1.  
 
「加護女」  
「はい」  
加護女は僕専用の家政婦さん。メイドさんっていうには和風な彼女。  
長い睫毛の奥の瞳を見たときから。僕は一目で彼女を気に入ってしまった。  
彼女はいつも食事する自分をじっと見つめ続ける。今も、そう。  
「加護女。あんまり」  
もぐもぐと口を動かす。行儀悪いけど言わなきゃ。  
「『あんまり』美味しくない、ですか?」  
「あ、いや! そうじゃなくて!」僕は慌てる。  
「ちょっと見られすぎじゃないかなぁと思って  
……ほら、見られてると喉通らないでしょ?」  
すでにおかわりを貰っていながら僕はいう。  
「そ、そうですか」  
顔を伏せ加護女はぎゅっと膝の上で手を握る。  
……あああ、黙っちゃった。  
僕は煮物のお椀に入った花形の人参をパクリと食べた。  
加護女は何故か僕の好きな味を知っていて最初に来た時から  
何も言わずに和食を作ってくれた。  
恥ずかしくて言えなかったけど『母の味』とはこんなものなのかなと思い  
僕はおもわず涙を零してしまった。  
そう思ったら、涙が勝手に出てきてどうしようもなかったんだ。  
加護女はそんなおかしな僕を黙って胸に抱いてくれた。  
「おいしくてつい涙が出ちゃって、ごめんね」という言い訳は通用しただろうか。  
僕にはわからない。  
 
2.  
 
加護女が来てからは不思議と胸の調子がいい。苦しくない。  
──加護女ってまるで『守護天使』みたいだね。  
茶化していうと加護女は何故か苦しそうな顔になった。  
──私は加護女ですから…  
作り笑顔は見たこともない影を彼女に落とした。  
僕はいけないものを見たような気持ちになって。  
それから体調の事を言うのは控えるようになったけど  
ぐあいはあれからも、ずうっといい。  
むしろどんどん良くなってきているような気がする。  
本当に、彼女は守護天使なんじゃないかな?  
僕の守護天使。僕の。  
僕の天使だ──。  
いつか「守護」がなくなってただの天使になったら。  
僕がちゃんとした大人になれたら。  
君はこれからもずっとそばにいてくれるのかな。  
 
その代わり夜におかしな夢を見るんだ。  
そう、「おかしな」夢。  
僕は決して動けないままに、その夢を見せられる。  
男の子を連れて家路に急ぐ加護女。女の子を守る為に走る加護女。  
変わった格好をしている加護女はたくさんの人々に囲まれていた。  
男の子と一緒にヒーローみたいなお兄さんを応援する加護女。  
時を超えて少年を護り戦う加護女。これは全4回くらいのお話で  
この夢を見るのは楽しかった。だって加護女に夢で逢えるばかりか  
ハラハラドキドキさせるようなお話なんだから。  
綺麗なだけでなくかっこいい加護女。  
 
3.  
 
でも楽しい夢ばかりではなくなった。  
それはどこかわからない部屋で彼女ともうひとり誰かがいる夢だった。  
豪華な椅子に座らせられた彼女が、命令されるままに脚を拡げる。  
肘当ての部分に両足をあげて顔を伏せ。  
彼女はそしてためらいつつ白い下着に指を入れる。  
ぐちゅと音がして僕は夢の中で耳を震えさせた。  
羞じらいながら指の数を増やし涙目になっていく。  
誰かわからない人物がいきなり無遠慮に和服の胸元に手を入れた。  
「あっ……!」  
そのまま布の下で。両胸が乱暴に揉まれ加護女は顔をあかくする。  
椅子の後ろにまわりこんだ誰かは加護女の胸をはだけさせ  
ぞんぶんに弄り倒していた。  
「あぁ……あんっ」  
きゅっと両の先端を尖らせ、唇と同じような色を鮮やかにさせていく。  
「あっあぁぁ、も、もぅ……!」  
誰か(その顔も姿も僕には見えない)は加護女の耳に何か呟く。  
加護女はぼぅっと頬を染めコクンと頷いた。  
「ご主人様、加護女にお情けを下さいませ…………。……ぁ!…あぁあんっ!」  
下着の隙間から誰かのモノを迎え入れて、ずぶり、ぐちゅりと銜え込んでいく加護女。  
加護女の顔が苦しそうに、でもとても気持ち良さそうになるさまを  
僕は何も出来なくてただただ見ているだけだ。  
脚を拡げ、腰を誰かに掴まれて激しく揺すぶられ  
白い胸にむしゃぶりつかれ、涙を流して蹂躙される彼女。  
「ご主人様がお望みなら……」  
加護女が呟いたとたん『誰か』の手が多くなった。たくさんのひとが加護女に群がってくる。  
「加護女の名が聞いて呆れるな、淫乱娘め」  
「私は加護女失格です……ただの女……いえ、ご主人様の玩具です」  
指で乳首を弄られ、紅くぬめる口は誰かも分からないものをくわえさせられ  
馬乗りにされ上に乗せられ。  
女の部分をひらいて其処を誰にでもあけわたす加護女。  
綺麗な口に白い液を吐き出され、んんんっと喉を鳴らして飲み込む。  
「おいしい……。あぁ、もっと、もっとこの加護女を可愛がって下さい……」  
ほんとうなの。ほんとうなの。加護女。  
加護女はそんなんじゃない。そんな事も言わない。そう思っていても夢の中の出来事は  
縦横無尽な現実感を持って僕を切り刻んでいった。  
 

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