悠久の時を生きるノーブルレッド、その唯一の生き残りがマリアベル・アーミティッジ。  
ファルガイアを襲った二度に渡る危機を退け、今はひとまず悠々とした生活を送っているようだ。  
その日も己の居城にてゆったりと午後の紅茶などを楽しんでいたのだが、静寂の時間を破る者が現れた。  
たんたんと、床を駆ける音が居間にまで響いてくる。  
「むう?」  
カップをテーブルに置いて、怪訝そうにしている――と、扉を騒々しく開け放って一人の少年が現れた。  
「少年アームズ参上ッ! って、俺一人なんだけどな」  
「なんじゃ、トニーか」  
ほう、とマリアベルはため息をついた。  
彼はトニー・スターク。先だっての戦いで知り合った、友人の一人だ。  
少年時代の真っ盛りを生きているような、言ってみれば子供であり、幾千年の時を生きるマリアベルか 
らすると赤ん坊もいいところではある。  
そのはずなのだが、何故だかトニーからは妙に懐かれているようで、こうしてたまに遊びに来たりする。  
「お主、わらわの城に入ってくる時は玄関のインターホンを鳴らせと言うたじゃろうが。  
 賊でも入ったのかと思ってちと不安になってしまったわい」  
「あ、忘れてた」  
「忘れてたって……ほんの一ヶ月ほど前に言ったばかりであろうがッ」  
「一ヶ月もすりゃ忘れるのには十分なんだよッ!」  
「胸を張っていうことか、このバカチンがッ!」  
しばらく、ノーブルレッドに蓄積された表現技法の粋を凝らした叱責が続く。  
相手が相手なら深く心の底まで抉るような叱責になっているのだが、いかんせんトニーはまだ少年であ 
る。  
ついでに、彼はあまり難しいことを考えるのは好きではない。  
延々続いた説教も、平気で欠伸を見せるトニーの前にはやがて力を失い、停止してしまう。  
「まあ、ともかく。今度からは気をつけるんじゃぞ」  
「ん、多分な」  
「多分ではないわい。まったく……とにかくじゃ。お主、今日は何用でここへ来た?」  
「マリアベルが暇してるとかわいそーかな、って思って」  
「思いっきり余計なお世話じゃ。むしろ優雅な午後が台無しになったわ」  
などと言いながらも、マリアベルは満更でもない。  
顔をしかめてはいるものの、言葉の端には弾むような響きがある。  
「いや、ホントは別のことなんだけど」  
 
トニーの言葉に、少しだけノーブルレッドは目を細める。  
「ほほう。まあどうせお主のこと、遊ぶだのなんだのという下らぬ用件であろうが」  
「マリアベル、俺のことバカだって思ってるだろ?」  
「当然」  
「ひっでー。俺だって、色々と考えてるんだってのにッ。  
 そんなんじゃなくて、教えてもらいたいことがあるから来たんだよッ」  
「ほう?」  
豪勢な椅子に深く腰掛けていたマリアベルは、それを聞いて少し身を乗り出す。  
「ほら、前に知りたいことがあったらなんでも教えてやるって言っただろ」  
「うむ。わらわの知識はファルガイア一じゃからの」  
「だからさ、わかんないことが出来たんで、それを聞きに来たんだ」  
ふふ、と彼女は微笑む。  
向学心のあるニンゲンは嫌いではない。遥か昔、焔の災厄の以前にもそんな連中と友人になったことが 
ある。  
トニーなどは一見すると腕白盛りで技術だのには興味がなさそうなのだが、素質はあるとマリアベルは 
踏んでいた。  
「なかなか殊勝な心がけじゃのう。うむ、何でも聞くがよいぞ?」  
「ああ、悪りぃな……」  
再びマリアベルは紅茶のカップを手に取った。  
ゆっくりと薫り高い液体を口に注ぎ、トニーの言葉を待つ――と。  
「あのさ、子供ってどうやれば作れるんだ?」  
「ぶッ!」  
口の中の液体は、思い切り外の世界へと飛んでいく。  
しぶきとなって城の床を濡らしつつ、その一部は対面のトニーにも浴びせられた。  
「うわ、きったねッ! 何すんだよッ!」  
「な、何するもなにもッ……お、お主な」  
取り繕うように布で口元を拭いながら、マリアベルはごほんと咳きをする。  
「子供の作り方って、なんでまたそんなことを、唐突に」  
「その前に、俺も顔拭かせてほしいんだけどさ」  
「むう」  
上質な絹の布を渡されると、トニーはごしごしと顔を拭いた。  
 
「うわー……なんだ、こりゃ。すっげえ柔らかいんだな、これ」  
「ふふん、ノーブルレッドともなればそれくらい当然じゃ。  
 感激したなら、なんでそんなことが知りたいのかさっさと言うがよい」  
「あ、うん……あのさ、アシュレーの兄ちゃんとマリナ姉ちゃん、子供二人も作ってただろ?」  
「うむう。そうじゃったのう……」  
少しだけ、マリアベルは過去に思いをはせた。  
と言っても、そんなに昔という訳でもない。ほんの数ヶ月前のことだ。  
ロードブレイザーを駆逐してから一年、アガートラームの元にかつての仲間が集まった時。  
リーダーとして皆をまとめていた青年アシュレー・ウィンチェスターは、なんと子供を二人も連れてき 
ていたのである。  
(計算すると戦いの終わった直後じゃろ……若いからというて、まったくお盛んじゃのう)  
妙に年寄りじみた思考をしてしまったことは覚えている。  
「……で、それがどうかしたのか?」  
「それでさ、兄ちゃんどうやって子供作ったんだ? って聞いてみたんだよ。そしたら、いきなり一発 
殴られた」  
「そりゃ……まあ、当然じゃの」  
「なんでだよッ!?」  
トニーは――なんとも、憤まんやるかたないといった様子ではある。  
今年で14になるはずの少年だが、まだそんなことも知らないのだろうか。  
「教育の問題かのう……いや、お主ももうちょっとすれば確実に分かるじゃろ。  
 っていうか、まだ知らんかったのか、お主は」  
「そんなの、わかる訳ないだろッ」  
「なんじゃな……ティムあたりは知ってそうなんじゃが、聞いておらんのか?」  
「絶対知ってると思うんだけど……その手の話題になるとあいつ逃げるんだよ」  
「……まあ、言えないじゃろな」  
「なんでだよ? そうやって、みんなして俺をのけ者にしてるのか?」  
「そういう訳でもないんじゃろうが……」  
「だったら、マリアベル教えてくれよ。なんでも知ってるんだろ?」  
「う……む……」  
 
当然、マリアベルだってニンゲンの性交くらいは知っている。  
いや、過去の悪友のせいで下手をしたら知識だけは人並み以上かもしれない。  
だとしても、こういう無邪気な少年にはっきり教えてよいものか。  
「あ、あのな。そういうのは、やっぱり自分で努力して、じゃな……  
 人に聞くようなもんではないと、わらわはそう思うぞ?」  
「なんだよッ。お前までそんなこと言って」  
「だから……その、なんというかじゃな……というか、お前呼ばわりはやめい」  
「わかった。やっぱり、マリアベルも知らないんだろ? 子供の作り方ッ。  
 だから、えらそうなこと言って教えないつもりなんだッ」  
「……お主、よくもそんなことを言えたもんじゃな……」  
段々、トニーの言葉も滅茶苦茶になってきた。  
どうも意地になったらしい。  
「知ってるんなら、教えてくれたっていいだろッ! なんでも教えてやるって偉そうに言ったくせにッ 
!」  
「そ、それとこれとは……」  
「嘘つき」  
「ぐ……むう」  
トニーの純粋な視線が妙に痛い。  
「わ……わかったわい」  
仕方なさそうに、がっくりと肩を落として。マリアベルは嫌そうに頷いた。  
「お、ホントかッ!?」  
対照的にトニーの顔はぱっと輝く。  
「まあ、あくまで学術的、生理学的に教えるんであって、変な意味なぞはないからの」  
「なんかよくわからんけど、教えてくれるなら早くしてくれよッ」  
なんとも無邪気なその言葉に、ますますマリアベルの気力は抜ける。  
「ああ、教えるから。……アナスタシアがこういう時にいてくれたら楽なんじゃがのう……」  
「穴?」  
「なんでもないわい」  
 
そうして、やってきたのは生物学などの書物が置かれている部屋であった。  
「さて、確かニンゲンの生理学はこの辺じゃったか……ん?」  
ずらりと並べられた本を眺めているうちに、ふと気を引くタイトルを見つける。  
いわく、『楽しく学ぼう、子供のできる仕組み』。  
「……こんな本入手した記憶ないんじゃが。まあよい……」  
棚の上の方にあるので、そのままでは手が届かない。  
軽く舌打ちしてから、自分に付き従う二つのデバイスに指令を送る。  
精神感応型デバイス、アカとアオは主の思う通りにすいすいと動き、すぐにその本を持ってきた。  
「タイトルからして、これには載ってるはずじゃが」  
「へえ……んじゃ、読もうぜッ」  
うむ、と軽く返事をしてからテーブルの上に本を広げ、まず1ページ目からゆっくりとめくっていく。  
前書きや目次が並んでいるが、とりあえずその辺はざっと飛ばして。  
ぱらりとめくった次のページには――ほとんど唐突に。  
『男の子がでっかくなったペニスを女の子の……』  
「ぶッ!」  
本日二度目の吹き出しである。  
今飛んだのは、マリアベルの唾液で――それは、また不運なトニーに飛んできた。  
「またかよッ!?」  
「す、すまぬ……」  
なんというか、表現があんまりである。  
「……ペニスってなんのことなんだ?」  
「それは、その、あのじゃな……」  
しどろもどろになるマリアベルは置いておき、トニーはまたページをめくった。  
そこには。  
「うわッ!? なんだ、これッ!?」  
「ぶふッ!」  
またしても唐突に、そのページには一つのイラストが描かれていた。  
内容は――男女の交わりの図、である。しかも、学術的とは程遠い、官能的なそれが。  
「な、なんだ、こりゃ……」  
「……どーもおかしいのう」  
 
しばらく読み進めていったが、やはり学術的とはとても言いがたい内容のオンパレードである。  
体位の説明などまであるし、特殊な嗜好にまで言及されている始末だ。  
下手をしたら、これは官能コミックの部類にさえ入るかもしれない。  
おかげで何も知らなかったはずのトニーでさえ、妙に詳しくなってしまう。  
「……なんか、妙にドキドキするッ……」  
「ううむ……」  
それなのに何故だか読み進める目とページをめくる手を止められず――最後のページ一つ手前にまで来 
てしまった。  
「えーと、精子と卵子が……へえ」  
ここに来て、ようやく受精の仕組みが説明されているようだ。  
「……なんで最後だけなんじゃ、これは」  
頭を抱えつつ、そのページも読み終える。  
「なるほど……つまり、兄ちゃんとマリナの姉ちゃんが二人でこーゆーことをして、それで作ったって 
んだな」  
「……そーゆーことじゃ」  
随分遠回りして、おまけに妙な知識を沢山トニーに仕込んでしまったものの、どうにか子供を作ること 
の仕組みは伝えられたらしい。  
「はあ……変な本じゃったのう」  
「いや、バリバリ為になったな、俺」  
「むむう……」  
若干の頭痛を感じながら、マリアベルは最後のページをめくった。  
と、そこには一枚の紙が挟まっている。  
「なんだ、これ」  
「ふむ」  
なんとも古びていて、少し衝撃を与えると崩れてしまいそうな印象さえある。  
注意深く取り出して、その表面を眺める――と、かすれかけているが文字が書き込まれているようだ。  
「なんだ? なんて書いてる?」  
「まあちょっと待っておれ……どれどれ」  
 
『お姉さんからのプレゼント、楽しんでもらえたでしょうか。  
 マリアベルって奥手だし、そういうことするのに知らなかったら困るかな、と思って。  
 だから、私のコレクションを色々抜粋して、こんな本作ってみました。  
 じっくり読んで、沢山勉強して。いざって時に役立ててね。  
 貴方の友人より』  
 
「……あ奴か」  
「え? 誰のことなんだ?」  
どうも、『彼女』が自分で編纂した本だったらしい。  
「お節介にも程があるっちゅうか、勝手にこんなことしおって。  
 わらわの蔵書を汚すでないわい、まったくたわけめが……」  
ぶつぶつと呟きつつも、マリアベルは感慨深そうに目を閉じる。  
困ったものだが、わざわざそこまでして――  
「あれ、もう一枚あるぞ」  
「何じゃと?」  
確かに、もう一枚同じように古びた紙が挟んであった。  
やはり文字が書き込まれているので、また慎重にその紙を取る。  
「今度はなんだ?」  
「うむ、今読むからの」  
 
『PS ついでに、ちょっと研究中の技術ってのも試してみたり。  
 サブリミナル効果とか、クレストソーサーを応用して、  
 一度開いたら最後まで確実に読ませるようにマインドコントロールする仕組みになってるはず。  
 ついでに、そーゆーいやらしい気分になるような細工もしておいたから、楽しんでね』  
 
「……何じゃとッ!?」  
読み終えて、慌ててマリアベルは自分の胸に手をおいた。  
「む……普通じゃの」  
取り立ててドキドキしている様子はない。  
本を止められなかったので、読ませるという機能は効いていたようだが。  
「ま、本読んだだけで変な気分になってはたまらんからの。アナスタシアめも、そこまでの……」  
言いかけて、ふと隣のトニーを見た。  
少しばかり口数が少なくなったような気が、しないでもない。  
「……トニー?」  
「あ、ああ。なんだ?」  
「今、どんな気分じゃ?」  
「どんなって……なんか、ドキドキする」  
「……そ、それで……他には?」  
「えっと……」  
少年は、じいっとマリアベルを見つめている。  
「……な、なんじゃ」  
「その……」  
妙にとろんとした目つきで、トニーはじっと彼女を見る。  
と、不意に少年はその手をマリアベルの頬に伸ばした。  
「むッ!?」  
「……マリアベル……」  
「あ、あのな、トニー、その、まさか――」  
「……好きだッ!」  
がばッと。覆いかぶさるように。  
トニーは、その腕でノーブルレッドを抱きしめて――冷やりとした唇に、自分のそれを重ねた。  
「ッ!? な、何をッ……ふぅッ」  
そのまま、少年の舌が侵略してくる。  
こういうキスの仕方は、確かあの本にも載せられていたはず。不自然さは残るにしても、学習の成果と 
見るべきか。  
 
だが、それを許しておくのは誇りや様々の観点からいってとてもできるものではない。  
「え、ええいッ!」  
強引にトニーを引っぺがすと、ぴしゃりとマリアベルは叱り付ける。  
「突然に無礼な真似をするでないわッ! 暗示だかなんだか知らんが、高貴なるわらわにそのようなこ 
とが許されると」  
「そう言われても……なんか、おかしいんだよ、色々……」  
「いいから正気に戻らんかッ。まったく、わらわの唇を奪うなぞ、本来万死をもって償うべ……」  
「マリアベルッ」  
話を聞くのもそこそこに、またトニーは抱きついてくる。  
「た、たわけがッ!」  
「なんかドキドキして、熱くって……マリアベル見てると、変な気になる……」  
「い……いい加減にせんかッ」  
どうも完全にやられてしまったらしい。  
「ええい……しばらく、眠っておれッ!」  
なんとか正気に戻してやろうと、レッドパワーの一つ、スリープを使おうと意識を集中する。  
その赤い瞳がとろんとしたトニーの瞳に映されて、異界の力が弾けようとする――寸前に。  
「え……あ……」  
どくん、と、マリアベルの中で何かが動いた。  
「な、なん……じゃ……?」  
ノーブルレッドの体温は低い。人間のそれと比べると明らかに冷たく、永きを生きる為の緩やかな生命 
活動に他ならない。  
だというのに、今のマリアベルの身体はどくんどくんと恐ろしいほどに脈打っていた。  
身体を駆ける血流は早く、今までにない熱さを生み出している。  
「ま、まさか……これは――」  
アナスタシア・ルン・ヴァレリアは、剣の聖女として名を残した。が、それだけではない。  
彼女はまた、優秀な技術者でもあったのだ。アカとアオは彼女の手になるものである。  
更に、マリアベルとの交友の中でノーブルレッドの技術を吸収する機会もあった。  
つまりは、  
「遅効性……という、こと……かッ……」  
トニーをおかしくしてしまった暗示は、彼女に通用しなかった訳ではないのだ。  
「何百年ぶりに……たばかられた、わいッ……く、ふうッ……」  
――漏れた吐息は、自分のものとも思えないほどに熱かった。 
 
トニーはぎこちないながらもその唇を寄せてくる。  
少年の熱を口付けを、今度はマリアベルは容易に受け入れていった。  
「む……んんッ……」  
本で学んだ通りにやろうとしても、やはり繊細などとはまるでかけ離れたようなやり方だ。  
かつて、アナスタシアが戯れにキスしてきたこともある。それを思うと、あまりに単純というしかない。  
ある種微笑ましくもあるのだが、身体の中で膨れあがる何かが、マリアベルを急かそうとする。  
「……もうよいわ」  
低い声を出して、マリアベルは唇を離した。  
「え?」  
「……ふん。こうなったら、アレじゃな。これから実地訓練といくぞ、トニー」  
「く、訓練?」  
「お主はあまりに未熟すぎる。ゆえに、わらわが直々に子作りについて教えてやろうというのじゃ」  
「あ、えーっと?」  
「行くぞ。このような書庫では出来るものでもないわッ」  
ぱちんと指を打ち鳴らすと、アカとアオがすいすいと動いてトニーを捕獲する。  
二つの機械は小さな見た目には似合わない力を発揮して、少年の身体をぐいっと持ち上げてしまう。  
「ま、マリアベル?」  
「では……急ぐぞ」  
 
育ち盛りのトニーである。体重も段々と増加しつつあるところだ。  
それでもアカとアオにとっては軽いもので、気づけば豪奢なベッドの前に運ばれてしまった。  
隣には、変わらず火照った顔のマリアベルがついてきている。  
「この部屋にはなまじのことでは入れるものではない。感謝するんじゃな、トニー」  
「あ、え、え?」  
きょとんとしたままの少年を、アカとアオはひょいっとベッドの上に放り投げた。  
「うわッ!?」  
どさりとシーツの上に落ちる。ベッドのスプリングは、少年の体重を簡単に受け止めてくれた。  
「すっげー……ふかふかだ……」  
上質も上質、メリアブール王でもこれだけよい寝具は使っていないであろう。  
豊かな暮らしなどとは限りなく離れた生活をしていたトニーにとっては、最早別世界の心地でさえある。  
――と、カルチャーショックを受けている彼を尻目に、マリアベルもベッドの上にのぼってくる。  
「そんなことはどうでもよかろう。ほれ、抵抗するでないぞ」  
「……え?」  
瞳を赤く輝かせると、戸惑うトニーに彼女はがばっと覆いかぶさった。  
「血、血かッ!? 血吸うのかッ?」  
「気が早いわッ!」  
少年の上にのしかかって、威圧するように見下ろす。  
「お、おい……」  
「ふふん。アカとアオッ!」  
また、例のデバイス二つが飛んでくる。今度はトニーの腕を押さえて、動けないようにした。  
例の暗示はまだ続いているのだろう、彼の身体も火照っている。  
それには構わず、ゆっくりと手を動かしていき――  
ところどころ汚れて、生地も痛んでいるズボンに手をかけると。  
ぐい、と。一気に、下着ごとそれを奪い取った。  
「う、うわッ! 何するッ……」  
「だまらっしゃいッ。実地訓練と言うておろうがッ!」  
年季の入った威圧で黙らせると、改めてマリアベルは視線をトニーの下半身に向けた。  
 
貧弱というには程遠いが、鍛えている様子もない。  
とりあえず日々遊びまわっているだけに、健康そうなのは確実だ。  
「うむ。若いうちは健康第一じゃからの、ここは合格じゃ」  
「う……」  
トニーとしては、腕はともかく足は自由なので暴れようと思えば暴れられるはずである。  
が、マリアベルがじっと自分を眺めているのを見ていると、どうもそんな気が薄れてきてしまう。  
「さて、問題はここじゃが……」  
一方の彼女は何か躊躇するでもなく、視線を動かしてトニーの下腹部、その下に位置する場所を眺めた。  
少年の血液が今、一番に集まっている場所――要するには性器である。  
「ほほう……お主、なかなか早熟ではないか」  
「へ、変なこと言うなよッ……」  
そっと手を伸ばして、ぴくぴくと小さく波打つそれを掴む。  
一応は陰毛も生え揃っており、またペニス自体もそこそこに大きい。あくまで年齢に比して、ではある 
が。  
「ふむ。きっちり成長していけば、それなりには誇れるかもしれんの」  
「……へ?」  
そのまま、しばらくそれをくいくいと弄ぶ。  
包皮はまだ被さったままで、臨戦態勢とはやや遠いのだが――  
それでも、冷たいノーブルレッドの手が与える刺激が、トニーの脳髄を駆け巡る。  
「う、うわッ……な、んだ、これッ」  
「む。また大きくなってきたか?」  
少しではあるが、少年の昂ぶりにともなってペニスは更に充血しようとしているようだ。  
「お主、そういえば精通はしておるのか?」  
「せ、せいつう?」  
「……ふうむ。まあ、それならそれで……こうすれば早い話、か」  
完全な状態にするために。マリアベルは、また瞳を赤く輝かせてトニーのそれを見つめる。  
「行くぞ……グレートブースターッ」  
これもまたレッドパワーの一つ。ヒーローを呼び出すという奇怪なモンスターが操る技で、大変な力を 
得られるというものだ。  
力は一つの場所に集中して、一気に膨れ上がる。  
結果は極めて単純――トニーのペニスは、たちまち容積を増やして完全に覚醒した。  
 
「これでよし、と」  
「な……なんか、熱ッ……」  
「一応、実際に使えるかどうかは確認させてもらおうかの」  
もう立派にトニーのものはピンクの姿を晒しているが、ところどころに白い垢が残っている。  
少しばかり眉をしかめると、またマリアベルは力を振るった。  
今度は、彼女の指先から光線のようなものが飛び出てくる。  
瞬間、ペニスの周りをかすめると、その光はすぐに消えていった。  
「除去は完了じゃ。やむを得ないとは言うても、少々汚かったからのう」  
「……?」  
光とともに、ペニスの汚れも消えている。  
つまりは、その力で恥垢を焼いて消滅させた、ということらしい。  
「……なんか、物凄くヤバいことされたような気が……うぁッ」  
きょとんとして呟いたトニーに対して、マリアベルはしゅっと軽くペニスをしごく。  
「手元が狂えばその性器ごと焼ききってしまうところじゃったからな。  
 わらわに限ってそんな失敗はありえんのじゃから、別にそれは構わんがの……さて」  
小さなノーブルレッドの手は、ぴくぴくと滾るそれを緩やかに嬲り始める。  
「な、なんだよ、それッ……う、あ、わッ……」  
「まあちょっと待っておれ。どうせこの状態じゃ、それほど時間はかかるまいて」  
指先で擦るように、熱くなっているペニスを刺激する。  
生まれて初めてそんな場所をいじられ、しかも冷たい指がもたらす感覚はどこか上へと押し上げるよう 
な印象を与えてきて。  
途方に暮れながら自分のものをしごくマリアベルを見るうちに、トニーは背中のあたりがむずむずとす 
るのを感じた。  
「あ、あれ? これ……」  
「もう少し……かの?」  
少しばかり強さを増したペニスの脈動を指先から感じ取り、マリアベルは与える力を同じように少し強 
めた。  
段々と入り口の先からとろりとした液体が零れ始め、指先の動きを滑らかにしていく。  
「な……うぁ、こ、これ、な、何がッ……」  
「もうちょっとじゃからの……」  
くちゃくちゃと湿った音が、指とペニスの間から流れる。  
 
身体の底から、何かどろっとしたものが飛び出そうと蠢いている。  
トニーは、ペニスの先から伝わる感覚が呼び覚ますそれに、なんとも言えず戸惑っていた。  
普段、そこから出るものと言えば小便だけで、今漏れている妙なものの正体さえも見当がつかない。  
先ほど読んだ本の中に何か記述はあったような気がする――が、もう何もかもがぼんやりとしていた。  
「ま、マリアベル……俺、なんか……ッ」  
「自然なことじゃ。これはな」  
「そ、そうなのか?」  
「わらわの言うことに間違いなぞはないわい」  
はっきりと言い切ると、よりくちゅくちゅと指の動きを速める。  
それだけでなく、手のひら全体で包み込むように刺激する。  
ますますひんやりとした感触が熱いペニスを包んで――  
その瞬間、トニーの奥底から、更に熱い何かが飛び出してくるのが伝わってきた。  
「う、うわッ!? な、なんか漏れるッ」  
「よし……出してよいぞッ」  
くびれの部分を、マリアベルの小さな指がそっと撫でたと同時に。  
ぴゅッ……びゅる、るッ。  
控えめな勢いながら、白い液体が先端から飛び出てくる。  
「うあ……くぁ、こ、これッ……な、なんかッ……」  
「ふむ……」  
アナスタシアの暗示に加え、グレートブースターによる強制的な精力の増加。  
強引にも程があるのだが、ともかくトニーは精を導かれた。  
「うむ、これでお主も立派な男の一員……いや、ちと早いか」  
「く……うぅ……」  
戸惑いながらの射精で、勢いはすぐに収まってくる。  
それでも、身体に刻み込まれた初めての快感は、トニーの顔をわずかに変えた。  
「い、今のが……」  
「これが精液、じゃ。さっきも学んだじゃろうが、今のを女性の胎内に注ぎ、そして卵子と結びつくこ 
とで子供が生まれる」  
「注ぐ……?」  
「今みたいに外に出すのは本来はイレギュラーなことでな。通常はこの……」  
うなだれつつあるペニスを、くっと掴む。  
 
「……ふん。生殖器をじゃ。女性の生殖器に挿入し、そして中で精を放つのじゃな」  
「な、中、って。どこから入るんだよ?」  
「女性と男性では身体の造りが違うからの。具体的にはじゃが」  
スカートをめくりあげて、マリアベルは器用に下着を脱いでいく。  
随分豪華なものなので、少々時間はかかるが――トニーはじっと待っていた。  
やがて下着を脱ぎ終えると、足をそっと開いてみせた。  
「わ……わらわのここなぞ、本来ニンゲン如きが見ることさえ恐れおおいことじゃからな。  
 有難がって……それから見るんじゃぞ」  
「あ、ああ」  
マリアベルに握られたことで、妙にペニスは力を取り戻しつつあったのだが。  
ともあれ、彼女の言葉に逆らうのもやや怖いものがあるので、素直に言葉に従う。が。  
「あのさ」  
「ん?」  
「あんまりよく見えない」  
下着は脱いだにしても、スカートはまだそのままである。  
多少足を開いたくらいでは、どうしたって影になるのだ。  
「いちいち注文が多いのう。ならば、こう……すれば、見える……じゃろ」  
思い切った様子で、マリアベルはスカートをたくしあげた。  
それによって、ようやく彼女の秘所が表に出てくる。  
――数千年の時を過ごしてきたと言っても、ノーブルレッドの時間は人間のそれとは大幅に異なる。  
薄く繁みはあるものの、まだまだその場所は未熟で、僅かに見える肉の色も初々しい。  
それでも少しは湿っているのだが、やはり準備万端という訳ではなさそうだ。  
「……み、見えたか?」  
「一応。やっぱ、違うんだな……ついてないし」  
「……当たり前じゃッ」  
トニーは興味津々の様子でそこをじっと眺める。  
男性には有り得ない肉の穴と、そこから僅かに染み出てくる液体は、ややグロテスクながらも少年の好 
奇心を刺激する。  
「で、見えたのならば……とりあえず、トニー。ちと触ってみい。許してやる」  
「さ、触る? どこを?」  
「お主がそうやってじっと穴の開くほど眺めてる場所じゃッ。まったく、物分りが悪いのうッ」  
 
「穴の開くほどって、もう開いてるんじゃ」  
「……バカチンがッ!」  
トニーの顎に、軽くアカが体当たりする。  
「ぐえッ」  
「ともかく……丁寧にするんじゃぞ。繊細な場所なんじゃからな」  
「いっつー……あ、うん」  
今度は素直にその言葉に従い、マリアベルの入り口近くに指を持っていく。  
恐る恐る、触るか触らないかというくらいに、繁みのあたりを指はさ迷う。  
「どうも……じれったいのう」  
「丁寧に、ってマリアベルが」  
「加減っちゅうもんがあるじゃろが。ええい、ならばッ」  
トニーの右手をぐいっと掴むと、そのまま自身の秘所に持っていく。  
「あ、うわッ?」  
「余計な力は入れるでないぞ」  
指先を伸ばさせたまま、そっと入り口付近の少しだけ湿った肉壁に這わせる。  
「ん……」  
ぴく、とそこから小さな刺激が生まれたが、構わずマリアベルはトニーの手を動かす。  
「こういった具合に、じゃな……ん、女性の生殖器っちゅうのは……ふぅッ……大変に繊細なものなの 
……じゃ。  
 よって、男性はそれを大変……はぁ……丁寧に扱わねばなら……ぬ。わかったか?」  
ところどころで小さく身体をよじらせつつも、そう言って少年を教育してみる。  
トニーの方は、  
「……なんかよくわかんないけど、柔らかいってのはわかった」  
「むう……」  
などといった具合で、あまり身が入っていなかったようではあるが。  
「では、次は実際に丁寧に扱ってもらうからの」  
言いながら、マリアベルはトニーの顔に指を添えた。  
「え、な、なんだ?」  
小さな指は、そのまま彼の口に置かれる。  
「ここで、じゃ。わらわの大事な場所を、丁寧に扱ってもらうぞ」  
 
「口……って、どうすんだ? 食べるのか」  
「……お主は学習せんな。食べてどうする」  
「他には……え。まさか、その……な、舐めたり?」  
「うむ」  
こくんとノーブルレッドは頷いた。しかし、トニーはどうもげんなりした表情になる。  
「でもそこって、汚いんじゃないかって……」  
「わらわに限ってそんなことがあるものか」  
「……でも、やっぱりしょんべんとか……」  
「いいからさっさとせいッ!」  
「は、はいッ」  
急かされて、慌ててトニーは顔をマリアベルの陰りに近づける。  
「間近で見るとまたなんか変だな……」  
「気にするでない。ほれ、さっさとせんか」  
「……俺、なんでこんなことやらされてるんだ?」  
無責任にぼやきつつ、少年は密着するように秘所に口を持っていく。  
それから――言葉どおりに、そっと舌を伸ばしてぺろりと舐めた。  
「ふッ……く」  
「え、えっと……」  
「……とりあえず、続けてよい」  
「あ、う、うん」  
怒られたくないので、今度は集中して舐めてみる。  
とろっとした液体が染み出てきて、なんだか妙な味がする。  
どうも気持ち悪いというか、あまり続けたいようなことでもなかった、のだが。  
「ん……はぁ、くぅ……」  
マリアベルは特に何も言わず――いや、呻くような声を漏らして、トニーを見下ろしている。  
その声を聞くうちに、何かたまらなくなってきて。  
舌に少し力を込めて、秘肉をかき回すようにしてみた。すると、  
「ふぅッ……ん、なかなか……ぁ、上手じゃな……」  
などと言われる。  
 
気をよくして、トニーはますます舌を動かすのを早く、複雑にしていった。  
「はぁ、ん、ふうッ……く、んんッ……」  
そうなるとマリアベルもたまらない様子で、身をよじらせて声を漏らしていく。  
それに秘所から染み出てくる液体も心なしか量を増やしているようで、口の中にとろとろと入ってくる。  
突き動かされるものを感じ、トニーはふっと舌先を入り口から奥へと入れてみた。  
「んッ!? そ、そこはッ……ふぁッ」  
びくっ、と、マリアベルは一瞬震えたが。  
ほとんど同時に、中からとろりと流れるものが量を増した。  
これでいいのだろうかと、トニーは舌先を突き刺すようにして肉壁をいじる。  
「あ、ふ、うッ……く、んぁ、はッ……うぅッ……」  
マリアベルも、膣肉から伝わる刺激に手をぎゅっと握り締めて受け止めていた。  
トニーは一心不乱に中を舐め、つつき――震えるように悶える彼女を自由にする。  
「ふぁぁッ……く、あ、あんまりッ……そ、そこはッ……ひぁ、うッ」  
耐えかねたのか、彼女の手は必死で舌を動かす少年の頭を掴むように動く。  
が、秘所からぴりぴりと伝わる刺激で、外そうにも外せない。  
「ちょ、ちょっと待たぬかッ……あぅ、くぁあッ……や、やめッ……」  
構わず、トニーは舌をくっと奥へ入れる――が。  
「いッ……いい加減にせんかッ」  
アカとアオが動いて、トニーを強引に引き剥がす。  
「あ……」  
「……あんまり調子に乗るでないわい。たわけめ」  
「えーっと……ま、まずかった?」  
「……いや、その、一応は及第じゃが……ええいッ。それはまあよい」  
前以上に顔を赤く、そして息も荒くしながら、マリアベルはこほんと一息ついた。  
「こうやって丁寧に扱うのが基本じゃぞ。あ、それから」  
また、自分のそこをそっと指で示す。  
秘所の少し上にある、小さな突起。  
「ここも女性にとっては大事な場所でな。丁寧に接すれば、気持ちよくなったりするぞ」  
「へ、へえ。そこも訓練……」  
「……い、今はよい。次じゃ、次」  
 
ばったりと、トニーは仰向けで寝かされる。  
「次って……俺が何かしたりするんじゃ……」  
「わらわが導いてやるゆえに、お主は別に何もせんでよい。こうして、じゃ……」  
マリアベルは、少年の上に身体を動かした。  
「あ、え?」  
「ふむ……」  
何時の間にやら、また力を完全に取り戻しているペニスを掴む。  
「うわッ」  
「さて、最終訓練じゃ。子供を作るというのは、このようにして生殖器と生殖器を繋げねばならぬ」  
「な、何が……」  
「……実際にやってみるに限るの。では、行くぞ」  
腰を動かして、硬くなっているものと自分の秘所を合わせる。  
そして――ゆっくりと、まだ幼い入り口に、トニーを呑み込んでいく――  
「う……ぁッ……な、にがッ――」  
「ふぅッ……」  
数回、入り口を逸らしたが。補正すると、膣口は包み込むようにペニスを呑む。  
つぷ――と小さな音がした後、くちゅりくちゅりと水音を立てて、マリアベルはトニーを迎え入れる。  
「な、これ、うわ、くッ……あ、熱ッ……」  
「んッ……くうッ!?」  
だが、ある一点を超えた時に。  
「いッ……い、痛ッ!」  
胎内で、引き裂かれるような痛みが走る。  
「痛……う、あ、わらわ、何が……」  
途端、マリアベルの様子が一変した。火照っているのは今までと同じだが、赤く輝いていた瞳に冷たさ 
が戻る。  
「うぐぐぐッ……そ、そうか、アナスタシアのアレで――い、痛たたたたッ!?」  
「え、マリアベル……?」  
急に動きが止まったマリアベルに対し、トニーは熱い肉に包まれたペニスの感触に、ただぽうっとする 
ばかりであった。  
一応は不自然に思って上を見たものの、意識のほとんどは生まれて初めての快感に向けられている。  
「ぐぐッ……わらわの純潔がッ……え、ええいッ。一旦、ぬ、抜くぞ、トニーッ……痛ッ……」  
 
「……抜く、って……」  
不満そうに、トニーはマリアベルの腰のあたりを掴む。  
「な、何をするッ」  
「すっげえ気持ちよくって……俺、続けたいんだけど……」  
何しろ、マリアベルはまだ小さい。トニーにしてもそうなのだが、しかし締め付ける肉の動きは凄まじ 
いものがある。  
特に数千年に渡って守られてきた処女が破られた今、ぎゅうぎゅうと下手をしたら痛みすら感じかねな 
いほどの締め付けとなっているのだ。  
「わ、わらわは気持ちよくなどないッ。お主も正気に戻らぬかッ」  
「……えー」  
軽く、トニーは腰を揺らす。  
「ひぅッ!? や、やめぬかッ」  
「うぁ……また、気持ちいッ……」  
マリアベルには痛みが走り、トニーには大変な快感が走る。  
なんともちぐはぐな状態で、マリアベルは必死で抜こうと腰を上げようとする――のだが。  
「やめぬと、後で本当に――くぅッ!?」  
「んッ……」  
トニーが、ぐっと突き上げてきた。ほとんど無意識の行動らしいが、快感を求めるものだ。  
それで、一気に奥まで破られた肉のショックが――マリアベルの意識を飛ばす。  
「うぁ……」  
「……マリアベルッ……」  
飛んだ意識はすぐに戻ったが、下のトニーはぐいぐいと突き上げてきた。  
「お、お主ッ! や、やめッ……うあ、あ、ああッ!」  
身体の中に深く突き刺さったもののせいで、動こうにも動けなくなっている。  
アカとアオを使おうにも、こうも精神が乱されてしまってはどうともできないのだ。  
「トニー、お主、いいかげッ……くはぁッ」  
抵抗するにも状況が状況で、力の入れ方さえもわからない。  
 
トニーにとっては、何しろ味わっている快感が大きすぎた。  
そもそもこのような体験からして初めてなのに、マリアベルはまた余計なことにグレートブースターな 
ど使っている。  
あらゆる力を増加する秘法を施され、それは感覚の鋭敏化さえも引き起こしていた。  
一時的に愛液の分泌は止まっているようだが、既に絡み付いている液は狭く未熟なマリアベルの膣肉を 
抉るのに手助けをしてくれる。  
腰に力を入れて、上へ上へと自身のペニスを突き上げる――と、異物を排除するために彼女はきゅうき 
ゅうと締め付ける。  
くちゅくちゅと、まだ小さな接合の音は、膣内での大変な摩擦の発生を隠すように流れる。  
「すげ……マリアベル、物凄く、そのッ……」  
「じゃから、わらわはちっともッ……ふ、くぅぅッ」  
上の彼女はやや戸惑ってもいるようだが――まあ、些細な話ではある。  
そのうち、突き上げるだけでは物足りなくなって、上体を起こしてマリアベルの顔を見る。  
「……うぐ……や、やめる気になったか……?」  
目の端に涙まで浮かべている。いつも傲岸不遜な顔をしている彼女にしては、実に珍しい。  
「……え、マリアベル、気持ちよくない……のか?」  
「当たり前じゃッ……い、いいからもう終わりに……」  
「でも、まだ訓練とか終わってないだろうし」  
「それは、じゃから、関係ないと……」  
会話している間にも、きゅうきゅうとマリアベルの膣肉はペニスに食い込んでくる。  
もともと理性も飛びかけていたようなものなのだから――トニーはもう限界だった。  
「とりあえず、一回くらいは訓練終わらせるってことで」  
「ま、待たぬかッ」  
今度はマリアベルを仰向けに押し倒し、自身が上になる。  
そうして、ぐっと腰を押し出す――と、また彼女は痛いほどに締め付けてきた。  
「くあああッ!?」  
「ふぅッ……」  
痛みに耐える彼女を、トニーはほとんど無意識に責め立てていく。  
 
「わ、わらわを怒らせると、子々孫々までその身に祟りをッ……くううッ」  
小柄なトニーとやはり小柄なマリアベルは、広いベッドの上でぐちゅぐちゅと絡み合っていた。  
もっとも普段とはまるで違い、ファルガイアの中でも貴種と呼べるほどの存在、ノーブルレッドが受け 
手に回っているのだ。  
痛みに戸惑って何も反撃が出来ないせいでもあるのだが、それにしてもここまで追い込まれるのは珍し 
い。  
「そう言われても、その、止まらなくてッ……」  
「ええい、意志の力でなんとかせ……くぁッ……」  
トニーは全身の力でもって突き込んでいる。  
いまや彼女の上となって、何か耐えているような表情で自分を責める少年の姿は、マリアベルの瞳にも 
映っていた。  
「に、ニンゲンがこのようにわらわを……最早死をもって償うどころの話では……」  
息も絶え絶えに呟く。まったく、ある意味焔の災厄どころの話ではない状態だ。  
「それはその、とりあえず後にしておいてくれよッ……ふぅッ、はぁ……」  
相変わらず、トニーは自分を抑えきれないらしい。  
ぐっちゅ、ぐっちゅとストロークも大きくなって、マリアベルはますます強く、奥へと貫かれてしまう。  
「あ、ひッ……ぐ、ううッ……」  
「……ん、なんか、またッ……」  
再び、背筋に走るものを感じる。  
先ほどマリアベルの手によって導かれた感触を思い出して、トニーはより熱いものを得ようと腰を早め 
た。  
「と、トニー、そ、それはッ……う、あ、ああッ!」  
「マリアベルッ……こ、子供ってッ……くッ!」  
くちゅくちゅくちゅと、動きは速さを増し続ける。  
むずむずとこみ上げてくる感覚に全てを任せて、ただ無意識に。  
「あ、もう一回、アレッ……」  
「だ、出すのは待たぬか、それは――」  
「……ふぅッ」  
奥の奥――と言っても、マリアベルの膣内は狭く、強引に押し分けて。  
強く締める肉に囲まれながら――トニーは、二度目の精を。  
びゅるッ……びゅるるるッ!  
一度目よりもなお多く、どろりとしたものを、ノーブルレッドの中に注いだ。  
 
「はぁ……これが、子供の作り方……」  
「……な、中で……出しよった……のかッ……」  
ようやくトニーは止まって、マリアベルも一息つく。  
しかし――既に彼女の中には、少年の遺伝子が注ぎ込まれているのだ。  
「……ニンゲン如きが、高貴なわらわの中に……じゃと……」  
「……あれ?」  
と、不意にトニーはきょとんとした声をあげる。  
「なあ、マリアベル……」  
半ば涙目になっている彼女は、きっと上の少年をにらみつけた。  
「なんじゃッ!」  
「あ、その、子供の作り方ってことは、こんなことしたら俺とマリアベルも子供作っちゃったんじゃ… 
…」  
「…………」  
唇の端をわなわなと震わせて、マリアベルは言葉を紡ごうとする。  
そのままでは、言葉にもならなそうで――少し深呼吸して、気持ちを整えてから口を開けた。  
「出来る訳がなかろうがッ! ノーブルレッドとニンゲンでは、遺伝子構造そのものが別物じゃッ!」  
「そ、そうなのか……」  
少しばかり、トニーは残念そうな顔をする。  
「ふん、当たり前じゃ。とにかく、こんな馬鹿げたことはお終いじゃからな……」  
手を伸ばして、まだ身体の上にのしかかっている彼をどかそうと――して。  
「……あの、もう一回訓練していいか?」  
「は?」  
彼の呟いた声に、きょとんとした声をあげる。  
「もう一回って、お主、何が――」  
「その……マリアベル見てたら、またドキドキしてきてッ」  
「え、ちょ、何の話……」  
再び。  
トニーは、その元気さだけは有り余っている体を生かして、ぐっとマリアベルの中に突き込んだ  
 
「ふあぁッ!?」  
電撃のようなショックが彼女の身体を駆け巡る。  
「お、お主どこまでわらわを……くあ、ああッ!」  
ぐっちゅぐっちゅと。ゆっくりとだが、力強くトニーは突く。  
精液によって少しだけ滑らかになったせいか、前よりもスムーズに動ける。  
「アシュレーの兄ちゃんも、こういうことしてたから隠してたんだな……ッ」  
気持ちよいことである。ついでにやたらとドキドキする。  
あの真面目ばかりのようなアシュレーも、陰ではマリナとこんなことをしていた訳だ。  
なんとも、意外というかそんな気持ちではある。  
――ともあれ。二度目に味わうマリアベルの膣内は、少々固さが取れて締め付けるだけではなくなって 
いた。  
「な、なんで、わらわ、こんなッ……」  
一度目は、あれほどに痛いだけだったというのに。  
トニーの精を注がれて、身体を汚された――そんなことを思っていた時に、再びペニスで貫かれて。  
もう一度、この少年に自分の身体が、誇り高きノーブルレッドの身体が汚される。  
そう考えた途端、痛みが薄れてきてしまったのだ。  
「変な趣味なぞ、わらわにはなッ……あ、い、ふぁぁッ!」  
食いしばっていた歯もほどかれて、口からはよだれさえも零れてしまう。  
「マリアベルッ……また、気持ちいいッ」  
率直にトニーはそう叫ぶ。  
乾いていたような膣内が、言葉と中に感じる熱い肉の塊に刺激され、とろりとしたものを分泌しはじめ 
る。  
「あ、ふあ……な、わらわが、まさかッ……ん、あ、いッ」  
はっきりと認めるのは、ノーブルレッドの誇りを汚すこと。  
それでも。  
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅッ。  
トニーはしっかりと彼女の身体を掴み、そして貫いている。  
「そんな……はずッ……く、気持ちいい、はずがッ……」  
「マリアベルも、気持ちいいんだろッ!?」  
「……それはッ……ち、違――」  
 
違わないのだ。  
何故かはわからない。初めてだというのに。  
アナスタシアから聞いた話では、そういう女性もいるにはいるというが――  
今さっきまで痛みしかなかったはずなのに、急に気持ちよくなるのは納得のいかないこと。  
しかし、事実こうしてトニーに貫かれることを悦びとする自分がいる。  
「ば、馬鹿なッ……あ、んぁッ……こんなことはッ……あ、有り得ぬッ……」  
「俺はすっげえ気持ちいいからッ……マリアベルもッ……」  
「だ、黙ッ……ふああああッ!」  
最早、膣肉は歓迎するような動きさえしている。  
ぎゅうぎゅうと締め付けるだけではなく、迎え入れ、離れることを拒むかのようにペニスに絡みつく。  
それが少年にも、そしてマリアベル自身にも快感を与え――  
「やッ……わ、わらわが、こんなッ……な、う、ああッ……」  
戸惑いながらも、お互いを高みへと導こうとする。  
「マリアベル……もう一回、出すけどッ……いいよなッ」  
「だ、駄目ッ……ぐ、ふ、あ、ひぅッ……」  
ぐちゅり、ぐちゅりとトニーの動きはますます確かになっていく。  
「や、やめぬと、本当に、もうッ……も、もうッ……」  
「ぐッ……く、来るッ……」  
「もうッ……ぁ……ひ、ぁぁぁぁああッ!」  
ずん、と少年のものが再び奥深くに届いた、その瞬間に。  
背筋をぴんと逸らし、足の指に至るまでぴくぴくと痙攣させて――  
「あ……うぁ……ああ……」  
ノーブルレッドは、その頂点へと登りつめた。  
そして、同時に。  
「だッ……ま、また、子供のもとッ……」  
びゅるッ……びゅるるる、びゅるッ。  
もう一度、彼女の胎内を白く染め抜き、汚していった。  
 
 
――そうして。全てが白く染まってから、少しの後。  
「……うぐぐ……い、一生の不覚じゃッ……」  
一足先に息を整えたマリアベルは、ぎりぎりと歯噛みをしている。  
「よもやこのような形でわらわの純潔がッ……アナスタシアめッ! ものには限度があるじゃろうがッ!  
 こんな呪いを残すなどと、友人にしても過ぎるわッ!」  
吼えてみても、生憎その相手はいまやどことも知れぬ次元の住人である。  
聞こえてはいるかもしれないが、返事が返ってきたりすることは確実にない。  
「ぐぐう……ひとまず問題は、じゃ……」  
少しだけ頭が冷えて、その目はぼけっとしたままのトニーに向かう。  
「起きんか、たわけがッ!」  
わりと遠慮なしに、レッドパワーの一つバスターコレダーを少年に向かって解き放ってみる。  
走り抜ける電撃は、トニーの意識を一撃で呼び戻すことに成功した。  
「びゃびゃびゃッ!?」  
「……ナイスミドルとも程遠いこのような小童に……まったく、もう……」  
ともあれ、いまだに身体の中に刺さったままのペニスを抜く。  
とろ、と僅かに白い液が胎内から漏れでるのを見て、マリアベルは少し泣きたい気分になったが。  
「な、な、な、あ、あれ? 俺……」  
今度こそ、例の暗示の効果も解けて、はっきりとしたらしいトニーの方を見る。  
「……お主。自分がやったことを覚えておるな?」  
「えーっと……その……」  
思い出すまでもない。何しろ、今の今まで自分はマリアベルの中に入り、そして思うがままに貫いたの 
だから。  
「……あ、あは、は。お互い貴重な体験だったよなッ」  
「……わかっておるな?」  
「……ご、ごめんなさい」  
マリアベルの瞳が、それはもう爛々と赤く輝いている。  
「……ふん。まあ、過ぎた時は戻らぬ。かくなる上はお主には罰を与えねばならぬが……」  
「ば、罰……」  
 
なんとも言えず、怯えた顔になるトニーに対し、マリアベルはふうとため息を吐いた。  
「……なんじゃ。お主も悪いがな。一番悪いのはやっぱりあやつ……アナスタシアじゃろうしな。  
 あやつの姦計にひっかかったわらわも迂闊じゃったし……とりあえず処刑するのは勘弁してくれる」  
「そ、それはどうも。悪いなッ」  
一応、喜ぶべきことらしい。  
「となれば。わらわの純潔を奪った男が、お主のような未熟者というのはわらわの誇りに関わる。  
 よって……これより、お主をわらわに相応しい、完璧な男性にするぞ」  
「……はあ。え?」  
「まずは勉学じゃ。よいな……これより、毎日10時間の修練を申し付けるッ」  
「……えええッ!?」  
びしりと、まだ汚れたままの肌を晒しながら――マリアベルはトニーを睨み付ける。  
「反論は一切許さぬッ! お主が世界一の知恵者となるまで、安息の日はないと思えッ」  
「な、なんでッ……お、俺、そんなに悪いこと」  
「したんじゃッ! このバカチンめがッ!」  
 
――かくして、経過はともあれ、トニーはノーブルレッドの秘術のほとんどをその身に叩き込まれるこ 
ととなった。  
そして後。工業都市ギルドグラードにて。  
驚くべき知識と発想を兼ね備え、天下の奇才と呼ばれる一人の工学博士が注目を浴びることとなるのだ 
が。  
その背後にあったものについては――彼はあまり語ろうとはしなかった、そうである。  
 
 
「結果オーライかな? うん……」  
もっとも、全ての黒幕はというと。  
「あれ、気づかれなかったらどうしようかって思ってたけど……トニー君には感謝しないとね。  
 ふふ、マリアベル可愛かったわ……」  
実に嬉しげに、にやにやと笑っていた。  
「さて、次は誰と誰を覗いちゃおうかな? こればっかりが楽しみだもんね……」  
結局のところ、一番利益を得たのは、彼女――らしい。  
 

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