強くなること、それは修練を重ね己を磨くことだ。
夜も最強になる、そう目標設定したカーフはある日風呂に入ってつらつらと思考した。
湯は澄んで美しい。水音の清涼さは耳を引き、湯気とともに満ちた香りは袋に入れて水面に浮かせた大量の蜜柑のおかげだろうか。そして何より、そこに身をひたす己。
「ふ……この肌は水も弾くぞ」
筋肉、筋肉と言ってるばかりではない。張りと潤い、それを兼ね備えて初めて体を語れるのだ。漢を語れるのだ。力こぶを作ってみてそれを注視していると、ふと猛烈な衝動を感じた。
衝動、というよりそれはむしろ飢餓にも似た初めての感情だった。願いレベルも高かったのか、めったに近寄らなくなったクシャスラが、フラフワと風呂の入り口から寄ってくる。
彼の飢え。
それはクシャスラでも叶えられない、つまりは……。
「誰か……観客のような」
見せたくなった。
彼が求めているのは生の視線、生の反応、ダイレクトに感じれる第三者の評価だった。クシャスラは何度も何度も目の前で着替えたこともあるので、どうしても身内の内輪話のように何の刺激も無しに終わってしまいそうなのだ。
欲しいのは自分を奮起させるようなリアル。容赦無い叱咤、心からの激励、すばらしい先駆者の足跡――。
その考えは、2ちゃんにss投下するような緊張感をもはらんでいた。
いったいどんな反応が来るのか――井の中の蛙を認識するのか――。
「悩んでいても仕方がないな」
やるしかない。
もはや見せるしかないのだ。いや、魅せてやる。俺の筋肉で、染めてやる。それ以外の選択肢を、熱に浮かされた彼は思いつくことが出来なかった。長時間風呂に入ってのぼせてしまった彼には思いつけなかった。
クシャスラはその先行者、違った、その先行する己の選んだ防人の決心についていくしかない。
風呂から退場したカーフは、まずはどこに出没しようかと思いめぐらすのだった。
=
>>神様!危ない後ろ!
>>毛布のアレは★一個なんだ…
某スレ村は、かつて少しだけ、カーフに染まっていた。