なんだってこわくなんかないよ……  
 そして、私もアランの全てを知りたい。」  
"こわくなんかない"なんて嘘。本当はこわくてしょうがない。  
一人の防人とその護神像として戦う以上、いつ死んでもおかしくはない。  
こんな風に二人で過ごす日々がいつまで続くのか。  
もしかしたら、今こうやっている次の瞬間には、機械と戦わなくてはならないかもしれない。  
 
 
――明日をも知れぬ命。  
それでも、失いたくはない、大切な、守りたい何かがある。  
だからこそ、今を精一杯生きている。  
それは、機械も人も護神像も、かわらないことなのかもしれない。  
 
「わぁーキレイ。ねぇ、これはなに?」  
指さす先にあるものは古い書物の挿絵。  
赤と白の服をまとった人々と、キラキラと輝く植物。  
そして、白くてふわふわと空を舞う物体。  
「これは多分、クリスマスというものですね。」  
「くりすます?」  
「えぇ。元々はキリストという人誕生日を祝う日だったのですが、  
 いつしかその日は、恋人同士がプレゼントを贈りあったりしながら一日を過ごすようにもなったそうですよ。」  
「ふふっ、やっぱりアランは物知りだね。  
 アランよりずっと長く生きている私でも知らないことを知っているんだもの。」  
 
 
小さな部屋の小さなベッドの上。  
一つの本を二人で読み、笑いながら話をする。  
そんな当たり前すぎることが幸せすぎて。  
君と過ごす、この時間をもっともっと強く心に刻みたい。  
好きだから、もっともっと触れていたい。  
そして、触れられたい。  
君の弱い部分も、全て受け入れたい。  
自分自身の弱い部分や醜い部分も、全て受け入れてほしい。  
そのままの君が見たい。  
あの日、体を重ね合ったのも、そんな気持ちからだった。  
 
 
――それは四年ほど前、私が防人になってまだ間もない頃のことだった。  
 
 
元々、体を動かすことの得意ではない私は慣れない機械との戦いの末、怪我を負ってしまった。  
幸い、村人達による手厚い介抱のおかげで、体はみるみる良くなっていった。  
が、体の方は回復しても機械に対する恐怖心は増すばかりだった。  
いつ襲われるかわからない恐怖。  
人々を機械から守るのが防人の役目。  
けれども、自分の身を犠牲にして他人を守るということにはまだ躊躇があった。  
なぜ他の人間ではなく、私が防人になってしまったのか。  
いつの間にか、そんなことばかり考えるようになっていた。  
 
 
なかなか寝付けず、天井をただひたすらぼんやりと眺めていた。  
「……防人アラン・イームズ……」  
私以外、誰も居るはずの無い部屋で私の名を呼ぶ者がいる。  
「……誰ですか?」  
自然と体がこわばる。  
「私は護神像ウォフ・マナフ。」  
その言葉と同時に目の前の護神像が輝きだした。  
目を開けてみるとそこには、10歳くらいの愛らしい少女が立っていた。  
「君が、護神像……なのかい?」  
とっさに出た言葉はこれだけだった。  
いつも自分が身にまとい、戦っている護神像だとどうしても信じることが出来なかった。  
「君なんかじゃなくて"マナ"でいいよー。私もあなたのことはアランって呼ぶから。  
 挨拶が少し遅れたけれど、これからよろしくね。」  
「よ、よろしく。」  
キラキラと光る瞳、無邪気な笑顔。  
たったそれだけのことなのに、なぜか不安が吹き飛んでしまいそうだった。  
 
しばらくすると彼女は、過去の防人達や自分のことをぽつりぽつりと語り始めた。  
語っているときの彼女はどこか淋しげに見えたけれど。  
 
 
「……ねぇ、せっかくこうやって仲良くなったんだから、アランのこともっと知りたいなぁ。」  
とたんに表情が明るくなる。  
「私のこと……ですか?」  
「うん。アランのことなら、なんでもいいの。 私、アランのことが大好きだから。」  
小さな体でぎゅっと抱きついて。  
彼女のぬくもりは、感じられなかったけれど、たしかに彼女はここにいる。  
護神像にも、気持ちがある……  
「女の子に大好きなんて言われたの、初めてですよ。」  
「ふふふ、私も人間に女の子なんて言われたの初めて。なんだか照れるなぁー。」  
笑いながら、頬を赤らめる彼女がとても愛しく感じられた。  
 
 
――ふとした瞬間に、緊張の糸がほどけて。私は泣き出してしまった。  
「……どうして私が防人に選ばれたんですか?私以外の人では駄目だったのですか?」  
「他の誰かじゃない、アランじゃないと駄目なの。 防人には、強い願いが必要なの。  
 アランはあのとき、強く願ったでしょう?だから私はここにいる。」  
頭を撫でながら、彼女は優しく言った。  
「でも、私はもう戦えない、戦いたくない。」  
自分の弱い部分なんて、見せたくない。誰かが死ぬところなんて、見たくない。  
機械となんて戦いたくない。  
「ね、アラン。そんなに無理はしないで。私にだけでいいからもっと素の自分をさらけ出して。  
 私、全部受け止めるから。アランのこと大好きだから。アランのことならどんな事だって知りたいって言ったでしょう?」  
今まで押さえ込んでいた気持ちを全て彼女に打ち明けて。  
それでも彼女は私のことを好きだと言ってくれて。  
一人じゃない、守りたいものがある。  
だから、頑張れる気がした。  
そしていつしか、私も彼女のことを好きになっていた。  
 
「ねぇ、アラン好きだよぉ。」  
いつもより甘えた声。そして、潤んだ瞳。  
「マナ、どうしたんですか?具合でも悪いんですか?」  
「違うよぉ……」  
見つめ合って、次第に早くなっていく鼓動。  
「……アラン、好き。アランにもっと触れたい。一つに、なりたいの……」  
「マナ……」  
護神像である彼女。そして幼い容姿。  
どうしても、自分の中の理性が邪魔をしてしまう。  
知らず知らずのうちに、一線をひいてしまう。  
「ねぇアラン、好きだからもっと触れ合いたいと思うのはおかしいことなの?  
 私、もっともっとアランを感じていたいの。我慢できないの……」  
彼女の一言で、罪悪感も、理性もあっという間に吹っ飛んでしまった。  
ベッドの上に彼女を押し倒して、服をぬがす。  
「……可愛いよ、マナ。」  
「や、あんまり見られると恥ずか……」  
言葉をさえぎってキスをして。  
優しく耳を甘噛みすると、びくんと反応する敏感な体。  
耳を甘噛みしつつ、両手は小さな胸をそっと揉み始めた。  
「やぁ……あんっ」  
彼女の胸の小さな突起が次第に主張し始める。  
その突起にちゅっと口づけて、舐めまわす。  
「んあっ…アラン……」  
「どうしました?痛かったですか?」  
「い…痛くないけど、…ふぁ…っ!!」  
指で背骨のラインをなぞると体がのけぞった。  
「あっ…や、ほんと、あぁっ…ん!!」  
彼女の喘ぎ声、敏感な体がとてつもなく新鮮で。  
もっともっと彼女の反応を見てみたい、と思った。  
 
「っ…私だけじゃなくてアランも……」  
そういって彼女は先ほどから既に主張している部分をそっと優しく撫でた。  
「気持ち…いいですよ、マナ……」  
「うわぁー。初めて触ったけど、私のココとは違って硬いんだねー。」  
彼女の手に導かれるままに女の体の一番神聖な部分へ。  
くちゅ……  
「あぁぁっ…んっ!…ふぅ…っ…」  
彼女の声がよりいっそう高くなる。  
そこはあたたかくて、ぬるぬるとしていて。  
小さくてかわいらしい突起の部分を刺激するように、自然と手が動く。  
くりゅ…くりゅ…ずぷり……  
人差し指の第二関節ほどまで入れてゆっくりと出し入れすると、彼女は私にしがみついて震えだした。  
「ふぇっ……あっ…あぁぁ……ん…」  
潤んだ目はもう今にも泣き出しそうで。そんな顔をされると、私ももう限界です……  
「マナ、そろそろいきますよ。最初は少し痛いかもしれません。無理せず言ってください。」  
「…少しくらい痛くてもだい…じょうぶ、だよ…っ……」  
ずぶり、ずぶり、マナの体を気遣いつつ休み休み奥に進む。  
「んんんんっ…!…あぁっ…」  
マナの頬をつたい、ぽたぽたと流れる汗と涙。  
「っ、はぁ……キツい…ですね……」  
必死に歯を食いしばる彼女。  
長く持ちそうにない、今すぐにでも動きたい。けれども優しくしなければ……  
彼女の痛みを少しでも和らげようとよ、優しく抱きしめて、そっとキスを繰り返して。  
「……っくぅ…ぁ…んんん……」  
ゆっくり、ゆっくりと動き出す。  
「……っ、、アラン、私今までで…一番幸せだからね…っ」  
「私も、幸せですよ、マナっ……」  
「ん…あぁぁぁぁっ……」  
くちゅ…くちゅ……と卑猥な音を響かせながら、二人の動きは早くなっていく。  
「っは……マナ、もう私も限界です…」  
「ぁっ…っ……私も……っ…ああんっ!!」  
 
マナの方は衝撃で気を失ってしまったらしい。  
風邪を引かせないように服を着させる。  
まだ、もう少し悪戯したくなったけれどそれは我慢して。  
 
 
 
――迷いなどもうない。彼女とともに生きていこう、アランはその夜、心に誓った。  
 
 
 
 
 
*・-・*・-・*・-・*・-・*  
「……で、ちなみに、そのクリスマスというのはちょうど今頃の時期なんだそうですよ。」  
「ん……」  
隣にいるマナの顔を覗き込んでみると、すっかり寝息をたてていて、すでに寝てしまったようです。  
……ということは、今日はおあずけってことですか?そうですか……  
さて、明日も早いですし、私もそろそろ寝るとしますか。  
 

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