とある町の宿屋。その一室にて、色々な意味で有名な渡り鳥、マヤ・シュレディンガーがうろうろとし 
ていた。  
今日はちょうど新刊小説の発売日なので、弟のアルフレッドに買いに行かせたらしい。  
「に、しても遅いわね……あの子、どこで道草食ってるんだか」  
退屈を持て余しているようで、少しいらいらとした表情である。  
「今月は大作揃いだから、早く読みたいのに。帰ってきたらきつく言わないと……ん?」  
と、ふと足元に目をやる。そこには、アルフレッドがいつも背負っているリュックが落ちていた。  
なんだか気になって、中身を色々と出してみる。  
出てくるものというと、まず様々な火薬類。それから、細かな機械。実用的なものばかりである。  
一家の工作担当な訳で、それも当然なのだが。  
「……ふん」  
もうちょっと奥も見てみるが、おおむねそんなものばかりだ。あまり面白いものはない。  
仕方なく、中身を戻していく……と、火薬類の間に紛れて一冊の文庫本が出てきた。  
微妙に、見つかりにくい位置にあえて置いてあったような感触があるが、マヤは特に気にせず本を取る。  
「あの子の読む本って言ったら、どうせ発破関係だと思うけど……どれ」  
ぱらぱらとページをめくる……うちに、マヤの顔が少しずつ赤く染まってきた。  
「って、この本……」  
 
部屋の扉がそっと開けられたのは、その直後のことである。  
「ほら姉さん、ちゃんと頼まれてたの買ってきたよ。なんか一番近くの本屋さんだと売ってなかったか 
ら、遠くのとこまで行かなくちゃならなくって、それで遅れちゃって――姉さん?」  
買い物袋をぶらさげたまま、今しがた入ってきたアルフレッドはきょとんとして呟いた。  
姉は何しろ文学好きなので、毎月の新刊に飛びつかない訳がないのだが。  
肝心の姉は、部屋の隅で何かの文庫本らしきものを読んでいるようだ。呼びかけても返事がない。  
「また何かになりきってんの?駄目だよ、室内でそういうの……」  
いつも通りの愚痴をこぼしつつ、姉が持っている本のタイトルを確認しようと近づいてみる。  
どこか、見たような気がするカバーだ。もちろん、姉の読んでいる小説のほとんどは見たことがあるの 
だが、これに限ってはどうも違うような気がする。  
なんだか嫌な予感がして、慌てて本を確かめる、と。  
「……ああああああッ!?」  
 
よりによって、それはアルフレッドがこっそり隠し持っていた18禁ものの小説、  
気弱な少年が近所のお姉さんに色々もてあそばれてしまうという、一部の趣味全開の代物であった。  
実際、姉にその手の感情を抱いたことは無い訳ではなく、だからこそそんな小説も読んでいたのだが。  
「あ、ああああ、ぼ、僕は、その、あの、そ、そういう訳じゃなくって、えっと……」  
半ばパニックを起こしつつ、言葉にもならない弁解を重ねようとするアルフレッド。  
しかし、その言葉は唇に押し付けられた暖かい感触によって遮られた。  
「むぐッ!?」  
「……ふふ」  
目の前には、見慣れたはずの、しかし見たことのない姉の顔がある。  
顔全体が赤らんで、目も潤んで。  
「ホントに仕方の無い子よね、アンタって。こんなの持ってるのも困ったものだけど、  
 それをアタシが読んじゃったらどうなるか考えてなかったの?  
 だから、仕方ないわよね。こうなっちゃったら、アタシとしては内容を再現するしかない訳だし」  
強引な理屈を一方的に言うと、そのまま舌を弟の口の中に入れてくる。  
「んッ、んんん……」  
はじめはアルフレッドも少しだけ抵抗するそぶりを見せていたが、すぐにおとなしくなった。  
そのまま、姉の舌が口内を蹂躙するに任せる。  
生暖かい舌先の感触と、流し込まれる姉の唾液。  
「……ん……」  
ぴちゃ……ぴちゃ……と、唇を触れ合わせている二人にしか聞こえないほどの、小さな水音がする。  
しばらくはアルフレッドも完全に受身だったものの、やがて姉の舌に応えてこちらのそれも絡ませる。  
そうして、お互いがお互いの唾液を飲み込んだ後に、ようやくマヤは唇を離す。  
舌先と舌先が離れる時に、小さく糸を引いた。  
 
「……はぁっ……なんだ、結構アンタも乗り気じゃない?」  
「ち、違うよ……」  
「そんなこと言ったってね……」  
マヤの手が、そっと下へと降りていく。  
「な、に……うぁッ」  
ぎゅっ、と。その手がアルフレッドの股間を、服の上から握り締めた。  
「これは何? おちんちん、随分固くしてるじゃない? こんなので、違うって言ってもねぇ……」  
「そ、れ、は……う……」  
「ふふふ……」  
いつもの人を食った笑みを見せながら、マヤはその手をゆっくりとほどいた。  
そして改めて布越しに弟のペニスをなぞりあげる。  
「ッッ!!?」  
「いつもは頼りないわりに、こういう時だけ自己主張が激しいわね……  
 こんなに固くしちゃって……ふふ……」  
「……生理的反応だよ……僕だって男なんだから、刺激を受けたらどうしたってそうなるん……」  
「いちいち反論しないッ」  
手は変わらずアルフレッドの股間をなぞりながら、再び唇で彼の言葉をふさぐ。  
二度目のせいか、反抗もほとんどない。布越しとは言え、敏感な性器を責められる感触と、  
口の中を蹂躙される感触で、アルフレッドの全身からずるりと力が抜ける。  
「んあ……」  
ぐったりとしたのを見て、マヤはそっと唇を離した。そのまま、耳元に囁きかける。  
「アタシの弟ながら、ホントに可愛い子。いつもいつもアタシの為に働いてくれる、自慢の弟。  
 だから、今日はたっぷりそのお礼をしてあげるわ。幸い……」  
足元に落ちている、アルフレッド所有の小説をちらりと見る。  
「……あれのお陰で、何をどうすればいいかはきちんと習熟できたから。  
 きちんと、最後まで面倒見てあげるわ……」  
 
「僕が……自慢の?」  
とろんとした目のまま、アルフレッドがぼんやりと聞き返す。  
「……ええ、もちろん」  
視線と視線が絡みあう。ふっ、と、マヤが微笑んだその時。  
「……う、うぁっ……」  
びくん、と。アルフレッドの体が震えた。同時に、じんわりとマヤが撫でていたあたりが暖かくなる。  
「え? アンタ、ひょっとして……」  
「う、あ、う……」  
顔を真っ赤にして、ぐったりとしたままの弟。そのズボンの中に、マヤはさっと手を入れた。  
にちゃり。  
ねっとりとしたものが、そこに溜まっているようだ。  
指を取り出して、それをぺろりと舐めてみる。  
「青臭いわね……そう。アル、あなた、触られただけで出しちゃったのね?」  
「あ、あ、あ、う……それは……その……」  
「別に責めてる訳じゃないわ。……感じてくれたってことでしょ?  
 だったら、アタシとしても嬉しいわ……それにしても」  
情けなさと放出直後の虚脱感で、ぺたりと座り込んでしまった弟に、マヤはそっと近づく。  
そして、そのズボンに向かって手を伸ばすと、ゆっくりとそれを剥いでいった。  
すぐに、アルフレッドの下半身がむき出しになる。  
そこには、白い粘液がこびりついたペニスが力を失った様子でしなだれていた。  
「汚れちゃってるみたいね……なら、綺麗にしてあげるわ」  
「な、何……う……」  
マヤの唇が、そっとアルフレッドのペニスに触れる。  
にちゃ……と、小さな音が立ったが、マヤは気にせず舌を出してそれを舐めとり始めた。  
「う、う、うあああッ……そ、それぇッ!」  
「ふふっ……感じちゃう? でも、汚れたままだと困っちゃうからね……」  
ぺろぺろと、マヤは弟の男性自身を舐め回す。  
みるみるうちに白い粘液は彼女の口の中に納まっていき、  
代わりにマヤの口から零れた唾液が塗されていく。  
 
その間、アルフレッドは必死で姉の唇から送られてくる感覚に耐え続けていた。  
あの姉が、自分のペニスを舐めてくれているのだ。その事実だけで、気を抜けばすぐに出してしまいそ 
うになる。  
それでも快感をうながすのでなく、あくまでこびりついた精液を舐め取るだけの動きだから、再び暴発 
することもなく耐えることもできた。  
「ん、綺麗になったわ……」  
「はぁ、はぁ……ね、姉さん……」  
責め苦から解放されて、ほっと一息つく。相変わらず姉は軽い笑いを含んだままだ。  
「さて、綺麗になった訳だし。これで、改めてアルの精液飲んであげられるわね」  
「……えぇッ!?」  
さらりと言うや否や、マヤはすっと弟のペニスを口に含んだ。  
「ね、姉さんッ!?」  
うろたえるアルフレッドに対し、片目でにっと笑うと、ちゅばちゅばと吸い込み始める。  
「う、うあッ! な、あ、えッ!?」  
舌が敏感な先端を舐めて、口腔全体はやんわりとペニスを締め付ける。  
もともと、精液を舐めとられていた時点で限界近かった快感が、それによってあっさりと針を振り切っ 
た。  
「だ、だ、駄目だよぉッ……う、うあああッ!」  
びくっ……びくっ、と、アルフレッドの体全体が震える。  
その中心であるペニスは一番の跳ね上がりを見せた。  
「んんッ」  
飛び出してくる精液が、マヤの喉奥に流れ込む。青臭い匂いが口いっぱいに広がった。  
こくこくと、その様子が弟によく見えるようにそれを飲み干す。  
「さっきより、勢いあったような気がするけど……やっぱり、直接やる方が感じる?」  
もう意識が朦朧としているのだろう、アルフレッドはただぼんやりと頷いた。  
「ふふっ……正直ね。……って」  
そう言って微笑んで見せたとたん、手の中にあった弟のペニスがむくりと起き上がった。  
「二回も出しておいて……見た目頼りないわりに、ホントこういう時ばっかりは元気なんだから」  
仕方の無い子、とでも言いたげにそれを若干あきれた目で見る。  
だが、すぐにその目は淫蕩そうな妖しい光をたたえたものに変わった。  
「……これなら、インターバルはいらないわね……」  
 
ぼんやりとしたままの弟をベッドの上に導くと、マヤはそっと自分の秘所に指を滑らした。  
それだけで、ぐちゅりと湿った音がする。  
弟を責めていただけだったが、それで十分彼女自身も興奮していたらしい。  
「ふ……んんッ」  
そのまま、指を二本中へと入れる。ぐちゅぐちゅと音を立てて、そこを刺激する。  
そうやって自分を高めながら、弟の上に覆いかぶさっていく。  
「ほら……起きなさい、アル」  
「……う、ん……」  
ぺしぺしと軽く頬を撫でる。それで、アルフレッドの目に意識が戻ってきた。  
「……ねえ、さん……」  
「じゃ……いくわよ。きちんと最後までやってあげないと、ね……」  
するすると衣擦れの音がする。それは、マヤが自身の服を脱いでいく音。  
いつもの変身のように、一瞬という訳にはいかないようだが、それでもすぐにその裸身があらわになっ 
た。  
元々、美しいという部類に入る彼女だ。欲情し、潤んだ瞳と、あくまで白いままの肌が対照的に映えて 
いる。  
「姉さん……」  
「なぁに?」  
「……その。綺麗……だと、思う……」  
「ありがと、アル」  
素直に受け取って、マヤは優しく笑う。そして、弟のペニスをそっと摘んだ。  
「ほら、これがアタシの中に入ってくるの。アルのいやらしいのが、アタシの中にね……」  
「……あ……う……」  
「それじゃあ……」  
言い終わる前に、マヤは自分の入り口に弟をあてがい、そして――一気に飲み込んだ。  
「う、うあああああッ!」  
「……つっ……」  
 
それだけで、もうアルフレッドは衝撃に踊らされる。  
ついさっきの、口の中とはまったく違う感触だ。  
まるでぎりぎりと締め上げられるような、それでいて優しく包まれるような。  
「姉さん、姉さんッ……え?」  
少しでも気を抜くと弾けてしまいそうな意識の中、ふっと姉の方を見る。  
しかし、マヤは少しだけ辛そうな表情をしていた。快感に流されそうなアルフレッドとは違って。  
「つぅっ……話には聞いてたけど……結構、クるもんね……」  
「え? ……え? 姉さん、何が……」  
「ん……気にしないで。なんでも、最初ってのはなかなかうまくいかないもんだから……」  
「最初……って、姉さん、まさか!?」  
 
その言葉で、アルフレッドは肝心なことを思い出した。  
何しろ、姉はこの性格である。今まで恋人などという存在など、作ったこともない。  
自分自身に釣り合う男がいないと、常々広言していたくらいだ。  
しかも、ここ数年、渡り鳥として姉と一緒に旅をしてきて、一度だって姉と離れ離れになることはなか 
った。  
つまり。  
よりにもよって。  
アルフレッドは、姉の処女を奪った……というよりは奪わされた、のだ。  
 
「あ、あ、あ、あああああああッ……な、なんてことを……」  
快感も忘れて、アルフレッドは半ばパニックを起こす。  
「ちょ、ちょっと、アル……」  
「ぼ、僕が姉さんのッ!? な、姉弟だし僕はどうしたらどうしよう――」  
「……んッ」  
混乱している弟を見かね、痛みをこらえたままマヤは自分の中にいるアルフレッド自身を締め上げる。  
「う、うわッ!?」  
「ほら……いくわよ」  
そのまま、少しずつ腰を動かす。じゅちっ、じゅちっと接合部から水音が流れ出てくる。  
「ね、姉さんッ……」  
「気にしなくていいわよ……アンタがアタシのはじめてを貰ったんなら、  
 アタシはアンタのはじめてを貰ったんだから……これで、おあいこ……でしょ?」  
「そういう問題じゃあ……う、うぁあッ!」  
「ほらほら……余計なこと、考えてる暇はないでしょ……」  
姉のなすがままに、アルフレッドは翻弄される。  
流されるような円を描いたかと思えば、激しく出し入れする動きになる。  
ぐちゃぐちゃとどんどん音を立てて、姉弟は一つに結びついていく。  
「す、凄いよぉ、姉さんッ、姉さんッ……!」  
「ん……そう、でしょ……?」  
しかし流されるままの弟とは違い、マヤはまだ少しだけ顔をゆがめていた。  
(ま、仕方ないわね……こればっかりは、すぐには気持ちよくなるってもんでもないし……)  
できるなら、愛しい弟と一緒に昇りつめたい。だが、破られた肉の膜は痛みを訴えている。  
幸いなのは、アルフレッドのペニスは年齢相応の大きさで、えぐるほどの痛みは無かったことだ。  
そのお陰で、なんとか自分の秘所を突く弟を感じることができる。  
 
「はぁッ……アルのおちんちん、アタシの中で踊ってるみたい……」  
「僕は何も……う、うあああッ!」  
ようやく、じわじわとした快楽がマヤにも広がってくる。しかし。  
「……う、あ……姉さん、なんか、来るッ、来ちゃうよッ……」  
「限界なの? ……そ。なら、いいわ。アタシの中に、アルのお汁を受け止めてあげる……  
 精液、たっぷり中で受け取ってあげるから……」  
「な、中、に……」  
その言葉で、飛びかけていたアルフレッドの理性に警告が走った。  
「そんなこと、したら……だ、駄目だよ、姉さんッ! 僕と姉さんの……」  
「子供、出来ちゃうかもね? いいじゃない……  
 アルとアタシの子なら、きっとアタシみたいに強くて美しくて、アルみたいに可愛くて賢い子供がで 
きるから……」  
「そ、そんなのぉッ!」  
「……大丈夫、今日は安全だから……ね。安心して、出していいわ……  
 ま、もし危険な日でも、アタシは構わないんだけど……」  
ずちゅずちゅずちゅずちゅッ。  
二人が話している間にも、マヤの腰つきは止まらない。それはアルフレッドに絶え間のない快楽を送り 
込んで、そして。  
「だ、駄目だよ、姉さん、姉さん、姉さッ……」  
「……ッ!」  
「ああああああッ!」  
今までになく、アルフレッドの体が跳ね上がる。  
びゅるっ!  
まるで音でも聞こえたかのように、そのペニスの先から熱い粘液がマヤの子宮目掛けて勢いよく飛び出 
してきた。  
「あああ……あ……」  
放心した表情のまま、アルフレッドは注ぎ続ける。  
その熱さは、マヤにも快感を与えてくる。  
「な、これッ……熱くて……あ、入ってきてるッ……」  
絶頂には程遠い、けれど温かく満たされるような快感。  
「ふうッ……アルのお汁、あったかいわ……」  
「ねえ……さ……ん……」  
 
 
ようやく、勢いが止まった。  
アルフレッドのペニスは力を失ったようだが、しかしいまだ姉と繋がったままだ。  
ぼんやりとした表情のまま、アルフレッドは姉の顔を見る。  
目を閉じて、静かに満足そうな微笑を浮かべている。  
「……姉さん」  
「沢山出したわね……あーあ、これじゃあ安全日なのに子供ができちゃうかもしれないわ……」  
「えええッ!?」  
「冗談よ。……ふふ」  
いつもの人を食った笑みだ。なんだか気が抜けたアルフレッドに、マヤはそっと口付ける。  
それから、ゆっくりとペニスを引き抜いた。  
こぽっ……と、少しずつ粘液が零れ落ちてくる。そこには、少しの赤色も混じっていた。  
「はぁ……詳しくはわかんないけど、濃いわね……さすがはアタシの弟ってとこか」  
「…………」  
起き上がると、ふっと窓の外を眺める。  
今気づいたが、もう日は暮れてしまいそうだ。随分闇が濃くなってきている。  
「やぁね、これじゃ新刊読めないじゃない」  
「……って、今から読むのッ!?」  
「ええ、そうだけど? ま、その前に体洗う必要があるけど……」  
元々、今日の外出は姉の頼みの新刊小説だったが、こんなことになってしまっていたのですっかり忘れ 
ていた。  
マヤの方はまだ覚えていたらしいが、そんな姉にアルフレッドはため息をつきつつ、  
(……いつもの、姉さん……だよね)  
少しだけ安心をする。  
 
 
翌日のこと。  
シュレディンガー一家、今日は新しく見つかった遺跡の探検に向かっている。  
いつもと変わらない光景だが、少し先を歩くマヤとアルフレッドの二人の様子に、シェイディはやや怪 
訝そうな顔をした。  
「姐さんと坊ちゃん、なんか今日は妙にくっついてないか?」  
確かに。手を繋いでいるあたりも、微妙におかしい。  
「……なんか、あったのか?」  
「ふむ……あずかり知らぬことですが……」  
話しかけられたトッドも首を傾げるが、  
「ま……姉弟仲がよいのは結構なこと。先代も草葉の陰で喜んでらっしゃるでしょうとも」  
「そういうもんかね? ……まー、変なこと言って姐さんの機嫌損ねるのもアレだしな」  
「まったく」  
そう言って、二人は少しの苦笑を浮かべた。  
一方の姉弟は、そんな後ろを気にするでもなく。  
「……はあ」  
「どうしたの?」  
「……僕らは姉弟な訳で。で、昨日はあんなことやっちゃった訳で。  
 割り切ろうたって割り切れるもんじゃないよ……」  
「別に、一回や二回たいしたことじゃないじゃない」  
「だけどッ……」  
「でも、気持ちよかったでしょ?」  
にっとマヤは不敵に笑う。それを見て、不意にアルフレッドはどきりとした。  
結局、僕はこの姉が大好きなんだろうなあ、と。  
こうなったことも、そりゃあ色々な意味で大問題だし、まったく褒められるべき事態でもないのだが。  
最終的には、こうやって流されてしまうのだろう。でも、  
(それはそれで、嬉しい……のかな)  
そう感じる自分がいる。まったく、情けないやら何やらで、かくんとアルフレッドは肩を落として。  
「……うん。すっごく気持ちよかった」  
そんなふうに応えるしかない訳である。  
「なら、いいじゃない。そうね……じゃあ、今度は魔女っ子の姿でやってあげようか?」  
「ね、姉さんッッッ!」  
そうして、いつもどおりにシュレディンガー一家の一日は過ぎていく、のだった。  
 

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