・恋し花・
ふとした瞬間に手と手が触れ合う偶然。
はっとして視線を交わす。
恋の、始まる息遣い。
彼がこちらを見ている。
そう感じるのは、自分が強く意識しているから?
頬が熱くなってくるのを感じて、少女はそれを隠すようにうつむいた。
「神様?どうしたすか?」
隣を歩いていた少年が、気遣うように声をかける。
「…なんでもないですわ。少し、日差しがまぶしくて」
少女は、少年に笑顔を向けた。
何も心配はいらない、というように。
「たしかに、今日はちょっとキツイすね」
少年、シオがつなぎのフードをあげて思案顔になる。
「この辺で少し休みましょう。おーい、レオ!」
シオが、少し離れて歩いていた彼を呼ぶ。
少女の鼓動が跳ね上がった。
盗み見ると、少し面倒そうな表情をした彼の姿。
額の汗をぬぐうしぐさ。
体温があがる。
「……神様?ほんとに大丈夫すか?日陰に入ったほうがいいすよ」
ぼーっとしてしまっていた。
シオの声に我に返るが、胸のざわめきはおさまらない。
好きに、なってしまった。
願わくば、彼の恋も始まっていますように。
視線が絡む。風が止まる。
片恋のつぼみがほころびて、恋の花が開く。
Fin