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穏やかな光に包まれて、小さな身体が舞う。  
その下の、少女とも見紛うような少年と、もっとも深い部分で繋がって――  
「はぁッ……あ、凄いッ……ん、素敵よ、シェーンッ……!」  
夢魔ベアトリーチェは、濡れた髪を振り乱して悶えていた。  
かつては孤独に満ちていたこの夢の世界も、ともにいてくれる人がいるだけで輝いて見える。  
幼い少女の姿のままで、今こうしてシェーンに貫かれて喘いでいることも――  
「ぼ、僕もッ……きつくて、ちぎれちゃいそうで……凄く、気持ちいいですッ」  
「ええ……ん、いいわ……ッ」  
彼女にとっては、この数千年知らずにいた快楽だった。  
「はぁ、んッ……!」  
「く……もっと、気持ちよくなってッ……!」  
言葉を発することさえ惜しむように、ベアトリーチェとシェーンは躍る。  
胎内で跳ねる彼のペニスと、それを食い締める自らの膣肉が、完全な調和をしているのは気のせいでもあるまい。  
夢魔として動く時に、それこそ伝承の中の『夢魔』のように、淫夢を操ったこととてある。  
その経験から、生殖の行為の快感も知らないではなかったのだが――こうして、彼と繋がることはそんな想像を容易く凌駕してしまうのだ。  
「いい……いいの、シェーン……どんどん、よくなっているみたい……あ、うあ……」  
今のベアトリーチェは、黒髪の少女の姿をしている。  
戦いの為の姿と違って、こちらはまだ幼いから、完全にはシェーンのペニスを呑み込むことは出来ないでいる。  
だが、逆に彼女の膣内は完全に埋められ、少しでも動けば容易く子宮口を突かれてしまう。  
全身に響く衝撃が、たまらなく愛しくなる。  
「駄目……わたし、動けなく……なる……」  
快感が強すぎて、少年の上で腰を回すことも難しくなってきた。  
それを、息も絶え絶えに告げてみると、  
「な、なら……僕が頑張ります、から、ベアトリーチェさんは、そのまま……ッ」  
「そ……それなら、お願い……い、ひぁああッ!」  
力強く突き上げてくる。  
言葉よりも確かな証が返ってきて、ベアトリーチェは嬉しそうに小さく微笑んだ。  
シェーンもその笑顔につられてか、優しく微笑みを浮かべ――  
ずちゅッ。  
「ふぁッ!」  
直後に、彼女からもたらされる快感に切ない顔をして、また一際強く突き上げる。  
 
(わたし……溺れてる、わね……)  
夢中で肉を交しあいながら、ベアトリーチェの思考ルーチンの片隅はぼんやりとそう考えていた。  
(もう、誰も信じないって思ってたのに……こうなるなんて……)  
メインの思考は、ほとんど蕩けるようになってシェーンとの快楽を貪っている。  
それでも、並列して動くかすかな思考は、どこか醒めた目で今の自分を眺めているのだ。  
(信じていいって、この子は言ったけれど……でも……)  
「ああッ……あ、んッ……奥が、いいのッ……ん、シェーン……ッ」  
華奢な見た目と違って、意外にシェーンは力がある。  
バスカーの民の暮らしは自然に根ざしたもので、神官の見習いであっても日々の営みは欠かさない。  
だからこそ、鍛えられた彼の腰の動きは力強く、小さなベアトリーチェは翻弄されるまま突き上げを受ける。  
「くッ……! も、もうすぐ、イっちゃいそうですッ……!」  
「そ……そう、ね……わ、わたしも、もうッ……」  
自らの刻印をベアトリーチェの膣内に刻みつけながら、シェーンは限界を告げた。  
もう、その頃には彼女も貫かれることに限界を感じていて、二人とも揃って相手をいたわろうとする。  
「じゃ、じゃあ……一緒にッ……」  
「ええ……ええ、お願い……わたしの、膣内に……中に、たっぷり出して……あなたの想い出、欲しいの……」  
ぐちゅッ、ぐちゅッ、ぐちゅッ――と、最後のスパートにシェーンは動きを激しくする。  
「あ、うあ、あッ……!」  
長いストレートの髪が宙に舞う。  
それほどベアトリーチェの身体が激しく突き動かされているのだが、これは快感の証でもあった。  
(信じる為に、必要なものって……何、かしら……?)  
やがて、その思考も彼女のメモリのどこか奥深くに格納されて――  
「でッ……出ますッ……!」  
「んッ……出して、お願いだからッ……!」  
びゅッ……びゅるるるるるッ!  
「あ……来てる、来てるわ……」  
膨らんだペニスの先から、少女の胎内に白くて熱い『想い出』が注ぎ込まれていく。  
「ベア……トリーチェ、さ……ん……」  
シェーンは、しっかりとベアトリーチェの腰を掴んで――  
無意識のうちに、だろうか。彼女の子宮内へと、より多く流れ込むように注いでいた。  
 
行為が終わると、ベアトリーチェはシェーンの胸の上に倒れこんだ。  
全身が乗っても、何しろ見た目が幼い彼女のこと、それほど負担になる訳ではない。  
交わりの後の恋人同士、というよりは仲の良い兄妹のように、ベアトリーチェはその身を預ける。  
「……今日も凄かったわ。毎日、上達しているみたいね……」  
「そ……そうですか?」  
「ええ……わたしも、もう……技巧も何もないもの」  
そう言うと、ベアトリーチェはシェーンの胸に頬を寄せた。  
「それに、こんなに濃くて素敵な想い出を注いでくれたから……」  
そして、右手をそっと自らの秘所へと伸ばし、ゆっくりと指を入れる。  
「ん……あ、ほら……」  
そこからすくい出した精液は、透明感を感じさせない濃く、そして彼女の指を覆う程の量である。  
「こ、こんなに出したなんて……」  
「それだけ、気持ちよくなれたということよ。……こんなに素敵な踊りは初めてだわ……」  
再び、シェーンに甘えるようにして身体をこすり付ける。  
「満足してくださったのなら、僕も幸せです……」  
そんなベアトリーチェに向けて、彼は生来の優しい笑顔を見せた。  
そっと開いた瞳でそれを確認した彼女は、くす、とこちらも小さく微笑む。  
「……そうね」  
しばらく、二人ともじゃれあう。  
 
こうしていると時間が経つのを忘れてしまうのだが、夢はいつか覚めてしまうものだ。  
それに気づいたのは、ベアトリーチェの方だった。  
「そろそろ、朝が近づいてきたみたいね……あなたの眠りが、段々浅くなってきているわ」  
「え……」  
そう言うシェーンは、ひどく眠そうな目をしている。  
「また今夜に会いましょう。あなたが望むなら、昼に姿を現してもいいのだけれど……」  
「え、ええ……」  
ほとんど返事も出来ないほどに眠たそうな少年に、ベアトリーチェはくすりと微笑んだ。  
「……まあ、いいわ。元気でね、シェーン。  
 脳内物質の調整は丁寧にしてあげるから、きっと素敵な目覚めを迎えられるはず」  
「あ、ありがとう……ござ、いま……」  
やがて、シェーンは光の粒となって消えていった。  
 
そして残るのはベアトリーチェだけとなる。  
二人を包んでいた空間――寝室を模した情報の塊も、不要になればすぐに消去されていく。  
「……ふう」  
小さくため息をついて、彼女は乱れた自らの身体に向けて手をかざす――と。  
身体中に、そしてワンピースにまで染み付いたシェーンの『想い出』は消え去り、いつもの姿へと戻る。  
「……今夜にまた、と言っても……淋しくなるものね……」  
今までは、ずっと一人だったのだから、ほんの十数時間の孤独など気に留めることもなかった。  
が、一度孤独が癒されると、それが失われることがたまらなく苦痛に感じてしまう。  
「わたしも、随分と弱くなってしまったわね。これでは魔族失格かしら」  
つまらない軽口を叩きながら、ベアトリーチェはもう一度手を振った。  
――すると、一人がけの大きなソファーが出現する。  
夢のお城で、彼女が腰掛けていたものと同じソファーだ。  
「……まあ、今更種族なんてどうでもいい……」  
呟きながら、そこに座ろうと――して。  
「……?」  
僅かな違和感に気づき、ベアトリーチェはそっと自らのスカートの中へ指をやった。  
「……ん」  
自慰のつもりなどではない。そんなことをしても虚しいだけなのだし、シェーンと交わるようになってからはなおさらだ。  
それでも、その場所――膣口から、その中へと指を差したのは、一つ気になることが出来たから。  
「変ね……?」  
そっと指を戻す、と。  
そこには――シェーンと交わった直後、二人でまどろんでいたあの時と同じように、指先に精液がこびりついている。  
「消去されたはずなのに。クリーニングのプロセスは完了していた……  
 なのに、どうして……?」  
この世界、夢の中の世界はデータで構成される世界である。  
現実とは違った法則が支配しているのだから、精液――シェーンから注がれた想い出も、不要になれば消えてしまう。  
「……わたしの中にしっかりと残っているなんて、何が……」  
そこまで呟いて、ベアトリーチェは珍しく驚愕の表情を浮かべた。  
「……まさかッ!?」  
そして、自らの下腹部に手をあてて――  
「これは……そんな。こんなことが……」  
戸惑いと、少しの怯えが。彼女の顔に表れる。  
 
 
バスカーの朝は早い。  
季節にもよるが、日の出とともに起床して、守護獣への勤めを行う。  
そんな中でも神官職にあるものは更に早く、それは見習いの身分にあるシェーンにとっても変わらなかった。  
「ふう……今日も一日頑張らないと」  
早朝のまだ薄暗い日差しを浴びながら、少年は身体を伸ばした。  
日頃からの規則正しい生活のお陰で、これだけ早く起きても眠気などは感じない。  
いや、生活習慣のお陰というだけでもないようだが――  
「……ほう。最近は調子がいいようじゃな、シェーン」  
そこに、一歩遅れて祖母のハルが姿を現す。  
「はい。今日も凄くいい目覚めでした」  
「それは何よりじゃが、この調子の良さは何事か原因がありそうじゃな……」  
「原因って……そんな、ことは……」  
この祖母は、ファルガイアでも一、二を争うほどの知恵者である。  
そんなハルがこちらを見ると、それだけで秘密が見透かされているような気になってしまう。  
「ふむ……」  
深く刻まれた皺の奥で、果てしない知性を秘めた瞳が孫のシェーンを見る。  
「お、思い当たることは……ありません」  
そう言って、シェーンは後悔をした。  
秘密は――ある、のだ。この調子の良さの原因として。  
 
ベアトリーチェが常駐した翌日の話だ。  
夢の中で前日のように激しく交わった後、寝物語で彼女が語ってくれたことがある。  
「……ねえ、シェーン。貴方の助けになることを、一つ試みてもいいかしら?」  
「助け、ですか?」  
そっと彼女の身体を抱きしめながら問い返す。  
「そう。といっても、今のわたしはほとんど力を失っているから、どれ程のことが出来る訳でもないのだけれど……」  
「……どんなことなんですか?」  
抱きしめられたベアトリーチェは、少しだけ楽しそうに手を伸ばしてシェーンの頬を撫でた。  
「脳内物質の分泌量を操作して……いえ、あまり細かい話をしても理解できないだろうから……  
 ……噛み砕いて言えば、貴方の身体の調子を常にベストに保ってあげるわ」  
「そんなことが……」  
「出来るのよ。ニンゲンの生体活動とは、すなわち電気信号によるもの。  
 それを操るのがわたしの仕事なのだから、安心して受け入れて欲しいわね」  
 
彼女はくすくすと笑っていた。  
神経だとか、脳内物質と言われても、自然とともに歩むバスカーの民であるシェーンにはあまり理解もできない。  
それでも、彼女の言葉が真実だと思えたのは、交わした約束があったことと――  
そして、その翌日から本当に身体の調子が万全になったためである。  
どれだけ夢の中で激しい交わりをしても、目が覚めれば一切の疲労も残らない。  
――あくまで夢の中なのだから、肉体の疲労が残るものでもないが。  
ともあれ、こうしてベアトリーチェが助けてくれているのは間違いないようなのである。  
 
(……でも、そのことを言うのは)  
まだ、シェーンはベアトリーチェと深い部分で繋がったことを、祖母にも敬愛している兄にも告げていない。  
何しろ彼女はファルガイアを破滅の危機に追いやった張本人であり、兄はそれを阻止した人物なのだ。  
シェーン本人は心の中に彼女を受け入れたことで、償ってほしいという気持ちがあるのだが――  
虫のいい話と思われても仕方ないし、場合によっては再び彼女と兄、そして仲間達が戦う羽目になりかねない。  
そう思うと、話を切り出す勇気が湧いてこないのも仕方ないことではある。  
(いつまでも隠しとおせるものじゃない……けど)  
いつかは話さなければならない。だが、それが何時になるのか。  
そんな葛藤がハルの目からどう映っているのかと考えると、シェーンは背筋が凍える思いだった。  
 
「まあ、調子が良いに越したことはないからのう。  
 そんなことよりも、早く今日のつとめをはじめようぞ」  
「は……はいッ」  
守護獣を祭るために、祭壇へと祖母は足を向ける。  
何も気づいていないのか、と、不謹慎ながらシェーンは少しだけほっと息をつく、が。  
「……シェーンや」  
不意に、彼女は顔だけで振り返り――  
「えッ」  
「言いたくないのなら、今は言わんでよい。が、これだけは言うておくぞ。  
 何があろうともな、強い心があるなら道は拓けるものじゃ。あらゆる守護獣の根源たる力はそこから来ておる。  
 将来の神官たるもの、それは心得ておくのじゃぞ」  
「……はい」  
何時になく、重々しい祖母の言葉である。  
あるいは全てを見透かした上での言葉なのかもしれない。  
ならば、今こそ全てを告げる時なのでは――  
「あの、実は……」  
「うむ」  
意を決して、全てを告白しようとした、その瞬間。  
 
「シェーン、少し厄介なことになったのッ」  
 
こちらも何時になく慌てた様子で、前方の空間にベアトリーチェが出現した。  
「あ……え?」  
いつもながら唐突な出現であるが、今回はどうにも間が悪い。  
 
案の定、ハルは腰を抜かさん勢いで驚愕している。  
気づいていたのかもしれない、と言っても、目の前に出現されては驚くというものだ。  
「……あら?」  
今頃それに気づいた様子で、ベアトリーチェもきょとんとする。  
「ああ……そういえば、この時間帯は一人ではなかったのだったわね」  
思い起こした様子で、彼女は一人で頷いて納得するが。  
「と……とりあえず、僕の話を聞いてくださいッ」  
シェーンには、そう言って場を収めようとすることしか出来なかった。  
 
「つまりは……そういうことか。シェーンを再び誑かしているのではないのか?」  
事情を飲み込んだハルは、案外と平気な様子である。  
「誑かすだなんて。……わたしの方がそうされている状況なのに」  
「……シェーン。お主がこやつを誑かしておると?」  
「ぼ、僕からは、なんとも……」  
空気が悪い。  
ここ、バスカーコロニーは荒野の中にあっても空気が濁ることのない町なのだが、それだというのに。  
「ええ、わたしは誑かされているの。お陰で、ファルガイアの為に働かなければならないようだからね」  
「……にわかには信じられることではないのう」  
「でしょうね。わたしだって、自分で自分のことが信じられないわ」  
ベアトリーチェもこの調子だから、話がまとまるにもまとまらないのだ。  
「ま、待ってくださいッ。僕がベアトリーチェさんのことを保証しますからッ」  
「……ふうむ」  
必死で仲裁しようとするシェーンを見て、ハルは唸った。  
「あれだけのことをした相手を保証する、か……  
 ……しばらく、考えさせてもらう。まったく、まさかギャロウズめよりも厄介な問題を持ち込んでくるとは思わなんだぞ」  
老婆は考えながら、そうして去って行ってしまう。  
 
「物分りの悪い老婆ね」  
「いえ、そういう訳では……」  
「……分かっているわ。理知的なニンゲンの反応としては、当然のものよね。  
 それどころか……魔族と知ってすぐに排除にかからないだけでも、寛容に過ぎるわ」  
ある程度は予期していたとはいえ、こうして現実に受け入れられないのは堪えるものがある。  
ベアトリーチェの表情は、相変わらずの薄ら笑いのままだが――シェーンには、どこか寂しげな影が見えた。  
「大丈夫、です。きっと、僕がみんなを説得してみせますから」  
「……そう。なら、わたしも貴方を信じてみるから……お願いするわ」  
二人とも、目を合わせてこくんと頷く。  
「それはお願いするとして……シェーン。もう一つ、重要なことが残っていたわ」  
「もう一つって、そういえば……」  
 
「少し厄介なことになったの」  
 
「……と、言っていましたね」  
「ええ……厄介なことになったのよ」  
今度は、先ほどの問題とも少々違った様子でベアトリーチェは言う。  
「多分……あくまでまだ、可能性に過ぎないから、確実ではなくって……」  
「あの、一体何が?」  
珍しく、彼女は言いよどんでいるようだ。  
ハルとの対面の時は、多少の寂しさは伺えたものの言いよどむということはなかったのに。  
「それが……その、ね。何と言っていいのか……こういうのは、なれていなくってね……」  
そればかりか、彼女はもじもじとしているようにさえ見える。  
そんな感情とは無縁であると広言してはばからないベアトリーチェが、である。  
「ですから、何が?」  
「……シェーン。驚かないで聞いてほしいのだけれど――」  
 
「――子供が出来た、かもしれないの。貴方と、わたしの」  
 
「え」  
「まだ、確定している訳ではないわ。あくまでそういう可能性があるというだけのこと。  
 でも、言わないよりは言うべきかと思って……」  
「え、あの」  
「まさか、自分でもこういう事態になるとは思っていなくて……  
 理論的にはありえないことではないと分かっていたのだけれど、そんな確率は極めて低いはずだったの。  
 だから油断してしまったのも無理はないはずで、そこは分かってほしいわ。  
 決して、こうなることを狙っていた訳ではないのよ」  
「あの、それは……」」  
「魔族とニンゲンの間に子供が出来るというのは通常ならあり得ないことだから、  
 そういう意味でわたしも油断したのね。しかも実体がないわたしなのだし。  
 そうそう、理由も説明しておいた方がいいかしら、何故子供が生まれるのか――」  
「ちょ……っと、待ってくださいッ!」  
放っておくとひたすら言葉を続けそうなベアトリーチェは、シェーンは戸惑いながらも遮った。  
「待っ……ええ、その、何か分からないことがあったの?」  
どうも彼女の方も戸惑っているらしい。  
あまり口数の多い方ではなかったはずなのに、今回は妙によく喋る。  
まるで、喋っていないと我慢できないような、そんな勢いを感じるほどだ。  
「分からないことだらけなんですが……とりあえず、僕にも分かるように何が起こっているのか教えて頂けたら」  
「そ……そうね。急に話しても理解できるものではないものね……」  
軽くベアトリーチェは息をつく。  
本来電子生命体である彼女は呼吸も必要ないはずなのだが、心理的効果というのもあるのだろう。  
 
魔族という種は、新しい命を生み出すことが出来ないという。  
戦闘のためだけに強化された肉体は、破壊と相反する生命の創造という行為を自ら捨ててしまったのだ。  
種全体ですら子供を生み出せないのだから、実体を持たない夢魔でははるか夢の彼方の話である、はずだった。  
だが、  
「わたしの裡には、星の生命の種子が宿っているから……これが作用したのね」  
そうベアトリーチェは言う。  
「星の想い出から、ファルガイアを再現する。……それが、わたしの夢だった。  
 その為に、自らに埋め込んだのがこの種子。一度は芽吹いて、新たなるファルガイアを生み出した……」  
ファルガイアの全ての想い出と引き換えに、ベアトリーチェの新世界は誕生した。  
その世界も、直後にギャロウズらによって打ち破られて、更に諸々の結果として彼女はここにいる。  
しかし、すぐに消滅したとはいえ『生命』を『魔族』であるはずの彼女が生み出したのは、紛れも無い事実なのである。  
 
「ネガ・ファルガイアが消滅した時点で、わたしの裡の種子も消滅していたはずなんだけど……  
 その欠片がまだ残っていたのね」  
ほとんど無意識のうちに、自らのお腹に労わるように手をあてて――ベアトリーチェは話を締めた。  
「……でも、欠片では星を創り出すことは不可能なのでは?」  
「そうなるわ……あくまで欠片でしかないから、完全な機能は持たない。  
 ただ……創星と同じプロセスを経ることで、星ではなくても生命を生み出すことは出来る」  
神官筋と言うことで、ファルガイアの知識を一般人よりは得ているシェーンといえども、一息で理解するのは難しい。  
今、彼女が語ったことを完全に理解できるのは、それこそエルゥや魔族といった失われた種族だけだろう。  
それでもどうにか重要な部分だけを抜き取ると、  
「想い出から、新しい生命を生み出せる……ということでしょうか」  
すると、ベアトリーチェは素直にこくんと頷いてみせた。  
彼女にしては珍しい、外見相応の仕草に見える。  
「そう。……だから、わたしの胎内に想い出が注がれたのなら、あるいは生命の誕生を促すこともありうるの」  
想い出を注ぎ込むとは抽象的な言い方である。  
首をひねるシェーンに、ベアトリーチェはくすりと微笑みを見せた。  
「もっと簡単に言いましょう。夢の中で、わたしは何度も何度も貴方に抱かれ、想い出――精を注ぎ込まれている。  
 ……ニンゲンの受精と同じね。そのせいで、眠っていた星の種子が目覚めたみたい」  
 
話を聞き終えるても、しばらくシェーンは無言であった。  
理解するだけでも一苦労する話で、しかも内容が少々重い。  
「……このことに気づいたのは今朝方でね。種子が活性化していたのは、きっと二、三日前からだと思うの。  
 そして、この三日の間は……毎晩、貴方と交わっていたから……」  
「そ、そうでしたね……」  
思い起こすと顔が赤くなってしまう。  
三日間どころではなく――彼女が常駐してからは毎晩激しい交わりをしていたのだから。  
その上夢の中では精力の終わりもなく、時間の許す限りベアトリーチェの幼い膣内に精液を注ぎ続けたものだ。  
子宮内を白く埋め尽くした回数は、数えていないが恐らく出あってからの日数の十倍以上はあるだろう。  
「それに、貴方のものは濃いから……クリーニングをかけようにも、簡単には消えないのよね」  
「すみません……」  
照れくさいというか、どう反応していいのか分からない。  
困った顔で頭をかいていたシェーンは、ひとまずベアトリーチェを見た。  
視線はどうしても彼女の下腹部の方へと向かってしまう。  
「……でもね」  
その瞳の先に気づいてか、彼女から沈黙を破った。  
「先ほども言った通りに、まだこれは『そうなる可能性もある』というだけ。  
 ……今なら、生命を宿す前にこの関係をやめることも出来る。  
 魔族の子供なんて、生まれても迷惑なだけでしょうし……だから、わたしは……」  
「――ベアトリーチェさん」  
「貴方の負担になって、ココロの重荷を背負わせるのはわたしの望むところではないの。  
 ……そんなことで見捨てられたら、わたしも……何?」  
「結婚しましょう」  
「……え?」  
 
 
「……あの、シェーン?」  
呆然としていると、時間の経つのは案外早いものだ。  
早朝の告白の最後にシェーンから告げられた言葉は、ベアトリーチェの思考を停止させるに十分なものであった、が。  
それにしても、ふと気づけば既に夜も半ば、眠りにつく時間帯である。  
十時間以上も思考停止していたとは、尋常の状態ではない。  
「朝のあれは、どういう……」  
そして、今はもう夢の中である。唯一、彼と触れ合える世界だ。  
「言葉通りの意味ですが……やっと、喋ってくれましたね」  
「いえ、ね。ちょっと呆然としていたものだから……」  
「姿も消さずに固まっているから、何事かと思いましたよ」  
「……フリーズも併発していたのね」  
そう言われてみれば、システムに重大なエラーが発生していた気がしないでもない。  
どちらにしても、あの言葉が与えた衝撃がとてつもないものだったという、その事実は変わらないが。  
「そんなことより……本気なの?」  
「はい」  
「軽々しくそんなことを……責任を感じているというのなら、気にしなくてもいいわ。  
 万が一本当に生命が芽生えていたとしても、まだ今なら削除だって……」  
「削除なんてッ!」  
強い調子で咎められて、ベアトリーチェは一瞬身をすくませた。  
「で、でも……」  
「負担だとか、そんなことはありません。  
 二人で新しい生命を創り出せるなら、これ以上に素晴らしいことはないんですから。  
 魔族でも、人でも、一緒の生命だって……何よりの証になるんですッ」  
「証……?」  
「だから……今、子供が出来ているのなら、それは至上のもので……  
 まだ出来ていないのなら、これから作ればいいんですよ」  
――眩暈がする。まるで、現実とは思えない。  
ベアトリーチェは、投げかけられた言葉に気が遠くなる思いだった。  
 
「……本当なの? わたし、信じても……すがっても、いい……」  
いつかも聞いた疑問は、シェーンの熱い唇にふさがれた。  
最初の頃はぎこちなかった口付けも、今は巧みで、率直な感情の伝わるものになっている。  
艶かしく、身体が溶かされてしまうような感触に、ベアトリーチェはすぐにくったりとしてしまった。  
「その答えなら、最初の夜にもう言いました」  
「……そうだった、わね」  
「ですから――」  
シェーンの指が、ワンピースの中に伸びてくる。  
それを、ベアトリーチェは拒もうとしない。  
「ん……お願い。……わたしを、ファルガイアのそれでなくてもいいから、マザーにして……」  
夢魔――数千年の孤独を耐えてきた『少女』は、信じてくれる人に身を委ねて、幸せそうな笑みを浮かべた。  
 
ちゅく。  
シェーンが、いつものように彼女のワンピースをたくしあげ、秘所に指を伸ばしてみると――  
そこは、既に潤い、肉の入り口は開きかけていた。  
表面上は幼い少女の姿をしていても、その内実は夢魔――生殖の行いをするのに、不都合はない。  
実体験によってそれを理解しているシェーンではあるが、こうして改めて彼女の身体に触れていると不思議な気分も起こるものだ。  
ましてや、今の彼女の入り口は開いて、淫靡な香りとともに男のものを待ち望んで見えるのだから。  
「もう、こんなになって……」  
指で確かめるだけでもはっきりと分かる。すぐにでもシェーンのペニスを呑み込める勢いだ。  
「だって、あんなことを言うから……それだけで、わたし……」  
少しだけ恨みがましい目で、ベアトリーチェは少年を睨んだ。  
苦笑によって返事を返すと、彼は抱きかかえるようにベアトリーチェを引き寄せる。  
「それなら、すぐにでも挿れていいですよね?」  
「せっかちね。焦っても、いいことなんてないのに……でも」  
シェーンとベアトリーチェでは、身長にも随分と差が出る。  
立ったままでは、繋がるのも不自由だから、少年は腰を下ろして彼女を近づけた。  
あぐらをかいた彼に抱きついて、ベアトリーチェもゆっくりと腰を落とす。  
「待ちきれないのは、僕だけじゃないんですよね……?」  
「……ええ」  
夢魔の湿った入り口と、シェーンのペニスが軽く触れあう。  
くちゅくちゅと小さな音を立てて、二つの肉は互いに擦れて震えた。  
「ん……ッ」  
硬く、熱くなったペニスの先が、自らの敏感な秘肉に触れて――ベアトリーチェは呻きを漏らす。  
「どう、シェーン……貴方も、気持ちいい?」  
「は、はい……」  
そう言いながらも、彼は少しだけもどかしそうに自らのものを動かす。  
すぐにでも彼女の肉に包まれたいのに、まだ焦らされてしまうのは堪らないものがある。  
 
「……くすくす。分かっているわ、ちょっとからかってみただけ。  
 ほら……頂戴、シェーン……」  
言葉は相手に行動を促しているが、ベアトリーチェは自ら進んで腰を落としていく。  
小さな彼女の、小さな秘口――本来、挿入することも困難なはずのその場所へ、シェーンのペニスは導かれて。  
そして、ベアトリーチェの欲情に潤んだ瞳がシェーンを間近に捉えると――  
「わたしの、中へ……ッ」  
「……くッ!」  
少しの狂いもなく、完全に正確に。  
無限の快楽が引き出せるようにと、細かな部分まで設定を凝らしたヴァギナの中へ、シェーンは音を立てながら――  
「あ……あ、んッ……あッ……!」  
その瞬間だけ瞳を閉じて、ベアトリーチェは悲鳴にも似た声を漏らす。  
「相変わらず、きつい……ですッ……」  
シェーンもまた、見た目どおりにひどく小さくて、食いちぎるほどに締め付ける肉壁の感触に耐えながら奥を目指していく。  
如何せん、ベアトリーチェの姿は幼い。奥行きもそれほど深くはなく、すぐにでも限界――子宮口のあたりまで届いてしまう。  
やや平均より大きめといった程度のシェーンのペニスでも、半ば収まりきらないくらいだが、快感には関係がなかった。  
「う……くぁ、あ……ッ」  
こつりとした感触がある。それ以上は奥へと進めない場所にたどり着いたことが、シェーンにもようやく理解できた。  
「届きました……大丈夫、ですか?」  
「ええ……なんとか、ね……」  
ベアトリーチェは目を開くと、またくすりとした笑みを浮かべて答える。  
「もう何度も繰り返したのだし、慣れてくるかと思ったのだけれど……  
 はぁ……ん……何度味わっても、この胎内が一杯になる気持ちは……新鮮に感じられるわ……」  
「僕も、こうして奥で繋がっている気持ちは……」  
お互いに相手の瞳を見つめる。  
「……そういえば、もし既に子供が出来ていたら……こうやって繋がるのは、あまり良くないのでは?」  
ふと、シェーンはそんな疑問を呈する。  
それなら繋がる前に気づくべきなのだが、ベアトリーチェはやはりくすくすと笑った。  
 
「大丈夫よ。方法はニンゲンの生殖に酷似しているとは言え、この中に宿るのはあくまで想い出から生み出される生命。  
 ニンゲンのそれと違って、その程度の衝撃で壊れるものではないわ……はぁ……」  
シェーンの首に回していた両手を、右手だけそっと外し。  
空いたその手を、今二人が繋がっている場所――下腹部にそっとあてがった。  
「……凄いわね。外からでも、カタチが分かるなんて」  
突き立ったペニスは、ベアトリーチェのお腹を少しだけ膨らませてその存在を誇示している。  
これも、幼い彼女の姿ゆえなのだろう。  
「う……」  
そうして撫でられると、ただでさえきつい締め付けに耐えているシェーンに余計な電撃が走った。  
「そ、そこはちょっとッ……び、敏感になってますから……」  
「……くす。それはわたしも同じことなのよ?」  
「でも、平気そうにそんなこと……」  
もう一度、ベアトリーチェはその場所を撫でる。  
まるで、これからそこに宿るであろう生命を、宿る前からいとおしむように。  
「ぁ……ん。……平気という訳ではないわ。……ここに、貴方の精が――想い出が注がれる。  
 その結果を思えば、わたしも……んッ」  
言葉を途中で止めて、ベアトリーチェは手を戻した。  
再び彼にすがりつくと、ゆっくりと腰を上下させはじめる。  
「ああ……熱くて、硬くて……あ、んッ……」  
締め付けの強さに身動きの出来ないシェーンをいいことに、ベアトリーチェは好きなように動き、締め付ける。  
それと同時に、彼のペニスを包み込む秘肉の、襞の一つ一つがまるで生きているかのように吸い付き――  
夢魔の与える最大限の快楽は、守護獣の神官を狂わせるに十分なものを与えてくる。  
「くッ……う、僕……こ、こんなッ……!」  
「ねえ、感じてくれている? わたし、あなたの為になれている……? ひぁ、んッ」  
耳元に唇を寄せ、掠れたような声で彼女は囁く。  
朦朧としてきたシェーンも、その声ににわかに覚醒させられて、必死でこくりと頷いた。  
「ん……嬉しい……あ、あ、あぅッ……」  
 
ベアトリーチェは、自らの身体を存分に使い、至上の快楽を引き出そうとして――  
それでもなお、必死ですがるような目でシェーンを見つめている。  
翻弄しているのは彼女だというのに、これではまるで立場が逆だ。  
「心配……しなくても、いい……ですッ……ッつ」  
「あ……ん、え……?」  
それも彼女の孤独の表れなのだとしたら、シェーンはすうっと息を吸って、  
「一方的なだけじゃ、伝わるものも伝わりませんよね」  
「え……あ、あぅッ……ひ、ひあッ!?」  
そのまま、一気に下から突き上げた。  
彼女の身体を貫くペニスは、既に膣内を埋め尽くす程ではあったが――  
その一撃で、子宮口を叩き、更には身体の奥までも貫いて抜ける。  
「こ、こんなに激しいなんてッ……はぁ、あ……」  
信じられないといった表情で、ベアトリーチェはくったりとして身体を緩ませる。だが。  
「もっと……受け取ってください……」  
「も、もっと……?」  
その声を皮切りに、シェーンはずちゅッ、ずちゅッ、と、勢いを保ったまま連続で突き上げ始める。  
「やッ……や、やああッ! な、そんなッ……わ、わたッ……うあ、ふあああッ!?」  
小さな身体を弾ませながら、ベアトリーチェの身体が躍る。  
相変わらず、膣肉のもたらす感触は最上のもので、シェーンもたまらないが。  
「凄い……ッ。僕も、はっきりとベアトリーチェさんを感じていられますッ……!」  
「そ……それは、あ、あうッ……や、こんなに……ひう、くッ!」  
彼女の動きから、段々と余裕も薄れ――  
ただ、反射的な動きに任せたまま、シェーンとの交わりを愉しむしか出来なくなってきている。  
「これじゃ……これじゃあ、わたしッ……あなたを、気持ちよくできな……ん、ふぁッ……」  
小さな膣口は、無惨なまでにシェーンのペニスによって押し広げられ、辛うじて空いた肉の隙間からは泡だった液体が零れ落ちている。  
痛々しいまでの繋がりだが、本人達にとってはこれこそ天上にも勝る快楽なのだ。  
「ですから……一方だけが、相手を気持ちよくするんじゃ、なくて……」  
ずちゅッ! と。また、彼女の身体を貫く一撃が走る。  
「な、なにが……ぁ、うあ……あ……」  
 
「お互いがお互いを気持ちよくする……そうじゃないと、僕だって満足できないんです……ッ」  
「で、でも……いい、の、それ、で……あ、んッ……」  
返事の代わりに、熱い突き上げを与える。  
まだ不安げな色を瞳に残しながらも、それによって彼女も納得したらしい。  
「ひぁッ! ……そんなに、わたしに……想ってくれるなら……」  
もう一度、ベアトリーチェはシェーンにすがりつく。  
けれど、今度は抱きしめるようになって、やや上目遣いに彼を見上げた。  
「頂戴……沢山、あなたの……想い出も、何もかも……」  
「……はいッ!」  
その言葉を最後に、二人は高まってきたものを掴み取るために律動を強めた。  
子宮口から響き、眠っている星の種子を呼び覚ますようにペニスは突き上げてきて――  
それを包み込む秘肉は、彼の全てを受け止めようと収縮を繰り返す。  
先走りの液と、愛液が混ざって下へと伝い、更には汗と混じって広がっていく。  
ずりゅ、ずりゅッ……ずりゅッ。  
夢の中特有の現実感の無さをいいことに、一瞬とも永遠とも思える時間を二人は味わい続ける。  
「あ……あ、んッ……ね、わたし、もうッ……」  
「……僕もッ」  
それならば、二人がともに頂へとたどり着くのもまったく自然だ。  
僅かな言葉と瞳、そして何より繋がっている相手の生殖器の感触で、二人は同時にそれを悟る。  
ぎゅ、と、ベアトリーチェはまた一掃しがみつく力を強め――  
シェーンは、抱きしめた彼女の身体が折れるほどにきつく力を込めて――  
そして、最期の一線を――越える。  
「あ……今……ん、来てッ!」  
「……い、き、ますッ……!」  
びゅるるるッ! びゅッ! びゅるるッ!  
だく、だく、と――ひどく確かな実感をもって、生命の想い出である精液がベアトリーチェの膣内へ――否。  
最奥で発射された粘液は、そのまま子宮口を超えてその奥へと流れ込んでいく。  
「くあ……はぁ、凄……入ってる……貴方の、想い出……生命の素……」  
少女の狭い子宮を、シェーンの精液は圧倒的な勢いで埋め尽くしていく。  
 
「まだ……抜かないで」  
射精が終わるとともに、ペニスの硬度も大きさも僅かに緩んで、埋め尽くしていた少女の膣口に余裕が出来る。  
と、そこからすぐに白い流れが溢れ出し、彼女の中に納まり切らなかったものを吐き出していく。  
「ん……あ、出てる……」  
まだ幸福に満ちた気だるさに身体を任せていたベアトリーチェではあったが、この時ばかりは僅かな不満の色を浮かべた。  
「せっかく、貴方がくれたものなのに……」  
「それは――」  
「……大丈夫よ。わたしの裡の種子に宿るだけの想い出は得られたから。  
 偶発的なものではなく……わたしが意識してコントロールを行えば、生命の誕生とて簡単なこと。  
 つまり――」  
「今ので、確実に妊娠したって……こと、ですね」  
「……ええ」  
今までは可能性に過ぎなかったが、今では確実な出来事なのだ。  
夢魔との間に子供を作る。想像も出来なかったことに、シェーンは郷愁にも似た感情を抱いた。  
「でも、これで本当に良かったの? わたしなどに……ぁ」  
抱きしめていた手が、そっとベアトリーチェの黒髪に触れる。  
「後悔も何も、僕は凄く嬉しいことだって思ってます」  
「……本当に?」  
シェーンの手櫛が、自らの乱れた髪をすくのに任せながら、ベアトリーチェは彼を見つめた。  
「はい。食費なんかのことは考えないといけませんが、ベアトリーチェさんの智慧と僕の力をあわせれば少しくらいは……」  
「……気が早いわ。将来設計まで考えられても……そもそも、子供と言っても、やはり実体を持つかどうかは分からないのよ?  
 わたしと同様、実体がなければ食費も何もいらないのだし……でも、まあ……」  
咎めながらも、そう言ってくれたことはベアトリーチェにとって嬉しくもあったのだろう。  
くすりと笑みを浮かべると、シェーンのペニスをまだ咥え込んでいる場所に、軽く力を込めた。  
――と、その途端、きゅきゅ、と、彼のものは急激な締め付けに襲われる。  
「うッ……く!?」  
射精して萎えていたペニスも、その刺激が血流を呼び覚ましていく。  
緩急をつけた、自在の締め付け――ただでさえ敏感になっているのに、そんなことをされては堪らない。  
すぐに、シェーンのものは力を取り戻してしまった。  
 
だが。ベアトリーチェは、そんな状態にしておきながら、腰を上げてペニスを抜いてしまう。  
「ッ……あ」  
カリ首が引っかかり、その刹那には呻きを漏らす――が。  
それでも、彼女の身体全体を釘付けに出来る訳はなく、ちゅぷ、と音を立てて二人は離れた。  
その行動に一瞬シェーンは不満を覚えたが、すぐにそんなものも吹き飛んでしまう。  
何故なら、  
「……では、もう一度しましょう。念のためというのもあるからね」  
自ら四つんばいになって、後ろからの挿入をせがむようなベアトリーチェが前にあったからだ。  
「もう、一度……」  
「確か、ニンゲンはこちらの体勢の方が妊娠しやすい……と聞いたわ。  
 事実かどうかはともかく、縁起を担ぐというのも、たまには悪くないもの……  
 ……ほら、早く。せっかく注いでくれた精が、零れてしまうわ」  
幼い姿の夢魔の後ろから見える秘所は、ぽた、ぽた、と先ほどの残滓を滴らせている。  
奥の奥まで注ぎ込み、なお余ったものがこうやって零れ落ちているのだろうが、  
粘度の高く、白く濁ったそれが少女の穢れないように見える秘所から流れ落ちる様はひどく背徳的である。  
「そ、それじゃ――僕の、で――」  
「……蓋をして、そして……減った分を、たっぷりと補充してね」  
くすりとした笑みとともにそんなことを言われてしまっては、シェーンの理性など儚い泡沫のようなものでしかない。  
日頃温厚な少年は、瞬時に頭に血を上らせて――  
「……いきますッ」  
しっかりと、ベアトリーチェの腰を掴み。  
ぴちゃ、ぴちゃ、と、二、三度勢い余って的を外し、彼女のヴァギナの周囲を刺激して――  
それでも。力と、欲望と――恐らくは愛の篭もった一撃は、ついに夢魔の膣口を捉える。  
「あ……来て、そこ……ッ」  
囁き声を助けとして、一気に――  
ずちゅうッ!  
「くああッ!」  
生命の種子が眠る子宮を目掛し、熱いペニスの一撃をたたきつけた。  
 
太く、硬く、熱い茎が、小さく、狭く、そして同様に熱くねっとりとしている肉の壁を破るように貫いていく。  
まだ膣内に留まっていた精液が、余裕を奪われて入り口から零れていく。  
「あぁッ……ん、少し……待って……」  
自分から誘いはかけたものの、シェーンの勢いは少しばかり強すぎた。  
痛みこそ無いのだが、快感と、そして肉を蹂躙される感触に軽い吐き気まで覚える。  
「え……ええ」  
一度抜いてから突こうとしていたシェーンは、その言葉にどうにか動きを止めた。  
身体は、欲望として思う様この少女を貫き、深く繋がりたいと訴えているのに――  
それを自制できたのは、シェーンの日頃からの節制があればこそなのだろう。  
「ごめんなさい、誘ったのは、わたしなのにね……はぁ、ぁ……ん……」  
実際には、呼吸が詰まることなど無いし、嘔吐することもありえない。  
ただ、電気信号で構成された彼女とて、外部からの刺激によって短絡や、あるいは混信をすることがあるのだろう。  
さしずめ今ならば、予測していたものよりも遥かに大きな快感が自らを貫いたせいで――  
設定された許容できる値を、軽く上回ってしまったのが原因なのかもしれない。  
「……貴方とこうなってから、いつも驚かされてしまう。  
 どうしてかしらね、交わる度に気持ちよくなっていくなんて……  
「それは――」  
堪えていたシェーンは、たまらずに軽く腰を動かした。  
奥にペニスの先が当たり、子宮口をこつんと刺激する。  
「……心が、深く繋がっているって……だからだと、思います」  
「ふぁッ! ……そ、そう……ね。そういえば……そう、だったわ」  
この世界は――夢の中である限りは、あらゆる刺激が直接精神に響く。  
今までベアトリーチェはたった一人だったから、気づくことも無かったのだが。  
そんな世界で繋がるのなら、快感までもが接続されても不思議ではない。  
「そのことについては、感謝してもいいのかもしれない……ん……  
 ……もう、いいわ。落ち着いてきたから、そろそろ再開して――でも……」  
「優しく……ですね?」  
ベアトリーチェは、後ろのシェーンに向けてこくりと素直に頷いた。  
 
くちゅ……と。彼女の中から、外に向けてゆっくりとペニスが抜かれていく。  
抜け出てくるその全体に、ねっとりとした愛液と精液がまとわりつき、根元を伝って一滴づつ落ちていった。  
「あぁ……か、はッ……ん」  
狭い膣内を強引に押し広げていたペニスが抜けて、少しずつ秘肉は緩む。  
それでも、抜けていく時に先の張り出した部分が膣壁を擦り、ベアトリーチェの喉から嗚咽にも似た声を引き出した。  
「くぅ、ん……」  
その快感に震えていると、またシェーンは奥へ向かって入ってくる。  
再び圧迫感と、そして身体の中を埋められる感触がベアトリーチェの中枢を焼く。  
「あ、あの……」  
と、そのシェーンが小さな声で問いかける。  
「な、何……かしら」  
矜持は保ったまま、ほつれた髪をそのままにして彼女は振り向く。  
「もう少し、力を抜いて……凄くきつくて、ちょっと我慢が……出来なくなりそうにッ」  
「そ、――」  
そんなに締め付けていたのだろうか。  
「……そんなに締め付けていたの?」  
「いつもよりも、凄く……」  
振り向いて見たシェーンの顔は、必死で歯を食いしばって耐えているようで。  
「意識してやっていたつもりもないのに……ん、ああ、でも、そうね……」  
四つんばいで耐えていた姿勢を少し崩して、ベアトリーチェは右手を今シェーンのものが入っている部分――  
下腹部に、そっとあてた。  
「……もうすぐ、わたしと貴方の子が出来ると思うと……  
 つい、ね。ここに力が入ってしまうのかもしれないわ」  
どこかうっとりとした表情でそう語る、ベアトリーチェの顔を見て――  
ただでさえ、尋常でない締め付けと、彼女に自らの精を植え込むという行為に夢中になっていたシェーンは。  
「そ、そんなことッ――」  
「……でも、貴方にとってそれが厳しいのならば、少しは楽になるようにわたしも努力を――」  
「その、ごめんなさい」  
「――するから、安心し……」  
背中に、少年の重みがかかってくる。  
 
「どうしたの、シェ……」  
問おうとしたベアトリーチェの、胸――と呼ぶには膨らみの薄い部分に手が回される。  
「な、何を……」  
「……そんなことを言われたら、我慢なんて出来ませんッ」  
「わ、わたしが何を言ったの?」  
彼の両の手が、僅かな乳房を包み込んで動き始めた。  
「ぁッ……あ、待ッ……!」  
ぴり、としたような感触がベアトリーチェに走る。  
が、それと同時に、シェーンは再び激しく腰を動かし始めた。  
ずちゅッ、びちゅッ――再び、勢いよく水音が響く。  
「や、まッ……だ、駄目ッ……だ、ってッ……ひぁッ!」  
「ベアトリーチェさん……ッ」  
崩れた体勢のままでは、後ろからの突き込みを耐えることが出来ない。  
肩から崩れてしまって、ベアトリーチェは無様な格好でシェーンのペニスを味わう羽目になった。  
「ああああッ……や、やあッ……!」  
少女の幼い腰と、少年の逞しさを見につけ始めた腰がぶつかり、乾いた音を立てる。  
それと同時に、繋がった部分では粘り気の篭もった音が奏でられる。  
「ひあッ……や、やめッ……わ、わたし、こういうのはッ……」  
「くッ……」  
ベアトリーチェの瞳から、ぽろ、と涙が零れた。  
悲しいのでも、辛いのでもない。快感と――そして。  
「だ、駄目に……なるの、だから、もうッ……もう、ッ……!」  
「……やめられないんです、僕も……」  
掠れた声で、シェーンは彼女に囁いた。  
ひどく甘美に聞こえる彼のその声に、ますます夢魔は全身の神経を焼かれてしまう。  
ペニスが膣肉の奥を貫き、そして抜けていく。  
愛液や精液が飛び散り――あまりにも浅ましい、獣のような交わりだ。  
しかし、論理の生命であるはずのベアトリーチェは、この一瞬がどうしようもなく愛しいように思えてならない。  
そして、またシェーンのものが子宮口を叩く。  
 
「な……なら……わ、わた……ああッ!」  
ぐちゅッ、ずちゅッ。  
「わ、わたしを……ふぁッ! ……ね、ねえ、シェーン」  
「あ……え、はい」  
今度は、突き込みを止めることは出来ず――彼女の中でペニスを暴れさせながら、声だけは返す。  
「わ、わたッ……だ、だからやめッ……!」  
「と、止まらないんですッ」  
どれだけ激しく交わっても、ベアトリーチェの秘所はいつも新鮮な弾力を保っている。  
見た目は少女でありながら、地上のもっとも優れた娼婦さえも及ばないほどの器――  
アンバランスな組み合わせは、シェーンの欲望を暴走させるのに何らの労力も必要としない。  
「な、なら……そのままでッ……、聞いて。……わたし、の、ことッ……」  
「くッ……う、ぅぅッ」  
「わたしのこと……呼び捨てに、して……」  
「くうッ……え?」  
瞬間、動きが止まった。  
「さん、なんてつけなくてもいい。……一緒に歩むのなら、対等の立場でいたいの」  
「…………」  
「……魔族とニンゲンが対等なんて、ありえないって思っていた。でも、今は……貴方なら、それも……」  
ベアトリーチェの膣奥にある、シェーンのペニスが、びくりと震えた。  
「ベアトリーチェ……さ……」  
そうではなくて、今、言うべきなのは――  
「……ベアトリーチェ、僕の―ー全てを、貴方の中にッ!」  
「……来てッ」  
少年の体重が、腰の一点にかかっていく。  
ペニスの先が、少女の子宮口にぴったりと押し当てられ――  
びゅくッ! びゅるるる、びゅるッ、びゅるるるッ!  
今度こそ、確実に。  
ベアトリーチェの裡の、生命の種子は、シェーンの精液によって目覚めさせられた。  
 
「ああ……あ、ああ……」  
最早声もなく、ベアトリーチェは小さく呻くだけ。  
シェーンもまた、一心に自らの『想い出』を彼女に注ぐことに集中している。  
二人の肉の隙間から、ぴちゃぴちゃと精は零れ落ち――  
それでもなお、少年から流れ込む射精の勢いは止まらない。  
「分かる……分かるわ、わたし……今、貴方の想い出が、来てる……」  
「はいッ……」  
その想い出は、生命の種子の中へ――卵子の中に精子がもぐりこむように、生命を形作っていく。  
「これで……わたし……」  
射精が止まるまで、ベアトリーチェは幸せそうな顔を続けていた。  
 
「夢さえも見ない眠り。……それにしても、夢の中でも、夢を見ることはありうるのかしら?」  
眠っているシェーンの顔を見つめながら、ベアトリーチェはつい先刻まで繋がっていた場所を優しく撫でる。  
夢の中で眠っても消滅しない――つまり、現実の彼はまだ眠ったまま。  
夢を見ない眠りに落ちれば、このようなこともありうる。  
「……生命は、確かにわたしの中で芽吹きつつある。  
 貴方は……本当に後悔しないでいてくれるのかしら? 魔族と子を為すなんて……  
 いいえ、きっと貴方なら望んでそれをしてくれる。わたしも信じているけれど――」  
一途な想いで。護るように、祈るように、彼女はそこを撫でさする。  
「どんな子が生まれるのかしら? 願わくば、父親によく似た子であるように。  
 ……わたしの要素は、あまり受け継いで欲しくないわね」  
「いいえ」  
起き上がったシェーンが、静かにそれを拒否してみせた。  
 
「二人ともに似ているはずですよ、きっと」  
「……わたしの要素なんて受け継いだら、魔族の――バケモノになってしまう。  
 そんなものを、貴方の子だなんて……わたしは、多分言えないわ」  
気配で察知していたのか、彼の覚醒にもさして驚かず。  
ベアトリーチェは、呟いて返した。  
「……そんなことありません。僕は――」  
と、背中から手を回して、少年は夢魔の手に自らのそれを重ねる。  
そして、同じように生命が宿った場所を優しく撫でた。  
「ベアトリーチェさ……ベアトリーチェに、よく似た子が生まれて欲しいですから」  
「……有難う、シェーン」  
心からのお礼を言って、少女は身と、そして心を彼に預けた。  
 
 
「さて」  
翌日、シェーンは起きて早々祖母に呼び出された。  
内容は――聞くまでもなく、ベアトリーチェのことであろう。  
「……シェーン。お主は、じゃな」  
「わかっています」  
自分でも驚くほど冷静な声が出る。  
昨夜の夢の中での行為が、少年に成長を促した――あるいは、父親としての自覚を促されたか。  
「でも、僕は彼女を否定することだけは出来ないんです。  
 これだけは、例えガイアの思し召しだろうと譲るわけには……」  
「……何を早とちりしておるか」  
「え……?」  
老獪なるハルは、にやりと笑みを浮かべる。  
「お主に宿った夢魔めは、あまりにも重い罪を犯した。  
 星の生命を蹂躙するという、死などでは償いきれぬ重い重い罪をな」  
「それはッ――」  
「待てと言うに」  
老婆の杖が、少年を制す。  
 
「ゆえに、じゃ。容易く死など与えてやっては、死を司るギィ・ラムトス様とてお怒りになろう。  
 よって、死ではない罰を与える」  
「……?」  
祖母の考えが読めずに、シェーンは戸惑いながら言葉を待つ。  
「その罰とは――世界を巡り、失われた技術をもってファルガイアの再生に励むべし。  
 まったく容易いことではない、百年や二百年では終わらぬ罰じゃ。  
 また、目付け役として魔族のもっとも苦手な相手、守護獣に通じた神官見習いをつけよう。  
 少しでも怪しい素振りを見せれば、ダン・ダイラム様の牢獄にでも繋げるようにな……」  
ようやく、少年にもその考えが読めてきて――ぱっと、笑顔が輝く。  
「な、ならッ……!」  
「よいな、技術そのものに罪はない。現に今の守護獣神殿とて、技術の産物じゃ。  
 ならば、技術をもってファルガイアを蹂躙せんとした罪の償いには、その技術をもってせねばならぬ。  
 そして、言うまでもないがシェーンよ。決して私情に惑わされることなく、己が勤めをまっとうせよ」  
「は……はいッ!」  
思いもかけない言葉に、ただ頷くだけしか出来ないシェーンである。  
「まあ、ある程度調べさせてもらったが、ひとまず今のお主に精神を操られている様子はないからのう。  
 そうなると、昨日の言葉は真実であると考えざるをえん。単純に騙されているだけでは、あそこまで庇い立ては出来んであろうしな。  
 もっとも……孫の悲しむ顔なぞ見たくないというのが、最大の理由かもしれんが」  
ハルも、珍しく屈託のない笑いを浮かべた。  
 
「それなら、ひ孫が出来ればもっと甘くなってくれるかしら?」  
 
そんなところに、ベアトリーチェは姿を現す。  
「……ふん」  
ああ言ったものの、まだ素直に彼女は認めづらいのだろう、ハルは顔を背ける――が。  
「いや……何? ひ孫じゃと?」  
「ええ……ほら」  
ベアトリーチェのワンピースが、下腹部のあたりでぽこりと膨らんで見える。  
それは、紛れも無く――  
「……に、妊娠、じゃと?」  
 
「それはッ……ど、どういうことなんじゃッ!?」  
「見ての通りなのだけれど……」  
昨夜受胎をして、もうこの大きさである。  
やはりニンゲンの出産などとは違うのだろうが――しかし。  
「ひ……ひ孫。孫。シェーンと、お主の――」  
「あ、あはは……はは、その。そういうことなんです」  
ぱくぱくと口を開閉させて、シェーンとベアトリーチェを交互に見ていたハルは。  
「――うむ」  
一言呻くと――地面に向けてばったりと倒れこんだ。  
「あああッ!? ファーストエイド、ファーストエイドッ――」  
慌てるシェーンに。  
「フルリペアの方が効率がいいわ。  
 ああ、そもそも傷じゃないのだから、そんなことをしても無駄ではないの?」  
ベアトリーチェは、妙に冷静な助言を与えたものだった。  
 

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