ちりちりとモニターが明滅する。  
今のファルガイアでは本来有り得ない技術によって作られた、高度な液晶モニターである。  
そんなものを使いこなせるのは、人間の中でもトップクラスの技術者であった七人委員会くらいのはず。  
なのだが、今モニターの前で腕組みして考え込んでいるのはうら若き女性であった。  
もちろん、七人委員会であるはずがない。彼女は渡り鳥なのだから。  
マヤ・シュレディンガー。それが、モニターを見つめる眼鏡の女性の名前である。  
 
「……ってことは、ここをこうすれば……」  
彼女の手元には、文字が書き込まれた奇妙な板が置いてある。  
キーボード、という名前のその板もまた、ロストテクノロジーの産物という。  
時折彼女は手を滑らして、その板を細かに叩いたりもする。  
すっかり夜も更けて深夜とも言える時間なのだが、彼女は夢中で何かを行っているようだ。  
そんな彼女の傍らには、ひどく眠そうな顔の少年が立ってそれを眺めている。  
「ふわ……熱心だね、姉さん」  
「……大事な仕事って言ったでしょ」  
「あんまり遅くまで起きてると身体に悪いよ?」  
「いいの。アンタこそ、早く寝なさいな」  
「……はぁい。じゃ、おやすみなさい」  
少年――弟のアルフレッドを追い払うと、マヤはまたキーボードに指を走らせる。  
そして、Enterと表示された場所を叩く、と。  
画面には、完成、だとか終了、と言った意味の語句が表示される。  
「……よしッ。苦節一週間の甲斐があったってもんね。後は……」  
そうして、近くに積まれている文庫本に目を移す。  
一番上にある小説を手にとって、マヤはゆっくりとページを開いた。  
 
時間にして午前2時頃、であろうか。  
情報データベース『ヒアデス』内では、黒尽くめの少女がファルガイア各所から収集されたデータを基 
に作業を行っていた。  
そもそも電気信号で身体を構成されている彼女に夜も昼も関係なく、その夢を叶える為に日夜働いてい 
るのである。  
彼女――夢魔ベアトリーチェは、真っ白な世界の中で黙々と働いていた。  
「やはりガイアのうねりを利用できなかったのは痛いか……となれば、エネルギーの確保の為に必要な 
……」  
彼女自身にしか理解できないであろう呟きを漏らしながら、なおも思考は続く。  
――そんな最中に。  
「あ、いたいた。まったく、わかりにくいところにいるんじゃないわよッ!」  
と、場違いに明るい声が聞こえてきた。  
(――声?)  
自分以外の存在がこのヒアデスにいる、ということだろうか。  
(そんなこと――)  
あるはずがない事態である。慌てて、声の方向を振り向くと。  
「……なッ!?」  
度の随分強そうな眼鏡をかけた女性が、自信満々といった表情でそこにいた。  
思い切り近くである。すぐ隣と言ってもいいくらい。  
「マヤ……シュレディンガー……」  
「へえ、知ってたの? アタシも有名になったもんよね、夢魔にまで知られてるなんて」  
「何故、あなたが……いえ、それ以前にニンゲンがどうやってここに……」  
「ふッ……」  
軽く笑うと、マヤは懐から奇妙な板を取り出した。  
鉄のような金属で覆われたそれは、ついさっきマヤが操作していたモニターやキーボードが一体化して 
いる、  
これまたロストテクノロジーの産物、ノートパソコン、というものである。  
それをベアトリーチェに見せ付けて、得意げに彼女は笑う。  
 
「そう、今のアタシはスーパーハッカー! データ内に侵入することなんて思いのままッ!」  
「な、バカなッ……!?」  
「バカなことはないわ。だって、本によればスーパーハッカーならコンピュータを好きに操れるって」  
「それがバカなことだと……」  
ふ、とまたマヤは軽く笑う。  
「本に書いてあることなら、それは真実なのッ!」  
「どこまで――無茶な」  
呆れるというべきか。それ以前にどう考えても無法な話だ。  
無法なのだが、情報によればこのマヤという女は本に書いてあることを完全に再現できる特異体質の持 
ち主らしい。  
本にコンピュータ操作や、あるいは――電脳世界へもぐりこむ、という事柄が書かれていたのなら、確 
かに再現できる、のかもしれない。  
――特異体質で片付けられるようなことでもないじゃないの、とベアトリーチェは軽く思ったが、とも 
かく。  
「それで……納得はいかないけれど、ここに一体何の用かしら? 確か、あなたはヴァージニア・マク 
スウェルと繋がりのある人物。  
 大方……わたしを滅ぼしにでも来たのかな? それならこちらも対応させてもらうだけ……」  
「はやっとちりしてんじゃないわよ。まったくお子様ねえ」  
「……何?」  
ふん、とマヤは鼻で笑う。  
「アタシはヴァージニアほど狭量じゃない。魔族だろうとなんだろうと、アタシにとって有益なら利用 
させてもらうわ」  
「有益……ですって?」  
「アンタってさあ……アレなんでしょ? このヒアデスのデータを自由に使いこなせるんでしょ?」  
「それは――その通りだけれど」  
「なら」  
眼鏡を指で押し上げて、また不敵に笑う。  
 
「アンタをアタシの手下にしてしまえば、このヒアデスをアタシの思うがままに使いこなせるってこと 
よね。  
 アタシの大望……ファルガイアを緑の星に戻す、その為には随分有益じゃない」  
一応、筋は通っている。通っているが。  
馬鹿馬鹿しいと言わんばかりにため息をついて、ベアトリーチェは薄く笑いながら返した。  
「あなたは……何を血迷っているのかしら。何故、わたしがあなたに手を貸さなければならないの?」  
「何故って。そりゃあ、アタシにとってメリットが大きいからに決まってるじゃない」  
「あなたのメリットなどどうでもいいわ。どうしてわたしがニンゲンを手助けしなければならないのか、 
と聞いているの。  
 魔族とニンゲンは敵対する存在。こうやって、この世界に来れたことは評価してあげてもいいけれど 
……  
 そんな血迷ったことを言い出すとは、どうやら異物の排除が必要なようね」  
冷淡にマヤを見下しながら、ベアトリーチェは戦闘の為の姿を取ろうと意識を集中させる。  
すぐに、戦いの為の姿――夢魔のドレス姿になる、はずだったが。  
「……まあ、ね。アタシだって、そう簡単にアンタが手助けしてくれるとは思ってないわ」  
相変わらず余裕しゃくしゃくといった表情で呟くマヤに、ふっと意識が乱されてしまう。  
「……何を、言って」  
「だから……こうするだけよ」  
マヤは一冊の本を取り出した。  
 
次の瞬間、ベアトリーチェは身体を組み敷かれているのに気づく。  
マヤの服装はいつもの『荒野の災厄娘』風のそれになっているが、どことなく顔が赤い。  
身体の大きさでは、少女の姿を取っているベアトリーチェとマヤとでは比べ物にならないため、  
手足を押さえつけられたベアトリーチェはどうすることも出来ないでいる。  
「これは……何のつもり?」  
「すぐにわかるわ。アタシもこういうの慣れないんだけど、ま……やり方だけはパーフェクトだし」  
「いったい、何が言いた――ひぁッ!?」  
マヤの指先が、そっと夢魔の首筋を這う。  
「……こんな本、使い道ないと思ってたんだけどねえ……持っててよかったかしら、これ……」  
呟きながら、マヤは抱えた同人誌をちらりと見た。  
内容は――男性向けである。しかも成人向け。  
主人公であるカラミティジェーンが、仲間の少女と絡み合うという。  
「個人的には、物語性の欠片もないこういうのは好きじゃないんだけど、ね。  
 ま……利用価値があることはあるんだから、別に構わないわ」  
「ど、どういうつもり……」  
「ふふ」  
組み伏せたベアトリーチェに、マヤは優しく口づける。  
「んッ!?」  
「んッ……ふふ。いやあ……やっぱ、アレでしょ。  
 アンタみたいなのは殴って言うことを聞かせるのも無理っぽいし、お金や何かで買収するのも無理っ 
ぽいでしょ?  
 となると。ここは、色仕掛けで行くべきじゃない?」  
「それこそ……血迷ったことをッ……」  
「アタシはいつだって冷静よ。……まあいいじゃない」  
ふふ、と笑いながらマヤはまた優しくキスをする。  
「なッ……にを……」  
ベアトリーチェはひどく狼狽している。無理もないが。  
 
一旦マヤは彼女から手を離したものの、それでも動揺しているためか逃げようともしない。  
「こ、こんなやり口に意味など無いわ……わたしを虜に出来る訳がない、のに……」  
「やってみなくちゃわかんないでしょ。やる前から諦めてたら何にも出来ないわ」  
「こういう時に言うセリフじゃないでしょう、それは……」  
あくまで抗弁するベアトリーチェを、マヤはやれやれといった表情で抱き起こした。  
「くッ……」  
「あんまり憎憎しげな表情するんじゃないの。見かけは可愛いのにねえ、アンタって」  
抱きかかえたまま、マヤも適当に腰を下ろす。  
「けど、ホントにアレね。アンタって……見た目だけは思いっきり人間そのものよねぇ」  
「魔族にだって色々いるわ……わたしのようなのだって、当然」  
「ふうん」  
あまり興味なさそうに頷くと、右手でベアトリーチェの艶やかな黒髪を撫でてみる。  
「へえ、サラサラじゃない。手入れして……るってことはないか」  
「……そういうデータだから」  
「でも綺麗なもんね。へえ……」  
感心したように、黒髪を手の上で流す。  
ベアトリーチェは――戸惑っているのか狼狽しているのか。  
混乱した表情のまま、為されるがままになっているようだ。  
「さて、と」  
それには構わず、くるりと抱きかかえたベアトリーチェの身体を反転させる。  
夢魔の背中が、ちょうどマヤの柔らかな胸にあたる格好だ。  
 
とりあえず、そのまま夢魔の背中に軽く指を這わす。  
「ひぅッ……」  
「ホントに敏感よね……」  
すっかり力が抜けてしまったベアトリーチェに、マヤはそっと耳元で囁く。  
「夢魔って言うから、さぞかしこういうことには強いかと思ったんだけど……大したこと、ないのね?」  
「わ、わたしは……そんな意味の夢魔じゃなくて……」  
「伝説や物語に出てくる夢魔って言ったら、夜な夜な若いオトコの夢に出て精を絞りつくすのが相場で 
しょ?  
 それなのに、これじゃあねぇ……」  
「だからッ……」  
「情けないわ……ふふ。じゃあ仕方ないから、アタシが夢魔のなんたるかを教え込んであげる。  
 ま、題材はちょっとアレだけど……アンタをきちんと教育してあげるから、覚悟なさい」  
「なッ――」  
反論する間もなく、強引な理屈で押し切られた。  
「うッ……くッ……」  
背中から、マヤはベアトリーチェの服の中に指を這わす。  
病的なまでに白く、さらりとしたその肌触りにはマヤも感嘆のため息を漏らしてしまうほどだ。  
「はぁ……触ってるだけでもいい気持ちねぇ……」  
「や、やめて……」  
触られる方は気持ち悪いやらで、困惑した顔をするだけなのだが。  
「んー、だーめ。アンタを完璧にアタシの虜にしなきゃあ、目的が達成できないから」  
「こんなやり方に意味などない、わ……」  
もう答えもせず、そのまままだ幼い乳首をそっと撫でる。  
「ひぅッ!?」  
「ちっちゃいわねぇ……当たり前ったら当たり前だけど」  
外見の年齢通り、そこはまだ膨らむ兆候もほとんど見えないくらい。  
とはいえ、肌に比べれば敏感な乳首を少しずつ刺激されると、快感ではないにしろ刺激がベアトリーチ 
ェに走る。  
「やぁ……」  
「ふふふ。……なんか、変ないたずらしてる気分ねぇ」  
時折夢魔の耳元に息を吹きかけたり、ぺろりと舐めたり。  
小さな子供を弄ぶ、いけない大人という構図がそこにある。  
 
「ちょっと我ながらアレな気はするけど……まあ、いいわ。  
 ほら、そう言ってるわりに乳首がちょっと固くなってきたわよ? まだちっちゃいのにねぇ。  
 人間だったら、こんないやらしい子供なんかいないんじゃない?  
 魔族って卑猥な種族なのねえ、やれやれ」  
「そ、そんな訳ないのにッ……」  
「ふふん。だから言い訳したって無駄だってば」  
言いながら、今度はベアトリーチェの耳の穴に舌を這わせた。  
「や、やだぁッ!?」  
「いいじゃない。アタシはアンタを手下にする以上、全部のことを知っていないとまずいんだから……  
 もちろん、味だって、ね」  
「訳のわからない理屈をこねまわすのは――んぅッ」  
反論しようとすると、乳首や耳、首筋など敏感な場所を刺激されてしまう。  
お陰で、ベアトリーチェ十八番の精神干渉は封じられ、ちっとも抵抗できていない。  
そうやって身体のあちこちを弄り回しているうちに、夢魔の肌は少しだけ紅潮して息も荒くなってきて 
いた。  
「……ん、はぁ……いい加減にしないと……あなたの如きニンゲンなどは、わたしが力を振るえば容易 
く……」  
抗弁するのはいいのだが。そのベアトリーチェの顔や全身を見渡して、マヤはふんと鼻で笑う。  
「滅ぼせるって?  
 目を潤ませて、息まで荒くして。ついでに顔も赤くして、そんなので強がっても意味ないわよ?  
 だいたい、アンタって――」  
くりくりと乳首の先を指で転がす。  
「んぁぁッ!」  
「ほら。ちっちゃい割に敏感だからね。すぐにでも、アタシの虜にしてみせるわ。ふふふ」  
悪戯好きな、どこか猫を思わせる目で、マヤは軽く笑った。  
 
およそ数十分程ベアトリーチェを弄び、すっかり彼女の目がとろんとなったあたりで、  
マヤはそっと耳元で囁いた。  
「んじゃ……そろそろ、大事な場所を調べさせてもらいましょうか」  
「大事……?」  
聞き返した声には答えず、マヤはベアトリーチェの服の中の手をそっと抜いた。  
それから、改めて彼女の下半身に抜いた手を伸ばす。  
黒いワンピースをたくしあげて――あらわになった、小さな秘所に指を走らせた。  
「あら? これは何かしら?」  
「んッ……」  
そこから、少量ではあるが液体が流れ出している。  
「アタシに弄くられて、感じたの? まだ子供なのに? いやらしい子ねえ」  
「あくまでッ……わたしの外見年齢は……設定上だけの、もの……  
 大きさは、ともかく、機能は……問題ないん、だからッ……」  
嬲るようなマヤの口調に、ベアトリーチェは途切れ途切れながらも反論した。  
が、マヤはそれを聞いて軽く口の端を吊り上げて笑う。  
「だったら、やっぱり感じてるんだ? へえ……意味無いとか言ってたくせにねえ」  
はっとしてベアトリーチェは口を閉じる。だが、もう遅い。  
ふふんと笑うと、マヤは調子に乗って小さな秘唇をゆるゆるとなぞり始めた。  
感度は十分にあるためか、ベアトリーチェは身を悶えさせてそれを受け止める。  
「んあああッ……や、止めなさいッ……」  
「ダメダメ。まだ本番にもなってないんだから」  
つぷ、と指を軽く入れてみる。入り口のあたりをゆっくりとかき回すだけで、  
「あ、あぁッ!」  
ベアトリーチェは過剰なほどに反応を返してきた。  
 
「ホント、いけない子。おしおきが必要よね、こんな子供には」  
「子供じゃないって何度言えば理解できるのッ……」  
「外見は確実に子供じゃないの。アンタ、データなんだから好きに変更できるんでしょ?  
 だったら、自分の好きで子供やってるってことじゃない」  
「それは……」  
反論を封じると、ベアトリーチェの膣口から指を離す。  
それから、その指を動かして、そう遠くないもう一つの穴にたどり着く。  
「そこはッ……!?」  
「お仕置き。ふふ……」  
データ生命である彼女にはまったく縁の無い、排泄の為の場所。  
単に人間をかたどっているがために存在しているその穴の周りを、マヤはまず刺激しはじめた。  
「き、気持ち悪い、のに……」  
「ふうん……」  
ベアトリーチェの抗議の声を、マヤは軽く受け流す。  
好きなように肛門をいじられると、夢魔はむず痒いようなおかしな感覚を味わって、余計に秘所から愛 
液を分泌してしまう。  
目ざとくマヤはそれを見咎め、空いている左手でそれをすくってベアトリーチェの前に差し出す。  
「お尻いじられてまたこんなこと。アンタってつくづくいやらしい魔族ねえ」  
「あ、あなたが勝手に……くぁッ」  
「アタシの腕の中で悶えながら言っても説得力ないわよ?」  
反論しようとすると、敏感な場所を弄ばれてしまう。  
尻の穴からまた元の秘所にマヤは手を戻すと、今度は指を一本つぷりと入れた。  
「うッ……く……」  
「さて……」  
そのまま、先ほどよりもやや激しくかき回す。  
 
「ひッ……!」  
「どう? 気持ちいい?」  
指を入れただけでも、夢魔の膣内はひどく蠕動してしまう。  
そもそもそこは外見相応に狭く、本来ならそんな反応も起こさないはずなのだが――少なくとも、男を 
迎え入れる機能はしっかりしているらしい。  
「や、やめてッ……んぁッ……」  
身悶えしてしまうベアトリーチェに、対するマヤは妙に楽しそうである。  
思う様弄ぶと、一旦指を止めて耳元に囁きかけた。  
「ふふふ……さて、そろそろアタシに協力してくれる気になった?」  
「……ッ……」  
その言葉に、それでも恨みがましい視線を返す。と、すぐに、  
「んッ」  
「まだ納得いかないの? 仕方ないわねえ……」  
指を動かされてしまう。  
「わ……わかった、わ……」  
「へえ……何を?」  
「あ、あなたに……協力……する、の……」  
思い切り不本意な表情ながら、ベアトリーチェは小さく承諾の意志を告げた。  
「よしッ……まったく、手間かけさせてくれたわねえ」  
マヤは、それを聞いて上機嫌な顔をする。一方の夢魔はやはり複雑な表情ではあるにしても。  
 
「はぁ……と、とにかく、こういうのは早く止めてくれないかしら? 協力するにしても何にしても… 
…」  
「まあ……そうね」  
名残惜しそうに、また少し軽くベアトリーチェを弄ってから、捕まえていた手をほどく。  
「さて、早速だけど……」  
何を言いつけようか、マヤは少し考え込んだ。が、その瞬間。  
「……ッ!」  
さっとベアトリーチェは距離を取り、睨み付けながら服の乱れを直す。  
また不意をつかれないように、あくまで警戒しながら、だ。  
「……あッ」  
「く、ニンゲン風情がッ……! どこまでも、わたしを愚弄してッ……!」  
勢いに任せて、手から光弾を放つ。この黒衣の時にも使える数少ない攻撃だが、マヤはひらりとそれを 
よけた。  
「あら……もうすっかりアタシの虜になったかと思ってたのに……結構やるじゃない?  
 あんなに気持ち良さそうだったのに、ねぇ……」  
つい先ほどまでの痴態を指摘されると、流石にベアトリーチェも言葉につまる。  
「ッ……これだからニンゲンは低級なイキモノだと言うのよッ……こんな馬鹿げた攻撃を行うなどッ」  
「馬鹿げてるかどうかは、実際くらったアンタが一番よくわかってるでしょ? さ、話は終わりにして、 
続きといきましょうか」  
マヤはにじりよってくる。ベアトリーチェは、じりじりと間合いを取りながらも、どうにか冷静に考え 
ていた。  
そもそもここは夢の中と等しい空間。戦うのならば、意志力が大きくものを言う世界。  
魔族の精神力ならば、ただの人間などは相手にもならないはずである。  
ただの人間、ではない相手だから困ったものだ。ジークフリード曰く、魔族にも匹敵するだけの精神力 
という。  
 
(……忌々しいけれど)  
自分の庭に土足で上がりこまれ、挙句あんな卑猥な行いをされてしまったとは。  
それは確かに気持ちよかったし、こんな風に人と触れ合うことなど千年来無かったとはいえ――  
(――そういう問題じゃない、わ……)  
どうも思考パターンがおかしくなってきているようだ。システムエラーだろうか。  
まだにじりよってくるマヤとの間合いをどうにか開きつつ、ベアトリーチェは必死で考える。  
とにかく、今は不調のようだし、戦闘に持ち込むのもあまり好ましくないだろう。  
「……いずれ、必ずあなたを引き裂いてあげるから……」  
強制的に自分の座標を転送する。安全な場所に移動するには、少し余裕が無さ過ぎた。  
少しでも隙を見せれば、マヤはすぐにでも飛び掛ってくるだろう。それは流石にまずい。  
だから、一言だけ呟いて。すぐさま全身をノイズと化して、夢魔はどこへともなく消えてしまった。  
不意をつかれ、マヤは困惑――  
「……ふ」  
していない。にやりと笑みを浮かべている。  
「スーパーハッカーなら、データの探知なんて容易いのに……ふふふ、このアタシから逃げようだなん 
て。  
 これは……ちゃんと躾てあげないと問題よね?」  
ふふ、と肩を震わせて笑うと、マヤは懐から例のコンピュータを取り出す。  
「さあ、検索開始よッ。このアタシから逃げられるなんて……それがどれだけ無理なことか、思い知ら 
せてあげるッ!」  
 
 
(――ん……あれ?)  
その頃。  
先ほど、マヤにお休みの挨拶をして眠りについたアルフレッドは、ぼんやりと周りを眺めていた。  
真っ白で何も無い平面が広がっている世界に、ただ一人ぽつんと立っている状態。  
「……なんだろ、これ」  
こんな場所には見覚えはないし、そもそも宿屋にいたはずだ。  
「夢……なのかな?」  
夢の中で夢と自覚するのもやや珍しいのだが、この現実感の無さはアルフレッドをそう思わせた。  
とはいえ、夢の中だからとて何がある訳でもない。  
「真っ白で何にもない……ううん、僕、こういう夢に象徴されるような変な願望持ってたのかなあ?」  
頭もとろんとしたまま、アルフレッドはその場に座り込んだ。  
疲れているのかな――などと呟きながら、ぼんやりと周りを見回す。  
本当に何も無い。  
「いっそ起きようかな……って、あれ?」  
ふと、見ていた先に異変が生じる。  
何も無かった空間に、砂嵐のようなノイズが発生しているのだ。  
「な、何だろ?」  
少し身を引きながら眺めていると、やがてそのノイズは人間の形をとった。  
黒い服に黒い髪の少女である。何故か顔は赤い。  
 
「う、うわッ」  
驚いて一歩後ろに下がる。すると、少女の方もアルフレッドに気づいてこちらを向いた。  
「ここは……? いえ、あなたは……そう、あの女の弟……だったわね?」  
「な、何です……か?」  
「くッ……くすくす……これは好都合。  
 あなたを盾にしてしまえば、あの女も無茶は出来ないだろうし……」  
くすくす笑いながら、少女はにじり寄ってくる。  
「ちょ、ちょっと、な、何なんですか一体ッ……」  
「……あなたの姉には、散々な目に遭わせられたのよッ……」  
姉、と聞いてアルフレッドのぼんやりとしていた頭が少ししゃっきりとする。  
「ね、姉さんが? あ……あの、何か姉さんがご迷惑をおかけした……ん、ですか?」  
「……あんな辱めを受けるなどと……いくらわたしがデータとはいえ……  
 魔族をニンゲンが侮るなどと、ふざけた真似をッ……!」  
「あ、あの、姉さんが何かしたのなら僕が謝ります、から」  
懸命にアルフレッドは頭を下げるが、少し興奮しているらしいベアトリーチェの目には入らない。  
近づいて、アルフレッドの目の前まで来ると、その手を少年の前にかざした。  
途端、がくんと足が崩れ落ちる。  
「う、うわッ!?」  
「しばらく、そこで止まっていてもらうわ。あの女を探して、今度はわたしが復讐をさせてもら」  
「甘いッ!」  
くい、と。  
気づいた時には、またマヤによってベアトリーチェは組み伏せられていた。  
 
「なッ……!?」  
「ね、姉さんッ!?」  
ベアトリーチェを抱きかかえながら、マヤは弟に向かってにやりと笑う。  
「あら、アルじゃない。なんでこんなとこにいるの?」  
「そ、そんなのわかんない……けど、姉さんこそ一体何がどうなって……」  
言葉を交わしながらも、マヤはベアトリーチェの身体のあちこちを撫で回している。  
流石に、ワンピースの中に手を入れて弄り出した時には、アルフレッドが裏返った声を出した。  
「な、何やってるのさッ!?」  
「んー、まあ、ほら。なんていうか……」  
ちょっと困った顔をしてはいるが、マヤの指は止まる気配もない。  
お陰で、ベアトリーチェは少し冷めた体にまた刺激を加えこまれる。  
「い、嫌ぁッ……」  
「そ、そんな子に何してるんだよ……」  
「説明すると長くなるんだけど……ま、いっか」  
ベアトリーチェの秘所をまた指でかき回しつつ、マヤは弟に語り始めた。  
 
「……で、ヒアデスにハッキングした訳なんだけど……」  
「そ、そこはッ……んぁッ」  
「この子はほら、ヴァージニアとかが言ってた夢魔……って奴なのね。ヒアデスのボスみたいなの。そ 
れでさ……」  
何故だか正座して姉の話を聞いているアルフレッドは、どんどん顔を赤くしていった。  
「まあそんな理由で……あれ、アルどうしたの?」  
「……そ、そう言われても」  
若干前かがみになっているようにも見える。  
「大体……わ、わかったけど……なんで、そんな……その、エッチなこと……」  
「説明しなかったっけ? アタシらの手下にするための、こう……ちょっとした交渉術よ」  
このあたりで、マヤは指をもう一本挿入する。  
既に挿入されているため、より強い抵抗が襲ってくる。無論、入れられたベアトリーチェにとっては、  
「ひうッ!?」  
「うん……結構きついわね」  
更に激しい刺激になってしまうのだが。  
そんな押し返そうとする肉壁の動きを指で確かめながら、マヤは戸惑う弟の方を向いた。  
「で、アタシから質問なんだけど。なんでアンタはここにいるの?」  
「そんなの、僕が知りたいよ……」  
ふむ、と考え込む。と、マヤは指でかき回しているベアトリーチェを見る。  
「そうだ。アンタなら、わかるんじゃないの?」  
「……うあッ! な、何が……」  
「何がって。なんでアルがここにいるかよ」  
ぐちゅぐちゅと指は止まらない。そのせいでベアトリーチェは荒くあえぎ、答えようにも答えられない 
のだが。  
「そ、そんなのッ……んッ、あなたに、うぁッ……答える、理由が……」  
「答えたら……少し責めを弱めてあげる」  
そう言うと、マヤは指での突き上げを早めた。  
少し奥まで指を入れて、内部をかき回す勢いを強くする。  
「や、やあッ……」  
「ほら、答えないと……もっと凄いわよ?」  
「く、うッ……わ、わかったから……や、やめッ……うあッ!」  
指の勢いを弱める。それで、ベアトリーチェはふう、と少しだけ息をついた。  
 
「……ニンゲンの夢と、ヒアデスのデータ領域は非常に近しいところにある……んッ。  
 特に今夜は……あなたが、強引にヒアデスに侵入したせいで、妙な場所と繋がってしまっている…… 
はず」  
「ふん……んで、アタシの近くで寝てたアルの夢と混線しちゃったって訳か」  
「恐らく、そ、そういうこと……んぁッ! よ、弱めるって言ったのにッ……」  
一応、マヤの指の動きは、弱くはなっている。それでもベアトリーチェへの責めとしては十分なのだが。  
流れる水音も相変わらずぐちゃぐちゃと響き、聞いていたアルフレッドの顔も相当赤くなってきていた。  
「さて……まだ、アタシの言うこと聞いてくれないの?」  
「い、嫌ッ……」  
「まだそんなこと言って……仕方ないわね」  
また、指のかき回す動きを早くする。  
「あッ……んうぅッ!」  
もう、ベアトリーチェから流れる愛液もなかなかの量になってきた。  
零れて、マヤのスカートを軽く汚すが、弄んでいる彼女は気に留めるそぶりもない。  
むしろ、じっと見ているアルフレッドが顔を真っ赤にして極端に動悸を早くしているのだが。  
「や、やだッ……き、来ちゃうッ……」  
「ん? ……へえ、イっちゃうの?」  
「こ、こんなのッ……う、うぁッ……」  
「とりあえず……じゃあ一回は満足しときなさい」  
様子を見て、マヤはますます指での突き上げを早くした。  
ぐっちゅ、ぐっちゅと、ベアトリーチェの中から聞こえる音も激しくなる。  
「やッ……あああぁぁあッ!」  
そして、一際奥を擦った瞬間。  
全身を痙攣させ、夢魔は受け止めるマヤの身体に沈み込んでしまった。  
 
「はあ……くッ……」  
「で、どう? まだ断る訳?」  
余韻で身体を弛緩させながらも、ベアトリーチェはマヤをにらみつけた。  
その目は潤んでおり、あまり迫力はないのだが。  
「ふ、ふざけない……でッ。誰がこんなッ……」  
「まったく強情ねえ……じゃあ、また……いや……」  
じっと、一言もなく凝視していた弟を見て、にやっと笑う。  
「そうだ。アル。アンタももう16よね」  
「……え、う、うん……」  
「そろそろ……いいんじゃない?」  
「な、何が?」  
鈍いわね――マヤはそんな弟を軽くたしなめる。  
「一人前の男になるってことよ」  
「そ、それ、って……」  
「まあ丁度いい相手もいることだし……」  
ぐったりとしているベアトリーチェを指し示して、その意味を示唆していく。  
「アルにこう……人間のふれあいの素晴らしさを理解させてもらえば、この子だってアタシに従ってく 
れるでしょ」  
「そ、そんな無茶なッ……」  
「無茶じゃないッ。ほら、アル。やってあげなさい」  
黒いワンピースをたくし上げて、その場所が弟にはっきり見えるようにベアトリーチェを持ち上げた。  
姉の指が、年端も行かない少女のそこに突き刺さり、いやらしく動いている。  
「う、うわあ……」  
「ほら、この子だって喜んでるんだから……」  
「よ、喜んでないッ……勝手なッ……ひぅッ」  
「……とにかく」  
変わらない手段でベアトリーチェを黙らせつつ、マヤは弟をじっと見つめた。  
 
「で、でも……こんなの、ひどいやり方だよ」  
「ひどい?」  
「無理やりそんなことするの……か、かわいそうじゃないかなって……」  
考えてみれば、というか、至極もっともな意見ではある。  
「懐柔よ、これは?」  
「でもやっぱり……僕はそういうの、駄目だと思う……」  
流石に、一家の良識担当なだけはある。  
自分も相当興奮しているのは真っ赤な顔を見ればわかるのに、それでも諌めようとしているのだから。  
ただ、いつも通り、そんな言葉は姉にはちっとも通用しない。  
「あのねえ……こいつは、なんか悪巧みしてるのよ?  
 ここでアタシらの手で改心させて、更正させてやれば……それはすばらしいことじゃない」  
「改心って……それがどうしてそんな……その、エッチなことに繋がるんだよッ!」  
途中で叫びに変わったのは、またマヤがベアトリーチェを責め苛み始めたからだ。  
ひくひくと震える小さな秘唇に、愛液の絡みついたマヤの指がゆっくりと出し入れされる。  
「どうして、って……」  
「ひぅッ……あ、あぁぁ……」  
悶えるベアトリーチェの姿に、アルフレッドはまた顔を赤くするが、それでもきっと姉の方を向く。  
「こ、こんなやり方する姉さんは……その、えっと、だ、駄目だよッ!」  
「まったく……固いわねえ、アンタも……」  
ふう、とため息をついた後、ちょいちょいとこちらへ寄るように弟に手で示す。  
「な、何?」  
「ちょっと来なさい」  
恐る恐る近づいてきたアルフレッドに、マヤは空いていた右手を伸ばした。  
その手は、膨らんだ弟の股間に触れられる。  
「う、うわッ!?」  
「ほら、アンタだってこんなにしてるじゃないの」  
左手ではベアトリーチェを責めつつ、右手は弟の性器を布越しに軽く掴む。  
「変に意地張らないで、やっちゃいなさい。アタシの命令よ?」  
「で、でもッ……」  
 
抗弁する弟を見て、軽くマヤは舌打ちすると、懐からマッチ箱を取り出した。  
中から一本取り出し、擦って火をつけると、弟の目の前に見せ付ける。  
「ねッ……えさ……」  
「夢の中だろうと、アンタの性癖は変わらないはずよね……はい、しっかり見るのよ?  
 いいこと、アンタはこれからこの子を貫いてやるの。男の子にしかないアレで、きっちり犯してあげ 
るのよ?  
炎を見つめながら、アルフレッドの目はとろんとしたものに変化していく。  
「で、でも、そんなのは……」  
「そうすることはこの子の為にもなるの。正しいことなの。わかった?」  
「か、勝手な言い草……いッ……」  
途中で口を挟もうとしたベアトリーチェを例によって例の如く黙らせつつ、マヤは炎をゆらゆらと保つ。  
「……僕は、でも……その……」  
「わ・か・っ・た?」  
「…………」  
炎を見つめながら、アルフレッドもゆらゆらと揺れる。  
少しの間があって、マッチの炎が消える寸前、少年はこくんと頷いた。  
「……うん……そうすれば、いいんだね」  
「そうよッ。まったく手間かけさせてくれちゃって」  
燃え尽きたマッチを捨てると、マヤはふんと軽く鼻を鳴らす。  
アルフレッドはまだ若干とろんとした目のまま、その視線をマヤに捕獲されているベアトリーチェに向 
けた。  
相変わらず弄られて、意識が朦朧としかけているベアトリーチェもその視線には少しだけ息を呑む。  
 
火を見ると、アルフレッドはその炎の揺らめきに自分を投影し、改めて固めることで冷静になるという。  
だが、揺らめきに自分を写している間に言葉を刷り込まれると、その言葉を心に直接刻み込んでしまう 
のだ。  
つまり、姉によって刷り込まれた言葉、目の前の少女を犯す、というものに逆らえないようになってし 
まっている。  
そのため、姉の前でズボンからペニスを晒すことに少しは躊躇ったものの、結局はぷるんとそれを出し 
てしまう。  
大きさはそこそこだが、やはりがちがちに充血しきっているため随分力強い印象を受ける。  
「やっぱり、そんなにかちこちにしちゃってたんじゃないの。我慢は身体に悪いわよ?」  
「……だって……」  
「だっても脱兎もないわ。……いいから、ほら。さっさとしてあげなさいな」  
言うと、マヤはぐいっとベアトリーチェの足を開いて、ヴァギナをさらけ出す。  
「や、やめッ……」  
あんまりと言えばあまりな格好だ。  
見ている相手はアルフレッドだけと言っても、こんな格好をとらされること、それ自体が耐え難い。  
「……わたしをどこまで辱めれば気がすむのッ……」  
「だから……まあ、もういいわ。アルにやってもらえば気も変わるでしょ……んじゃ、やっちゃいなさ 
い」  
また小さく頷くと、アルフレッドは自分のペニスを軽く握って位置を補正する。  
その顔はどうしても不安げな色が拭えないにしても、やろうとする意志だけはしっかりしているようだ。  
既にペニスの先も少し濡れており、臨戦態勢を整えてもいる。  
身体を拘束されているベアトリーチェは、少しだけ恐怖という感情を思い出す。  
久しく感じていなかったその気持ちを懐かしむ余裕などは当然あるはずもなく。  
ゆっくりと、自分の小さな入り口に近づいてくるアルフレッドの滾ったペニスをじっと見るしかない。  
「くッ……」  
何も見たことがない訳ではない。  
夢の中をさまよううちに淫夢に潜り込んだこともあるし、現実においても観察するのならそれは容易い 
話だ。  
しかし、それがこうして身動きのとれない自分に迫ってくる、というのは流石に初めてである。  
「魔族なんだから……これっくらい平気でしょうに」  
マヤの言葉も、あまり耳には入らなくなってくる。  
迫り来る少しグロテスクな男の器官が、いよいよ密着しはじめたからだ。  
 
「じゃあ……いくよ」  
「ち、ちょっと待っ……」  
アルフレッドはおずおずと、それでもしっかりした勢いでベアトリーチェの中へ突き入れる。  
「――いッ……ああああッ!?」  
「うわッ……」  
ぐちゅ、と。  
狭く、小さなベアトリーチェの入り口に、アルフレッドの充血しきったペニスが飲み込まれていく。  
しかし、外見年齢相応にそこはひどく狭い。  
著しい抵抗のせいで、ゆっくりと、あまりにゆっくりとしか中には入っていけないのだ。  
それでも、入った瞬間の強い圧迫感で、ベアトリーチェは全身を少し痙攣させてしまう。  
「も、もっとゆっくりッ……かはぁッ……」  
「す、凄い、狭いよ、これッ……」  
そんな弟と夢魔を見ながら、マヤはベアトリーチェの表情や仕草をじっくりと観察していた。  
「なるほど、なかなか面白い反応ね。結構……嫌がってないんじゃない、アンタって」  
「ひ、人を好きなように……くぁぁッ!?」  
ずぶずぶと、アルフレッドのそれはベアトリーチェの中に強引に押し入っていく。  
圧迫感が凄いのだろう、夢魔は息も絶え絶えとなって言葉すら詰まっているようだ。  
 
「ぼ、僕、こんなのッ……うわ、もう、すぐ出ちゃうよッ……」  
アルフレッドの方も、そんな刺激に早くも限界が訪れかけている。  
けれど、マヤは必死な弟に対して実に冷淡に答えた。  
「まだ最後まで入れてないでしょ。それくらいは我慢しなさい」  
「だ、だってッ……く、つッ……」  
姉にそう言われては、すぐに出してしまう訳にもいかない。  
必死で我慢して、今目の前で喘いでいる夢魔の中へと突き進む。  
その結果、ベアトリーチェも身体全体を貫かれているような衝撃に襲われてしまう。  
「な、中がいっぱいッ……うぁぁぁッ!?」  
少年と、外見だけなら少女は、お互い震えて快感に身をよじらせた。  
ただ、二人をのんびりと観察できる余裕のあるマヤだけは涼しい表情なのだが。  
「へえ、データってわりに、可愛い反応してるじゃないの。人格がある以上、どうあれ人間そっくりに 
はなるのねぇ」  
それに答える声はない。  
ついに、アルフレッドのペニスがベアトリーチェの最奥に、  
「つッ……うわああッ!」  
「いッ……か、はッ……」  
たどり着いたところだったから。  
 
「はぁ、はぁッ……こ、ここが一番奥……みたいだね……」  
「くッ……こ、こんなのッ……」  
お互いに向き合って、息を切らせたまま呟く。  
ほとんど完全に密着している格好だ。  
元々小さなベアトリーチェと、年齢に比べると小柄なアルフレッドは隙間も少なくくっついてしまって 
いる。  
そのペニスとヴァギナに至っては、内部にまで密着しているのだが。  
「うわッ……な、なんか、こうしてるだけでもッ……す、凄いッ……」  
アルフレッドは、初めての女性にどうにもならず戸惑っている。  
すぐにでも出てしまいそうな程にペニスは膨らんでいるのに、何故だか弾けようとはしない。  
外見相応に狭すぎる秘所は、アルフレッドの滾ったペニスを十分以上に締め付けている、のだが。  
それがかえって、戸惑いとショックで射精を阻んでいるらしい。  
「うッ……くッ、こ、こんなの……は、早く、抜いてッ……」  
ベアトリーチェの方は胎内を埋められて呼吸するのも辛そうである。  
それでも、わずかな秘所の隙間からはとろとろと愛液が流れてしまっている。  
機能だけは外見と違い完璧なので、男を迎え入れるための準備は嫌でも万全になっているのだろう。  
「……で、いつまでそうしてんの、アンタら。特にアル。こういう時は動かなきゃダメでしょ」  
二人とも息が詰まって動けないのに、傍観しているマヤだけは好きなことを言う。  
「そう言われてもッ……もう、僕も限界でッ……」  
「どうせ夢なんでしょ? だったら、一回や二回平気よ、多分」  
「……夢精とか」  
「細かいことは気にしないのッ!」  
姉にはやっぱり逆らえないアルフレッドは、恐る恐るペニスをゆっくりと抜いてみる。  
「うッ……はぁッ……」  
少しずつ圧迫感が収まって、ベアトリーチェも息をついた。  
そのまま入り口まで抜かれて、これで安心できるかと思った、その瞬間――  
 
ずんッ、と。  
また急に、アルフレッドは打ち込んでくる。  
「――ぃッ……ああああッ!」  
全身が一本の杭に貫かれたような衝撃だ。  
ぐちゅり、と接合している部分が擦れて激しく音を立ててしまう。  
「あ、うあッ……」  
今の一撃で、身体から何かが抜けていったようにも感じる。  
アルフレッド自身とて自分のやったことがよくわかっていないのだが、目の前の少女が震えているのを 
見て少し気をよくした。  
「えっと……今みたいなので、よかったの……かな?」  
「少なくともコイツには効くみたいね。いいわよ、アル。さあどんどんやってやりなさい」  
「……う、うん」  
姉に元気付けられて、アルフレッドはまた同じようにゆっくりと抜き差しを始める。  
「あ、ま、待っ……い、や、ああッ!?」  
ぎこちない動きなのだが、そもそもが狭すぎる膣内のためにかえって快感を誘発している。  
一突きごとにひくひくとベアトリーチェは愛液を流し出し、口からもよだれを流して動けなくなってし 
まう。  
ぐっちゅ……ぐっちゅ……ぐっちゅ……  
アルフレッドの表情も必死で耐えている顔だ。  
だが、それ以上にベアトリーチェは耐え切れずあられもない顔をしてしまっている。  
「や、なんで、こんなのッ……あ、ああああッ……」  
「ほら、うちの弟は大したモンでしょ? アタシの弟なんだから、当たり前よね」  
こんなことでもマヤは自慢そうな顔をする。  
とはいえ、アルフレッドもベアトリーチェもそんな言葉を気にする余裕は、勿論ない。  
「う……凄い、気持ちいッ……」  
初めて味わう快感があまりにも大きすぎて、アルフレッドは夢中となっている。  
姉の目があるのが、余計に興奮を煽るのだろう――時々ちらちらとマヤを気にしているくらいだ。  
姉から視線を逸らす時は、やはり眼前の夢魔に釘付けとなっている。  
こんな小さな女の子が、はしたない顔をして自分のもたらす快感にあえいでいる。  
背徳感が普段の彼の大人しい態度を少しずつ剥ぎ取って、腰の動きが段々と激しくなってきた。  
 
「あああッ……ひッ、くッ……」  
アルフレッドは、遠慮せずに腰を打ちつけ始めた。  
ずんずんと胎内に打ち込まれ、ベアトリーチェはもうほとんど喘ぎ声も弱弱しい。  
「気持ちいッ……い、凄いッ……」  
ぐちゅぐちゅと音は高くなり、少年と外見だけ少女はほとんど高みに上っている。  
そうして、ベアトリーチェはその手をアルフレッドの背中に回してしまう。  
「あ……」  
しがみついているつもりなのだろう、少年に体重がかかってきた。  
それがなんだか嬉しくて、アルフレッドはまた必死で突き入れる。  
「く、ひぁぁッ!」  
お陰でベアトリーチェはますます悲鳴をあげる。  
と、声に刺激されてか、アルフレッドが一際強く突き入れた瞬間。  
「……あ、んあッ……や、だッ……!」  
前触れもなく、ぎゅっとアルフレッドの背中に爪をたててベアトリーチェは達してしまった。  
膣内も震え、中のアルフレッドを締め上げる。軽く、愛液もぴゅっと飛んだ。  
「痛ッ……あ、あれ?」  
夢魔はそのまま、顔をアルフレッドに押し付けて息をついている。  
なのだが、アルフレッドの方はまだちっとも収まりがついていないのだ。  
「う……ま、まだ、やってもその、いい……かな?」  
「……待って……これ以上は……」  
妙に素直に止めてくれるように頼まれて、アルフレッドはどうにも出来ずに戸惑っていた。  
それでも待っているうちに、充血しているペニスはもっと快感を欲して少しだけ動こうとする。  
「ふッ……あ……」  
「……ご、ごめんなさい、その……僕、我慢できなくって……」  
「だ、だから……うあッ!」  
謝るのはいいのだが、遠慮なくアルフレッドはまた突き上げ始める。  
 
「あ、あなたたち姉弟はヒトの話を聞かなッ……やあああッ!?」  
「う……ご、ごめん」  
そう言うわりにアルフレッドは遠慮しない。  
結局のところ似たもの姉弟なのだろうが、翻弄されるベアトリーチェにとってはたまったものではない。  
一度イったことで敏感になってしまっているのか、立て続けに達してしまう。  
そのたびに狭い膣壁はぎゅうぎゅうと痙攣し、アルフレッドから搾り取ろうとするのだ、が。  
「うッ……く、ま、また出ないッ……?」  
緊張なのかなんなのか。  
どれだけ快感に晒されても、アルフレッドは精液を吐き出せないのだ。  
むしろ、そのせいで快感ばかりが溜まってアルフレッドもどうにかなってきた。  
「う、うわ、お、おかしいよッ……で、出ないッ……うわああッ……」  
「……やだッ……」  
イき続けるベアトリーチェに、もう精を出してもおかしくない快感を味わい続けているアルフレッド。  
限界を越した二人は、止めることも出来ずに腰を打ちつける。  
「こ、このままじゃッ……」  
「……まったく。仕方ないわねぇ」  
「ッ……ねえさ……んッ……?」  
いつの間にやら、ベアトリーチェを解放して近くでそれを眺めていたマヤがまた寄ってきている。  
その顔を二人がくっついている部分に近づけると、手で二人の動きを止めた。  
「な、何、を?」  
「んー、ま、おまじない……かしらね。さて……」  
そのまま、舌でアルフレッドとベアトリーチェの繋がっている部分を、そっと舐める。  
「ひわッ……」  
「……ぁッ……」  
ふふ、と笑いながら、マヤは優しく二人を平等に舐め上げる。  
先走りと愛液のまざったものを舐め取ってから、また顔を離した。  
「さて、こんなとこかしら。ほら、アルもそろそろ……出してもいいのよ?」  
「で、でも……」  
 
出ない、と言いたいアルフレッドに、マヤはまた懐から妙な物体を取り出した。  
「……じゃ、こんなの使ってみましょうか」  
棒状の物体だ。先端が奇妙に膨らんでいる。  
そんなものを、マヤはベアトリーチェの肛門に押し付ける。  
「な、何をするつもり、なの……」  
「……機能は完璧、なのよね。だったらこんなのも……ありかしら?」  
言うや否や、ずぷっと器具を中に押し込んだ。  
「――ぇ……?」  
一瞬、何もわからずに夢魔は呆けた声を出す。次の瞬間には、  
「あッ……あ、ああッ!?」  
ショックで叫ぶような喘ぎが出てしまう。  
「さぁて……へえ、ちゃんと入るもんね」  
「ね、姉さんッ!? なんてものをッ……」  
「いいからいいから。これはこれで気持ちいい、こともあるらしいし」  
そのまま、まずはゆっくりと手を動かす。  
つられて、ペニスのようにベアトリーチェの肛門をその器具は抜き差しされる。  
「あ、あッ……や、やめッ……これだけは本当にッ、いッ」  
「……こっちも満更じゃないんじゃない」  
確かに、単に痛みだけを感じている訳ではないようだ。  
その声には、少しの甘さも含まれている。  
「そうしたら、ほら、アル。アンタも動いてやって」  
「え……あ、……わかった」  
また、アルフレッドも打ちつけ始める。  
 
「う、うわあッ……」  
「あ、かはッ……やああッ!」  
前と後ろから突き込まれて、ベアトリーチェの喘ぎはもうかすれてしまっている。  
アルフレッドも、さきほどとは違う感触に戸惑う他ない。  
「な、なんか変なのが当たるッ……」  
「……そんなに距離ないしね」  
ベアトリーチェ――外見はまだ小さな女の子は、今やマヤとアルフレッドによって二重に責められてい 
た。  
「だ、駄目、もうッ……うあああッ!」  
「……あ、なんか、僕も……」  
そのせいか、あれだけがちがちに固まっていたアルフレッドも、限界がようやく訪れかけている。  
マヤはそんな弟と夢魔を見比べて、ふっと笑った。  
「それじゃ、二人ともそろそろ終わりにしなさいな」  
「――あ……」  
「や、もう、やだッ……」  
最後に、アルフレッドは一番奥までぐいっとペニスを突き刺す。  
同時に、マヤも手に持った器具をぐいっと押し込んだ。  
同時に前と後ろから突き刺されて、ベアトリーチェも崩れ落ちる。  
「あ……や、嫌、なの、にぃッ……くああッ!」  
「でッ……出るよ、やっとッ!」  
一番奥に入ったところで、アルフレッドはようやくぴゅるぴゅるッ……と精液を吐き出させる。  
「……や……あ……」  
「と、止まらないッ……よぅッ……」  
「……ふふ」  
溜めに溜めただけに、勢いと量は止まらない。  
どくどくとベアトリーチェとアルフレッドの接合部からは白い粘液が流れ出るが、なおも射精は続く。  
「アルったら……まーた溜めちゃって。ちゃんとやってんの? 自分で……」  
「そんなのッ……あ、う……」  
呆れたようにマヤに言われても、精液を出すのはまだ終らない。  
「熱いのがッ……止まらないッ……や、やだ……」  
お陰でベアトリーチェもまた、身体の中を熱く埋める精液に呻くだけ。  
 
やっと射精が終わり、アルフレッドは力を失くしてすっかり萎えたペニスをベアトリーチェから抜いた。  
どろっとしたものがまとわりついて、なんとも言えない妙な感触である。  
マヤも、尻の穴から器具を抜いて、やっと夢魔を解放する。  
「……ん、で、満足してもらえたと思うんだけど……どう? アタシらに協力してくれる?」  
早々と尋ねるが、ベアトリーチェは荒く息をつくだけで答えられる状態ではないようだ。  
困ったものねと、マヤは弟の方を向いた。  
初めての体験で、こっちも呆然としているのだが。  
「アルの方は……どんな気分?」  
「……わ、わかんないよ」  
「そんなもん?」  
こっちもやはり駄目らしい。  
改めて、ベアトリーチェに目を向ける、と。そこには、紫の肌のドレス姿な少女がいた。戦闘のための 
ベアトリーチェ。  
「……え?」  
「……あなたたち姉弟は……夢よりも昏い眠りではまだ足りない……ッ」  
「あ……ひょっとして、キレちゃったり?」  
薄ら笑いというか、引きつった笑い顔で、ベアトリーチェは右手をマヤたちに差し出す。  
その指先から黒い何かが吹き出し、こちら目掛けて飛んでくる。  
またそれをひらりとよけて、マヤはぴしゃりとしかりつけた。  
「思いっきり気持ちよがってたのに、恩を仇で返すつもりッ!?」  
「恩……?」  
余計に油を注ぐだけのその言葉に、ベアトリーチェの薄ら笑いは口元が震えて壊れかけてくる。  
「それこそッ……今まで誰も見たことのない悪夢で歓待する必要があるようねッ……」  
「あらま、完璧にキレちゃったわねぇ……いい作戦だと思ったのに。仕方ない……アル、撤退よッ!」  
まだぼけっとしているアルフレッドを掴み、またマヤは眼鏡の姿に戻る。  
「え? 何?」  
「現実世界へ帰還するのッ!」  
言うや否や、マヤとアルフレッドは光に包まれて、消えていった。  
「……逃がした、か……まったく、忌々しいニンゲンどもが……」  
怒りのやり場を失って、ベアトリーチェは少々脱力する。と、本当に小さく呟いた。  
「……気持ち……よかったのは確か、だけど……」  
 
結局のところ、マヤの『夢魔捕獲作戦』は、この一回だけで飽きたようで、また実行されることはなか 
った。  
「……姉さん、あれはもうやらないの?」  
「いいわ。ヒアデスなんかに頼るのも、やっぱりアレだし」  
「……ふうん」  
それはマヤにとって、アルフレッドにとって、ベアトリーチェにとってよかったのかどうか。  
何にしても、実に無駄骨ではあったのだが。ただ一つ。  
 
「……うわッ!?」  
眠りについた途端、アルフレッドは股間に走る奇妙な感触を味わう。  
そこには、薄ら笑いを浮かべつつペニスを咥えているベアトリーチェがいる。  
「な、なんでッ……」  
「……本来の夢魔の役目よ。あなたの姉いわく、ね」  
「い、いや、その、なんで、こんな、こと」  
「……わたしにだってプライドくらいはあるし……どうもあなたの姉には手出しし辛いからね。  
 ちょっとした報復……とでも言おうかしら」  
ある意味、ベアトリーチェも癖になったのかもしれないが。  
これはこれで――今度は姉のいない分、アルフレッドにとっては不幸なことだろう。  
実に平和な話ではあるが。  
 

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