夜も大分更けた頃。  
湿気の多く、少し寝苦しいこの夜に、ヴァージニアは悩ましげな表情で眠りについていた。  
「んッ……ふぅッ……」  
漏れる寝息もどこか艶がある。  
普通の眠りにしては、どうも奇妙なのだが――  
「しっかし、リーダーもこう見えて色っぽい声出せるもんなんだなあ」  
ひょっこりとギャロウズが彼女の顔を覗き込む。  
「もう18歳の娘さんですからね。大人になりつつある年齢、と言ったところでしょう」  
クライヴもそれに続いた。というより、  
「……そうか? 単に唸ってるだけにしか見えねえけどな」  
ジェットも。つまりヴァージニアの仲間が全員ベッドの傍に集まっている。  
更に、三人から一歩引いた場所には眼鏡をかけた女性が腕組みして立っていた。  
男達の様子をやや苛立たしげに見つめてから、ふっと声を出す。  
「で、アタシに何の用なワケ? こんな夜中に呼びつけて。寝不足はお肌の大敵だってのに……」  
三人はくるりとそちらを向いた。マヤ・シュレディンガー。  
ヴァージニアとはライバルでもあり、友人でもあり――とりあえず仲はいい。  
「ああ、すみません。これを見ていただければ分かると思うんですが――」  
ギャロウズとジェットを傍らに置いて、クライヴは眼鏡を直しながらマヤに言う。  
「最近、リーダーの体調が随分悪いんですよ。かといって病気をしている訳でもない。  
 特に、朝起きてくると眠った時よりも顔色が悪くなっていて……悪夢でも見たかのように、ね」  
「……成る程。で?」  
ヴァージニアは、相変わらず喘ぐような寝息を立てている。  
「そこで、一昨日からこうやってリーダーの寝ている姿を観察してみたんですが――  
 ご覧の通り。なんとも、怪しげな状態に置かれているようです」  
「そうねぇ……この子が、毎日毎日エッチな夢見てる、ってのもそれはそれでおかしな話だし」  
「そこで、貴方に依頼を持ち掛けたいんですよ」  
一瞬――クライヴとマヤの、眼鏡の下の視線が交差する。  
「依頼……ですって?」  
「そうです。ヴァージニア・マクスウェルの……救出を依頼したいのです」  
 
「救出……? 面白いこと言うわね、眼鏡君。ヴァージニアを助けるって。  
 この子、単に悪夢見てるだけなんでしょ、毎日。相談するならアタシじゃなくってお医者さんに――」  
「我々の敵……知っていますよね?」  
「……ん。そういうことな訳ね」  
現在ヴァージニア達が戦っている相手は夢魔ベアトリーチェ。  
夢の中から干渉してくる厄介な相手だが。悪夢を見せるというのも、彼女の得意技の一つのはずだ。  
「その可能性がある以上、このまま放置しておく訳にもいきませんから。  
 そこで、貴方の能力でリーダーの夢の中に入ってもらって、なんとかして頂きたいのです」  
「へえ。……いいの? そっちの二人は」  
ギャロウズは頭を掻きつつ、ジェットはむっとしながら答える。  
「ま……仕方ないさ。あんたくらいしか、そういう人間離れした芸当が出来る奴はいないしな」  
「こいつが調子狂ってると俺まで巻き込まれるからな……」  
不承不承といった様子ではあるが、二人ともに承諾した。  
それを受けて、改めてマヤはクライヴに視線を合わせる。  
「確かにね――アタシの能力で、夢の中に潜る主人公になりきれば、それも簡単な話ではあるわ。  
 それで、報酬は? 出すものは出してくれないとね?」  
その言葉を聞くと、待っていましたとばかりにクライヴは近くにあった袋から何か光るものを取り出す。  
「これを。伝説の秘宝『涙のかけら』……如何でしょうか?」  
「それは……ふん。オッケー。いいわ、それで受けてやろうじゃないの。  
 しかし、元々アタシの宝石を交換条件にだなんて、アンタ――案外セコイわね」  
苦笑すると、またクライヴは別のものを取り出した。数冊の文庫本、である。  
「一応、必要になりそうな本もいくらかこちらで用意しておきました。夢絡みの本です」  
「準備いいわね。寄越しなさい……」  
本を受け取ると、とりあえず最初の一冊のページをめくる。目を離さないまま、マヤは小さく声を出し 
た。  
「趣味いいじゃない……なかなか面白いわ。じゃあ、これで行きましょうか……」  
ヴァージニアの額に手を当てた途端、マヤはぱったりと横になって小さく寝息を立て始める。  
 
「……相変わらず滅茶苦茶な奴だな」  
呆れながらジェットがぼやく。クライヴもギャロウズも曖昧な笑みを浮かべるだけだが。  
と、眠ったはずのマヤがむくりと起き上がった。  
「な、なんだッ?」  
「いや……相手が相手だからね。一人じゃきついかもって思って。  
 アンタらの誰か……助手になってくれる?」  
三人が顔を見合わせる。  
――少しの逡巡の後、クライヴとギャロウズは。さっとジェットを指差した。  
「お、お前らッ!?」  
「……コイツ? うーん。ま、贅沢は言ってられないわ。ほら、さっさと行くわよ」  
一方的にそう言うと、マヤはジェットの腕を掴む。  
そして、またヴァージニアの額に手を当て、眠る。  
「ちょ、待ッ……なんで俺がッ……ま、待てッて――くッ」  
マヤが眠るのとほとんど同時に、ジェットもまた瞼を閉じる羽目になる。  
「頑張って下さいね」  
「応援してるぞッ」  
などと、残った二人は無責任にそんなことを言うが、ジェットには届いたのかどうか。  
いずれにせよ、苦しそうに眠るヴァージニアの傍らに、マヤとジェットが並んで眠っている状態となっ 
た。  
 
そこは、薔薇の蔦が絡みついた巨大な城。  
年代を感じさせる、朽ちかけた石の壁がどうにも不気味な感を出している。  
城門は開かれていて、中には簡単に入ることが出来たが――城の中には、様々な怪物が徘徊していた。  
「まさに悪夢って感じね……準備はいい?」  
いつもの『荒野の災厄娘』風の装束になったマヤは、拳銃を構えつつ隣のジェットを見る。  
彼の表情はまったくふて腐れたような、機嫌の悪いものだが。  
「ああ。……しかし、何で俺が……」  
「いつまでもぐちゃぐちゃ言うんじゃないの。ヴァージニアを助けるんでしょ?」  
「それにしたって、俺まで何で……」  
「ああ、うっさいわねッ。いいから、さっさと行くわよッ!」  
話を打ち切って、マヤは駆け出した。  
不機嫌そうな表情はそのままだが、ジェットも呼応して城の奥に向かって走り出す。  
気づいた魔獣が襲い掛かってくるが――二人の渡り鳥の前に、あっという間に霧消していく。  
そのまま駆けに駆けて、城をどんどんと進んでいくうちに。  
途中で災厄の名を冠した怪物と戦ったり、細かい仕掛けなどもあったがそれぞれあっさりと突破して。  
やがて――薔薇の飾りの施された、立派な扉の前に出た。  
「アタシの第六感がびんびんに告げてるわ。きっとここが一番奥ね」  
「……単に扉が立派なだけだろ」  
「となると、ここが目的の場所――ヴァージニア絡みの何かがあるって可能性は高いわ。  
 よし……行くわよッ」  
「無視かよ……ああッ、もういいッ。行ってやるよッ」  
かみ合わないまま、マヤは扉を蹴って開けた。  
その先には――  
「ふぁ、もう、やだぁッ! う、あああッ!」  
根によって身体を拘束され、更に秘所や肛門に至るまで貫かれているヴァージニアと。  
「……ッ!? 侵入者……!?」  
玉座にもたれかかりながら、それを眺めていたベアトリーチェの二人がいた。  
 
「夢の中に入ってくるなんて――」  
「そんなもん。アタシの力にかかれば簡単なものよ」  
ふん、とマヤは鼻で笑う。ベアトリーチェはいつになく狼狽しているようで、玉座から腰が浮かびかけ 
ている。  
「ま、そんな些細なことはどうでもいいとして――また、すっごい事態になってるわねぇ」  
ヴァージニアの状態は惨憺たるものだ。  
徹底的に汚され、挙句感じている素振りさえ見せている。  
「え……?」  
ヴァージニアの方でも、入ってきた二人に気づいてぽうっとしたまま顔を上げる。  
その顔は、既に欲情の色で赤く染まっていたが――逆に妙に青ざめてくる。  
「やッ……み、見ないでッ……」  
自分のこのとんでもない姿を、仲間や友人の目に晒す。  
それはまったく耐え難いことで、飲まれかけていた意識も僅かに目覚める。  
そんなヴァージニアに小さくため息をついてから、マヤは拳銃をベアトリーチェに向けた。  
「さて、ヴァージニアは解放してもらうわよ。素直に返してくれるなら、痛い思いはしないですむと思 
うわ」  
「くッ……」  
狼狽していたベアトリーチェだったが、マヤの言葉を反芻するとふっと余裕を取り戻す。  
それからまた玉座に深く腰かけて、例によっての薄ら笑いを浮かべる。  
「返す? くすくす。返してあげても構わないけれど……  
 でも、最早返したところでヴァージニアはお終いだと思うけれどね」  
「お終い、だと?」  
ヴァージニアの痴態に戸惑い、あたふたとしていたジェットも――夢魔の言葉に、頭を振って自分を取 
り戻す。  
「お終いよ……もう、彼女の中には、ネガ・ファルガイアの想い出が沢山注ぎ込まれている。  
 心を侵食することで、彼女は別の存在へと変化するのよ……」  
「……何がなんだかわかんないけど。なんか変な細工したって言いたいの?」  
「……平たく言えばね。一種の毒……とでも言っていいかしら?  
 それを、この――」  
ヴァージニアを捕らえている植物が、不気味に明滅する。  
 
「ネガ・ファルガイアの根から、ヴァージニアの中に注ぎ込んだ。  
 それを解毒するなんて不可能だから……もう、お終いなのよ」  
マヤもジェットもさっぱり分からないといった表情である。  
が、どうにかマヤだけはぶつぶつ何かを呟いて、こくんと頷く。  
「よくわかんない……けど、まあ、なんとなく理解できたわ。  
 何にしても、ヴァージニアは返してもらうし……アンタもね。きっちり仕返しはさせてもらうから」  
「面白いことを言うわね……ニンゲンというのは、まったく身の程を知らないみたい。  
 どうぞ、その仕返しとやらをやってごらんなさいな」  
言われずとも、とマヤは引き金を引いた。乾いた音が、部屋に響き渡る。  
――けれど、やはりベアトリーチェにはその弾丸は当たらない。  
「だから、言ったのに……くすくす」  
「ちッ……だったら、俺が――」  
マヤが外したのを見て、ジェットが進み出る――と、彼の前にすっと手が伸ばされた。  
遮られて、ややむっとした顔で手の主の方を見る。  
「無駄よ。大方、アタシらのアームじゃ通用しないんでしょ」  
「……って、じゃあどうすんだよ?」  
くすくすと笑う夢魔を尻目に、マヤは懐から一冊の文庫本を取り出す。  
「お、おいッ?」  
「こうするのよッ」  
次の瞬間、マヤはつばの広い帽子を被り、すすけたジーンズを履いた――カウボーイスタイルに変身し 
ていた。  
そのまま、手に持った投げ縄をぶんぶんと振り回すと、気合と共にベアトリーチェに向かって投げつけ 
る。  
「……なッ」  
あまりと言えばあまりな行動に、その場の誰もが固まってしまう。  
ただ、マヤとその投げ縄だけは率直に動き――すぽっ、と。ベアトリーチェの身体を包み込んだ。  
「えいッ」  
勢いに任せて、マヤは縄を引っ張る。見事に夢魔を捕らえた縄は、ずるずるとマヤの元へと引き寄せら 
れた。  
 
「な、こんなッ……馬鹿なッ」  
「ふッ……この『牛追い野郎』の主人公は百発百中の投げ縄名人。  
 こうやってアンタを捕らえるのも楽勝ってとこね」  
縄で縛り付けて、身動きをとれなくした夢魔を見下ろし、マヤはふふふと笑った。  
「まあアタシの腕ならこんなもんよ。ほら、ジェット。さっさとヴァージニアでも助けてやりなさい」  
「あ……ああ……しかし、相変わらず滅茶苦茶だな、お前」  
「うっさいわ」  
ベアトリーチェが捕らえられたと同時に、ネガ・ファルガイアも動きを止めている。  
数回アガートラームの弾丸を撃ち込んでやると、すぐにヴァージニアを捕まえていた根は崩れ落ちた。  
地面に崩れ落ちそうになる彼女を拾い上げると、とりあえず窓にかかっていたカーテンをちぎり、上に 
かける。  
「あ……その、ごめん……」  
「謝られてもな……俺はそんなに何もしてねえし……」  
まだぼんやりとした様子ではあるが、ひとまずヴァージニアも普通に意識を取り戻したようだ。  
そうして、二人ともに一息つくと。縛ったベアトリーチェを捕まえているマヤの方を向いた。  
「――さて、と。大丈夫? ヴァージニア」  
「う……うん。多分……」  
「……ちょっと失礼するわよ」  
瞬間、まっさらな白衣に衣装を変えると、マヤはぺたぺたとヴァージニアの身体を触った。  
「マ、マヤ?」  
「診察よ、診察。んー……」  
遠慮なしに、かけられたカーテンをどかして、むき出しの乳房などまでちょろちょろと触る。  
「ひっ……」  
「我慢しなさいな。それから……」  
マヤの手はヴァージニアの身体を下りていき、下腹部から陰る場所にたどり着く。  
今しがたまで、根が突き刺さっていた場所――ヴァージニアの秘密の場所、である。  
「や、ちょっとマヤッ」  
「……さっき、こいつが何か気になること言ってたでしょ。毒とかなんとか。  
 助けたはいいけど、後でおかしくなっても困るんだから……調べないとね」  
「う……」  
 
「あ……ふぁッ……」  
マヤはまったく遠慮なしに、とろりと開いたそこに指を突き入れる。  
そのまま指を動かし、入り口を開くと――じっとそこを眺めた。  
「ふむふむ。……なんていうか、結構ひどいことされたみたい……ねえ」  
「え……」  
言いながら、マヤは顔を近づけた。  
「あの……ちょっと恥ずかしいんだけどッ……」  
「だから診察だって言ってるでしょ……えーと」  
と、舌を伸ばしてぺろりと舐める。  
「ひゃうッ!?」  
ヴァージニアは、びくりと身体を震わせた。  
直前まで嬲られていたせいか、少しの刺激にも敏感になっている。  
「何反応してるのよ?」  
「って、言われても……あの、本当に診察なの?」  
「そう言ってるのに、疑り深いわねえ……ああ、もう終わったわ」  
ようやくマヤは顔を離した。  
どうも居心地が悪く、縛られているベアトリーチェの監視をしていたジェットが、恐る恐るといった様 
子で声をかける。  
「……もういいのか?」  
「ええ。で、結果なんだけどね……何ていったらいいのか……  
 どうも、胎内におかしなものが入ってる……みたいね。毒っていうかなんていうか……」  
「そりゃ……大丈夫なのか?」  
戸惑うジェットと、明らかに不安そうな顔をするヴァージニアに、マヤは少し考えながら言葉を紡ぐ。  
「それに関しては……そうねえ。解毒するにしてもよくわかんないし……  
 やっぱ、一番詳しい奴に聞くのが一番いいでしょ」  
そう言って、マヤはぐいっと縄を引っ張った。  
「ぐッ……」  
引っ張られたベアトリーチェは、少しの衝撃に顔を歪める。  
「さ、教えてくれない? どうすればヴァージニアは助かるのかしら……?」  
 
「……わたしが教えると思っているの?」  
それでも、まだどうにか薄ら笑いを浮かべながら、ベアトリーチェは吐き捨てるようにそう呟く。  
「もちろん」  
一方のマヤも特に根拠のない自信を浮かべつつ、はっきりとそう答えた。  
「……いいわ、教えてあげる。でもどうせ不可能だけどね……くすくす」  
案外あっさりと承諾したベアトリーチェだが、不可能という単語にマヤはふんと鼻を鳴らす。  
「で、どうすればいい訳?」  
「……ヴァージニアを汚染したのは、ネガ・ファルガイアの想い出。  
 その効果を打ち消すには、正反対の性質のものを彼女の中に注ぎ込めばいい。  
 ……つまり、ファルガイアの想い出を注ぎ込めば、打ち消せるということになるわ……」  
相変わらずよくわからない話ではある。  
「へえ。……ファルガイアの想い出を注ぎ込むって、どうやればいいのよ?」  
「それはわたしだって知らないわ。……だから言ったでしょう? 不可能だって。  
 ネガ・ファルガイアはこうしてサンプルとして存在させている。だから、こんなことも出来た。  
 でもファルガイアのサンプルなんてどこにも存在していな……」  
そこまで言って、場の一同ははっとして一人の人物に視線を集めた。  
「……って、俺かッ!?」  
視線を受けたジェットは、思わず一歩後退する。  
「……ファルガイアサンプル……見落としていたなんてッ……」  
「なるほど、なるほど……いや、そういうことな訳ね……」  
とりあえず、理解できなかったのかヴァージニアだけはきょとんとしている。  
口惜しそうなベアトリーチェをふっと笑うと、マヤはヴァージニアに向き直る。  
「えっと、どういうことなの、マヤ?」  
「つまり、アンタを助けるために必要なことは……このジェットが、アンタの中でたっぷりアレを出せ 
ばいいってこと」  
「……えっと……」  
言葉の意味が飲み込めず、ヴァージニアは小首を傾げる。  
ジェットも似たようなものだが、その二人にマヤは呆れたように声を出した。  
「だから。わかんないわね、アンタ達も。アンタ達二人で一発ヤっちゃえばいいってことよッ」  
それでもしばらくヴァージニアは戸惑っていたが――  
「……ええええッ!?」  
 
「マ、マヤッ……そ、それはちょっといくらなんでもッ」  
「お、おいッ! 本気かお前ッ!?」  
二人がほぼ同時に抗議の声をあげる。  
「ホントに鈍いわねアンタ達は。今のコイツの話、聞いてなかったの?  
 そういうことなの。わかんないかしらねえ、まったく。  
 じゃ、それはそっちに任せるから。アタシはアタシで……よっと」  
軽く声を出して、マヤはベアトリーチェを抱きかかえた。  
「コイツがもう悪さできないように懲らしめておくから……じゃ、頼んだわよ」  
と言いながらも、部屋の片隅に移動しただけで――それほど離れた訳ではないが。  
ともあれ、残された二人は非常に気まずい様子で顔を見合わせた。  
「いくらなんでもありゃデタラメだろ……」  
「でも、マヤがそんな嘘ついても意味ないと思うし……やっぱり本当なんじゃない、かな……」  
ジェットは思い切り頭を抱える。  
「それにしてもだ……ヤるってな、おい……いいのか、お前は?」  
「それはッ……そのッ……」  
ひどく狼狽した様子で顔を落とす。が、考えてみれば、今のヴァージニアの姿は。  
「……あッ!」  
マヤによって、身体を隠していた布はあっさりと外されていた訳で。  
しかも、それ以前には根を秘所に突き刺され、喘いでいた姿をジェット達にしっかり見られていた訳で 
――  
「こッ……この際ッ……もう、仕方ない……し……」  
「……ホントにいいのか?」  
ジェットも不安そうだが、それ以上にヴァージニアは困惑している。けれど。  
「い、いいよ……ほ、ほら、これって夢なんでしょッ? だから、その……いろんな意味で、大丈夫… 
…」  
「……あんまり大丈夫じゃないだろうがッ……くそ、ったく……  
 だいたい、そういうことってのは、軽々しく出来るもんでもねえだろッ……」  
「けど……それしか助からないって言うんなら、仕方ない……からッ。  
 だから、そのッ、夢なんだし、そんなに気にしなくても大丈夫ッ……だと思う」  
「……ったくッ……妙な誤解とか、すんじゃねえぞッ……」  
ほとんど自棄の勢いで、ジェットはヴァージニアに手をかけていった。  
 
「んッ……」  
肌も敏感になっているのか、ヴァージニアは触られただけでも声を漏らす。  
「い、いいか? これはあくまでそのなんだ、仕方の無い作業であって、だなッ……」  
「分かってるから……あのね、その……わたしこそ、ジェットに迷惑かけちゃって……  
 わたしみたいな子でジェットにしてみれば嫌だってのもわからないでもないけど、でもその、なんて 
いうか」  
「べッ……別に、お前が嫌だって訳じゃなくてッ……お、お前はどうなんだ?  
 こういうの、俺が相手で……」  
どうも、二人とも遠慮というか、困惑しているのは確かなところだが。  
「わ、わたしは……そうだね……ジェットなら、うん……いいよ、仲間だし……  
 ただ、お父さんなんて思うかな、って……」  
「ウェルナーのおっさん……?」  
「お父さん、ジェットを育てた……ん、だよね。そう聞いてる。  
 ってことは、わたしのお父さんが育ての親ってことになる訳で、ある意味姉弟みたいなものだし。  
 そうなると、こんなことしたらお父さんが悲しむかも……」  
「……あのな」  
微妙にピントのずれたことを言うヴァージニアに、ジェットは呆れたようにぼやいた。  
それから、あっさりと彼女の上にのしかかる。  
「え、え? ジェット?」  
「……さっさと終わらせりゃいいんだろ、ったくッ。  
 もうごちゃごちゃ言うのはやめだ、やめ。どうせ夢なんだろ。なら、もう、とっととやっちまうぞッ」  
「で、でも、わたしももうちょっとムードとか欲しいかな、って……」  
「んなもん、現実の方で追い求めろッ。こんな滅茶苦茶な夢、俺はさっさと終わらせたいんだよッ!」  
開き直ったジェットに、ヴァージニアもやや不満そうな顔をしていたが――少し考えて、はあ、とため 
息をついた。  
「……うん。やっぱりジェットにしてみれば、迷惑なことだしね……あの、せめて優しくして……ね」  
「だッ……から、迷惑ってなッ……くッ……もういいッ。せいぜい、お前の要望どおりにしてやるッ」  
少し顔を赤くして――それは何もヴァージニアの裸を見ているだけではないようで。  
ヴァージニア本人も、そんなジェットを見て少しだけ笑った。  
 
「あのね、今まで散々アレだったから……多分、すぐに入れても大丈夫……かな」  
「……妙に自信ねえんだな」  
言いつつ、ジェットは指でそこを確かめる。  
直接見ないせいで、場所が微妙にずれてしまう。  
「んッ……あ、あの、ジェット……ちゃんと見ないとわかんないと思うよ……?」  
「う、うるせッ」  
仕方なくといった表情で、ジェットは今度はまじまじと見る。  
やたらじっくりと見ている様子がヴァージニアにも目に入った。  
「……今度はちょっと恥ずかしいんだけど……」  
「注文多いな……ほら、どうだ……?」  
ようやく、ジェットの指がヴァージニアの秘所に触れる。  
ぴちゃ……と。確かに、その場所はもうしっとりと湿っていた。  
「……へえ。確かに……だな」  
「ベアトリーチェに、その……あんなこと、されちゃってッ……わたし、目一杯抵抗したんだけどッ… 
…」  
「ああ……まあ……だろうな」  
どう答えたものだろうか。ジェットは少しうつむく。  
「だから、好きでやってたんじゃないからねッ……いい、ジェット?」  
「そりゃ、お前みたいなのが素直に色気出すとも思えねえし……納得は出来るが」  
「そういう言い方も……あッ」  
濡れているのを確かめた指は、そっと入り口のあたりを刺激する。  
中には入らず、優しく撫でるように動くと、ヴァージニアはふうッ……と息を漏らした。  
「あ……優しいね、ジェット……」  
「そうやってくれって言ったのはお前だろ」  
「うん……でも、ほら……結構、嬉しいから」  
ジェットは答えず――顔はひどく赤いまま、ゆるゆるとした刺激を続ける。  
くちゅくちゅと、濡れていたそこは少しずつ量を増やしていく。  
「ふ……あ……あ、あの、ジェット……」  
「……ん?」  
「そろそろ……してくれても、いい……から」  
 
ヴァージニアの潤いは、確かにかなりの量になっている。  
元々、根によって蹂躙され随分濡れていたので、今入れても大丈夫のはず。  
「……ああ」  
もう何か言うこともなく、ジェットは下のズボンと下着を脱いでいく。  
そうして、飛び出したそれは、随分立派に立ち上がっていた。  
「わ……ジェット、凄いやる気じゃないッ……」  
「……いいだろッ、別に」  
「そりゃ、文句はないけど……ん……」  
がっしりと腰を掴むと、ペニスをヴァージニアの入り口にあてがう。  
「……いくぞ」  
「あ……うんッ……」  
視線を交わすと、ジェットはゆっくりと――ヴァージニアの中に入っていく。  
「う……んッ……」  
痛みを感じている様子もなく、彼女はじっとその光景を見詰めている。  
「……あんまり見られるのもアレなんだけどな……」  
「え? で、でも……ふ、うッ……」  
気恥ずかしいのか、ジェットは目を逸らして――それでもしっかりと、腰を進めて行った。  
ずッ……ぷッ。  
「んッ……あッ」  
「くッ……」  
ついには、奥の奥――ヴァージニアの胎内に、しっかりとたどり着く。  
「んッ……ジェットッ……入ってるッ……」  
「あ、ああ……ここが奥、か……」  
根によってえぐられたその膣内だが、ジェットのペニスを締める動きはまだ健在のようだ。  
 
そのまま、ジェットはゆっくりと抜いて、またゆっくりと入れていく。  
あくまでゆっくりと、静かに腰を動かす。  
くちゅくちゅと、接合部では水音が流れるが、二人の動きそのものは静かだ。  
「ん……あ……」  
お陰で、ヴァージニアもじっくりとそれを味わうことが出来る。  
「あ……ん、ジェット……えっと……ホントに優しいんだねッ……」  
「……だから、そうするように言ったのはお前だろうがッ……」  
「……この何日か、毎日夢の中で……ベアトリーチェにあんなことされてッ……」  
気づくと、彼女の目じりには涙が溜まっていた。  
快感のせい――ではないのだろう。  
「起きると忘れてたんだけどッ……寝るたびに、あんなことッ……わたし、すっごく怖くてッ……」  
「……そっか」  
「だから、マヤとジェットが来てくれたの……すっごく嬉しいんだよ……んッ……」  
複雑な気分のまま、ジェットは優しく動く。  
「あッ……んッ……それに、ジェット……こうやって、優しくしてくれてッ……  
 あんな、根っことは全然違うッ……んあッ」  
どう答えたらいいのか、しばらくジェットは考えて。  
――結局、余計丁寧に腰を動かすことで、それに応えた。  
「ふぅッ……気持ちいい……よッ……」  
「そりゃ……よかった、な……」  
ジェットにしてみても、ゆっくりとした動きのせいで激しい快感はないものの――少しずつ、昂ぶりを 
感じられる。  
ず……ちゅッ……ずちゅッ。  
とろとろと流れ出るヴァージニアの愛液は、床にぴちゃりと落ちる。  
涙は、もう――止まったようだ。  
「んッ……ジェットのッ……あんなのより、よっぽどッ……熱くてッ……気持ち、いッ……」  
「そッ……か」  
ゆっくりとした動きは、お互いをゆっくりと高めていく。  
 
「ジェット、優しいッ……から、もっと……早くしても、大丈夫ッ……だよ……」  
「……いいんだな……?」  
そろそろ、ジェットにとっては物足りなくなってきたところで、ヴァージニアはそう言う。  
「うん。わたしも、えと……もっと気持ちよくなりたいかなッ……って、そう思うし……」  
「優しくなくても……?」  
「それは、今までが今までだし……ジェットなら、もっと強くやっても優しいよね?」  
「……さあな」  
呟くと、すぐにジェットはずんっと強く打ち込んだ。  
「ふあッ!」  
「……じゃッ……いくぜッ……」  
それだけでなく、勢いは強いままで前後動を行う。  
愛液はもう溢れ出し、ずちゅずちゅと流れる音も大きくなっている。  
「あ、ふあッ! ん、ジェット、気持ちいいよッ」  
遠慮なく叫ぶヴァージニアに、ジェットはただただ動いて応える。  
膣内はきゅうきゅうと締め上げ、先ほど入れられていた根に対してよりもジェットを熱く責める。  
「くッ……お前も結構ッ……ふぅッ」  
今までとは違い、激しい動きが膣肉の熱さと潤いを呼び覚ます。  
ぐちゅぐちゅと、肉壁はこなれジェットの精を奪おうと動く。  
「はッ……ん、ジェットッ……ん、そろそろッ……」  
「あ……あ、俺もッ……!」  
二人ともに、その激しさに身を任せる。  
肌の打ち付けあう音も聞こえ、先走りと愛液が絡み合う。  
「んッ……ごめんなさい、お父さんッ……わたし、こんな気持ちいいこと、ジェットとッ……」  
「そういうのはやめろってッ……くッ!」  
きゅうっ、と。膣肉はますます強くジェットを引き寄せる。  
「いいかッ……俺は別にッ、お前のこと姉だなんて……く、やべッ……」  
「あ……ジェットもッ……んくッ……だ、出してッ……出して、ねッ……」  
「そうすりゃッ……解決なんだよなッ……!」  
 
念には念を入れて、ジェットはぐいっと腰を突き入れる。  
「あッ……一番奥、奥にぃッ……!」  
「ああッ……!」  
そうして、もっとも深くにジェットのペニスが入り込んだ、その時に。  
ぎゅうっと――絶対に離さない、とでも言うように一番強く迎え入れる。  
そして。  
「んんッ……あッ……じぇ、ジェットッ! ふあああッ!」  
「……だッ……」  
びゅッ……びゅッ。  
子宮口にくっつけて、ペニスの先からどろどろと精液が流れ出す。  
ファルガイアの想い出が詰まった白い液。それが、ヴァージニアの中に入り込む。  
「熱ッ……んッ……」  
「くうッ……」  
簡単には止まらないそれは、子宮内を埋め尽くすだけでなく膣内にも溢れかえる。  
が、それが外に漏れ出すことはなかった。  
「……あ、うあッ……」  
「な、なんだッ?」  
ヴァージニアの胎内で、奇妙な反応が起きている。  
ネガ・ファルガイアに植えつけられた想い出と、ジェットの精――想い出が、対消滅を起こしている― 
―ようだ。  
「な、なんか身体の中が変ッ……んあッ」  
「マヤの奴……一応、嘘は言ってなかった……のか?」  
中に入っているジェットのペニスにも、その奇妙な感触は伝わってくる。  
ぱちぱちと弾けるような。あるいは吸い込まれるような。  
形容しがたい感触を味わって、吐き出す精は勢いを増す。  
やがて、反応が終わる頃になって――  
「……はあ……ん、ジェット……凄いいっぱい……」  
「……らしいなッ……」  
ようやく、射精も終わりを迎えた。  
 
ペニスを抜いても、中から精液が出てくることはない――ようだ。  
「ほとんど……対消滅、だっけ。しちゃったのかな?」  
「……またえらい量だな」  
ジェットが出した精にしても、相当な量である。普通の数回分にもなるだろうか。  
しかし、ほとんど中で消滅しているのだから、植えつけられていたネガ・ファルガイアも相当な量らし 
い。  
「……これで、わたしの心……大丈夫になった……よね?」  
「多分……だと思うけどよ……」  
「何かあるの?」  
べとべとになったペニスを少々持て余しつつ、ジェットは言う。  
「いや、これで全部消滅したのかどうかってな……」  
「……残ってるかもしれないって?」  
「何しろ、あれだけ出したってのに、全部消えちまってるだろ。……可能性は、な……」  
考え込んでしまったジェットに、ヴァージニアは小首を傾げると――呟く。  
「だったら……ね、ジェット?」  
「あん?」  
「……何回もやったらいいんじゃないかな?」  
「ってッ……あのなッ」  
うろたえるジェットに、ヴァージニアは小さく笑う。  
「でも、大丈夫みたいだよ? ジェットのそれも」  
「う……」  
ちっとも力を失っていないペニスに、ジェット自身も戸惑う。  
「ま、まあその前に、マヤの奴に診てもらえばいいだろッ。それからでも遅くないッ……」  
「……そっか。そだね。……でも、わたしはいいんだけどな……」  
「だッ……余計なこと考えるなッ!」  
妙に笑顔になっているヴァージニアに、ジェットはうろたえつつ叫ぶ。  
そして、二人ともにマヤの方を見る――と。  
「……って、マヤッ!? 何やってんのッ!?」  
 
 
時間は少々遡ることになる。  
「さて、あっちはあっちでいいとして。アタシは……と」  
二人の様子――お互いに戸惑っている様子をちらりと見て、マヤは軽く笑った。  
何時の間にやら、またいつもの姿に戻ってはいるが。  
それから、縛ったままのベアトリーチェに目をやる。  
「あんまり悪さばっかりしてると、ろくでもない目に遭うわよ? 今みたいに。  
 ちゃんと反省して、世のため人のために働くってんなら見逃さないこともないけど……」  
返ってきたのは、見下すような冷たい視線だけであった。  
もっとも、縛られて抑えつけられている以上、視線そのものは見上げる格好なのだが。  
「……やれやれねえ。反抗期なの? アンタって」  
「魔族にそんなものがある訳がないでしょう……だいたい、こんな訳の分からないやり方で、わたしを 
捕らえるなんて……  
 ニンゲンとして本当にどうかと思うわ」  
「どういたしまして。……どうしたって、考え直すつもりはないのね? じゃ……」  
マヤ愛用の拳銃、バンテージレイジMMが小さい頭に突きつけられる。  
流石にこういう状態では、回避したりすることも不可能であろう。  
「くッ……」  
余裕を見せることも出来ず、夢魔は歯噛みする。  
夢の中というのに、こうも主導権を握られるとは。  
どうにか、この状況を打開しようと思考は凄まじい勢いでめぐらされる――と。  
ちゃっ……と、意外にもマヤは銃を戻した。  
「未来の大統領としては、やっぱ敵対する相手を抹殺するだけってのも芸が無い話よね。  
 とするなら――ふふ。いいこと思いついたわ」  
「……いいこと?」  
内心の動揺を、それでもどうにか隠しながら、ベアトリーチェは小さく尋ねる。  
「アンタを立派に更正させてやって、情報大臣としてアタシの政権の一翼を担わせるの。  
 ファルガイア統合星府の重鎮なら、アンタも満足できるでしょ?」  
「……わたしがニンゲンなどと」  
「手を組むはずないと。それはその通りだろうけど……なら、そうねぇ」  
 
「だったら、こうしましょ。アンタの望むものをなんでも用意してあげるわ。  
 何しろ伝説の魔族、それくらいして召抱えてもお釣りは十分取れると思うし」  
「……無意味なことを。貴方如きに用意できるものなど、多寡が知れたもの……下らないわ」  
まったく乗ってこないベアトリーチェに業を煮やし、マヤは適当に懐から文庫本を取り出した。  
「なんかいい説得方法でも……えーっと……」  
そのまま読み始める。が、そんな悠長な態度は、下で動くことも出来ないベアトリーチェには苛立たし 
く写った。  
「……殺すなら早く殺せばいいでしょう。ニンゲンは……何時だって、そういうイキモノなんだから」  
「まったく……じゃあ、えーと。アンタを徹底的に快楽漬けにして、アタシから離れられないようにし 
てやるから。  
 ……あれ?」  
自分で口走った言葉にマヤ自身も驚くが、それ以上に抑えつけられているベアトリーチェは一瞬言葉も 
出なかった。  
「な、何をッ……」  
「アタシの技で身も心もとろけさせて、終いにはアンタから望んで欲しがるように……  
 ……アタシ何読んだのよ?」  
自分に戸惑いつつ、マヤは今しがた読んだ文庫本を確かめた。  
「……ああッ!? なんでこんなハードなヤツッ……」  
成人向け小説――にしても、また随分ときわどいものだ。  
女性を捕らえて、様々な行為を行い――最終的には、主人公に完全に従わせる。  
「……こんな本買った覚えないのに……」  
読んでしまった以上は、それになりきってしまうのがマヤの常ではある。  
とはいえ、根っから文学好きである彼女が、そうそうポルノ小説などを読むこともないはずなのだが。  
思い当たる節と言えば、この夢に入った時に渡された数冊の本。それであろう。  
「クライヴのやつ……いや、ギャロウズあたりも怪しいわね。こんな本……」  
ぶつぶつぼやきながら、マヤは縛り付けられているベアトリーチェに目をやった。  
外見だけで言うなら、可憐な少女と言ってもまったく問題ないだろう。  
しかも、縄で手荒に縛り付けられ、転がされている。  
その目つきは、恨みがましくこちらを見つめているのだ。  
ある種倒錯した光景――では、ある。  
「……ま、いっか」  
 
「何が……いいの?」  
「決まってるじゃない」  
短く答えて、マヤは縄の上からベアトリーチェの胸のあたりを撫でさすった。  
「ッ……まさか」  
「これはこれで……問題ないしね」  
縄とワンピース、それから下着と、三層に阻まれているために、直接に刺激が行くものではない。  
が、薄手のワンピースの為か、ちくちくとした感触がベアトリーチェの肌に伝わる。  
「くッ……」  
そのせいで、僅かに声が漏れる。  
マヤはふんと笑うと、その手をベアトリーチェの下半身に伸ばした。  
そのまま服をたくし上げ、一番敏感な場所にあっさりと触れる。  
「……なッ」  
「さて、と」  
夢魔は身をよじろうともがく。縛られているために、どうにもならないのだが。  
躊躇いなく、マヤは触れている秘所に人差し指を突き入れた。  
「やッ……痛ッ」  
少しも濡れていないせいで、ベアトリーチェは顔を歪めるだけだ。  
更に指をぐりぐりと動かすと、ますます痛みを感じて夢魔は呻く。  
「そ、そんなことをしてッ……つぅッ……」  
「そうよねぇ。ま、簡単には感じないでしょうね。でも……」  
空いている指で、少し上にあるクリトリスを軽く擦る。  
「……つぁッ!?」  
痛みばかりを感じていたせいか、その場所から伝わった刺激は妙に心地よい。  
さわさわとこんなところで優しく撫でられると、どうしても快感を感じてきてしまう。  
「や、何をッ……くッ……ぁ……」  
縛られて、しかも秘所に指を入れられていることも忘れかけるほどに、マヤの繊細な指触りはベアトリ 
ーチェを苛む。  
「んッ……へ、変なことを……ぅあッ」  
また、夢魔は身体をよじらせる。ただし、今度のものは痛みからではなく、伝わってくる快感から逃れ 
ようとして。  
優しい指の動きに、ベアトリーチェのそこはぴりぴりとした快感を受け止めてしまう。  
 
「あ、やぁッ……んッ……」  
そうやって、敏感な場所を責めているうちに、段々突き入れられている場所も僅かずつ潤ってきた。  
ちゅく……くちゅ、くちゅと。それを確認すると、マヤは中に入れている指も動かし始める。  
「うぁッ!? あ、な、なんでッ……!」  
痛いだけだった膣口での指の動きが、僅かに快感に変化してきている。  
身動きできないのがもどかしいように、夢魔は足をすり合わせてせつない声を漏らした。  
「あら、気持ちよくなってきたみたいね、アンタも?」  
「くッ……」  
そうやって、ベアトリーチェの中で指を動かし続ける。  
入り口だけでなく、指をもっとつきこんで奥の方も刺激すると、夢魔の口からこぼれる吐息はますます 
熱くなってくる。  
「んん……や、やめなさいッ……」  
「お断り。……さぁて、次は……」  
ふふ、と。どこか陰のあるような笑みを浮かべると、マヤは軽くスカートを振った。  
小さく音を立てて、中から妙に太い棒らしきものが出てくる。  
拾い上げて、ベアトリーチェにそれを見せ付ける――と。  
「――なッ……」  
「ちょっとサイズ的に危ない気もするけど、ま……大丈夫でしょ?」  
男性の性器を模した道具。そんなものを、マヤは取り出してきたのだ。  
しかも太さや大きさは、随分と立派な代物である。  
「そ、そんなもの……入らない……のにッ……」  
ベアトリーチェの外見は、まだ小さい少女である。  
大人の女性に対しても、その道具は大きい部類に入るのに、彼女に対してはあまりに大きすぎる。  
「やってみなきゃわかんないでしょ……」  
くちゅっ、くちゅっと突き入れられたマヤの指は潤いを確かめる。  
もう十分なほどに濡れているのを見て、さっと指を抜き取った。  
 
「あ……」  
ほんの少しだけ寂しそうな声が漏れる。  
しかし、指の代わりに迫ってくる道具を見せられて、ベアトリーチェはくっと歯を噛んだ。  
「わたしをッ……そんな、どこまで――」  
「ふふ……ほら、入れるわよ……」  
「や、やめッ……うぁッ!?」  
入り口のあたりを、道具で少しばかりかき回し、愛液をまとわせて。  
それから、マヤはずぶりとベアトリーチェの中にものを突き刺していく。  
「うッ……あッ……や、こんなッ……うぁああッ!?」  
「流石に……抵抗が激しいわね。狭いし……」  
手で押し入れているだけでも、その狭さは伝わってくる。  
しかし入れられているベアトリーチェにとっては、まったくたまったものでもないだろう。  
「あああッ……や、うああああッ……」  
もう、声さえも果てるほどに、中にずぶずぶと入ってくる。  
ようやく、マヤの手が止まった頃には、ベアトリーチェの膣内は一部の隙間もないほど押し広げられて 
いた。  
「あ……ああッ……こんなッ……」  
「やっぱりちょっと大きかったみたいね……」  
「ぬ、抜いッ……抜いてッ……かはッ……」  
夢魔の全身はふるふると震えている。  
あまりに埋め込まれたものが大きすぎて、ショックが全身を困惑させているのだ。  
「困ったもんねぇ。じゃあ……」  
それなのに、マヤは突き刺さった道具を軽く動かしてみた。  
「つッ……あああッ!?」  
膣内に激震が走る。快感や痛みどころでない、衝撃ばかりが襲ってくる。  
「や、やめ……て……う、あッ……」  
「んー……やっぱ、駄目みたいね。じゃ、ほら。こうしてあげる」  
 
前に突き刺したまま、マヤは指を夢魔の肛門の方に持っていく。  
そして、また無造作に指を一本突き入れる。  
「んくッ……だ、駄目ッ……」  
膣内に大きなものが入っているせいか、尻の穴に指が入ってもそれほどショックではないようだ。  
が、そのままマヤが指をかき回すようにし始めると、そちらに気を取られて狼狽する。  
「ほら、どう? 気持ちいい?」  
「ん、あ、や、やめてッ……そ、そっちはッ……くぁッ……」  
しかしそちらに集中し始めると、空いた手は道具を揺すって膣内に意識を戻させようとするのだ。  
前を埋め尽くされ、後ろをかき回され。  
「あ、や、うあッ……やめッ……ひああッ!」  
極限に置かれた刺激を、ベアトリーチェのプログラムは判断に迷った挙句――  
とろ……と、道具を伝って愛液を滴らせる。  
「……うん、やっと感じてきたみたいね。よかったよかった」  
「よ、よくないわッ……ふぁッ、やッ……」  
マヤは、一旦後ろを弄るのを止めて刺さった道具を動かすのに集中する。  
愛液が流れ始めて、少しはスムーズになった膣内はなんとか太いものを受け入れている。  
「あ、ひ、あッ……こッ……んなッ……あ、やだ、やッ……」  
「ふふ……」  
ぐちゅぐちゅと、マヤの手によってベアトリーチェの膣肉は広げられる。  
勢いよく抜き差ししているうちに、段々夢魔の顔がぽうっとし始めた。  
「ん……も、もうッ……や、う、あッ……」  
「……そろそろ、かしらね……」  
それを見て、マヤの手は早まる。  
ずっ、ずっ、ずっ、と、息をつかせぬくらいにものの出入りは激しくなり。  
「――やッ……やめッ……う、あああッ……」  
無理やりに、ベアトリーチェを頂へと導く――寸前。  
 
ふっ……と、マヤの手は止まった。  
「……え……?」  
「お預け……よ。そんな簡単に……ねえ?」  
「なん……でッ……」  
「あら? もっとしてほしかったの?」  
言われて、ベアトリーチェは唇を噛む。  
「そんな……訳はない……わ……」  
「なら、構わないじゃないの。いや、やっぱりこんなニセモノでイっちゃうってのも気の毒かなって思 
ってねえ。  
 ちゃんとイくなら、ホンモノの方がいいでしょ?」  
「……どっちもおことわ……ふあッ」  
落ち着きかけたベアトリーチェに、またマヤは道具の抜き差しを始める。  
すぐにまた火がついて、夢魔は喘ぐ――が。  
「き、気の毒だって言ったのに……ふ、あッ……!」  
「イっちゃうのは気の毒だからやめてあげるけど……ね。  
 途中までなら、別にいい訳でさ……ふふ……」  
「そんなッ……あ、ひぅッ……!」  
また、ぐちゃぐちゃと夢魔のそこは音をあげ始めた。  
太すぎるはずの道具も、それなりにはスムーズに出入りしている。  
「いッ……うあ、あ、んあああッ……」  
ずぶずぶと、幼い秘所をえぐるようにものは抜き差しされ――  
執拗に、夢魔を押し上げようとする。  
「ま、また、またッ……あ、うぁああッ……!」  
かといって、イキそうになるとマヤは手を止めてしまう。  
「はい、ここまで」  
「……あ……そんな……」  
懇願するような色が声に混じったのを聞いて、マヤはふっとほくそえんだ。  
「……ま、ホンモノは幸い近くにあるんだし……ねえ?」  
 
「目を離してたらまたそんなこと……いくらなんでも、相手が相手じゃない」  
マヤのやっていること――ベアトリーチェをいたぶっているのを見て、ヴァージニアもため息混じりで 
肩を落とした。  
今の今までジェットとそういうことをしていたのだから、あまり人のことを言えた義理でもないかもし 
れないが。  
「何よ。いいじゃないの、別に。何か文句ある?」  
「文句って……そうじゃなくて、なんでベアトリーチェにそんな……エッチなことしてるのッ!?」  
「アンタがあんなことされたから、そのお仕置きなんだけど?」  
「お、お仕置き?」  
イかせないように、けれどベアトリーチェの昂ぶりを消さないように、マヤはぴちゃぴちゃと手を動か 
している。  
夢魔の小さな秘所に突き刺さっているものを動かしたり、尻の方をいじってみたり。  
相手の外見からして、どうも見ているのもはばかられるような光景だ。  
「あ……ひぁ……あ……」  
絶え間ない快感に責め苛まれ、ベアトリーチェは抵抗する素振りさえ出来なくなっているらしい。  
マヤの手が動く度に、  
「ふぅッ!」  
ぴくぴくと身体を痙攣させる。  
それでも、そのまま頂点に達しようとすると、マヤはさっと手を止める。  
たらたらと流れ出る愛液が、その辛さを物語っていても――決して最後まではいかないようなのだ。  
「も、もうッ……もう、焦らさない……でッ……」  
「だから、何度も言わせないでもらいたいわね。ちゃんとしたホンモノあげるから、それまで待ってな 
さい」  
「そんなこと言って……ふ、くッ……」  
まだ小さな女の子を、よく知っている相手――マヤがいやらしく責めている。  
その光景に、ヴァージニアもジェットもしばらく言葉を無くしてじっと見つめていたものの。  
「……い、いや、マヤ……やっぱり、マズくない? そういうのッ」  
「……俺もそう思う」  
何とか気を取り直して、止めようと試みる。  
「……じゃ、やめた」  
意外にあっさりとマヤはその手を止めた。しかし――  
「やめ……やめ……ないでッ……」  
「……だって。本人はそう言ってるんだけど、それでもやめた方がいいのかしらね?」  
 
ベアトリーチェにしてみても、漏れたその声は本当に不意に出してしまったものなのだろう。  
その表情はひどく不本意で、恨みがましい目でマヤの方を見ている。  
けれどマヤと、それからヴァージニアたちにとっては本音そのものに聞こえるのだ。  
「さて……お仕置きとはいえ、本人が望んでるんだもの。これじゃ、やめた方がかわいそうじゃない?」  
「う……」  
「だから、今更アンタにごちゃごちゃ言われる筋合いはないのよ。  
 だいたいアンタにしたって、今そこでジェットとよろしくやってたでしょ?  
「あ、あれはッ……不可抗力だしッ……」  
ヴァージニアは――いや、さりげなくジェットも。かっと顔が赤くなる。  
「……ま、いいわ。アンタにはとりあえず用は無いから。アタシが必要なのは、そう……ジェット」  
「……俺?」  
赤くなった二人のうち、ジェットだけがマヤに手招きされる。  
「ジェットがどうしたのよ?」  
「んー。実はねぇ……今まで、散々アタシの手でコイツを嬲ってあげてたんだけど、どうも焦らしすぎ 
ちゃってねえ。  
 今聞いた通り、思わず本音を漏らしちゃうくらいになってるのよ。  
 ちょっと気の毒になったから、そろそろイかせてあげようかなって思って」  
「……んなの、手前がやりゃいいだろ」  
確かにマヤがその気になれば、ベアトリーチェを絶頂に導くのは容易なことのはずだ。  
イく寸前まで何度も導いているのだし、それを止めなければいとも簡単に達することも出来るのに。  
それなのに、マヤはちっちっと指を振って否定の笑みを返す。  
「そこが甘いのよ。ちゃんとホンモノでイかせてあげれば、この子に刻まれる想い出も桁違いになる。  
 考えてもみなさい? 魔族って、アタシら人間を見下してるでしょ。  
 その見下してる動物にイかされる……こんな屈辱ってないわよね」  
「……そういうものかな?」  
なんとも奇妙な理屈だが、一応筋は通っている――ような気はする。  
「って、待ってよッ? それじゃ、ジェットがベアトリーチェと――」  
「やっちゃうってことね。何か不都合ある?」  
 
「そりゃッ……大有りよッ。だって、ジェットさっきまでわたしに優しくしてくれてたんだよ?  
 そんな、夢魔とだなんて――何か、わたしの気持ちが……」  
「嫉妬でもしてる訳?」  
「そうじゃないッ……けど、でも、ほら、やっぱり、なんていうか」  
「はい、アンタの負けね。明確な反論出来てないじゃない。それじゃ、ジェット借りるわよ」  
「うう……」  
すごすごとヴァージニアは引き下がる。それに。  
「って、俺の意思はどうなってんだッ!?」  
「飼い主が認めたんだからアンタがごちゃごちゃ言うんじゃないの」  
「飼い主ッ!?」  
ジェットの反論もあっさりと封じられ。  
また、三人が話している隙にどうにか身体をよじらせようとしていたベアトリーチェは――  
「……んあぁッ!?」  
「もう何も言いたことはないわね? じゃ、さっさとやりなさい、ジェット」  
そう言いながら、マヤはごく自然にずぶずぶと秘所に刺さっているものを押し込む。  
当然、熱く潤ったままのそこはあっさりと受け入れて、悲鳴をあげる羽目になる。  
「やりなさいたってな……そうだ、だいたいやろうにも、入れる場所が……」  
その視線は、ぐちゅぐちゅと音を立てるベアトリーチェのヴァギナに向けられているのだが。  
「……なんかいやらしい言い方……」  
じと目でヴァージニアはジェットを見る。  
「う、うるせ。とにかく、それじゃ出来ねえだろ」  
「……何も、入れる場所は一つじゃないでしょ?」  
「って……」  
マヤは。  
右手で秘所を責め立てつつ――左手は、その尻の穴をいじっている。  
 
「……そっちか?」  
形容しがたい顔で、ジェットはぼそっと呟く。  
「……マヤって結構危ないんだね……」  
ヴァージニアも似たような顔をする。  
「何がよ。こっちだって大して変わんないし、コイツの場合は別に排泄する場所って訳でもないんだろ 
うし……  
 感じてるみたいなんだから、だったら問題ないわ」  
「……お前な……」  
「反論しないッ!」  
ぴしゃり、と叱り付ける。  
 
「……なんだ。俺がこう言うのもなんだが……本当にいいのか? これは」  
縛られたベアトリーチェの、後ろの穴にジェットはペニスをあてがう。  
「いいのッ」  
「……おい、ヴァージニア。お前からも何とか言えよ」  
「……だって」  
何か言おうにも、その度にマヤがきっと睨み付ける。  
一度勢いに負けてしまった以上は、どうも勝てない気がしてならないのだ。  
「ほら、早くしてあげないとこの子が気の毒でしょ?」  
「……ったく……知らねえぞ、ホントにッ……」  
ゆっくりと――恐る恐る、ジェットはペニスを押し進めていく。  
「ふッ……ぅッ……」  
鼻で抜けるようにベアトリーチェは息を吐く。  
その瞳は、もうすっかり潤んでしまっていて、まだ反抗の火は消えていないにしろ弱々しい。  
「……うわ、ジェットのってああいう形なんだ……さっきはあんまりよく見てなかったけど」  
「い、いちいち言うなッ」  
半分ほどベアトリーチェの中に入ったあたりで、ヴァージニアに茶々を入れられる。  
「うくッ……!」  
膣内に入っているのとは別個の圧迫感が、夢魔を襲っているというのに。  
 
それでもジェットはず、ずっと押し込む。  
「う、あッ……あッ……!」  
ぎりぎりと食い締められるように、ベアトリーチェの後ろは異様な締め付けをする。  
前にも入れられているというのが大きいにしても、また凄まじい刺激だ。  
「なんかッ……凄いなッ……」  
「アタシも色々確かめてみたけど、コイツってこんなちっちゃいのにその手の方面はかなり優秀みたい 
でね。  
 ヴァージニアより、よっぽど気持ちいいんじゃない?」  
「それは……」  
「……何よ、それ」  
むっとした様子のヴァージニアから目を背けて、逃げるようにジェットはベアトリーチェの後ろに入り 
込んでいく。  
「くあッ……あああッ!?」  
周囲の会話は、ただ一人強制的に快感を味合わされる夢魔には届いていない。  
ジェットの方でも、もうそちらに集中することに決めたらしい。  
ぺたりと、腰が触れるほどに押し込んだ後――ゆっくりと引き抜く。  
「んぁッ……ぁあああッ……な、なんでッ……ふぁッ」  
「くッ……」  
全身を持っていかれるような、引き抜かれる感触。  
データである以上、今まで一度も排泄という行為をしたことはないのだが、尻から何か出ていくという 
奇怪な感触に夢魔は身を震わせる。  
「あ、貴方達ッ……こんな、わたしを辱めるようなやり方でッ……!」  
「さっきまでわたしに似たようなことやってたんだから、自業自得じゃないッ」  
「貴方なんかにそんなことを言われる理由はなッ……ひぁぁぁあッ!?」  
ヴァージニアと口論になりかけていたところに、ジェットがまたペニスを押し込む。  
マヤが散々に準備を整えていたようで、膣内とは違うながらも様々な液体で夢魔の胎内は濡れている。  
「こ、こんなのッ……覚えておきなさいッ、夢から覚めた時には――う、うぁぁッ」  
「……いちいち喋らない方がいいと思うけどな」  
縛られて、後ろから挿れられて。  
無残な姿を取らされていても、ベアトリーチェは意地でも三人を睨み付けている。  
とはいえ、ジェットのものが奥に入り込んでくる度に、  
「夢よりも更に昏い……ひぅッ」  
びくびくと身体を軽く痙攣させてしまうのだが。  
 
ず、ずちゅッ、ずちゅッ。  
膣内よりも、後ろの締め付けは凄まじいようだ。  
ジェットも、もたらされる快感にあまり早く動くことが出来ないでいる。  
「あッ……ひぁッ……やああッ!」  
「うぉッ……くッ」  
それでも動くたびにペニスを腸壁が嫌でも締め付け、快感へと導かれる。  
ベアトリーチェの方でも、なまじ機能が限定されている分だけ痛みは感じずに快感ばかりを受け止めて 
いるようだ。  
「やあ、やああッ! お、お尻にッ……ふぅぅッ……」  
ぐちゅぐちゅと湿った音を響かせて、夢魔とジェットの妖しい交わりは続けられる。  
「や、めッ……いや、んんッ……」  
睨み付けていたベアトリーチェの顔は、もう随分ぼんやりとしてきている。  
目もとろんとして、意志の光もやや弱まってきているようだ。  
「はあ、んあッ……」  
「……ううう……」  
そうやって、二人の交わりをじっと見つめていたヴァージニアは。  
「……なんか、複雑な気分」  
「ふうん? やっぱり嫉妬?」  
隣に来ていたマヤに言われて、思い切り焦る。  
「って、ち、違うってばッ。なんか、見たことないジェットだからびっくりしただけッ」  
「ま……なんでもいいけど。それとも、アンタも欲しくなってきたの?」  
「……マ、マヤッ!」  
「んー……アタシがしてあげよっか?」  
マヤはにやにやと笑っているが。  
「……遠慮しとく。もう、流石に今日は色々ありすぎて……そこまでいったら戻れなくなりそう」  
「あっそ。まあ、したくなったらいつでもどうぞ。現実世界でも受け付けるわよ?」  
「……ええぇぇッ!?」  
「それはいいとして。さて……と」  
 
ぐちゅぐちゅと見た目は小さな少女の肛門を蹂躙するジェットも、段々高まってきたらしい。  
「はぁ、やだ、やッ……ふぁぁぁッ!」  
「くッ、そろそろッ……」  
動きも僅かずつ早くなっている。  
ぴちぴちと、腰と腰のぶつかる音もそれなりに大きくなって、その速さを煽っているようだ。  
「ジェットー、ちゃんと中に注ぎ込んでやんのよー」  
「余計なお世話だッ……くッ」  
そう言っても、抜くことなど考えもつかない。  
「はあ、あ、ああッ……ぜ、絶対に許さなッ……あああああッ!」  
ずッ、ずッと奥へ奥へと打ち込まれるペニスの衝撃に、ベアトリーチェの全身が押される。  
本当に色々な液体が混ざって、結合部もずちゃずちゃと激しい音を立てているのだ。  
そして――ずんッ、と、それこそ内臓――夢魔にあるのかどうかはともかく、そこまで突き刺されるよ 
うな衝撃が走る、と。  
「あ……ああ、うぁぁぁぁぁぁッ……!」  
「ふッ……出す、ぞッ……」  
びゅ、びゅるッ。  
先ほど、ヴァージニアの膣内に注ぎいれたものと同じ想い出が、今度はベアトリーチェの尻の穴に注が 
れる。  
量もさほど変わりなく――今度は対消滅しない分、しっかりと飲み込まれる。  
「あ、あッ……うあ、こん、なッ……やだ、熱ッ……」  
「くッ……うぉッ……」  
びゅ、びゅッと、断続的に射精は続く。  
「……いいなあ」  
「やっぱり――やりたいんじゃないの」  
ふと漏らした一言にまで突っ込まれて、ヴァージニアはぶんぶんと手と首を振った。  
「だから違うんだってばッ」  
「そんなにしたいなら、現実で好きなだけやりなさい。どうせいっつも金魚のフンみたいに一緒なんだ 
から。  
 ……で、まだジェットの方は終わんないの?」  
奥に押し付けたまま、ジェットから吐き出される精は止まらないようだ。  
 
しばらく続いて、結合部の隙間からぽたぽたと白いものが零れ落ち始めた頃に。  
「……ふぅ」  
ずぷずぷと音を立てながら、ジェットはペニスを引き抜いた。  
同時に、  
「……おのれッ……くぅ……」  
ぐったりとして、ベアトリーチェも崩れ落ちる。  
「はい、お疲れ様。どうだった? ヴァージニアよりよかった?」  
「……答えたくねえ」  
本当に疲れたように、ジェットもぺたんと腰をつく。  
「何よ。若いってのに情けないわねぇ。だいたい、まだ終わった訳じゃないんだから」  
呆れたようにそう言うマヤに、ヴァージニアもジェットも驚かされる。  
「……んだとッ?」  
「ど、どういうことなの、マヤッ」  
「ね、ルシエドとラフティーナのミーディアム。持ってるんでしょ?」  
「え?」  
突然そんなことを言われて、二人とも少し戸惑う。  
とりあえず身を探ってみる――と、確かにマヤの言う通り。  
ガーディアンの力の象徴、ミーディアムが見つかった。  
「これが……どうかしたの?」  
「まずラフティーナのミーディアムをヴァージニアが装備なさい。そして、ルシエドはジェットに」  
「あ、ああ……」  
訳も分からないまま、二人とも指示に従っていく。  
「そしてジェットは……弱点属性補正を身につけるのよ」  
「……ああ、って、お前よく知ってるな。ミーディアムのこと」  
「勉強したもの。で、ヴァージニアは……」  
自分に矛先が向いて、少々びくりとしたものの、とにかくマヤの方を向く。  
「な、何? どうすればいいの?」  
「ウィークメーカー。この夢魔に、弱点をつけてあげんのよ。そう……弱点、お尻の穴……ってね」  
 
「……マ、マヤ……マヤッ!? あ、貴方ねぇッ! なんてまた、滅茶苦茶なことッ」  
「そういう使い方、出来ないの? ガーディアンなんだもん、それくらい」  
「そういう問題じゃなくて、貴方ッ……ねぇッ……」  
もう何と言っていいのやら。  
ジェットとヴァージニアは二人ともに唖然としてしまう。  
「やるの? やらないの? ここまで来て、まさかやらないってことはないわよね?」  
「……うう……」  
迫られると、どうも逃げ場を失ってしまうのは今までの経験則、だろう。  
結局のところ、マヤの強引な理屈に逆らうことも出来ず。  
ガーディアンの力を、また奇妙なことに使わされる羽目になってしまった。  
 
「……ごめんなさい、ラフティーナ。ルシエド。世界のみんなの愛と欲望。  
 こんなことに使われるなんて……その、みんなマヤの指図なんです」  
「アンタも大概いい性格してるわね……」  
ぼやきつつも、『愛の奇跡』を握り締め、ヴァージニアは意識を集中させる。  
愛の女神の微笑みが瞼に浮かぶ――と、すぐにその力は夢の中にあっても具現化された。  
「な、何をするつもりッ?」  
ぐったりとしていたベアトリーチェを、淡い光が包み込む。  
すぐに光は夢魔の身体に吸い込まれるように消えていったが、それは確かに彼女を蝕んでいる。  
「な、何なの……これは……」  
「気持ちいいこと、よ。……じゃあ、ジェット。仕上げよ」  
「……俺、本気でお前のこと怖いって思うな、今は」  
ルシエドの力が身体に走る。  
特に今回攻撃する、弱点を突く部分に――欲望の力は、じわりと宿ってきていた。  
「さ……どんなことになるのかしらね。何もなくてもあんな状態だったけど……」  
「……やりゃいいんだろ、やりゃ……」  
ゆっくりと。精液や色々なものでべちゃべちゃになっているベアトリーチェの肛門に、再びペニスが押 
し当てられる。  
「くッ……またッ……」  
もう諦めたように夢魔は呟く、が。  
「いくぞッ……」  
ずぷ、と。雁首が、入り口を過ぎた瞬間――  
「ぇ……え、あ、あああぁぁぁぁぁぁぁッ!?」  
まるで身体中で爆発が起こったような。  
今までの快感などはまるでおもちゃのようなそれが、ベアトリーチェを激しく包み込んだ。  
 
「な、なんで……何が、一体ッ……」  
はぁはぁと、息もひどく荒い。  
「何をしたの、貴方達ッ……」  
「説明より、やってあげた方が早いでしょ……ジェット」  
「……ああ」  
やや戸惑っていたジェットも、促されてまたず、ずッと奥に入れようとする。  
「あ、あああ、ああああ、ひぁぁぁぁッ!」  
少し奥に入るたびに、ベアトリーチェは凄まじい絶頂を迎えているようだ。  
「くッ……また、こりゃ……たまんねえなッ……」  
同時に、ジェットのペニスもきゅうきゅうに締め付けられている。  
「あー……あああッ……」  
声も掠れて、それでも夢魔は絶頂の叫びを漏らす。  
ぐちゅ、ぐちゅ、と少しずつしか進んでいないのに、彼女の身体は軽く限界を突破しているようなのだ。  
「こりゃ……効果は予想以上ね」  
「やあ、ああああ、もッ……壊ッ……れ……ぇえ、あぅあッ!」  
奥まで、ずぶりとジェットのそれはもぐりこんだ。  
「……ぐッ……俺も、そんなに持たねえぞ、この調子だと……」  
「あ……あぁ……うぁ……」  
完全に朦朧となっているベアトリーチェに、ジェットはまたゆっくりと引き抜く。  
少しずつ、先が中の肉壁に引っかかるたびに。  
「や……あ、あああッ……」  
声にもならない叫びをあげて、夢魔はどこかへイってしまう。  
「……ねえ、マヤ。いくらなんでもやりすぎじゃない?」  
「いいのよ。相手が相手だし、これくらいやれば改心するかもよ?」  
「そうかな……」  
釈然としない顔のヴァージニアに、何か満足そうなマヤはともかく。  
必死で耐えながら、ジェットは少しずつベアトリーチェの胎内を侵す。  
 
ずッ……ずッ。  
「はぁッ……あ、ぅ……ぁ……」  
僅かに抜き差しされる度に、ベアトリーチェは掠れた声で喘ぐ――いや、叫んでいる。  
もう、何もかもが限界線を軽く越えてしまっているようだ。  
「く、う……やべ、俺もッ……」  
その彼女に釣られるように、ジェットのそこも圧倒的な締め付けによってびくびくと震えだした。  
それでも必死で耐えて、ずちゅずちゅと意地のように動きを速める、が。  
「や……あ……もう、や……やめ……いや……う……あ……あ」  
完全に声にならない声で、ベアトリーチェは悶えている。  
そして、ジェットもまた。三度目の波があっさりと近づいてくる。  
「くッ……」  
「ん、今回はちょっと早かったわね」  
「……だから、いちいちうるさッ……つッ」  
途中で少しベアトリーチェの胎内に引っかかる。それが、また激しい快感となって身体を駆け巡った。  
「は……ぁ……ぁ……」  
完全に止まっている夢魔の胎内を、ずんッと力強く押し貫く。  
――それが、最後の一撃となった。  
「あ……あああああああああ!」  
限界を超えた果ての叫びを、ベアトリーチェが吐き出したと同時に。  
「ふッ……つッ!」  
どぶ……びゅるるるるるるッ!  
またぐちゅぐちゅの粘液が、夢魔の身体に吐き出されていく。  
「ああ、あ、熱ッ……もッ……もうッ……もう、完全、にッ――」  
「くッ……うぉッ……」  
びくんとジェットのものが震え、熱い精を吐き出すたびに、ベアトリーチェは無理やりに高みへと上ら 
される。  
「うわ……確かに、やりすぎたかしらね……」  
「そんな、今更……」  
呆れて、ヴァージニアがベアトリーチェの顔を見つめた、その時。  
 
「……ぁ」  
小さな呟きが、その小さな口から零れる。  
それとまったくの同時に。城の壁が透明になり、完全に消えてしまう。  
「え、え、何ッ?」  
「……何だ?」  
まだベアトリーチェの中で吐き出していたジェットも、その様子には戸惑いを覚える。  
「…………」  
その夢魔は、完全に身体を弛緩させて動けなくなっているようだが。  
次には、床が消えていってしまった。  
「な、何なの、マヤッ?」  
「あ、アタシにもわかんないッ……」  
かと思えば、全体が真っ青な色で塗りつぶされていく。  
そうして、世界全てが青く染まって、何もかもが止まった次に――  
 
 
――その日は、本当によく晴れた青空であった。  
「う……ん、久しぶりにいい気持ち……よく寝たみたい……」  
ふあ、とあくびをすると、ヴァージニアはベッドの上で存分に伸びをした。  
「こういう目覚めだと、一日気分いい……あれ?」  
ふと気づくと、ベッドの袂に何故だかジェットとマヤが眠り込んでいる。  
「……なんで、こんなとこにいるの?」  
首を傾げても、さっぱり見当もつかない。  
そうしているうちに、その二人もぱちりと目を開けた。  
「……ん。あ、ヴァージニア。おはよ」  
「お、おはよう、マヤ」  
「……こりゃ……うんざりだぜ、ったく」  
「え? どうしたの、ジェット?」  
マヤとジェットは、とりあえず顔を見合わせた。  
 
「……こいつ、やっぱり覚えてないのか?」  
「アタシらはともかく。この子は普通に夢見てただけだからねぇ……  
 元々、悪夢たって覚えてなかったんでしょ。……ま、いいじゃない」  
「……やれやれ」  
小声で話していると、ヴァージニアが目を擦りながら声をかけてきた。  
「ねえ、どうしたの、二人とも? こんなとこで寝てたなんて、身体痛くない?」  
「……まあ、多少はね」  
「それじゃ……とりあえず、朝ごはんにしよっか?」  
「……ああ」  
複雑そうな二人を残し、ヴァージニアはふらふらとベッドを降りていった。  
「……なんか虚しいわね」  
「同感だけど……俺の場合は手前のせいだな。間違いなく」  
「……さっさと報酬貰ってアタシは帰らせてもらうわよ。まったく馬鹿馬鹿しい……」  
「こっちのセリフだ。ったく……」  
「ねえ、二人ともッ。早く行こ?」  
呼ばれて、二人は少し顔を見合わせた後。  
肩を落として、ヴァージニアについていった。  
 
 
その頃。どこか、真っ白い空間で。  
「……く……ふ……ぅぅ……」  
夢の強制終了――致命的なエラーにともなうシステムダウン。  
そんな形でどうにか災難を逃れたベアトリーチェではあったものの。  
「まだ、べたべたするじゃないッ……」  
どういう訳か、身体に染みつけられたジェットの精液――想い出が、まだ残っていた。  
「奴らめッ……あれほどの、辱めをわたしにッ……! ああ、それにしてもなんで削除できないのッ」  
身体を水――のようなもので洗い流しつつも、夢魔はぼやき続ける。  
「今度ッ……今度あったらッ……今度……」  
けれど、少しだけ彼女の声は小さくなった。  
「……また、もう一度……ってッ!」  
そんな自分を誤魔化すように、また念入りに身体の汚れ――不良クラスタを修復する。  
「こんなシステムエラーを出してくれるんだから、絶対に――必ず、この復讐はッ」  
自分でも、少々困惑しながら。  
夢魔は、ただただ自分の浄化に励んでいた、ようである。  
 

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