そこには、丸い小さなテーブルが一つたたずんでいた。
傍らには季節の花が色とりどりに咲き乱れ、目を楽しませてくれる。
小さいが、全体の印象はなんともよい庭園――が、目の前には広がっている。
(――あれ?)
まったく見覚えが無い場所である。それ以前に、そもそも何故自分がこんな場所にいるかもわからない。
戸惑いながらも、その庭に一人立っていたヴァージニア・マクスウェルは、テーブルの傍の椅子に腰掛
けた。
しばらく、ぼんやりと時を過ごす。
ふと気づくと、テーブルの上にはティーカップが置かれている。
薔薇の飾りの入ったカップには、湯気をたてて香りを発している紅茶が注がれているようだ。
何かに導かれるようにそのカップに手を伸ばすと、ヴァージニアはゆっくりと中身を口に含む。
「……おいしい……」
味わい深く、それでいてさらりと流れる。
熱いお茶なのに喉はもっともっとと要求して、確実にカップは空に近づいていく。
やがて紅茶を飲み干すと、ヴァージニアは幸せそうにほう、と息をついた。
まだ頭ははっきりとしてないが、とりあえず気分はよい。
「こういうの、幸せ……っていうのかな?」
小さく笑ってみる。と。
「ご相伴に預からせて頂いても構わないかしら?」
どこからともなく、そんな声が聞こえてきた。
「ええ、どうぞ」
素直に頷く。すると声の主らしき人物は、ヴァージニアの対面の椅子にちょこんと腰掛ける。
その人物は――腰まで届くような黒い、さらりとした髪をしている。
服装まで黒尽くめで、年の頃は十代前半程度だろうか。
肌は、血が通っていないかと錯覚する程に白く――
「……ってッ!」
途端、ヴァージニアの頭からさっともやが消え去った。
この場所には何の見覚えもないけれど、この目の前の人物にははっきりと覚えがある。
「ベッ……ベアトリーチェッ!?」
幸せな気分も吹き飛んで、たちまちヴァージニアは戦闘前のような緊張に包まれる。
ぼんやりとしていた頭は急速に働き始め、現状把握の為に周りの情報を取り込んでいく。
「……へえ、これが貴方の願望……まさしく夢、という訳ね。なんともいい趣味をしているじゃない」
「夢ッ……!?」
警戒しているヴァージニアに、ベアトリーチェはくすりと笑う。
「そう、夢よ。そもそもわたしがこうやって干渉できる世界といえば、夢の中だけでしょう?
もう分かっていると思うけど――今、わたしは貴方……ヴァージニア・マクスウェルの夢の中に来て
いるの」
夢魔ベアトリーチェ。
人の夢に忍び込み、無数の企みを行ってきたヴァージニアの最大の敵と言える存在である。
彼女は実体を持たず、人間の夢の中で様々な干渉を行ってくる。
彼女の言葉に騙され、利用され、命を落としたり知らず知らずに魔族の手助けをしていた者は数多い。
そんな夢魔が、今こうしてヴァージニアの夢の中にやってきたと言うのだ。
「どういうつもりなのッ……」
ほとんど無意識のうちに、ヴァージニアは腰に提げた拳銃に手を伸ばしていた。
少しでも怪しげな動きをしたら、即座に銃撃が行えるはずだ。
しかし、ベアトリーチェはそんなことを特に気にもせずに答えてくる。
「どういうつもり? くすくす。決まっているじゃないの。
あらゆる障害の中でもっとも厄介な存在……それを取り除くことは、何より優先されるべきこと」
「障害、って……わたしのこと?」
「ご名答、ね」
呟いて、またベアトリーチェはくすくすと笑う。
「貴方程に厄介な障害物はいないわ。利用価値はともあれ、野放しにしておくには危険すぎる」
「……戦いに来た、って言いたいの?」
「そうね……似たようなものかしら?」
「……だったらッ!」
瞬時に、ヴァージニアは二挺の拳銃を眼前の夢魔に向けて撃ち放った。
「……くすくす」
弾丸は僅かに夢魔を逸れて、そのさらりと流れる髪を二、三本散らせただけ。
「外したッ!?」
こんな至近距離で外すなど、考えられない話ではある。
驚くヴァージニアに、ベアトリーチェは相変わらずくすくすと笑いかける。
「理解していないようね。夢の中の世界はわたしの領域。ここでなら、わたしはどんなことだって出来
るの。
だから、貴方如きがわたしに抗うなんて……出来はしないのよ」
言いながら夢魔は手を伸ばす。その指先がヴァージニアの頬に触れた途端、
「なッ……」
がくんと足元が崩れ、少女はその場に崩れ落ちた。
その瞼は閉じられて、口からは小さくすうすうと息が漏れている。
「……夢の中での眠り、というのも奇妙な話ではあるのだけど……ね。まあ、いいわ。
さて……素敵な夢の始まりよ、ヴァージニア……くすくすくす……」
足元のヴァージニアを見下ろすと、ベアトリーチェはゆっくりと腕を振った。
和やかな庭はたちまち消えて失せ、代わりに辺りには淀んだ空と茨に覆われた古めかしい城が現れる。
夢魔の居城、ナイトメアキャッスル。電界25次元――すなわち人の夢の中に存在する城だ。
他者の夢の中ではなく、完全にベアトリーチェ自身の世界とも言える。
城の扉が音もなく開かれるとともに、夢魔は眠り込んでいるヴァージニアを連れて城内へと入っていっ
た。
ヴァージニアが覚醒して、まず目についたのは前方の玉座に腰掛けているベアトリーチェだった。
玉座の大きさと夢魔の身体の大きさはアンバランスで、どうにも違和感は強いのだが――ともあれ。
目が覚めたと言っても、夢から覚めた訳ではないようである。
「お目覚めかしら? 結構長く眠っていたみたいね。時間は限られているのに、呑気なこと」
その言葉にむっと来て、ヴァージニアはベアトリーチェに近づこうと試みる。
が、ここに来て身体の自由が利かないことに気がついた。
手や足を動かそうとしても、何かに縛られているように動かせないのだ。
いや、改めて自分の身体を見てみると――そこには、無数の植物の根のようなものがまとわりついてい
る。
根といっても随分太いものだ。その上、しゅるしゅると蠢いて服の上から身体を縛り付けてさえいるの
である。
「こ、これはッ……!?」
「……わたしの望むファルガイア……ネガ・ファルガイアの、サンプルと言ったところかしら?
世界そのものの雛形……いわばジェット・エンデューロと似たようなもの、とでも言うべきかしらね」
身体を縛る根がどこから来ているのかを見ると、なんとも名状しがたい樹のようなものが見える。
不気味に明滅を繰り返す青い球体を中心に据えた、おぞましい植物だ。
「こ、こんなのがジェットと同じって……そんなはずないじゃないッ!
って、そういう問題でもなくって……な、何なの、これッ!?」
「だからネガ・ファルガイアだと……まあ、貴方に説明しても理解してもらえるとは思わないわ。
どうせ、覚えたところで朝になれば儚く消えていくのが夢なのだから。
……お喋りはこの辺にしておきましょう。朝までには……もう時間がないわ」
言いながら、ベアトリーチェは右手を上げる。
その指先が虚空に絵でも描くかのように滑ると、ヴァージニアを縛り付けている根の一つが呼応して動
き始めた。
「まずは、そうね……オリコフラガムス。その邪魔なものを剥ぎ取りなさい」
根の一つは、先端をヴァージニアの顔の前へと持っていくと、ぶるぶると蠢動する。
気色の悪いその光景に、思わず目を背ける、と。
ほとんど同時に、根の先端からぶしゃっと何かが吐き出された。
どろどろとした液体が身体に振り掛けられ、しかも大量にまとわりついてくる。
「な、何をッ……」
肌にまとわりついてくるその液体は、服の中にも入り込んで実に気持ちが悪い。
ところが、液体はただ粘つくだけでもなかった。
気持ち悪さを堪えて目を開いたヴァージニアは、液体のかかった衣服がどろどろと溶けているのを見て
愕然とする。
「こ、これッ……!」
「『ステュークスの澱み』……ネガ・ファルガイアの生み出す世界の構成要素の一つ。
細かなことは……説明しても無意味だからしないけれど、効果の程はわかってもらえたでしょう?」
ベアトリーチェは楽しそうに薄く笑いながら、そんなことを言ってくる。
「こ、こんなことしてッ……!」
抵抗しようにも、絡みついた根は手足の動きを完全に封じているのだ。
華奢という訳ではないが、女性であるヴァージニアには絡みつく根を引きちぎる力はない。
守護獣の力を借りられればまだ可能性はあったのだろうけれど、生憎ここは夢の中。
頼みの綱のアームも使えなければ、今のヴァージニアは無力な少女となる。
「まともに戦ったら勝てないからってこんなことッ……正々堂々と勝負するつもりはないのッ!?」
「……だってわたしは夢魔だもの。そんな効率の悪いことをしてどうなるの」
少し気分を害したように返してから、ベアトリーチェは玉座にもたれ掛かった。
目を閉じて一息つくと、余裕を取り戻してヴァージニアを見下ろす。
根に絡まれ、その上ステュークスの澱みを受けて――なんとも無残な格好である。
「くッ……!」
そうしているうちに、残った衣服もぼろぼろと崩れ落ちてきた。
まだどちらかと言えば無事な部分が多いものの、下着まで溶かされている箇所も出ている。
それでもヴァージニアは必死でもがいているが、やはり絡みついた根はしっかりと彼女を抑えて離さな
い。
「そろそろ……いいかしらね。オリコフラガムス」
液体をヴァージニアに吐き出していた根が、その言葉によって動きを変える。
そのままもぞもぞと捕らえた獲物に近づくと、胸元に先端を伸ばして行く。
「ちょ、ちょ、ちょっとッ……ま、まさか、貴方ッ……」
「……くすくす」
不気味に近づく根を見るうちに、ヴァージニアもその意味を悟って、もがく手が止まる。
自由を奪われ、しかも服を溶かされ、そして今目の前の根がなにやら自分に近づいてきている――
「そう。素敵な舞踏の始まりよ」
ベアトリーチェのその言葉に、ヴァージニアはひどく冷たい汗を流した。
根の一本――ベアトリーチェがオリコフラガムスと呼ぶものは、しゅるしゅるとヴァージニアに近づい
てくる。
「ちょッ……べ、ベアトリーチェッ!? こんなこと――おかしいと思わないのッ!?」
「おかしい?」
近づく根を直前で止めて、ベアトリーチェは面白そうに身を乗り出した。
「おかしいって、どういうことかな? くすくす。
これから貴方をネガ・ファルガイアが蹂躙することの――どのあたりがおかしいのかしら」
「蹂躙、ってッ……やっぱり、そういうことなんだ……」
ぶるっと身を震わせる。
話だけには聞いたこともあった。女の渡り鳥などは、ろくでもない目に遭うことも多いとか。
今までは運良くそのような目に遭ったことは無いとは言え――覚悟だけは決めた、つもりでいた。
それなのに、こうして実際にそんな事態になってみると震えが止まらなくなってくる。
(相手がこんなバケモノってのもあるんだろうけど……予測してなかったな、こんなの……)
目の前でゆらゆらと揺れている根。それに、自分を縛り付けている根。
そして夢魔の言葉によれば、これからそれらが自分を蹂躙すると――
「やッ……嫌よ、そんなのッ! ベアトリーチェッ、お願いだからこういうのだけはッ――」
「……お願いされてもね。引き換えに貴方は何をしてくれるの?」
深く玉座に座りなおすと、頬杖をついて夢魔は問いかけてきた。
ごくんと唾を呑んで、ヴァージニアは言葉を選ぶ。
「そ、そのッ……そう……えっと――じゃあ、人に迷惑をかけない範囲で創星の手伝いとか……」
「具体的には?」
「じゃ、じゃあ……わたしの想い出をわけてあげるから、それで――」
ふん、とベアトリーチェは鼻で笑う。
「まったく足りないわね。その、たかだか十数年の想い出如きでは」
「そ、そう言われてもッ……」
「結論から言わせてもらえば――」
止まっていたオリコフラガムスが、またヴァージニアに近づき始める。
「……妥協点なんて最初からないわ。お気の毒様。それじゃ、予定通り踊ってもらうから――」
一気に伸びると、ヴァージニアの右の乳房めがけて根は絡みついた。
「くッ……うッ……」
ぎゅうっと、年齢相応の膨らみが締め付けられる。
快感などあるはずもなく、痛みだけしか感じられない。
「痛ッ……」
小さく弱音を吐いてしまって、少し悔しそうにヴァージニアは顔を上げる。
視線の先には、やはり薄く笑いながらこちらを見下ろすベアトリーチェがある。
「こんなので……わたしをどうにか出来ると思わないでッ」
「当たり前でしょう。この程度で終わるはずもないのに」
くす、と夢魔が笑う。それと共に、胸を締め付けるオリコフラガムスの力は一層強まった。
「い、痛ッ……くッ」
「くすくす……」
苦痛を夢魔に見せるのがどうにも悔しくて、ヴァージニアはぎゅっと歯を食いしばる。
敏感な場所だけに、こうして痛めつけられるのは想像以上に辛いものがある。
それでもどうにか耐えていると。不意に締め付けが弱まった。
「……え?」
「そうやって耐えているのも辛いでしょう。次は……」
乳房に絡みつく根の先端が、くいっと曲がってまたステュークスの澱みを吐き出す。
特に胸の部分に残っている衣服目掛けて、黒い澱みはどろどろと振りかかっていく。
「あ……やだッ……」
下着も溶かされて、柔らかな乳房と先端の赤い突起があらわになってしまう。
「別に、恥ずかしがらなくてもいいでしょうに。隠すほどのものでもないのだから」
「そ、そんな言い方ッ……ひぅッ!?」
夢魔の嘲る言葉に反論しようとした途端、根の先端があらわになった乳首に絡みついてきた。
ざらざらとした感触が、一番敏感な場所に伝わってくる。
「ふぁ……」
今までの力任せのような乳房への攻撃と違って、もどかしい刺激。
オリコフラガムスは実に繊細に乳首を触り、ぴりぴりとしたものが身体に走る。
「……んッ」
こんなもので感じるはずはない。ただ、味わったことのない刺激に妙な気持ちになってしまうのは確か
だ。
それでも何度も根が伝えてくる刺激を味わううちに、少しずつ乳首が膨れてきてしまう。
刺激に対する自然な反応の一種とは言っても、余計に敏感になって息も荒くなる。
「ぁ……」
「そろそろ気持ちよくなってきたかしら?」
「うッ……そ、そんなのッ、ある訳ないじゃないッ」
「へえ。なら、こちらももっと気を入れないとね――マトリカリア」
見透かしたようなベアトリーチェの言葉と共に、身体に絡み付いていた根がもう一本胸に寄ってくる。
「さあ。この小娘を、ちゃんと気持ちよくしてあげるのよ」
そうして、空いていた左の乳房にその根は絡みついてくる。
ぐるぐると巻きつくと、オリコフラガムスとは違ってやわやわとした力でゆっくりと締め上げてきた。
「んぁッ」
絡みつく根は、両方ともに繊毛が生えている。
微妙に心地よい肌触りなため、優しく揉まれると蹂躙という言葉も忘れかけてしまう。
「あッ……ん、や、やめッ……」
少しだけ声が漏れてしまって、ヴァージニアはくっと唇を噛む。
こんなバケモノに嬲られて、気持ちよくなるはずがない。気持ちよくなっちゃ――いけない。
それなのに、オリコフラガムスによって嬲られる右の乳首はぴんと起ち、マトリカリアに揉まれている
左の乳房は身体を痺れさせてしまう。
認めたくない快感は、じわじわと身体に染み込まされてくる。
「んッ……」
必死で歯を食いしばって声を堪えてはいるが、二本の根がもたらす快感は否応なしにヴァージニアを苛
む。
「それにしてもニンゲンというのは単純なイキモノよね。
貴方は……ネガ・ファルガイアのような、まるでニンゲンと程遠い存在にこうして撫でられていると
いうのに。
どうして、そんなに吐息が熱いのかしら? くすくす……」
「えッ……ふぁ、ん……そ、それはッ……くッ」
ほとんど強制的にこんな状況に陥れられて、感じさせられる。
おまけにベアトリーチェはいちいちと茶々を入れて、余計にヴァージニアは屈辱を噛み締めることとな
ってしまう。
「もうッ……やめてッ……ん、くッ……」
「こんなことで音を上げてどうするの? まだまだ、先は長いというのに」
散々胸をいたぶられて、大分ヴァージニアの気力も弱ってきたあたりで。
ベアトリーチェは、また右手をさっと上げた。
するとまた別の根がぐるりと蠢き、しゅるしゅると動いて巧みにヴァージニアの下半身にまとわりつく。
「こ、今度は何なのッ……?」
怯えたように呟いたヴァージニアに対し、夢魔はくすりと笑うだけで答えない。
逆に下半身にまとわりついた根は、スカートを無理やり剥がそうとする。
「や、やめてッ」
「と言って――やめるようなわたしだと思っているの?」
「うッ……で、でもッ」
「貴方も往生際が悪いわね。クルクマー、遠慮など……始めからしていないとしてもいらないわ」
夢魔に名前を呼ばれた根は、それと同時に強引にスカートを引きちぎる。
更に、その下の下着も無理やり剥がされると、ヴァージニアの秘所があらわにされた。
そこには――それなりの繁みと、それから僅かに潤いをたたえた肉の入り口がある。
「さて……どんな具合かしらね?」
下着の残骸をかなぐり捨てたクルクマーは、そのままヴァージニアの秘所の入り口付近を這い回る。
「あッ……そ、そこはッ」
「へえ。濡れているのね、それなりには。……ちゃんと感じているのね? ヴァージニア」
「か、感じてなんか――いやぁッ!」
下に意識が集中していたが、まだ両方の乳房にはオリコフラガムスとマトリカリアが絡み付いているの
だ。
相変わらず、乳首のあたりをオリコフラガムスの先端が撫ぜ、乳房をやわやわとマトリカリアが締め上
げる。
もう隠しようがないくらいに――ヴァージニアは感じさせられている。
「や、やあッ……やだッ、ひぁッ」
オリコフラガムスは、自らが分泌した澱みでとろりと濡れていた。
ちろちろと、まるで舌で舐められているかのような感触で乳首を嬲られると――また、余計に快感が生
まれる。
「はぁッ……も、もうッ……んんッ」
そうやって、胸に意識を集中させらていたヴァージニアだったが。下の方では、クルクマーが。
不意をついて、露出していたクリトリスにきゅっと絡みつき――わずかに力を加えた。
「あ、ああああッ!?」
びくんと全身が震える。
更に、クルクマーはつぷりとヴァージニアの中に入ってきた。
「や、やめッ……ひぅッ!」
一気に奥まで侵入してくることはない、のだが。
根の先端――細くなっているそこが、あちこち動いて入り口の肉壁を刺激してくる。
「な、中でそんなッ……やああッ!」
「くすくす……困ったものね、そんなに気持ち良さそうに」
「気持ちよくなんてッ……ふあああッ!?」
段々と、ベアトリーチェの煽る言葉も耳に届かなくなってくる。
敏感な場所を三ヶ所同時に責められて、経験などないはずのヴァージニアも翻弄されてしまう。
ヴァギナの入り口をかき回すクルクマーも、段々と量を多くした愛液によってぴちゃぴちゃと音を立て
始めた。
「ふ、あ、うぁッ……ん……!」
今まで感じたことのない何かが、身体を激しく駆け巡る。
くちゅくちゅと音を立てながら入り口を這い回る根にも、もう気持ち悪さはほとんど感じられなくなっ
てきた。
このままでは、確実に快感を植えつけられてしまう――そう思って、ヴァージニアは必死で耐えようと
する。けれど。
「ふッ……あ、ああッ!」
のたうつ根が、時折クリトリスに触れるため、そうやって受ける快感には抗うことも覚束ない。
やがてヴァージニアから滴る液の量が、城の床を汚した頃に。
ずっと薄く笑いながらそれを見ていたベアトリーチェは、すっと左手を振った。
それと共に、ヴァージニアを嬲っていた三本の根がぴたりと止まる。
「はぁ……あ……?」
甘い責め苦がにわかに止まって、ようやくヴァージニアは顔を上げる。
瞳もすっかり潤んで、強がろうにも強がれない有様だ。
「ど、どうして……?」
「続けて欲しかったの?」
「それは――そ、そんな訳、な、ないじゃないッ……」
「ふうん。……くすくす。ま……いいわ。ところで、ヴァージニア――」
頬杖をついたまま、夢魔はおどけた調子で言う。
「一つ、選択をしてもらいたいんだけどね」
「せ、選択……?」
「ええ。貴方、痛いのと気持ちいいのではどちらが好き?」
「痛い……気持ち、いい? そんなの――」
気持ちいい方に決まってる。そう答えようとして、ふっとヴァージニアは正気を戻した。
この状況下では、そんなことを答えては――まず間違いなく、おぞましいことになりかねない。
「ど、どっちも……嫌」
「それは駄目よ。どちらかを選んでくれないと。どちらの方が、好みなの?」
抵抗できない悔しさに、ヴァージニアはくっと唇を噛む。
それでも、なんとかここで抵抗しようと――咄嗟に言葉が口から漏れる。
「だ、だったら……痛い方よッ」
「……へえ? 意外ね。ニンゲンというのは、すぐに気持ちのよいものに流れると思ったのだけれど」
「どうせ、気持ちいいって言ったら……またわたしにあんなことするつもりなんでしょッ。だったら…
…」
痛みならば、まだ耐えていられる。ベアトリーチェに逆らおうとする気持ちも残る。
でも気持ちいいのは――駄目だ。快感に流されてしまっては、本当にどうしようもなくなってしまう。
「ふうん。……ま、どちらにしてもすぐに同じ結果になるんだけどね。いいわ……ヴァンダ」
もう一本、しゅるしゅると根が伸びてきた。
クルクマーと同じあたりに、その根は動いてくる。
「素直に気持ちいい方って答えていれば、余計なことを経験する必要もないのに。
……まあ、ニンゲンにとって初めてというのは貴重だそうだから……記念になって、丁度いいのかも
ね」
「え? 初めて、って……ちょ、ちょっとッ」
「さ、クルクマー。入り口を開いてあげなさい」
ちゅぷ、と小さく水音を立てて、クルクマーが動く。
そのままヴァージニアのヴァギナを広げると、また動きを止めた。
「ふぅッ……ん、ま、まさかッ……」
「それじゃあ……一気に貫いてあげなさい」
ベアトリーチェの嘲るような言葉と共に。
ヴァンダと呼ばれた根は、ゆっくりとヴァージニアの秘所の前に位置を定めると――
しゅるッ……びちゅッ。
溢れているそこ目掛けて、一気に潜り込んでいった。
「あッ……うあああッ!? い、痛ッ……!」
「夢の中では痛くない、とか言うけど。あれも所詮は迷信よね。痛い夢だってあるわ。例えば……ここ
にね」
面白そうにベアトリーチェは呟く。
一方のヴァージニアは――
「う、うあ、ああッ! やだ、入ってこないでッ……うああああ!」
ずるずるとヴァンダはヴァージニアの膣に潜り込んでいく。
先端は細いが、潜り込むにつれてその太さは増していく。
――すぐに、根とヴァージニアの繋がっている部分から赤いものが流れ始めた。
「う、あ、あああッ……お願い、やめッ……ああぁッ!?」
「安心なさい。これはあくまで夢だから――現実には、まだ貴方は処女のはず。
とはいえ……事実上、貴方の初めてはこうしてネガ・ファルガイアに奪われたということね。くすく
す……」
「そ、そんなッ……い、痛ぁッ……や、やだ、こんなのッ!」
ヴァンダの先端が一番奥にたどり着く頃には、もう限界という程にヴァージニアの膣内は広げられてい
た。
吐き気のするような圧迫感と、途方もない痛みが少女を貫く。
「あ、ぃ、あ、ああッ……や、やだ、やだぁッ……もうッ……」
「だから、気持ちいい方って答えていればよかったのよ。痛みを失くすことだって、わたしには容易い
ことなんだから。
どう? 今からでも、痛みを消してあげようか?」
「う、あッ……べ、ベアトリーチェッ……」
夢魔の言葉に、辛うじて意識を保つ。
下手に魔獣に襲われるよりも辛い痛み――だが、これを味わっている今ならば、ベアトリーチェに抗う
気持ちも残っている。
処女を奪われたという屈辱、辛さだって、転換すれば夢魔に抗する為の貴重なエネルギーになるだろう。
「い、いらないッ……ぜ、絶対ッ……貴方になんか、負けないんだからッ……!」
「強情ね、相変わらず。でも……くすくす。サービスしてあげるわ、今回は」
「えッ……」
膣内を埋め尽くす根のおぞましさと、痛みに身体を硬直させていたヴァージニアは。
夢魔が、軽く指を鳴らした瞬間――
「えッ……え、あ、ええッ!?」
まるで今までが夢のように。
一切の痛みが、消え去っている――
「な、なんでッ……ベアトリーチェッ……」
「わたしは慈悲深いのよ? 何と言っても、聖女だものね。くすくす……
どう? 痛みはすっかり引いたでしょう?」
「それは――」
事実その通りなのだ。
膣内を広げるような、ヴァンダの太い感触は変わらないにしても――
少なくとも、痛みだけは一切ない。
「こ、こんなことしたってッ……」
「どうにもならない? さて……どうかしら」
もう一度、ベアトリーチェは指を鳴らす。
すると、今まで止まっていたオリコフラガムス、マトリカリアがまた胸を刺激し始めた。
痛みで萎縮していた乳首も、細い根の先端で触られるとぴくりと反応してしまう。
「ぁッ……」
「それから……そうね、こういうのはどう?」
ヴァンダを、その白い指で指し示す。
と、中に入るだけ入って止まっていたヴァンダは、しゅるしゅると膣内で蠢き始めた。
「く、あッ……あぁッ!?」
ずるずると中で動く根は、やはりみっしりと生えた繊毛のせいで微妙な刺激をヴァージニアに伝える。
更に根は付け根に向かうに従って太くなっていて、奥はともかく途中はじゅぶじゅぶと拡張するほどだ。
「うあッ……ああああッ!」
クルクマーの与えた刺激よりも、遥かに強く激しい快感。
中でのた打ち回るだけで、恐ろしいほどの快感が身体を駆け巡る。
「やだ、やだぁッ……こ、こんなのッ……あ、うあ、あッ!」
また、とろとろと愛液が流れ出す。
一度痛みを味合わされた分、身体は快感には貪欲になってしまっているようだ。
ずりゅずりゅと蠢く根を、膣肉はたまらなく感じてしまう。
「あ、ひッ……も、許しッ……んんああッ……」
涙さえ流して懇願しても――やはり、夢魔は笑ったまま。
しかしその涙とて、悔しさから流れたものとは言い切れないようだ。
身体を蹂躙するヴァンダの感触が、無理やりにでも引きずり出した快感の涙でもある。
こんな根を身体に挿れられることがそもそもおぞましいはずなのに――快感は理性すら溶かそうとする。
「もッ……もう、駄目ッ……おかしく、なっちゃッ……」
「安心するといいわ。……こんなバケモノに嬲られて感じている貴方はね。
もう、とっくにおかしいのよ。……くすくすくす」
「そんなッ――」
ずぶ、と。ヴァージニアの言葉を遮るように、ヴァンダは奥深く根を伸ばした。
そしてそれが、渡り鳥の少女に最悪の快感をもたらす。
「――えッ……あッ……あああああああッ!」
ぴくぴくと、全身を震わせて――
膣肉は、ぎゅうぎゅうに根を食い締めて――
だらだらと愛液を垂れ流したまま、ヴァージニアは達した。
「う……あッ……」
合わせたように、ヴァンダやオリコフラガムスの動きも止まる。
認めたくない快感を、強制的に引き出されて。
ようやく息をついたヴァージニアは――今度は、悲しさと悔しさの涙をぽろぽろと零した。
「こんなッ……こんなのッ……最低のやり方……じゃないッ……」
「最低、ね」
なんとか顔を上げて、ベアトリーチェをきっと睨む。
「絶対ッ……絶対に、貴方のたくらみなんか打ち砕いてみせるッ……
こんなことされたって、わたしは貴方に負けないからッ」
「ふうん。まあせいぜい頑張りなさいな」
「くッ……」
「それに。そうやって強がるのはいいけど……」
ゆっくりと、相変わらず根に捕らえられているヴァージニアの全身を見渡して――ベアトリーチェは笑
う。
「わたしを倒す。結構なこと。でもそれ以前に、どうやってこの世界から脱出するの?」
「えッ……」
「わたしが貴方を解放するとでも思った? 甘いわね、随分と。
だいたい、これで終わりだなんて――誰が言ったの?」
「終わりじゃ、ない……ッ!?」
「当たり前でしょう。一度捕らえた獲物をそんなにあっさりと解放する訳がない。
この舞踏はね……日が昇り、夢が消えてしまうその時まで続くの」
「なッ……そんなのッ……」
言われて、ヴァージニアは力なく俯いた。
「そんなのって……嫌なのにッ……」
「嫌だと言って問題が解決するなら、魔族なんてこの世にいないわ。
……もう、お喋りはいいでしょう? では、続きといきましょうか」
そうして、夢魔の言葉どおりに――膣内の根は、ぐちっぐちっと蠢き始めた。
「やッ……もうッ……い、嫌ぁぁぁッ!」
また増え始める快感に、ヴァージニアは悲鳴を漏らす。けれど、それを聞く夢魔は嘲笑うだけ。
それどころか、また新しい悪戯を思いついた顔で、くすりと微笑む。
「同じような快感では飽きてしまう頃よね。それじゃあ、もう一つ――貴方にプレゼントしてあげる」
「う、あッ……これ以上ッ……いらな、ぃああッ!」
ヴァンダに弄ばれる膣肉のせいで、言葉にもならない。
しかし夢魔は構わず、また軽く指を鳴らした。
すると――しゅるしゅると、入り口の辺りで止まっていたクルクマーがまた位置を変える。
ヴァージニアの背後に回り、やはり晒されている尻の窄みにその先端を向けた。
「あ、う、あぁッ……な、何をッ……」
「こちらもやっぱり……痛みは無くしてあげるから。では、どうぞ」
遠慮なしに、愛液で濡れていることも手伝って、クルクマーはずぶずぶと腸の中へと潜り込んでいく。
「そっち、までッ……や、やああああッ!?」
後ろの中まで貫かれたこと。それを感じ取り、ヴァージニアは絶望の中に落とされる。
だと言うのに、自分の胎内で暴れる根は落ちる前に高みへと持ち上げようとするのだ。
「やだ、やッ……なんで、こんなッ……ひ、やぁッ……やだぁッ」
膣壁はヴァンダを食い締めている。
その上、本来排泄器官のはずの場所にまで、同じような根がずぶりずぶりと強引に分け入ってきた。
「はッ……うぁッ……お、お腹がッ……壊れちゃッ……」
「壊れないわ。所詮これは夢でしかないんだもの。安心して、その快感を味わいなさいな」
異様な圧迫感が身体を貫く。
身体の中身が、全て口から出て行ってしまうような錯覚に襲われるほど。
「あ、は、ひッ……やめ、やめてッ……お腹がッ……お腹がぁッ……もう、やだ、やだよッ……」
ぽろぽろと、涙は止まらない。口もだらしなく開かれて、唾液が零れ落ちる。
しかしそれ以上に、秘所から漏らされる愛液も多く――快感だけしか、ヴァージニアには与えられてい
ないのだ。
途方もない悔しさと、快感に溺れさせられる自分が悲しくて――だけれど、ヴァージニアはもうほとん
ど考える余裕もない。
「なんで、こんなにッ……やだ、や、なのにッ……」
二本の根が激しく胎内で暴れている。
まるで中で繋がっているかのように胎内を蹂躙する根の太さが、ヴァージニアから呼吸の余地さえ奪っ
ていく。
「はぁ、だ、駄目、駄目ッ……」
じゅぶじゅぶと、身体を貫く根は暴れまわる。
膣壁と、腸の中が等しく悶えさせられる感触で、少女はもうどうしようもなく喘ぐしかない。
そして、再び奥の奥まで根に犯された、その時に――
「駄目、駄目、駄目ぇッ……ああああッ!」
考えたくもない絶頂が、ヴァージニアを包み込んだ。
「や……もう、許して……」
「わたしの邪魔をしたのが運のつきよ。ジークフリードを屠るだけにしておけばよかったのに。
でももう遅いわ。何度もわたしの邪魔をした貴方に――情けなんてかける優しさは、魔族にはないわ。
くすくす……」
「そんな……の……」
声もなく俯いてしまったヴァージニア。だが。
「そして、まだ踊りは終わらない――」
「え……ひぅッ!?」
唐突に、左胸を締め付けていたマトリカリアが、鳥肌が立つほどに冷たくなった。
「つ、冷たッ……うぁッ!?」
今度は尻に潜り込んでいるクルクマーだ。
ぴりぴりと、痺れるような感触が腸内を駆け巡る。
「『フリスムルスの永久氷壁』。『アポカリプスの霹靂』。
いずれも、ネガ・ファルガイアによる世界の構成要素……そして」
膣内に入っていたヴァンダが、まるで――
「あ、熱ッ……中で、熱くなってッ……」
燃えるように熱くなり、膣内で駆け巡る。
「『ツァハノアイの太陽風』。……いかがかしら?」
乳房、というより上半身を冷やす冷気と、膣内で燃えるように熱い根の温度の違いが身体を苛む。
気持ちいいとか、そういう感触でもないはずなのに。
冷たさと熱さのコントラストが、ぴくぴくと膣肉を敏感にさせてくる。
「ひぅッ……な、こんなの、やめッ……やだ、中が熱くてッ……やあぁッ!」
すぐに、またヴァンダは動きを再開した。
熱いものが、身体の中で激しく動き回る。
「燃えちゃッ……ひあ、あ、あああッ!」
更に、クルクマーもまた動きはじめる。
こちらは、時折ぴりっとした電撃を発するようになった。
「どう、ヴァージニア。新しい刺激は?」
「やめッ……くあ、あッ!」
奇怪な快感が全身を襲う。
乳房を冷気によって冷やされ、しかも嬲られて。
膣内では、異様な熱さが刺激を高める。
「ふぁッ……あああああッ!」
驚くほど呆気なく、ヴァージニアは達した。
ただでさえ前と後ろを責め立てられて、敏感にもなりすぎているというのに。
それに加えての熱さや冷気、電気には、もう理性も何も歯止めが効かないのだ。
「ああ……うあ、あ、ひあああ……」
ずちゅ、ずちゅっとヴァンダとクルクマーによる蹂躙は続いている。
ほとんど力無く、ぐったりとしたヴァージニアだが、快感だけはまだ残っているらしい。
「ひッ……あッ……」
時折びくんと震えて、きゅうっとヴァンダを締め付けている。
絶頂の連続で、ヴァージニアの身体から力が完全に抜けた。
快感の大きさに、もう抗う気持ちさえも押し流されてしまったのだ。
突然に流されるクルクマーの電撃を浴びた時にはぴくんと震えるが、それも絶頂の一助にすぎない。
「あ……ああ、あ……もッ……もうッ……や、やめッ……うぁッ……」
言葉さえも弱弱しく。ヴァージニアはほとんど考えることさえ出来ない。
それでも、
ずりゅッ。
「あッ……や、やだッ……うぁッ!」
時折の絶頂には、ぴくぴくと反応を返す。
(気持ちい……気持ち、いい……あ、は……)
ほとんど、思考も壊れかけて、ヴァージニアはぼんやりとずちゅずちゅと身体を蠢く根を見つめる。
相変わらずヴァンダもクルクマーも勢いよくはいずり、たまらない快感が身体を襲っている。
「は、あッ……」
そうして、もう何もかもが消えかけた、その時に――
しゅるッ……と、一瞬の音と共に、オリコフラガムスも、マトリカリアも、クルクマーも、ヴァンダも。
全ての根が、身体から離れて止まった。
「……あ……え?」
消えかけていたヴァージニアの思考が戻る。
「な、何、を……」
「くすくす……」
やはり、ベアトリーチェの指図のようだが。
何も言わずに夢魔はくすりと笑うと、右手でまた絵を描くような仕草をする。
すると、止まっていた四本の根が一つに絡み合い――あたかも一本になったように太くまとまる。
「それは……?」
「……ネガ・ファルガイアの四つの根を束ねたもの。まあ、それは見た目で分かるだろうけど。
これはね……一つに束ねられたことで、ネガ・ファルガイアそのものの力を使うことが出来るの」
「え……?」
「……ここからが本題よ。この束ねた根の先からはね……ネガ・ファルガイアの想い出を放射できるわ。
その想い出は今のファルガイアとは相反するもの……
貴方の胎内に、その想い出を植えつけて……貴方の心を、わたしのファルガイアで塗りつぶしてあげ
る。そう――
貴方は、『貴方ではない貴方』へと作りかえられることになるの」
何度もイかされて、朦朧としていたヴァージニアもその言葉には顔を上げる。
「な、そんな、の……」
「くすくす……では。受け取りなさい」
ベアトリーチェが軽く指を鳴らす。瞬間――
束ねられた四本の根は、ずぶずぶとヴァージニアの秘所を割って侵入を開始した。
「う、あッ……ふ、太ッ……くあッ!?」
今まで自分の中を暴れていた根よりも、単純に考えて四倍も太い。
実際は収縮しているのかそれ程の太さではないにしろ、今までとは比べ物にならない圧迫感がある。
その上、オリコフラガムスは澱みの液体を吐き出し、マトリカリアは冷気で膣内を脅かし。
クルクマーは電気による刺激を与え、ヴァンダの熱い感触はそのままで――
一気に入ってきたそれらは、信じられない刺激を与えてきてしまう。
「や、やだッ、やだッ……んああッ!」
「いい顔ね。今までで一番素敵よ」
相変わらず玉座に腰掛けたまま、ベアトリーチェは愉快そうに笑う。
根の束を受け入れたヴァージニアの下腹部は、膨らんで見えるほどに痛々しいのだが。
「あ、ひッ……お、お願い、やめてッ……裂けちゃ……あああッ!?」
「ここは夢の中。悪夢で死ぬニンゲンはいないでしょう? だったら……素直に愉しんだらどう?」
必死で懇願するヴァージニアだが、夢魔は鼻で笑って意に介さない。
事実、四本の根が突き刺さったヴァージニアの入り口からはとろとろとしたものが流れ出しているのだ。
それはステュークスの澱みばかりではなく――むしろ澱みの黒い粘液も、ほとんど薄れて透明になって
いるほど。
溢れ出す愛液は、ヴァージニアの言葉を容易く否定してしまっている。
「こんなッ……こんなのッ……」
度重なる絶頂によって麻痺しかけていたはずの感覚は、四本の根が入ってきた時点で完全に蘇っていた。
もう望んでいないはずの快感――夢魔の与える強制的なそれは、容易くヴァージニアを押し上げる。
「やッ……あ、あああッ!!」
絶頂を与えられ、身体を弛緩させようとしたヴァージニアは、しかしすぐに意識を呼び起こさせられる。
膣内で暴れるものは、人の生殖器のように精を吐き出した訳ではない。
萎えたりもせずに――変わらない動きで、震えるヴァージニアの膣壁を責め立ててくれるのだ。
「だ、駄目、そんなすぐになんてッ……ふああああッ!?」
他愛もなく、ヴァージニアは達した。
それでもなお、根の束はずっ、ずっと中で暴れる。
しばらく、その光景を薄ら笑いと共に眺めていたベアトリーチェであったが。
「……と、時間ね。もうそろそろ、朝になるみたい。
自然に目が覚めてしまえば、流石にわたしも手出しは出来なくなってしまう……
だから、仕上げをしないとね」
「ひあ、あッ……う、ぁ……」
ようやく、夢魔は玉座から立ち上がった。
翻弄されるヴァージニアにゆっくりと近づいていくと、突き刺さっている根にそっと指を添える。
「わたしの世界の想い出……まだ存在していない世界だけれど……
とりあえず、小娘一人をパラダイム汚染するには十分な量。
存分に――味わうといいわ」
軽く夢魔は力を込める。
びくんと、小さなベアトリーチェの手からもたらされたとは思えないくらいに激しく根は揺れると。
「ぅッ……くああああッ!」
先端から、何かおぞましいものが、ヴァージニアの胎内にびゅるるるるッ……と入っていく。
液体でもない、気体でもない――しかし何か、まとわりつくようなもの。
それは子宮口どころか、更に身体の内部にまで染み込んで、全体を犯すようにも思える。
「な、なッ……や、ふあああッ!?」
「……くすくすくす」
細胞の一つ一つまでもが犯されていく。そんな奇怪な感触に、ただヴァージニアは呻くだけだった。
やがて――ごぷ、と根が引きずり出される。同時に腕や足を拘束していた他の根も離れた。
どろどろとした愛液、更にステュークスの澱みが床に零れる。
薔薇の模様の絨毯も、そのせいで汚れるが――城主たる夢魔はさして気にも留めない。
「さて、これで今日はお終いよ。楽しんでいただけたかしら?」
「う……ぁ……」
「……たっぷりと愉しんでもらえたようね。わたしも嬉しいわ。くすくす……
全ては、貴方の目覚めと共に消えていくから。せいぜい安心するといい。
だけどね……今、貴方に刻み込まれた、その想い出だけは消えないの。
今日一日ではまだ、少し汚染できただけだけど……これから、毎日貴方を汚してあげる。
一体何日持つかしらね? くすくす……」
耳元でそう囁くと、朦朧としていたヴァージニアもくっと顔を歪めた。
「じゃあ、また明日……」
ベアトリーチェはそっとヴァージニアの頬を撫でる。
それと同時に、少女の身体はすっと霧のようになって消えていった。
「……うう……なんか、凄い気持ち悪い……」
ベッドの中で、ヴァージニアのまぶたがゆっくりと開く。
昨夜は暖かいミルクを飲んだ上に、暖かくして眠ったのだが。
「うわ、汗びっしょり……」
下着どころか、パジャマまで濡れかかっている始末だ。
いや、特に下着は。
「うッ……」
少し触れてみると、ぐっしょりと濡れている。
「……エッチな夢、見ちゃった……かな……」
どうも複雑な気分になる。ともかく、頭を振ってベッドから起き上がった。
「はあ……とりあえず、朝ごはん食べる前に着替えておかないと……」
こういう姿を仲間に見られるのも気まずい。少し慌てた様子で、ヴァージニアは支度をする。
その影で――くすくすくす、と。小さな笑い声が、どこかから響いた。