辺りはすっかり暗くなっていた。ごうごうという風の音。
その風に煽られた雨粒が窓を叩き付ける。
「ヨキさんたちは無事に着いたのでしょうか…」
心配そうに窓の外を見つめる少女。
他の村への診察のため、数日間留守にする、と朝早くからシオを連れて出かけてしまった。
「悪天候は局地的なものだろう。それに…神の加護を受けたアイツがいるんだ。」
大丈夫、彼女の横で空を見上げていた少年は呟いた。
「そうですね…」
少し安堵したように、少女はふわりと微笑んだ。
「レオさん、お茶でもお入れしますわ」
「おう」
と、二人が足を踏み出した瞬間に闇を切り裂き轟く雷鳴。
「きゃっ!」
神は思わずレオにしがみついてしまった。
「!」
レオはとっさのことにあたふたとしながらも、空を掻く己の両腕で、
彼女の体を支えた。
「大丈夫、怖くないから…」
そう囁きかけるのがやっとだった。
やだ、私ったら…そう感じながらも、羞恥を感じながらも、彼の腕の中に寄りかかっていたい、
そんな自分がいるのも確かだった。
視線をぶつけると、彼女はゆっくりと瞳を閉じた。
吸い込まれるようにお互いの唇が重なっていく。時間が止まったかのような重ねただけのキス。
その間にも、レオの彷徨う両手は、神の上着の中に入り込み、滑らかな背中を辿り、下着の金具に
達していた。
腕の中の少女の困ったような表情にハッとし、思わず後ずさる。
「す、すまねえ。オ、オレはなにを…!」
無意識に、とはいえ神に対し、とんでもないと思えることをしようとした自分を恥じ、
部屋から出て行こうとした。
そのとき、「待って下さい。」と呼び止める声。
「…私、レオさんだったら、その…構いません…。」
潤んだ瞳をそらし、頬を真っ赤にしながら、神は小さいながらも芯のしっかりした声を絞り出した。
どうする、オレ! どうする、レオナルド!!
頬を紅潮させ、体は硬直しながらも、彼の頭の中では激しい自問自答が繰り返されていた。
ただ、彼もまた悲しいくらいに健康な少年で、おおいに思いを寄せる少女からの許しに値する
その言葉によって、彼の衝動を抑えきれなくなっているのも確かだった。
「神!」
その瞬間、彼女の体はふわりを浮き上がり、彼に抱きかかえられ、ベッドに運ばれていた。
どうしよう、私ったらなんてことを…そんな思いが一瞬、頭を過ぎったが、不思議と後悔は
しないだろう、と感じていた。
ふわりとシーツの海に投げ出される。と、同時に彼が組み敷き、深海の色の瞳で問いかける。
「本当に、いいんだな…?」
彼女は黙って頷くと、そっと瞳を閉じた。
再び、重なり合う唇。いつしか、それは、舌を絡ませあうほど激しいものへと変化していった。
絡み合う水音、混じり合いどちらのものかわからない唾液が彼女の口角から零れ落ちていく。
名残を惜しむかのように唇を離すと、二人の間を銀色の糸が繋ぎ、やがてぷつりと切れた。
レオは神の背に両手を回すと、その下着の金具を外した。
「今度は、外せたな…」
はにかみながら、微笑む神。今はとても艶っぽく見える。
彼女が背中を浮かせると、彼は上着と下着を抜き取ると、自分も上着を脱ぐ。
白く柔らかな双丘を角張った両手で包み込むと、固く尖った突起に触れた。
指先で弄ぶと、彼女の全身に走る衝撃。思わず出そうになった声を押し殺す。
更に、彼は片手で彼女の胸を揉みしだきながら、もう片方の胸を口にくわえ、吸い上げた。
熱く濡れた粘膜の感触に、先ほどよりももっと声が出てしまいそうになる。
必死で声を押し殺すが、荒くなっていく吐息を抑える事ができない。
彼のもう一方の手は、彼女の柔らかな肌を堪能していた。
その柔らかさ、きめ細かさに目を細める。
彼女のすらりとした両足からそのスカートの中に侵入していく。
ブラとおそろいのピンクのレースのショーツは、その上から触っても分かるほど
しっとりと湿っていた。そして、その変化は彼女自身も気づいていた。
「あ…っ…や…」
彼の無骨な指が布越しに触れただけでも、更にあふれ出してくる感覚。
ついに、声を漏らすと、羞恥のあまり、顔を伏せる。
そんな彼女をカワイイと思うものの、レオはもう止まれない。
スカートを脱がすと、ショーツも片足を抜き、もう片足に引っかけたまま、
彼女の両足を広げた。
「みないで…」
あまりの恥ずかしさに神は両手で顔を覆う。
レオがとろとろと蜜があふれ出すその部分に舌を這わせると彼女の全身が
ビクンと痙攣した。戦慄くその部分からは止めどなく溢れ出ているように感じられた。
ついに彼は猛った自身で彼女の割れ目をなぞった。
先ほどの舌とは異なる感覚に彼女の緊張も高まる。
……初めての時って痛いのよ…元の世界にいたころ、合宿の夜に女友達が
してくれた大人びた経験談。そのせいか恐怖心も感じてしまう。
レオの体を引き寄せると、彼の鼓動が早鐘のようにドクドクと伝わってきた。
彼も同じ?躊躇している?そうわかると、少し安堵して力が抜けるよう。
彼女は彼の瞳を覗き込み、耳許で囁いた。
「大丈夫、怖くありませんから」
ふわりと微笑む。それは、彼だけでなく自分自身にも言い聞かせた言葉だった。
レオはゆっくりと腰を進めていった。抵抗のある部分を破ったように感じた瞬間ビクンと
大きな力が漲ったようだった。これこそ、彼女の中から赤い血が流れ出ているのに他ならなかった。
それに対し、大きなそれを受け入れる神は肉が裂かれるような痛みに唇を噛みしめるしかなかった。
「いた…」
堪えようとしても、涙が滲んで、さらに溢れる。
しがみつくように彼の背中にまわした指先に力が入って爪を立てる。
引き締まった背中から黒い血が滲んでいくが、彼の中に今広がっている快感に比べると、
微々たるものでしかない。
「大丈夫か?」
彼女の苦痛を少しでも和らげようと、汗ばんだ額に落ちた若草の髪を払い、口づけを落とす。
舌を絡め合わせると、もう何も考えられない。神の全身からふっと力が抜けていく。
痛みとともに何か満たされた、何か別の感覚が感じられた。
「レオ…さ…」
「神…」
彼女の落ち着きを認識し、レオは緩やかに動き始めた。
「ん…ふ…ぅ…」
がちがちに締め付けられたそこから、少しずつ抜いていく。
締め付けが強い分、粘膜どうしのすれる感覚が甘い痺れとなってお互いの全身に広がっていく。
「あ…ぁ…あん…」
抜き差しを繰り返す度に彼女の口から漏れる嬌声は高く甘く切なくなっていった。
さざ波のようによせては返す感覚に流され、彼の動きに腰を揺らしながら、その身体にしがみつく。
「神……神…!!」
彼もまた、彼女の体を揺さぶることしかできない。
「レオ…さ、…ぁ…ん…あ…ぁ…」
甘い嬌声もまた彼を狂わせる。動きは増すばかり。繋がった部分の奏でる規則正しい水音が
テンポを上げていく。まるである一点に向かうかのように。
「うぅ…」
彼の低い呻きと同時に、彼女の中の彼がビクンと跳ね、熱を注ぎ込んでいく。
汗ばんだ肌を汗の隙間もないほど、密着させ、熱を逃すまいとする本能が彼女に働きかける。
「あ…ぁ!!」
その熱に胎を灼かれ、神はその意識を手放した。
「あ…レオさん?」
神がゆっくりと目を開けると、心配そうに覗き込む深く蒼い瞳と視線がぶつかった。
若草の頭を彼のたくましい腕が支え、布団を掛けてくれているのに気づいた。
このまま、心配してくれたのだろうか。
「…調子に乗ってしまって…すまなかった…。」
叱られた子供のように、しょんぼりと謝罪の言葉を口にする。
神は、腕を伸ばし、彼の逆巻く金髪に指を絡めながら、よしよしをするように
頭を撫でる。ふんわりと全てを包み込むような微笑みを浮かべて。
「神…」
もうそれ以上、言葉はいらない気がした。
(終わり)