「……しっかし、あの三悪どもも手加減しねーんだもん、ホントやんなっちゃうッッ。  
 いっくら俺様が最強のイレギュラーでも袋叩きはたまんねーッッ」  
などと呟きつつ、傷ついた体を引きずって無人の街を歩いているのは。  
そう、魔族最強の戦士、イレギュラーナンバーたるゼット。  
と、そんな物騒な肩書きは昔の話。  
今はこの町、セントセントールに暮らす一人の少女の為に生きる戦士になっているらしい。  
戦いの日々を過ごしてきた戦士ゼットにとって、  
彼女との日々はささやかながらも慣れない幸福に包まれたものだったのだ。  
ところが、そんな小さな幸せを邪魔する黒い影が現れた。  
かつての戦いの日々に出会った、巨悪三人組がその幸せを破壊せんと魔手を伸ばしてきたのである。  
激闘の末に敗れ、死をも覚悟したゼットだったが……彼の勇気に打たれ、三人組は改心して去っていっ 
た。  
(ただし以上はあくまでゼット本人の主観)  
 
「まあ負けちまったもんはしょうがない、俺は明日に生きる男ッ。  
 とりあえず帰って寝ようかなっと……む、いかんいかん」  
勢いよく歩き出したのはいいのだが、先ほどの激闘の際の傷は思ったよりも深いらしい。  
思わずふらりふらりと足元が揺れ、その場にへたりこんでしまった。  
「ちっ、決まらねーったらねーぜッッ……」  
そうぼやいていたところに。  
「剣士様……?どうかしたんですか?」  
遠くない場所から、小さな声が聞こえてきた。  
慌ててそちらを振り向くと、一人の少女が覚束ない足取りでこちらへと向かってきている。  
足取りがゆっくりなのは仕方の無いことでもあるだろう。彼女は光を失っているのだから。  
その少女こそ、ゼットに安らぎをくれた人。  
この町にたった一人残っている人間であり、歴史に名を残すことも無かった、  
しかしゼットを修羅の道から救ってくれた少女だ。  
 
「な、こ、こら、出歩いちゃダメって言ったでしょッッ!  
 この町、まだ低レベルなモンスターどもがうろついてるんだから、危険だって言ってるってのにッッ!  
 俺様みたいな聞き分けのいい子ばっかりじゃないんだぞッ」  
「で、でも、何か大きな音がしたから……」  
「それは……だな、ちょっとでっかいくしゃみが出ただけってやつだなッ!」  
「……くしゃみ……?」  
いくらなんでもそう誤魔化すのは無理があるはずだが、しばらく考えた後、  
「なんだ、そうだったんですか。私、てっきり剣士様に何かあったんじゃないかって……」  
あっさりと納得する。  
ゼット自身、こりゃ無理があるなあと思っていたため、これには不意を突かれた格好だ。  
「お……おう、やだなあ俺様みたいな天才無敵剣士に何かある訳ないだろ。  
 まあ、アレだ、つっても今日はそろそろ帰らんとなッ。そんじゃ、またッ!」  
それでも気を取り直し、少女に別れを告げて帰ろうとする。  
だが、このやりとりの間にまたどこかの傷が開いたらしい。  
歩き出して、すぐにまたゼットは崩れ落ちてしまう。  
「はうぅッ」  
「ど、どうしたんです?」  
どさり、と大げさに倒れた音を聞きつけて、少女が近寄ってくる。  
「い、いや、ちょっと転んだだけだってッッ……」  
「それでも……」  
しかし少女も慌てていたのだろう。  
駆け寄ってくるのはいいが、足元にあった小さな石につまづいて、倒れているゼットの上に倒れこんで 
きた。  
「きゃっ!?」  
「おっ……とッ」  
それを優しく受け止めるゼット。魔族の類まれなる身体能力ならば、この程度は容易い。  
そう、普段のゼットだったのなら。だが、今のゼットは満身創痍だ。  
おまけに、彼女が自分を支えようと手を突き出した際、思い切り傷ついた腹部に彼女の全体重がかかる。  
「ッッ……くっきゃああああッ!?」  
「け、剣士様!?」  
無人の町セントセントールに、イレギュラーの声が轟いた。  
 
それから、少女とゼットは彼女の家へと戻ってきていた。  
ゼットの傷に驚いた少女が、手当てをするからと半ば強引に引っ張ってきたのである。  
引っ張ってきたといっても、半分以上はゼットの手を杖代わりに歩いてきた訳なのだが。  
手当てと言っても、慣れない作業な為どんどんと手間を取る。  
それに、彼女はそういった作業がそもそもやり辛い体だ。  
ゼットの怪我の様子を聞いて、手当てのための道具を出そうにも、ゼット本人に手伝ってもらわないと 
いけない。  
以前もこうして助けたことがあったとはいえ、手間取ることはこの上ない。  
結局、それが終ったのはもうすっかり日も暮れてしまった後となった。  
 
「……面目ない」  
ゼットには珍しく、素直に礼を言う。  
一仕事終えて汗を拭いていた少女は、それを聞いて柔らかく微笑んだ。  
「いえ……いつも助けてもらっている剣士様のためですから……これくらい」  
「い、いやあ、俺様のやってることなんて助けてるうちには入らないってッ。  
 ちょこっと遊びに来てるだけなんだからッ!」  
「それでも……来てくれるだけでも、十分に助けていただいています……から」  
「お、大人をからかうもんじゃないぞッッ、まだ若いのにッ」  
柄にも無く照れるゼットの言葉を聞いて、少女は口元に手をあてて小さく笑った。  
と、ふと思い当たったように彼女が顔を上げる。  
「あの……そういえば、どうしてこんな傷を……?」  
「ッ、そ、それはだなッ……ちょ、ちょいっと階段から転げ落ちちまってッ。  
 いや〜、こんなお約束するなんてまさに王道まっしぐらッて感じだよねッッ」  
これも相当無理がある。さすがに今回は少女も首を傾げた。  
 
「でも、切り傷とか……火傷まであったのは……」  
「階段から転げ落ちる際の摩擦熱で火傷したし真空によるかまいたちで切っちまったんだなッッ。   
 俺くらいビッグになると転ぶだけでも大惨事、ああ恐ろしいって話になる訳だ」  
「……ちょっと無理があると思います」  
彼女は目が見えないかわりに、直感や人の内面を感じ取る力が優れている。  
誤魔化しきれるものでもないと、ゼットはようやく悟った。  
「……ま、ちょっとな。軽く一戦交えただけってやつさ」  
「いっせん、って……戦ったんですか!?」  
「そ、そりゃ剣士だしな、俺ッ。剣士なんだから戦うもんだろッ」  
「そんな……一体、どんな相手と……剣士様がそんなに傷つくなんて」  
「それは……アレだ、そりゃもう厄介な相手でな、  
 この町に悪の手を伸ばさんとする三人の大悪党ッ!  
 一人は伝説の少年ロボット、ところ構わず重火器をぶっ放す大危険メカッ!  
 一人はふけ顔の悪漢、剣を振るって悪事を企むリボン親父ッ!  
 最後の一人は大食漢の魔女ッ!恐るべき食欲と魔術の使い手だッ!」  
紹介を聞いているうちに、少女の顔がきょとんとしたものに変わっていく。  
それが終った時、おもむろに少女は呟いた。  
「あの、その人たちって……アームを使う方と、剣士と、クレストソーサレス、ですよね?  
 ロボットとかわからないんですが、ひょっとしてロディさんたちですか?」  
「……え?」  
 
「ぬー。何か、じゃあ奴らってば知り合いだったのか……」  
「はい……剣士様より少し前にお知り合いになったんです」  
「そーか……そりゃちょっと悪いことしたかもな……  
 俺はてっきりあいつらがこの町に攻め込んできたとばかり」  
「そんな方たちじゃありません……でも、それなら剣士様は……」  
言いかけて、少女はなぜかもじもじと俯いた。  
「あの……ひょっとして、私を守るために……戦ってくれたんですか?」  
顔が赤い。こういう反応をされるのは、ゼットにとって始めてである。  
そもそも、こうして人間とまともに話をすることも慣れないし、  
魔族仲間は揃いも揃って人でなしばかりだった。元々人間じゃないので当たり前だが。  
「ま、守るって、そ、そういうのはだな、あ、アレだ、まあそりゃ俺の幸せを邪魔する……  
 あ、いや、その、あのだな……」  
「ちょっと複雑ですけど、でも……嬉しい……です」  
顔をうつむかせて、小さく呟いた。  
どうも奇妙な居心地の悪さを感じて、ゼットの方がそわそわと落ち着かなくなる。  
「そりゃ、良かった良かった……ってやつだな、ああ、それじゃ、もう傷もふさがったし帰……」  
「待ってください!」  
言葉とともに、少しだけ少女の手はさまよった後、ゼットの袖をぎゅっと掴んだ。  
「……剣士様、傷は……深いです……だから、今夜は……」  
「と、と、泊まるってかッ!? そ、そいつはさすがに俺様もまずいッ、  
 年頃の子に俺みたいな美形が泊まるのはいくらなんでも常識知らずってやつだッッ  
 (あれ? でもそもそもなんで危険なんだろーな? 魔族の常識には無いけどま、いっか)」  
余計なことを考えているゼットだが、少女はあまり深く気に留めなかったらしい。  
「……私」  
袖を握り締めたまま、彼女はそっと呟く。  
「剣士様だったら……その……」  
「ぬ、ぬぬ……」  
そんな少女を見るうちに、ゼットの心に今まで感じた事のない何かがむくむくと湧いてきていた。  
 
(な、何ッ!?この気持ちッ!生まれてこの方こんな気分始めてッ!?  
 ひょっとしてこれがウワサの恋ってやつですかーッッ!?)  
珍しく正解である。ともかく、その衝動は、彼にある行動を起こさせるに至った。  
両手でもって、俯いている少女をぎゅっと抱きしめる。  
「あ、剣士様……?」  
「な、なんてーか、アレだッ……いやまあ、その、あー、えー、うー……」  
自分でもさっぱり理解できない感情を抱えながら、思い切ってゼットはその唇を少女のそれに重ねてみ 
た。  
「んッ!?」  
「むッ……」  
柔らかい。  
戦いの日々の中でこんな感触を味わったことなど、一度たりとて無かった。  
その柔らかく温かい感触が、ゼットの唇から全身に広がっていく。  
しばらくして、唇を離す。お互いがそもそも慣れないせいだろう、唇を触れ合わせただけの軽いキスだ。  
けれど、ゼットにも少女にもその衝撃は大きかったらしい。  
「剣士様……い、今の……」  
「う、ぬぬッ……こ、これは一体ッ……妙に気分がいいぞッ!? っていうか、今俺がしたことって何ッ?」  
「え……今のは、その……キス、じゃないんですか?」  
「キスッ!? 魔族の中ではあんまり聞かなかった言葉だぜ……が、なんと聞こえのいい言葉ッッ!?  
 むー、こんなスバラシイことが世の中にあったってのか……」  
なにやらゼットはつくづく感動しているようだが、そんな声を聞いて少女もくすくすと笑う。  
「なんだか、剣士様って……こんな時でも愉快な方ですね……」  
「んッ? あ、ああ……ま、まあなッッ。どんな時でもユーモアの嗜みを忘れない、それが紳士っても 
んだが……  
 あ、あの……もう一回、キス……っての、やってもいい……か?」  
「え……あ、はい……」  
また、二人は口付ける。  
その感触をもっと味わおうと、ゼットはきゅっと少女を抱きしめて。  
 
「んッ……」  
少女は力強い剣士様の抱擁を受けて、ますます頬を染めていく。  
まるで夢のような気分。少女は、想像の中だけだったこの感触がまだ信じられないでいた。  
町から人が消えて、どうしようもなく心細かったその時に出会った剣士様。  
彼もまた傷ついていたけれど、少しだけ手当てをした自分に何度も訪ねてきてくれた。  
自分はいつも与えられるばかりで、恩を返すことも出来ていない。  
(……だから……)  
今は、あえて剣士様のために、積極的になってみる。  
 
少女は、そっと舌をゼットの口へと伸ばしてみた。  
「ッ!?」  
不意に唇に触れたより生暖かい感触に、ゼットは背筋がぞくりとする。  
更に、少女の舌はゼットの口内へと侵入を始めて、彼の唾液をそっと舐め取ってみる。  
「ッッッ!!」  
ゼットはそんな彼女の行動に為されるがままで、自分の口の中に他人がいるという不思議な感激を味わ 
うのに手一杯だ。  
やがて、少女は舌を離す。  
「んッ……あ、あの……どうでしたか、剣士様……?」  
恐る恐るといった様子で、少女は小さく呟いた。と、ゼットは、  
「かッ……」  
「か?」  
「かッ……感激ーーーッッ……って、何これッ!? 何ですかこの気持ちッ!!  
 今……俺、なんか君にすっごく鼓動早くなってるッ!?」  
「え、その……それ、満足したってことでしょうか……?」  
戸惑っている様子のゼットに、少女はあくまで落ち着いた様子で答えた。  
本当を言えば彼女だって恥ずかしくて照れくさくてたまらないのだが、  
ゼットが取り乱しているのでかえって冷静になれるのだ。  
以前、友人が話してくれたこと……自分とは縁も無いだろうと思っていたキスのやり方が、今役に立つ 
なんて。  
消えてしまってずっと話すことも出来ない友人だけど、もしまた会えたら感謝したいと思う。  
少女はそう考えながら、手探りでゼットを抱き返した。  
 
しばらく、初めてのキスに感動したゼットは少女と何度もキスを繰り返す。  
二桁くらいキスを終えた後、少女はまた勇気を出して言ってみる。  
「あ、の……これよりもっと気持ちのいいこと……剣士様にやってもらいたいんです、けど……」  
「これよりッッ……そ、それは一体?」  
なんだか妙にわくわくしたような、それでいて不安な言葉でゼットは尋ねる。  
真正面から言われると少女もまた気恥ずかしくなってしまうが、ジャスティーンに小さく祈ってあえて 
答える。  
「だッ……その、あの……私を、抱いてくれれば……」  
「抱くッ……って、今やってるんじゃないか?」  
「そ、そういうことじゃ……ないんです」  
答えながら、少女はちょっと疑問に思ってきていた。  
どうも、剣士様はこの手の話題に疎い疎いと思っていた(何しろキスもよくわかっていないようだった 
し)が、あんまりにも疎すぎるような気がする。  
これでは、  
(私が……全部説明しなきゃいけない、の……?)  
というそれこそ死んでしまうくらい恥ずかしいことをしなければいけないかもしれない。  
「あ、あの、剣士様……男女が、抱き合ってすることって……」  
「キスってやつと、他に何かあるのか?」  
思い切り普通に聞かれた。完全に知らないらしい。  
ここに来て、せっかく心を決めたのだから、やめることなんて考えられない。それなら。  
心の中でジャスティーンの加護を盛大に祈りつつ、少女は小さくゼットに説明を始めた。  
 
「ですからッ……男性の、その、あの……アレを、女性の、ですね……」  
「……ぬぬぬぬぬッッ……」  
説明をしながら少女は心臓が爆発するような気分になっていた。  
実際、鼓動はいつもの数倍早く打っているような気がする。いや、事実打っているのだろう。  
抽象的になってしまうのは仕方ないが、それでもなんとか説明を終える。  
彼女自身、それほど詳しい訳ではないのだ。友人から聞いた話に想像を加えて言っただけ。  
それでも、何も知らないゼットにはひどく興味深い説明だったらしい。  
「そ、それが……つまりキスよりもっと気持ちのいいって……奴、なのかッ……」  
「は、はい……そう聞いてます……あ、でも、女性は初めての時は痛いって……」  
「何ッ!? じゃあ、君は……」  
「初めて、です、勿論。……あの、我慢しますから」  
「ぬぬッッ……」  
しばらくゼットは考え込むが、あえて首を振る。  
「いッ……いかんいかんッ! そんな痛い目に君をあわせるようなこと、俺の良心が許さねえッッ」  
「……あの……」  
「君もそんな自暴自棄になっちゃダメだぞッッ! だいたい……その、キスでも十分気持ちいいんだか 
らッ……」  
「……いいんです……その、痛いのは最初だけだって聞いてますから……  
 だから、その……き、気持ちよくなるまで……私、我慢できますから……」  
少女は真剣だ。ゼットを抱きしめる手もぎゅっと強くなっている。  
身体に伝わる彼女の感触と、その言葉から伝わる彼女の覚悟で、ゼットもついに、  
「……わ、わかった……男女のアレってやつ……やってやろうじゃないかッッ!」  
覚悟を決めた。  
 
少女の服をそっと脱がせながら、ゼットは心臓が異常に高鳴っているのを感じる。  
戦闘の昂揚だって、こんなことを引き起こしはしなかった。  
(わ、わからんッ……俺、何をしようとしてるんだッ……?)  
この期に及んでもまだ混乱は続いているようだが。ともかく。  
少女はじっと横になってゼットが服を剥いでいくのに任せている。  
構造がわからず脱がすゼットの手が時々止まるが、そんな時は少女が小声で指示をする。  
やがて、その共同作業が実を結び、少女はついに裸を晒した。  
「……こりゃあ……」  
ゼットは声もなくそこに見とれる。  
彼は最強のイレギュラー。よって、人間の戦士を相手にし、身包み剥いだことは何度もある。  
しかし、戦うに値しない、非戦闘員の女子供にまで手を出したことはあまりない。  
それでも完全に女性の裸を見たことは無い訳ではないのに、少女の裸は何故だか――ひどく心臓を早め 
る。  
胸の膨らみは標準的だろうか。全体的にほっそりとした印象がある。  
肌は白く、あまり健康的な印象は受けない。しかし。  
それがかえって、触れば壊れてしまいそうな脆く儚い美術品の如き雰囲気をかもし出している。  
ゼットはしばらく見惚れていたが、少女自身の声でそれを中断された。  
「あの……剣士様、今そこにいますよね?」  
「あ、ああ……」  
「何も言わないから……不安になってしまって……」  
「――っと、そりゃすまないな……」  
とはいえ、ゼットにはどうしていいやらよく分からない。  
(えーっとッ……キスってのは……つまり粘膜と粘膜の接触だよなッ。  
 それが気持ちいいんなら、他の部分でもいけるかもッ!? って、さすが俺ッ!)  
そう思考するとゼットは自分の唇を彼女の粘膜……とりあえず、乳首に向かわせてみた。  
キスと同じやり方で、そこをそっとついばんでみる。  
「あッ!?」  
少女は驚いたような声を出してぴくりと身体を震わせた。  
「あ、何か痛かったか?」  
「いえ、ちょっと驚いて……あの、続けて下さっても結構です……」  
「……うっし」  
 
「ん……あ、ああッ……け、剣士様ッ……」  
乳首を舐めたり、小さく噛んで見たりしていると、少女は悩ましげな声をあげて応えてくる。  
最初こそゼットもそんな声に驚いたが、続けるうちにこの声こそが彼女の答えだと納得して、  
ますます乳首を責めることに没頭していく。  
「しかし……なんか、いいな、これも……こんな柔らかいのが、女のアレって奴なのか……ッ」  
少女の乳房の感触に、ゼットはもう何度も感動を続けている。  
口を付けるだけでなく、手で乳首や乳房をいじってみると、ますます少女は悩ましげに身をよじって声 
をあげる。  
それに、手に吸い付くような柔らかくきめ細やかな少女の肌が、ゼットの心により大きな感動を与えて 
くれるのだ。  
「あ、あああああ……痺れちゃいます、なんだかッ……ああッ!」  
段々と尖ってきた少女の乳首を唾液だらけにしながら、ふとゼットは顔を上げた。  
刺激が止まって、少女がはぁ、と息をつく。  
「……剣士様、なんだか凄いです……こんな、気持ちいいなんて……」  
「それはッ……まあ、俺もわりと同感なんだが……しかし、そんなに気持ちいいの……か?」  
「は、はい……」  
「……こんな分野でも最強ぶりを発揮する俺。まったく自分でも恐ろしいぜッッ……  
 ってともかく……また、キスしても……いい?」  
「……はいッ」  
今度はゼットの方からも積極的に舌を絡ませる。  
その間も、彼の手は少女の乳房をやわやわと揉み続ける。  
「んーッ……ああ……うあッ……」  
キスしながらも少女は喘ぐが、それでもゼットの舌に応えて狂おしく二つの粘膜は絡み合う。  
ゼットの唾液が少女の奥に流れるたびに、ますます彼女の身体は刺激に反応して燃え上がる。  
そっと唇が離れた頃には、少女は白い肌にしっとりと汗を浮かべていた。  
「はぁ、はぁ……け、剣士様……」  
「ん?」  
「今、凄い……幸せ、です……」  
「そ、そりゃあ……最強のイレギュラーにかかれば、未来永劫末代までの幸せを約束するってやつさッ 
……」  
「やっぱり剣士様……素敵です……」  
微笑む少女を、戸惑いながらもゼットはきゅっと抱きしめた。  
 
くちゅり――と。  
今までの刺激だけで、十分過ぎるほどに少女の秘所はとろとろになっている。  
それでも、ゼットはそこをじっと見て何をしたらいいものかと悩んでいた。  
一応、『何をすべきか』は聞いているものの、少女に大変な痛みがあるとも聞いている。  
これが戦闘ならば、躊躇い無く行動に移すことが出来るのだが。  
人を思いやって優しく接する、というのはどうも、慣れない。  
その結果、じっと少女のそこを見つめることになってしまっている。  
(しかし……なんか……こりゃ、凄いもん……だなッ……)  
薄く生え揃った陰りの奥に、ひくひくと蠢いて液体を流すそこがある。  
見つめるほどに反応して、流れ出すものは量を増すばかりに思えてくる。  
「けッ……剣士様ッ……」  
観察するのに没頭していたら、少女が声を震わせながら囁いてきた。  
「あのッ、ど、どこ……見てるんですかッ……」  
「どこって、そりゃッ……君の、いわゆる性器ってやつな訳だが」  
「……なッ……!」  
ストレートに言われたことで、少女の羞恥心に直撃したらしい。  
そのせいで余計に彼女は燃え上がり、流れる体液もますます量と濃さを増してしまう。  
「あ、あの、お願いですから、何かしてくださいッ……でないと、不安になっちゃうんですッ……」  
「っと、そりゃすまないな……」  
慌てて、ゼットは少女のヴァギナに顔を近づけた。  
前にもしたように、そこもじっくりと舐めてみる。  
「ひ、あッ……!」  
またしても激しい快感が少女を襲い、ゼットの見ている前なのにヴァギナはぴくぴくと震えて愛液を溢 
れ出してしまう。  
ゼットに舐められるだけで、恐ろしいほどの快感が走ってしまう。  
程なく少女は刺激に耐えかねて、  
「あ、いッ……け、剣士様ぁッ……!!」  
「えッ?」  
戸惑うゼットをよそに、背筋を逸らしてイってしまった。  
 
「……でも、変です……」  
「ん、何が? ……俺のやり方ってやっぱおかしいッ!? 慣れないことはするもんじゃないってかッ!?」  
「い、いえ……」  
荒れた息を整えつつ、少女は不思議そうに呟く。  
「剣士様が……その、舐めてくれた場所……そこに限って、凄く敏感になっちゃって……」  
「ほ、ほほう……」  
「……はぁ。あ、もう……そろそろ……いいです、その……」  
ようやく呼吸を取り戻した少女は、その流れを自分から打ち切って言う。  
「……お願い、します……剣士様……」  
「う、むッ……いよいよかッ……」  
ゼットも自分のものを取り出す。  
魔族にしては妙に人間に近い彼なので、きちんとそういう器官もあるのだ。  
マザーが何を考えてそんなものまで製造したのかはまったく不明だけど、とにかく今はそれが役に立つ。  
「じゃッ……いくぜッ……!」  
勢いこんで、ゼットは自らのものを少女の絶え間なく体液を溢れさせる場所へ沈めていった。  
ぐちゅッ……つぷッ。  
小さな音とともに、呆気なくゼットと少女は繋がっていく。  
「ッ……」  
これから来るであろう痛みを予測して、少女はぎゅっと身を固くする、が。  
「あ……あれ……」  
「こ、こりゃあッ……」  
何かを引き裂くような感触と、それを忘れてしまうかのような強烈な締め付け。  
たちまち激しい快感がゼットにも襲い掛かってくるが、どうにかやりすごす。  
 
「くッ、こいつはたまんねーぜッ……が、俺くらいになればこれくらいは余裕余裕ッ。  
 ……ところで、大丈夫か?」  
処女を破られたのだ。少女は今、かなりの苦痛を味わっているに違いない。  
と思っていたのだが、肝心の彼女は不思議そうな顔をしているだけだ。  
「それが、その……痛くないんです。ちっとも……」  
「何とッ?」  
「あ、も、勿論こんなことするの初めてですッ! で、でも……それなのに痛くないんです……」  
不思議なこともあったものだなあとゼットは首をかしげた。  
「はて、これもまた俺の無敵ぶりが引き起こした奇跡なのか? 運命にすら愛されるこの最強のイレギ 
ュラー……」  
首を傾げていたら、ふっと思い出したことがあった。  
「……あ、ひょっとしてこいつは……」  
 
ちょっと前の話になる。  
更なる力を得ようと、アルハザードによって自らの身体を改造した時のことだ。  
「……とまあ、このように場合によってはジーくフリードさえも凌駕する力が得られる訳です」  
「おお、そいつはすげーーッ! さっすがアルハザードの旦那だぜッッ!」  
「いやいや、恐れ入ります。クカカカカカ……」  
和やかに語らっていた時に、彼はふとこんなことを言っていた。  
「そういえば、おまけのようなものなのですが」  
「更におまけまでッ!? いやあサービスいいねアルちゃんッッ」  
「そういった呼び方は如何なものかと思いますが……まあともあれ……  
 あなたの体液なのですが、私が常用している特殊な麻酔薬の効果を含めておきました」  
「麻酔?」  
「ええ……痛覚のみを排除し、それ以外の感覚を増強するという代物です。  
 これが優れものでしてな、副作用などはまったくないのですよ。そんなものがあると実験に差し支え 
ますからな」  
「はー。そんなもん何に使うんだ?」  
「まあ……ニンゲンなどを解剖したりする時ですな。自らの身体が切り刻まれていくのに、痛みを感じ 
ない。  
 そんな時の彼らの表情は実に愉快極まりないものでして、クカカカカ……」  
「いやあッ、旦那ったら悪趣味ッ!」  
「恐縮ですな。クカカカカカ……」  
 
(麻酔ッ、ってそーゆーことか。うむむ……アルの旦那の悪趣味にはほとほとあきれ返ったもんだがッ)  
ゼットを体内に感じて、不思議そうながらも幸せそうな顔の少女を見る。  
(結果オーライッ! この際不都合ナッシングッッ!)  
痛くないのなら、それに越したことはない。  
試しに、少女の奥を突いてみる。  
「ひうッ!」  
敏感に彼女は喘ぐが、痛みを感じている様子はない。  
「あ……は、今……剣士様と私、一つになってるんですねッ……」  
「おッ……おう、まさしく合体ッ……ってこった」  
「私……幸せです……」  
そんな彼女を見るうちに、ますますゼットは高ぶっていく。  
 
「そ、それなら、もうッ……好きにやっていいってこと、だなッ?」  
「あ……はいッ」  
少女もつられて力強く頷いた。  
「よぅっしッ!」  
思い切ってずぶりと奥まで突きこんでみる。  
「ひぁぁッ!」  
たまらない声をあげて、少女はそれに応えてくる。  
軽く抜いて、すぐに奥まで突き込んで。  
「あ、ひ、ああッ……くぁぁッ!」  
ゼットの背中に手を回し、少女は悩ましげに叫ぶ。  
その声に後押しされるように、彼もまた勢いを増していく。  
キス以上の快感、それはまさにこのこと。  
初めてでありながら、痛みを感じていない少女の膣内は、きゅうきゅうとゼットのペニスを食い締めて 
離さないのだ。  
引き抜く時にもきゅっと締まり、いつまでも中に留めておこうとしてくる。  
 
「くぉッ……こりゃッ……すげッ……」  
もたらされる快感に、ゼットもまた声なく叫ぶ。  
ずっちゅ、ずっちゅ、ずっちゅ。力強いストロークで、より深くまで繋がろうとしていく。  
思い切った激しい腰の動きのせいで、少女もゼットも途方もない快感に翻弄されるばかりだ。  
「あ、あぁッ……剣士様ッ、こんな、こんなのッ……」  
「おッ……俺もやばいかもッ……」  
「剣士様ッ……んッ……剣士様ぁッ……!」  
少女の叫びは心地の良いBGMのように流れる。  
二人の繋がる場所の音も激しくなって、そこから流れる処女の血は段々薄くなっていく。  
そして一番奥までゼットが突き入れたその時に、  
「あッ……うぁぁぁぁぁッ!」  
「だッ……俺も来たッ……!」  
二人同時に――  
ぴゅるぴゅるぴゅるッ!  
たどり着いた。  
 
 
「う、はぁ……」  
「ふう……ん? う、ぉッ……」  
精液を受け止めて放心している少女はともかく、ゼットは自分の身体にぴりぴりと電撃が走るのを感じ 
る。  
(や、やべッ……こいつはうっかりッ……)  
思わず『何か』を解き放ってしまったらしい。  
「い、いや、この状況で怪力招来するつもりなッ……」  
「え? 剣士様……?」  
「や、やっべーーッ!?」  
閃光。  
同時に、少女は自分の膣内にあったゼットが急に膨れ上がるのを感じた。  
「な、剣士様ッ……?」  
「……ッくッ……かあああーーー!」  
一瞬の後には。  
緑の肌の巨大な魔物……モンスターゼットがそこにいた。  
もっとも。  
「あ、うあッ……ちょ、ちょっと剣士様……おっきすぎますッ……」  
少女にはそれが見えていない以上、自分の中のゼットが膨れ上がったくらいにしか感じ取れていないの 
だが。  
「むッ……むむッ……」  
とりあえずゼットは元の形態に戻ろうと考える。  
慌てて、ペニスを抜こうと腰を引く。と。  
「う、うぁぁぁぁぁぁッ!?」  
「うぉッ……」  
少女にとっては、あまりに大きいそれが肉壁を擦ることで尋常ではない快感が。  
ゼットには、あまりに狭すぎる中からもたらされる尋常ではない快感が。  
二人を襲って、しばらく動けなくなってしまう。  
 
「けッ……剣士様ッ……い、今、のッ……」  
普通なら、裂けてしまうかもしれない痛みに女性の方がおかしくなってしまうところだろう。  
だが、痛覚が遮断されているためか、痛みはむしろ強すぎる快感に変換されてしまう。  
「こりゃッ……また、別の意味でッ……すげえなッ……」  
ゼットもまた、この有り得ないはずの快感に感動すら覚える。  
そこで、恐る恐る引いた腰をまた奥へと突き入れてみた。  
「かッ……はッ……お、奥にッ……あ、ひぁぁぁッ!!」  
息がつまるほどの重い衝動が少女に襲い来る。  
そして同時に、あまりにも激しい快感もまた。  
「くぉぉッ……」  
ゼットも同様である。  
こつんと、軽く子宮を小突いただけなのに、少女の中の中……内臓まで抉った感触があった。  
「わ、私ッ……剣士様に、もうッ……身体の一番奥まで、入られてるんですねッ……」  
「ああ……今、俺と君とはまさに一体ッ! もうこうなりゃなんでもありだッ!」  
開き直ったように、ゼットはまた腰を動かし始めた。  
「あ、くはッ……ぃ、ぁぁぁぁぁぁぁッ……」  
絶え間の無い叫びが少女から漏れ出す。  
ほんの少しゼットが動くだけで、身体中が吹き飛ばされるような快感に包まれてしまう。  
一度ずぶっと奥まで小突かれると、もうそれだけで  
「剣士様ぁッ……ま、またッ……また私ッ……うぁぁぁぁッ!!」  
イってしまうのだ。  
ゼットもかなりの快感を味わっているとはいえ、あまり強引には動けないので少女ほどではない。  
「ふぅッ……く、しかしッ……こりゃ洒落にならねえ、なッ……」  
それでも巨大化したことで少女の中を文字通り埋め尽くしているゼット自身は、  
必死で押し返そうとする少女の肉壁によって激しい歓待を受けてしまう。  
挿入れているだけでも、恐ろしいまでの快感に包まれているのだ。  
「だがッ……ここで引いたら男が廃るッ!」  
必死で抵抗して、腰を少しずつ抜き差ししていった。  
 
限界はすぐに訪れた。  
「あああああ……う、うああ……」  
休息を得られない快感の責め苦が、とうとう少女の心を焼ききりかねないほどになってきたのである。  
「やべッ……なら、そろそろ……」  
ゼットも我慢していた淀みを解き放とうと、思い切って一段力強く腰を突き入れた。  
「――ぁッ……ああああぁぁぁぁあッ!!」  
「くッ……うぉぉッ!」  
ぴゅるぴゅるぴゅるぴゅるッ!  
一番奥で、ゼットのペニスが弾ける。  
それと共に、その大きさに相応しい途方もない量の精液が流れ込んでいく。  
「ぁ……ぁぁッ……」  
それだけでも少女にはひどい快感が流れ込むが、射精はなかなか止まらないでいる。  
「う……くッ……」  
どろどろと精液は少女の膣内を埋め尽くす。  
それでも収まらず、外にまで漏れ出してもまだゼットの射精は終わらない。  
「くッ……む……」  
「あ、ひッ……ぁ……」  
ベッドの上に、白い液溜まりを作るほどになって、ようやくそれは収まった。  
膣奥までも埋め尽くされたショックで、少女はもう放心状態になってしまっているのだが。  
「ふ……ぅ。我ながらはっちゃけたもんだな……」  
同時に、しゅるしゅるとゼットの身体が元に戻る。  
 
「お、戻った。う〜む、自分の都合できっちり管理できないってのはダメだなッ……精進せんと」  
反省しながら、こぷ……と、小さな音と共に少女の中からペニスを引き抜く。  
そこからはどろりと精液が零れ出してきた。  
余程沢山の量を注ぎ込んだためか、時折少女の身体が震えるたびにとろとろと流れ出る。  
肝心の少女は、  
「……う……ん……」  
すっかり気を失ってしまっているらしい。  
ゼットはぽりぽりと頭を掻きながら、彼女の身体を拭いてやる。  
とりあえず見た目だけでも綺麗にすると、彼もまた欠伸をあげた。  
「ふぁッ……俺もいい加減疲労の極地、だなッ……せっかくだし、ここでお休みするか……」  
「……剣士様……」  
「ん?」  
「…………」  
「寝言か……ふッ、そんな時まで俺のことッ……いや、ちと真面目に気恥ずかしいなッ……ま、まあい 
いか」  
少女の横に身体を横たえ、すぐに寝息をあげはじめる。  
そうして、二人とも安らかに眠りについた。  
ただ、少女は隣のその暖かい感触を感じた後に、小さく  
「おやすみなさい……剣士さ……ゼット、さん……」  
そう呟いて。  
 
 
 
それから数ヶ月後。  
とある遺跡の中で、無敵の戦士ゼットは三人の悪党と対峙していた。  
「……あのな、お前もう悪さはしないって誓ったんじゃなかったのか?」  
ふけ顔の悪党はそんな風にぼやく。  
「ふッ……悪さなんてものはもうしないがッ! 如何せん、まともに暮らす為には先立つものが必要ら 
しくてなッ!」  
だが、勇者たるゼットはさらりとそれを否定する。  
「要するに金が目当てってか……なんでお前なんかとかち合うかねぇ」  
「私もちょっと遠慮したいんですけど……」  
「…………」  
三人の悪党は言いたい放題である。  
しかしゼットはまったくそんなことは問題としないのだ。  
「悪党の言うことなんか聞こえやしねーッ! 今の俺は前にも増して無敵ッッ……  
 そう、守るべきものを得た時に人は一番強くなれるからッ(うっし、決まったッ)」  
半分自己陶酔しながらも、彼は悠然と剣を抜く。  
愛用だったはかい丸……魔剣ドゥームブリンガーではなく、無銘の剣だが。  
それでも、今の彼にとっては十分過ぎるほどの得物だ。  
しぶしぶと言った表情で、三悪も武器を構える。  
一触即発の雰囲気が漂う。それでもゼットは一切の動揺も見せず、きりりと構えて叫んだ。  
「よし、待ってろよ俺の巣ッ! でっかい獲物を持って帰りますからねーーーッ!!  
 そう、俺の名はゼットッ……愛の為に戦う戦士、最強の……」  
同時に、秘技・花陣影殺が炸裂する。  
「うぉッ!? こいつ、妙にパワーアップしてやがるッ!?」  
ふけ顔の悪党の言うことなどは気にも留めず。  
「旦那さまさッッッ!!」  
三人を軽く眠らせて、ゼットは渋く決めた。  
 
 
 
「……いや、それもどうかと思いますけど……」  
眠りに落ちる寸前に、悪党の魔女が呟いたことは、まあ――どうでもいい話だ。  

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