ファルガイアは荒野が広がる世界である。  
 魔族の脅威が無くなったと言っても、荒野は着実にその手を広げ、過去の遺産を人は食いつぶしている。  
 コートセイム。ファルガイアの辺境にあるこの開拓村で、ジェーンは父と別れの挨拶をしていた。  
「それじゃパパ。行って来るわね」  
「ジェーン……」  
「お嬢様……」  
 常ならば、執事のマクダレンも同伴するはずだが、彼は村に残る側だ。並ぶ2人の顔に苦渋を見て取り、ジェーンは父に抱きついた。  
「アタシなら大丈夫だから。パパとマクダレンは、村を護って。ね?」  
「すまない、ジェーン。本当に、すまない……」  
「もうっ。子供達が見てたら変に思うでしょ?パパもマクダレンも、しゃきっとしてよ」  
 そう言うジェーンの身体も小刻みに震え、これから先への不安を露わにしている。それでも態度に見せようとしないのは、勝気な姿を保ちたい故か。  
「お嬢様。このマクダレン、本来ならお嬢様をお守りせねばならぬというのに……不肖の執事をお許しください」  
「いいのよ、もう。アタシは、村の皆のためならなんだって平気だから。だから、マクダレンも村を宜しくね」  
「はっ……」  
 深々と頭を下げる自分の執事と、膝から崩れ落ちそうな父に、村が大丈夫か不安になったが、今更後には引けない。  
 ニコラから離れると、ジェーンはサッと踵を返し、村の傍の海岸に来ている船に向かっていった。  
 一度も彼女は振り返らず。  
 これが、「カラミティ・ジェーン」と呼ばれた渡り鳥の最後の記録になった。  
 
 「おい、出番だぞ」  
 屈強な男に言われ、ジェーンは与えられた部屋から出た。部屋と言っても粗末なベッドと衣装箪笥くらいしかない小さな部屋だ。  
 衣装箪笥から服を取り出して着込む。以前着ていたオレンジ色のドレスのような服と変わらないが、あちらが渡り鳥の旅に耐えられる丈夫なものだったのに対して、こちらは粗悪な材質でしかも薄手。ジェーンとしてもあまり好ましくない衣装だ。  
 だがそれをまとうと、これも渡されていた薬を飲み、フレーゲルヤーレを手にジェーンは男の後に続いてソコに向かった。  
 ソコは、敢えて言うなら闘技場のような場所だ。インモラル島の闘技場とサイズは違えど形は変わらない。上から客が見下ろす形の舞台に立つと、周囲から多くの好奇の視線が突き刺さる。  
 無視していると、アナウンスも何もなく鉄格子が空き、ジェリーブロッブがたくさん現れる。ティムニー近くに出現する魔獣である。  
 近寄ってくるジェリーブロッブに銃口を向けると、ジェーンはすぐさま引き金を引いた。破裂音がしてジェリーブロッブの一体に当たる。が、さして苦痛も感じぬままにゼリー状の身体が這いよってくる。  
「こんにゃろー!」「てーい!」「あったれー!」  
 軽快に駆け回り威勢よく攻撃するジェーンの掛け声とは対照的に、魔獣たちは悠々と近づいてくる。さもありなん、とジェーンは冷えた内心で思う。今彼女のARMに装填されているのは普通の弾丸ではない。弾頭が柔らかいゴムで出来た代物だ。これではゴブも倒せない。  
 そう、これは出来レース。魔獣に対する者(女性)が何をしようと無駄。むしろジェリーブロッブの数を増やすだけの徒労を、客達は眺めているのだ。そして抵抗を止めるのもNG。それは客の望まぬこと。  
(くっそう)  
 弾もすぐに尽きる。普段なら例え柔らかい身体を持っていても倒せる威力はあるが、ここではジェーンの負けは決まっている。ジェリーブロッブはもうすぐそこに迫っている。  
「たあっ!」  
 手足を振り回すももはや無意味。ジェリーブロッブに足を取られ、ジェーンの動きが止まる。後はあっという間。ジェーンの身体は首から上を除いてゼリーの中に取り込まれる。  
「くっ、このぉ!」  
 筋書き通りのセリフを言いながらの抵抗に、上から笑い声が響く。無駄な足掻きを楽しんでいるのだ。そしてジェリーブロッブたちが攻撃を開始した。  
 
「うあっ!」  
 ジェーンの身体を包み込んだ粘液が流動を開始する。それはジェーンの手足を締め上げながら優しくさすり、全身くまなく愛撫しながら痛苦を与えていく。  
「やあっ!あぐぅ!ひぃああ!」  
 ジェーンのうめき、あえぎに観客が盛り上がり、競りのような声が聞こえるが、ジェーンに気にする余裕は無い。身体の奥底から、熱が湧き上がってきていたのだ。  
「ひゃあん!やぁ、やめてぇ!」  
 その頃には、破れやすい衣装は粘液の流動に弄ばれ、破れ果てている。ジェーンの若々しい肢体が薄青の液の中に浮かぶ様は淫靡なものだった。  
 飲んだ媚薬の効果もあり、ジェーンの顔もほんのりと赤くなり、声も艶っぽくなっていく。  
「ああっ、やあ、ひうぅん、もう、やめてぇ!」  
 粘液の中でばたつこうとするが、手も足も緩やかにしか動かせず。却って液体の中でジェーンの裸体が泳ぐような様が観客達の喝采を呼ぶ。  
 
「ああっ!そこはだめぇ!」  
 遂に粘液の動きに、ジェーンは悲鳴を上げた。知能の無いはずの魔獣の動きは、しかしまるでジェーンの性感帯を悟っているかのように的確に蠢くようになった。  
 勃起した乳首をつまみ、こねくり回し、引っ張り、押さえつけて弄ぶ。  
 クリトリスもあらゆる方向からいじりまわされ、わきの下や腰回りもいいように刺激され、ジェーンはあっという間に上り詰めていく。  
「やっは、い、いく、逝く、イッくうう!っあああああああっ!」  
 目を見開き、舌を突き出した絶頂の表情で、ジェーンは粘液球体の中で絶頂に達し、快楽に飲み込まれた。  
 手足がピクピクと痙攣する中、ジェリーブロッブは更に責めたてる。流動は更に活発になり、ジェーンの首から上にまで上ってくる。  
「むぐ、むごぉ!」  
 忘我の縁から引き戻されたジェーンの悲鳴は、ゼリーの中でくぐもった代物にしかならず、粘液の海の中でジェーンの美しい髪もゆらゆらとゆれる。  
 当然呼吸も出来ず、ジェーンが口をパクパクとさせながら手足をもがかせる中。  
「「ファイア」」  
 どこからか放たれた炎がジェリーブロッブを焼き尽くし、ジェーンも床に放り出された。  
 放心したようにへたり込むジェーンが咳き込む中。  
『さぁ、本日の買い手が決まりました!』  
 アナウンスの声が聞こえ、闘技場の天蓋がとざされて、奥から何人かの男がやってきた。  
 
「あ、乱暴に、しないでよ!」  
 口調こそ勝気さを残しているが、ジェーンの仕草はむしろ男達を誘うようだった。  
 頭の先から粘液まみれで着ていた服もボロボロの状態で、怯えたような表情をしながらそれでも挑戦的な目つきをするのだ。それは男達の嗜虐心を誘うに充分すぎた。  
「おらっ、こっち来いよ!」  
 ローションを塗りたくったようなジェーンの腕を掴み上げて、一際筋骨隆々で傷跡も多い男がジェーンを引きずり寄せるとそのまま押し倒す。  
 仰向けのジェーンに馬乗りになると、小ぶりながらしっかりとした膨らみをギュゥと揉みしだく。ジェリーブロッブの粘液はさながらローションのように滑らかに、男の腕をスムーズに動かさせた。  
「きゃあ!痛いっ!」  
「痛くしてるんだよ!」  
 こねくり回しながら、乳首をギリと摘めば、ジェーンから甲高い嬌声が響く。  
 その様に刺激されて傷男の動きはさらに激しくなる。息も絶え絶えのジェーンの顔を上向かせると、容赦なくディープキスをしてくる。  
「むぅ、むむぅっ!」  
 口の中を傷男の舌が蹂躙する。その間も、男の手は胸をこねくり、もう片方がジェーンの股間に延びた。  
「ひゃあっ!」  
 急な刺激に身体を強張らせると、その反応も傷男を興奮させた。動きをどんどんと激しく、強くしていく。  
 乳房には爪を立てた痕が傷となり、舌は口内どころかジェーンの顔も嘗め回す。クリトリスを指が弾き、女陰を指がつつく。  
 そこからは愛液がすでにだだ漏れになっていることに、ジェーンは気づいていた。  
「ああ……もう、はげしすぎぃ……」  
 ようやく解放された口からそう漏らせば、傷男は満足したような表情をしながら自身の服も脱ぎ捨てた。  
 鍛えられた肉体と、そそり立つような男根がジェーンの目を打つ。  
「お頭、俺達も興奮してきましたぜ」  
「俺達もこいつをかわいがりてぇよ」  
 ジェーンの腕を抑えていた2人が言うが、お頭と呼ばれた男はニヤニヤ笑いながら、  
「俺が満足してからだ」  
 言うや否や、男根をジェーンの膣に突きこんだ。  
「ひ、ぃやぁぁぁああああ!」  
 ジェーンの肘ほどもある巨根に抉られ、ジェーンの絶叫が響くが、お頭は意に介さずピストンを始める。  
 ガツ、ガツと子宮にまで届く一撃がジェーンを揺さぶった。  
「はひいいいいい!痛いぃぃ!やぁ、やめてぇぇぇ!」  
 言われて止める男はいない。ピストンは更に激しくなり、ジェーンの悲鳴も途切れ途切れとなる。呼吸もままならず、舌を突き出した姿は見る者が見れば哀れを誘っただろう。  
「くぅ、いいぞ、いいぞぉ!」  
「や、いや、また、アタシ、またぁっ!イクぅッ!」  
 再びの絶頂の感覚にジェーンがもがく。が、お頭の片手が乳首をギュウと絞るや痛みが絶頂をかすかに上回った。  
「はひぃっ!」  
「もうちょっと耐えろよ!俺はまだまだだ!」  
 無茶な注文に、ジェーンはなんとか絶頂に達するのをこらえようとし、その締め付けがお頭の男根を締め上げ、更なる快感をお頭に与える。  
「やあぁぁぁん!もう、だめぇ!耐えられな、ヒィィィ!」  
 ジェーンが絶叫すると、全身がビクン!と跳ね、そのまま脱力する。ジェーンはお頭より先に絶頂に達してしまった。その様子にお頭は構わず男根を最奥まで突きこみ続けた。  
「アアン!もう、やめ、アタシ、イッたばっか――ヒャアゥン!」   
 瞳も光を失い、白目を剥きそうなジェーンの様子に満足したように、お頭の男根はさらに硬く、太く膨らみ、そして。  
「さあ、たっぷりと喰らいな!」  
 一際激しい突きこみと共に、大量の精液がジェーンの膣に注ぎ込まれた。熱い白濁液がジェーンの子宮さえも満たしながら男根から溢れ、さらにはジェーンの膣からさえあふれ出す。  
「アッハァァァァ!」  
 再び跳ねたジェーンの身体は、今度こそ力尽きたように地に伏した。お頭が男根を引き抜けば、精液がドバ、と溢れ出す。だが、お頭の男根は未だ衰えてもいない。  
「さあ、まだまだ行こうぜ?」  
 言うや、お頭は今度はジェーンを自分の上に跨らせた。  
 
 それからどれだけの時間が経ったか。  
 ジェーンが覚えているだけで、お頭という男は5回はジェーンの中を犯しぬいた。それでも足りず、今度は床に座らせたジェーンの口を犯す。  
 喉の奥まで届く男根の大きさと匂いにむせ返りながら、ジェーンは舌と口と喉まで使って男を高ぶらせる。男の部下2人も今やこの狂宴に加わり、今はジェーンの手で男根をしごかれている。  
「フフ、そろそろだぞ?」  
「お、お頭、俺もッす!」  
「ああ、こいつウメェ!」  
 声と共に、子分2人がビュク、と精液を吹き出す。ジェーンの美しい金髪が白く染まり、垂れた分は汗と共に身体へと伝いだす。  
「ウムゥッ?!」  
 遅れてお頭も精液を出した。それは相変わらず大量で、ジェーンの口には収まりきらず、口元からタラリと垂れだした。  
「……もう飲み飽きたろ?今度は手に出して、身体に刷り込みな」  
 言われるままに、ジェーンは口の中の精液を手で受け止めた。一掬いもあるそれを、胸元を中心に塗りたくる。  
「俺はそろそろいいや。お前ら、好きにしな」  
 お頭に言われるや、子分2人は喜び勇んでジェーンを立ち上がらせた。  
 1人は、背後に回るとジェーンの腕を取り、立ったままの前傾姿勢にさせる。もう1人はジェーンの頭を押さえて口を開かせた。  
「俺は口にするぜ」  
「じゃ、俺は下の口だ」  
 背後の男は、すぐさまにジェーンの膣を己の肉棒で貫き、正面の男はフェラチオを始めさせた。  
 もはやジェーンには声を出す余裕も無く。  
 牡と牝の匂いに満ちた空間に、ジェーンのあえぎと男達の歓声は響き続けた。  
 
 男達が欲望を吐き出しきって満足する頃には、ジェーンは床に打ち捨てられていた。  
 口からも女陰からも大量の精液をこぼし、全身は汗と粘液にまみれてボロボロの服の上に転がされた姿は哀れといえる。  
 目元からは涙の粒がこぼれ、さらに女陰には、振るっていたARMの銃口が差し込まれている。  
 まさしくオモチャにされつくした姿で、ジェーンの意識は闇に落ちていた。  
 
 男達が去って。  
 ジェーンはムクリと起き上がった。  
「あ〜あ、今日はまたハードだったわね」  
 うんざり、というようにはき捨てるとだるい身体を引き起こして、元来た部屋へと戻っていく。部屋には、袋に詰められた金貨がポツンと置かれている。  
   
 港町ティムニー。ファルガイアの各地を行き交う交易船の要衝として栄えるこの町には秘密の場所がある。  
 余人の知らぬ町の地下。そこには、ブラックマーケットがあった。但しアーデルハイドのブラックマーケットとはまるで違う。あちらで扱うのは珍しい品物。対してこちらで扱うのは性だった。  
 海を行き交う船乗りや、船乗り狙いの海賊。そして勿論渡り鳥。主に女への性欲をもてあましている連中はいくらでもいる。  
 そんな連中に欲望の吐き出し口を提供するのが、ここのブラックマーケットだった。  
 普通なら単純に女性をあてがうだけでいいのだが、そこにインモラル島の闘技場のノウハウが持ち込まれて、商品が増えた。  
 女性と魔獣を戦わせ、その様を見せつつ買い手を募る。腕に覚えのありそうな女性が痛めつけられる様とそんな女性を自分が弄べるという内容が受けて、今や主流と化している。  
 当然のことながら、女性に支払われる割当もかなり大きい。  
 
 魔法でわかされたものだろうお湯で体の汚れを拭い、湯船につかりながら、ジェーンは身体の疲れを取ることに専念した。売春による心の痛みなど、ここに来たその日の内に捨て去った。  
 ジェーンは渡り鳥として、各地の遺跡から目ぼしいものを探し当て、或いは魔獣退治で金を稼いではコートセイムの孤児院の運営費に当てていた。  
 だが、魔族大戦の影響でジェーンを含めた一行があちこちの遺跡を片端から探検し、魔獣も相当な勢いで倒していたことで、今後のお宝発見が難しくなってしまった。  
 魔獣を倒し、持ち物を奪って換金することもしていたが、それでも足りず。  
 ついにジェーンは、このティムニー・ブラックマーケットに自分を売り出すことを決めたのだった。  
 閉じ込められているわけでもなく、暇を貰えばコートセイムに顔を見せることも出来るし、送金に関しても間違いなく行われているようだ。  
 もしちょろまかしや横取りがあれば、その時こそマクダレンの剣が冴え渡ることになる。  
「ま、最悪ってほど悪くは無いのかしらね」  
 呟きながら、同時に思う。  
(どうか、顔見知りが来ません様に)  
 祈る神などいないと知っているが、それでも祈らずにいられず、ジェーンは何者かに祈った。  
 ジェーン自身気づかぬうちに、頬を涙が伝っていた。  
 

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