ジョリーロジャーの北、今のファルガイアでは珍しく緑の広がっている辺鄙な土地に、その花園はある。
だが緑があるだけで、他には朽ち果てた遺跡が一つあるようなその土地に、足を踏み入れるものなどほ
とんどいない。
ただ、今日はそんな場所に一頭の馬が乗り入れていた。
花園の近くに留め置かれ、馬の主は花園の隣の小屋に向かう。
小屋には、ぽつんと一人の少女が何をするでもなくたたずんでいた。
馬に乗ってきた少年、ジェットはその少女を見て、少しだけ声をかけようかどうか迷った。
ふとしたことから知り合ったこの花園の少女は、ベリーやキャロットを栽培し、それをジェットらに分
けてくれている。
一言で言ったがこれは凄いことである。今のファルガイアでは、ヒールベリーでさえほとんど実らない
のだから。
それなのに、この少女はミラクルベリーやフォースキャロットと言った最早幻とさえ言える植物をも栽
培している。
ただの少女ではないことは明らかなのだが、その正体はまったく知れない。
勿論、ジェットも正体に興味がないことはないのだが今日来た理由はまた別の用件である。
いや、あるいは同じと言うべきか。
ともあれ、もう一歩ジェットが踏み出したところで、少女もそちらに気づいて顔を向ける。
「ジェットさん? 今日は、お一人……ですか?」
ぼんやりと花々を眺めていた少女は、ジェットの姿を認めて少し驚いたように声をあげた。
「ん、ああ……」
どうも決まりが悪そうに少年は呻く。
いつも、この少女との間にはなんとも言えない空気が流れてしまうのだ。
初めて出会った時から妙な視線で見られたこともあって、ジェットはこの少女が少し苦手であった。
「まだどの苗も収穫には至っていません、けど……」
そんなジェットの葛藤はともかく、少女は淡々といつものように報告をする。
が、ジェットは軽く首を振ってそれをとどめた。
「別に、今日はそういうので来たんじゃねえんだ」
「え? じゃあ……」
わざわざ、一人で――まるでヴァージニア達の目を盗むように来た理由は。
「いや、な。お前……なんか、俺を見る目が他と違うような気がしてな」
「あ……」
つまり、この違和感の正体が知りたい、と。ジェットはそう言ったのである。
「それは……その……」
「妙に気になるんだよな。まあ、悪い意味じゃないとは思うんだが。ヴァージニアなんかもいるのに、
なんで俺だけ……」
「あ……ごめんなさい、その……不愉快でしたら、もう……」
謝られると、慌ててジェットは首をぶんぶんと振った。
「ち、違うッ! いや、そうじゃなくてだな。別に悪くはないんだが、気になるだろッ、ほら、色々」
それを見て、あ、と小さく声を漏らすと、少女もふるふると首を振る。
「本当に、ちょっとしたことなんです……あの、ジェットさんには失礼だったかもしれませんね……」
「だ、だから俺は別にいいんだけどなッ、だッ……いや、とにかく……」
どうもお互いが譲り合うせいか、話がちっとも進まない。
しばらく押し問答は続いていたのだが、途中で少女はふっと微笑んだ。
「いや、俺が気になってるだけ……ん?」
「……あ、ごめんなさい。その、こうやっても仕方ありませんから、お茶でも……どうですか?」
「あ、ああ。くれるってんなら、まあ……貰うけどよ」
少女に促されて、質素な小屋に誘導される。
やっぱり調子狂うな――と少々頭を押さえながら、ジェットは素直に従った。
少女が用意してくれたのは、メイプルシロップでひたひたのパンケーキと、自家製のハーブティである。
ジェットにしてみるとどうも甘すぎるようにも思えたが、味は一級品ですぐに平らげることが出来た。
特にハーブティはファルガイア中探してもないような香り高い絶品であり、これには流石にジェットも
うなる。
「……凄いな、これは」
「あ、有難うございます」
はにかみつつ、少女はじっとジェットを見つめている。
やはりいつもの仕草なのだが、これを気にして今日はやってきたのだ。
「なあ、また俺のこと……」
「ご、ごめんなさいッ……」
「いや、謝るなって言ってるだッ……じゃ、なくて、だなッ……
悪いんじゃなくって、なんでそんなに俺を見るんだよ?」
問われて、少女ははっと息を呑んだ。それから、戸惑いがちに目を伏せる。
「そんなに……ジェットさんのこと、見て……ました、よね……」
「……あ、ああ。だから、悪くはないんだ、悪くは。別にそんなので怒ったりはしないから。
ただな、その理由が知りたいって、それだけなんだよッ。
別に、なんとなくとかそういう理由でもいいんだから、それだけ聞きたかっただけで……」
ジェットも慌ててているのか、言葉の脈絡が不安定である。
それでも、少女はふうっと息を吐いて、今度は真正面からジェットを見つめた。
「……い、言う気になったか?」
「はい。あの、これを聞いたら、多分……ジェットさんは怒ってしまうと思います。
私のこと、嫌いになってしまうかもしれません……から、本当はあまり言いたくないんです。
それでも……いいですか?」
今までと違って、はっきりと、まっすぐにジェットを見据えながら、少女は小さな、しかしよく通る声
でそう告げる。
急に空気が張り詰めてきたような気がして、ジェットも緊張してくるが――
「……あ、ああ。どうせ聞かなきゃ嫌うかどうかなんてわかんねえし、今みたいなのよりはな……
だいたい、どんな秘密でもなんでも、俺はそういうの気にしないんだから、多分大丈夫だと思うぜ?」
「……わかりました。じゃあ、私も……本当のことを、言います……」
どうも慣れない雰囲気に居心地の悪さを感じながら、ジェットは少女の言葉を待つ。
「昔……ずっと昔なんですけど、ジェットさんに似てる人と……お友達、だったんです。
その人も、ジェットさんと同じように、あまり表には出さないけど優しい人で……」
「……俺は別に優しくないってのに」
少女の言葉に、ふっとジェットはこぼす。独り言のつもりだったが、彼女はそれを聞いてふっと小さく
笑う。
「確かに、そういうところはちょっと違います……あの人は、そう言っても何も言わずに照れてるだけ、
みたいでしたから……
それでも、二人とも……誤解されやすいかもしれないけど、優しくて強い人だから……」
ぽりぽりとジェットは頬を掻く。どうも、この少女の言うことはむずがゆい。
「それに、あの人と同じように――あ、いえ……その人も、色々と辛いことを味わって、それでも頑張
ってる人で……
ジェットさんと、その人は、よく似てるって……初めてジェットさんと会った時に、そう思ったんで
す」
「つまり……俺がそいつに似てるから、ついつい見ちまう、と。そういうことか?」
「……はい」
聞いてみれば、何のことも無い話ではある。
想い出を持たないジェットにしてみれば、昔の知り合いと言われてもあまりピンとは来ないのだが、そ
れでも感覚としては分かる。
例えば街角で育ての親のウェルナーにでも似た男を見かけたら、つい視線で追ってしまうのは確かだか
ら。
「なんだ……それだけか。そんなことなら、別に怒るも何もないだろ。
ああ、悪かったな。それくらいで怒鳴っちまって」
「いえ、それだけじゃ……ありませんから」
「……え?」
改めて少女を見ると、何か瞳の奥に強い輝きを感じる。
普段の彼女は、花のように儚く見えて――それでいて、何か芯の通ったような感覚を受けるのだが。
今は、それに加えて悲しみのようなものも見て取れる。
「な、なんだ?」
「その人は……昔の、友人は……私の、好きな人……でした」
「……なッ」
そうなると話は違ってくる。
好きだった相手と自分を重ねて見ている――ということは、下手をすると自分も――
「ま、さかッ……その、お前ッ……」
「ジェットさんはジェットさん……です。あの人とは、似ていても違うって……そう、分かってる――」
「……つもりでした、けど……こうして、何度もお会いして……お話をすると、どうしても……
あの人と、ジェットさんが……一緒になってしまって……」
こうなると、その方面には弱いジェットは言葉を出すのが難しくなる。
「じゃッ……あ、いやッ……で、でも、俺はッ……」
「……ご迷惑、ですよね……ごめんなさい」
実に気まずい空気を感じても、やはりジェットは何とも言いづらい。
何度か、言葉を出そうとして出せず、口を開いたり閉じたりして――どうにか捻り出してみたが。
「……そ、れで、そいつが好きだったって……なんだ、その……別れた、のか?」
言ってから、これはまたまずいことを言ってしまったんじゃ、と思う。
しかし、意外にも少女はそれほど気にしている様子はない。
「本当に、ずっと昔のことですから。……いくら望んでも、同じ時間を過ごすことは……無理でした、
から……」
「つまり、その――お前、俺よりも小さいよな。なら年上の相手ってことか?」
「いえ。多分……同じくらいの年齢だったと思います。はっきりとは分からないんですが……」
「さっぱり分からん」
考え込むジェットを、困ったような顔で少女は見つめる。それに気づいて、ジェットも見返した。
「何にしても……本当に、失礼なことだと思います……ごめんなさい」
それから、ぺこりと頭を下げる。
――こうして、改めて少女の仕草を一つ一つ見ていると、どこかジェットは自分が違和感を覚えている
ことに気づいた。
なんというか。どこか外見から見られる年齢とは、かけ離れたものを感じるのだ。
仲間のヴァージニアは、年齢相応にかしましいところのある少女で――ヴァージニア本人が聞いたら怒
るだろうが――子供っぽいところも多い。
度々出会うマヤ・シュレディンガーも、一応年上とは言えやはりかしましい。それでもヴァージニアよ
りはやや大人にも感じる。
しかし、この少女に限っては、それら知り合いの女性達よりもよほど小さく見えるのに、仕草や言葉の
一つ一つが達観していると思える。
大人――という言葉さえ陳腐なほどに、彼女の言葉からは重いものを感じるのだ。
「……あ、いや。驚きはしたが……そういうことなら、な……」
ともかく、ジェットも首を振って少女に答えた。
考えようによっては、これはひどく辛い想い出なのかもしれないのだ。
少し前ならいざ知らず、最近のジェットはヴァージニアらとの付き合いで、どうにかそれくらいの配慮
は出来る、つもりである。
「まあ、アレだ……その、無理やり聞いちまったようなもんだし、俺だってな……
そういうことなら、俺も文句は別にないから……」
「ジェット……さん」
「……悪かったな」
慣れないことを言っている、と自分でも思いながら、ジェットはカップを置いた。
「じゃ、またベリーが採れた頃にでも来るはずだから……今度は、このお茶とお菓子、ヴァージニアに
も出してくれ。
あいつなら、俺よりよっぽど喜んで食べるだろうし」
気まずい空気から逃げたいのか、適当なことを言いながら小屋を出ようとする、と。
「……あの、待ってください」
「え?」
少女は――ジェットの袖を掴んで、じっと彼を見上げている。
「一つだけ……お願いしても、よろしいでしょうか」
「お願い?」
こくんと頷いてから、彼女は少しうつむいた。
「これも、凄くご迷惑なことだとは、思うんです……が……」
「俺に出来ることなら、別にいいけどよ……なんだ?」
「はい……あの。その、好きだった人とは、結局別れてしまった……って、言いましたよね。
あの時から、後悔していることがあるんです」
そう語る少女の目は、どこか遠いところを見ていた。
「結ばれなかった……という訳でもないんです、けど。あの人との想い出を、もっと作っておけばよか
ったって……」
「……結ばれた? ってことは、ああ……な、何? ど、どういう話だ、そりゃ?」
彼女の漏らした一言に、ジェットは強い違和感を覚えた。
結ばれた、と。結婚したということだろうか。が、彼女はどう見てもまだ少女のはずで。
「……あ、あの、こ、こういうことを言うのはその、なんていうかッ……
……実は、その人と、……肉体的に、その……」
聞いた途端、彼女は顔全体を真っ赤にして、いつもにも増して小さな声になってしまったが――
実際、それどころではないことを呟いた。
「……肉体的ッ!?」
今度の言葉には、流石にジェットも戸惑いの声をあげる。
「って、ちょっと待て、お、お前ッ……そ、そりゃ、に、肉体的だとッ!?」
「……は、はい……」
どう判断してよいものか、ジェットの頭脳は完全なパニックに陥った。
肉体的とはつまりそういうことであろう。あまり恋愛などにはピンと来ない性格だが、一応知識として
はある。
だが、それにしてもこの目の前の、花園の少女――どう見ても、彼女は妙齢の女性とは言えない。
しかも彼女の語り口からして、その『ジェットに似ている』人とやらと一緒にいたのはずっと昔――
そんな時期ならば、どう考えても少女どころの話ではないはずなのだ。
「……ど、どういう世界なんだ、そりゃ……」
「で、でも、わ、私、だ、大丈夫でしたからッ……い、今とそんなに変わってもいませんしッ……」
「変わってない?」
この言葉で、ジェットの思考は完全に停止した。常識などという言葉も、何もかもが通用しない。
「……そ、それでッ……あの、ジェットさん。
私、あの人のこと、忘れた……つもりだったんです。でも、ジェットさんが現れて……
昔を思い出してしまって、そのッ……」
「ああ、ええと、その、なんだ。……俺にどうしろと?」
どうにかジェットはそれだけの言葉を絞り出した。少女も、それを聞いて深呼吸する。
「……私と、一度だけ……想い出を作ってくれませんか?
そうしたら、あの人のことも、ジェットさんのことも、私……」
「想い出、って……そりゃ、要するに……アレ、だよな……」
流石にここまでのことを言うのは彼女も大変だったのだろう。ここに来て、真っ赤になって俯き、黙り
込んでしまった。
ジェットにしても黙ってしまいたかったのだが、何も言わない訳にもいくまい。
(ったく、うんざりだぜッ……)
いつもとは少々毛色の違った意味で口癖を思い浮かべてから、改めて少女を見る。
「……悪いけど、そういうのって、ちゃんと……なんだ。あ……愛し合ってる奴とやるべきだと思うぜ」
実際のところ、これはヴァージニアの受け売りである。
ギャロウズが常日頃から女性とよろしくやりたいと言っているのに対して、彼女が
「もうッ、そういうのはちゃんと愛してる人とやるものでしょッ!
ギャロウズだって大人なんだから、美人見てすぐデレデレするのやめなさいッ!」
と怒っているのを見たことがあるから。
あまりよく理解できるものでもなかったが、とりあえず――そう言っておいて損はないだろう。
しかし。
「……ジェットさん、私のことは……?」
「え? そりゃ……べ、別に嫌いじゃねえけど……」
「それなら、私は――きっと、ジェットさんのことが好きですから……
お互い、嫌いじゃないんでよね……」
「そりゃあそうだが、けど……」
「……一度だけでいいんです。その想い出があれば、また永い時間を生きることだって……出来るはず
ですから」
ところどころによく分からない箇所があるが、それでも彼女の言葉はジェットの心に響いた。
想い出を持たないことは、別に辛いことでもなんでもない。そう思って生きてきたのが今までの自分だ。
しかし、ヴァージニアらと出会って、今までのほんの僅かな旅の間でも想い出を作って――
今なら、その想い出がどれだけ重要なのか自分でもよく理解できる。
想い出があれば苦しい旅も超えて行けるというのは、ようやく実感できたところなのだ。
「俺なら、想い出を作ることが出来る……んだな?」
「……はい。それに――」
「それに?」
「ジェットさんが、ファルガイアの……だとするなら、確かめておきたいんです。これからの為に」
「……ファルガイアの、何だ?」
「……それは、私の都合……ですから。あの……どう、でしょうか?」
控えめながら、決意を見せた彼女に――ジェットも、ようやく覚悟を決めた。
「言っとくけど、俺にはあんまりそういうのわかんねえから……
ろくな想い出にはならねえと思うけど、本気でいいんだな?」
「それは……大丈夫、です。私が……みんな、してあげます……から」
そう言った彼女は、いつものように穏やかで儚い目をしていたが――
その奥には、静かで、しかし強い意志の光が宿っていた。
実際、先に動いたのは少女の方であった。
「それじゃ、こちらで……」
「あ、ああ」
テーブルの上のカップと皿はそのままに、奥の部屋へと連れて行かれる。
そこもまた実に簡素な、小物の一つも見当たらないような部屋で、片隅に少しだけ大きめのベッドが置
いてある。
彼女が指し示すままに、ジェットはそのベッドに腰掛けた。すると。
「……私が、みんなやります」
そう言いながら、少女は彼のズボンに手をかける。
「え? あ、お、お前……」
戸惑っているうちに、下着までむき出しにされる。
案外積極的なものだ――などと思っていたが、そこに来て少女の手は止まった。
「……ん?」
改めて彼女を観察してみると、また随分顔が紅くなっているのだ。
ああは言っても、やはり恥ずかしいものは恥ずかしいのだろう。
「――やっぱり、俺からもした方がいいんじゃ……」
「い、いえッ……だ、大丈夫、です。……初めてじゃ、ありませんから……」
この少女からそういう言葉を聞くのはどうも違和感がある。
先ほども驚いたが、この見た目で経験済みというのは信じがたいものだ。
「けどな――っくッ!?」
ジェットが戸惑っている間に、少女は思い切って下着を脱がしたようだ。
更に、その小さな手でむき出しになったジェットのペニスを掴んでいる。
「お、おいッ」
「あまり上手には出来ないかもしれませんけど……」
小声で呟きながら、彼女の指が小さく動き始める。
一瞬ぴりぴりとしたような軽い刺激が走った、次の瞬間――
少女は、唇全体でペニスを包み込んだ。
「ッ……な、お、お前――ッ」
その大胆な行いに、ジェットは咄嗟に静止しようと手を伸ばす――
――伸ばした手は、しかし中空で動きを止めた。
少女の舌先が、口の中のジェットを微細に刺激してきたのだ。
柔らかく、包み込むように静かに舐めたかと思えば、次には鈴口をつつく。
感じる場所を熟知しているかのように、彼女の舌は自在に動いてくる。
「う、っく、ぉッ……なッ……!」
身震いするような快感が伝わってきて、ジェットは言葉も出せない。
そんな彼を見上げて、少女は嬉しそうに微笑むと、今度は口の中できゅうきゅうと締め付ける。
ある種、膣肉以上に細かく蠕動し、ペニス全体を絞り上げ――少女の口内は、魔法のようにジェットを
歓待するのだ。
「こ、こんなにッ……お前、なん、でッ……う、くぁッ……!」
戸惑いながらも、彼女の口がもたらす快感にジェットは呑み込まれていった。
小さな口の中で、ペニスは急速に硬さを増し、大きくなり――収まりきらない程にまで成長する。
くちゅくちゅと音を立ててそれを優しく迎えていた少女も、流石に苦しくなったのか一旦解放して、ジ
ェットを見上げた。
「あの……どう、ですか?」
「ッ……い、いや……お前、こんなの一体どこで……」
今まで味わったことのない快楽。想い出を持たない身と言えども、これが尋常でないことは直感で分か
る。
「あの……以前にも、少し……それから、今まで勉強していましたから……」
「以前、って……ああ。けど、それにしても……」
半ば呆然として首を振るジェットに、また少女は少し寂しげに微笑んでみせた。
「あの頃は、色々ありました、から……」
意味深なその呟きに、ジェットは問いかけようと――して、すぐにそれを中断させられる。
少女が、舌を使ってペニス全体を舐めてきたからだ。
口の中にあった時よりも、舌先は自在に動いて、敏感な部分を攻撃してくる。
その暖かく湿ったものがペニスを這う度に、股間に何かどろりとしたものが溜まってくるようで、ジェ
ットは軽く身悶えた。
「ちょ、ちょっと待てッ……で、出ちまうッ……」
「……でしたら、私――」
もう一度、少女はペニスを呑み込む。
先走りが染み出ていた先端が、すっぽりと彼女の口に包まれて、何もかもをも吸い込まれていく。
そうして、指先が根元を軽く押さえた、その瞬間。
びゅッ……びゅ、びゅるるるッ。
口の中で、ジェットのペニスは細かく震えると――
白く、熱い液体を、喉の奥目掛けて吐き出した。
「んッ!」
驚いた様子もなく、少女はその精液を飲み干していく。
「うッ……あッ……」
出しているジェットは、そんな状況でも口の中で細かく締め付けられるペニスの感触にただ呻くばかり
で。
更に口をすぼめて、少女は少しでも多くの精を搾り取ろうとするのだ。
「んッ……ん……」
こく、こく、と喉は動き、吐き出された精を飲み込む。
目を閉じて、一心にそうしている様子がひどく艶かしく見えて、ジェットは射精しているペニスをびく
んと震わせた。
「んんッ」
その時に零れた精液が、ひとまず最後のものだったらしい。
ぐったりとしたジェットと、そのペニスを少女は解放した。
「……はぁッ……ジェットさんの、凄く濃くて……」
「そ、そう……なのか?」
「はい。やっぱり……ファルガイアの……」
「……え?」
何かとてつもなく重要なことが聞こえたような気がしたが。
問いかけようとしたジェットに、少女は先に声をかける。
「では、もう一度お口で……します、から……それで、大きくなったら、私を――」
「……いや。ちょっと待て」
疑問は脇に置いて、ジェットは少女の言葉を途中で止めた。
「全部やってくれるって言った……よな」
「あ、はい……そう、ですけど……」
「……悪ぃけどよ、そういうのはやっぱり性に合わねえんだよな」
不覚を取った――そんな思いが、ジェットには生まれている。
花園の少女――この、見た目にはどう考えても年下の少女が、驚くべき技巧で自分を満足させたのは事
実である。
だが、元々一人で生きてきたこともある。他人のペースに乗せられるのは、どうも気分がよくない。
ヴァージニアらと付き合うことで、それも多少は悪くはないと思い始めてはいたけれど、こういう状況
――
女性にばかり任せているというのは、プライドにだって関わってくる。
「だから、な……やっぱ、俺もやってやるよッ」
「え、あの……ジェットさ……」
言うが早いか、ジェットは少女を抱き上げてベッドの上に寝かせた。
体格の差からいって簡単な仕事ではある。
「ジェットさんッ?」
「……まあ、出来るだけ優しくするから、な」
自らも動いて、ジェットは少女のスカートに手をかける。
それを言葉通りゆっくりと脱がせると、下着を露出させた。
「あ、あのッ……わ、私、何かジェットさんにッ……」
「いや、だから……俺は受身ってのは好きじゃねえから、な」
「でも、あの……ッ」
「いいから……俺だって何も知らないって訳じゃねぇ――」
彼女の下着は、実にシンプルなものである。
生地そのままの素朴な柄。それにジェットは手をかけて、一気に――剥いだ。
「あぅッ……」
少女は顔を真っ赤にして、自分の秘所が目の前の男性に晒されたのを感じる。
まばらに生えている陰毛に、奥の肉はとろりとしたものを湛えて待ち焦がれている。
「よし……んじゃ、いくぜ……」
「え、あ、えッ……じぇ、ジェットさん、ちょっと、待ってくださッ……」
ジェットの指先は、その潤んでいる秘肉にかかる。
そうして、そこを広げると――彼はそっと顔を近づけて、舌を伸ばした。
くちゅ……と、まず小さな水音が響く。
「ひッ……」
それだけで少女は一瞬体を縮めた、が。
ジェットの舌が、その肉をかき混ぜるように動くと、そんなものはいとも簡単に吹き飛ばされてしまう。
「あ、うぁぁぁッ! ま、待ってください、ジェットさんッ……わ、私、それはッ……あ、うッ」
とろとろと愛液が流れ出ている。
それもジェットは舐め取って、更に舌を細かく、激しく動かしてやる。
敏感な場所を、激しく刺激されて――背中を反らす程に、少女は身悶えてしまう。
更に、直接的な刺激だけではなく。
「やめ……あ、ジェット、さん……」
飛んで行きそうな理性をどうにか捕まえて、ジェットの方を見た彼女は――余計に顔を赤くした。
自らの性器を、彼はじっくりと舐めている。
その上に、恥ずかしい場所が完全にさらけ出され、鑑賞されてまでいるのだ。
「みッ……見ないでください、そんなところッ……」
「ん……って、言われても、な」
一度舌を止めて、彼女の方を見る。
「舐めるには、見なきゃいけないだろ」
「で、でもッ……そんなの、恥ずかしい……ですッ……」
「……今更気にするもんなのか? それは」
少し呆れたように言ってから、再びジェットは少女のヴァギナに舌を這わせた。
「やッ……あ、ああッ!」
足を閉じようとしても、すっかり股間に顔を埋めているジェットには効果はなく。
とろとろと、今や愛液は洪水のように零れ出し、彼の顔を濡らす。
と、不意に、ジェットは舌を秘肉の奥へと突き刺した。
「うああッ!? そ、そこはッ……や、んッ……ぁッ!」
とめどなく溢れる愛液と、膣肉の蠢きが舌までも奥へ引き込もうとするようだ。
しかし、刺激を受けている少女はたまらないようで、すっかり快感に顔を蕩けさせている。
「ジェット、さ、んッ……あ、ひッ……く、そ、そんなのッ……やッ……」
途切れ途切れの声に応えるように――ジェットは、秘所のすぐ上にある小さな突起に指をやった。
そうして、軽く撫でてみる――
「ふぁッ……あああッ!?」
全身に電撃が走る。誇張ではなく、少女にはそう思えた。快感のせいで緩慢になった頭でも、その衝撃
は受け止めきれず――
「あ、あぅ、っく、ひッ……や、ああッ!」
ぴゅぴゅッ……と。愛液が飛ぶとともに、彼女は背中を思い切り反らせて、ぴくぴくと痙攣する。
「あ……はぁ……あ……」
ひどく荒く呼吸を繰り返しながら、少女はぼんやりとジェットを見つめる。
「イった……んだよ、な?」
「……ジェットさん……」
急に、少女の瞳にじわりと液体が浮かんできた。
「え……お、おい?」
「……私……ジェットさんのもので……その……したかった、のに……」
「い、いや、そりゃッ……その、だなッ……」
「こういうやり方は……私、あまり……ッ……」
「――ああ、ならすぐにやるからッ」
不満を漏らしていた少女の声を遮って、ジェットはそう叫ぶ。
そして、すぐに彼女の上にのしかかっていった。
「あ、ジェットさん……」
「いいんだよな、ホントに……」
「……はい」
いざ繋がろうという時になって、やはり躊躇いが出る。
けれども、それを振り払って、ジェットはもう完全に回復したペニスを、彼女の膣口へと合わせていく。
「……んッ……」
小さな彼女の入り口は、やはり小さくてなかなかぴったりとは合わない。
そもそも、挿れてしまうだけでも彼女を壊してしまうような気もして、ジェットは少し戸惑ってしまう。
「大丈夫です……から、早く……ッ」
そんな心を見透かしたような少女の言葉に、ジェットは軽く頭を掻いた。
「……お見通しかよ……ちッ、なら俺だって……」
くちゅり、と。
その時になって、ようやくペニスは熱い肉の入り口を見つける。
「……っくッ!」
小さな入り口に、グロテスクな程の肉の剣が突き刺さっていく――
ずぶずぶと。肉の壁を掻き分けて、奥へとペニスは進む。
やはり外見どおりにそこは狭く、進むだけでも凄まじい反動が返ってくるのだ。
「うぉッ……」
一瞬、すぐにでも精が導かれるような気分に、ジェットは陥った、が。
「……っと、マズいな……こりゃ、気が抜けねえ……って、おい、大丈夫か……?」
「はぁ、はぁッ……あ、はぁッ……んッ……」
貫かれている少女は、それどころではなく息が苦しそうだ。
「や、やっぱダメ……か……こりゃ」
「ち、違い……ます……んッ……」
息も絶え絶えに、彼女は言葉を紡ぐ。
「凄く久しぶりでッ……この感触、んッ……はぁッ……」
そう言っている間にも、膣内でペニスはきゅうきゅうと締め付けられ、ざわめいている。
「久しぶり……ってな。なら、動いても一応は大丈夫なんだな?」
「はい……でも、最初はゆっくり……」
「……ああッ」
動かないと、そのまま搾り取られてしまいそうだ。
そんな、少し情けない理由は絶対に表には出さず、ジェットはゆっくりと腰を動かす。
ひとまず奥へと突き込んで行く――と、秘肉はとろとろと愛液を流して滑りをよくしようとする。
それでも窮屈な中を、やや強引にジェットは突き入れて――すぐに、こつんと何かに突き当たった。
「あぅあッ!」
「ここが奥……だな?」
「……は、はいッ……あ、ふッ……ぅ」
身体一杯に貫かれて、少女の吐息も熱さをより増している。
繋がっている場所からも、零れ落ちる液体は増えこそすれ減る様子はまるでないのだ。
そんな中を、ジェットはゆっくりと引き抜いていく。
入っていく時は、あれだけ抵抗していたというのに――今度は、逃がさないとでも言うように捕まえて
おこうとする。
「くッ……うッ……」
ジェットも、その肉の締め付けが、ぞくぞくと背筋に走るような気になっていた。
動かないでいれば、すぐにでも達してしまいそうで。
それでいて、思う様に貫きでもしたら、やはり限界を超えてしまいそうで。
実際のところ、彼女に頼まれるまでもなく、ジェットもゆっくりとしか動けないでいる。
「ジェット、さんッ……ん、入ってるんですね、貴方のッ……あ……」
夢を見るような口調で呟く少女だが、それに答える余裕がない。
半ばまで引き抜いて、再び奥へと進む。
ぐちゅ……ぐちゅ、と、音のペースはゆっくりだが、それでも肉が擦れてお互いに強い快感を生み出す
のだ。
「あ……あ、あッ……う、これッ……この感じッ……んッ……!」
噛み締めながら、少女はそっと両腕をジェットの背中に回し、抱きしめた。
「ジェットさん……んッ……」
「……あ、ああッ」
――少女は想い出を求めている、と言った。
何が彼女をそうさせるか、いまだにジェットには理解できないのだけれど。
こうして、肌を合わせるうちに、何か見えてきたものがある。
「ジェットさん……ジェットさんのが、私の中に……んッ……中で、大きくッ……」
「くッ……ぁッ」
彼女は。
途方も無く、大きな何かを背負っている――
ゆっくりとペニスを動かして、ぐちゅりぐちゅりと膣内を蹂躙するごとに、そんな思いが生まれる。
今、こうして悦びに潤んでいる少女の瞳は、それでもなお――
(……誰かに似てる気がすんだよな……)
儚く、そして強い。
「……ジェット、さん?」
何時の間にか、動きが止まっていたらしい。不思議そうな顔で少女はジェットを見つめている。
「あ。……その、だな。大丈夫なのか? これだけ激しいと……」
「い、いえ……それは、少し……慣れて来ましたから……もっと強く動いても、大丈夫です……」
まったく、彼女の方が余程頼もしい。
まだ遠慮がちだが、それでも前よりは強くジェットは腰を動かす。
ぐちゅッ、ぐちゅッ、と流れる音までも力強く響いてきた。
「はぁ、あッ! ジェットさん、凄ッ……や、ひあああッ!」
膣肉は激しく蠢き、ペニスを締め付け、撫で、ジェットを奥へと誘い込む。
それに応えて勢いよく突き、子宮口を何度も小突くと、少女はぴくぴく震えて喘ぎを漏らした。
「そ、そこはッ……そこ、凄いッ……あ、や、やあッ!」
「……ん……俺も結構ッ……こりゃッ……」
そこが彼女の弱点と悟って、ジェットは奥を小刻みに突く動きに切り替えた。
途端に、少女はぎゅっと全力でジェットを抱きしめ、身悶える。
「そ、そこは駄目ですッ……う、ああッ! な、そんなのッ……」
「くッ……」
くちゅくちゅくちゅッ……音は少し小さくなったが、快感はより大きくなっている。
与えられる快感に応じて、膣壁もまたジェットを強く歓待し――
「ジェット……さん、わ、私ッ……いッ……あッ……!」
少女が、たまらなく声を挙げた、それと同時に。
「俺もッ……出るッ……っく」
「……あ……中、に……ッ、中に出してくださいッ」
「中って――おいッ」
「大丈夫ですッ……もし出来ても、私ッ――」
それは大丈夫とは言わないのではないか――そう思っても、もう抜くことなど出来ない。
「ぐッ……で、出る、ぞッ」
「はい、たっぷりッ……ジェットさんの種で、私にッ――」
ぐん、と強く奥を突いた。
一瞬少女はぴたりと動きを止めたが――直後に、全身を痙攣させて、膣内では愛液をほとばしらせて。
「あ……あ、あッ……あ、うッ……」
「……ッ!」
そうして、ジェットもまた――
びゅ、びゅるるッ! びゅるッ!
彼女の口の中へ吐き出したよりも多く、濃く、その胎内目掛けて精液を放つ。
「――あ……出て……ます……私の中に……」
愛液と混ざり合い、更に少女の膣奥へと精は流れ込む。
「くッ……うッ……」
射精するジェットもたまらない。こんな状況でも、なお彼女の膣肉はやわやわと蠢いているのだ。
子宮内だけには収まらず、だくだくと逆流して精液は繋がっている場所からどろっとシーツに垂れた。
それが、いくらか続いて――勢いが収まると、少女もジェットもぐったりとなる。
それでも、なるべく体重をかけないように気を使いながら、ジェットは息を整えた。
「……ん……」
まだ、接合部からは精液と愛液の混合したものが流れ出ている。
「はぁ……あ、ん……」
少女もいまだに夢見心地のようで、ジェットに抱きつく――いや、しがみついてるようだ。
「……っく」
しばらくは、ジェットも動けずに倒れ付していた。
小屋の周りは季節の花で彩られ、その香りは二人を包み込んでいる。
汗でどろどろになっていても、爽やかな香りはその意識を呼び覚ます助けとなる。
――先に気がついたのは、少女の方だった。
ひどく気だるく、指一本動かすのも困難だったが、どうにかジェットの肩をそっと揺する。
体勢が体勢だっただけに、彼女の上にのしかかる格好になってしまっていて――少しだけ重い。
「ん……あ、悪ぃ……な」
それで気づいて、ジェットもすぐに身体を動かし、少女から身体を浮かせた。
改めて彼女は深呼吸すると、俯き加減に小さく呟く。
「この感じ……あの頃みたいで、ジェットさん……あの、有難うございます……」
「……あの頃」
この言葉に、不意にジェットはむすっとした様子になった。
つまりは、彼女はかつての想い出を、ジェットによって再現しようとしている――
そんな風にも読み取れるのだ。
勿論、少女自身も自覚しているのだろうが、それでもジェットには少し不満となった。
いや、こうして一度お互いの身体を味わって、それによって何処か通じたから――なのかもしれない。
「じゃあ……想い出は作れた、んだよな?」
「……はい。お陰で……この想い出があれば、きっとこれからも――」
「だったらッ」
ジェットは。
落ち着いてきた少女を、急に持ち上げ――胡坐をかいた自分の上に彼女がまたがる格好にする。
抱き合うような体勢で、けれど一つの場所で繋がったまま。
「ジェットさんッ……あ、あの、何を……」
「今までのは、お前の依頼……ってとこだろ。それを果たした以上は、報酬貰わないとな」
「報酬……です、か……?」
「ああ。お前とおんなじモンを貰おうか、って思ってな――」
それは、一つの想い出。少女が求めたものは、誰かとの繋がり――ならば。
「もう一回、やらせてもらって……構わないか?」
「え……」
少女はひどく戸惑っている。
戸惑っていたが、しかし――ふ、っと、柔らかな笑みを浮かべた。
「こちらからもお願いします。ジェットさんとの想い出……」
「ならッ……!」
未だ繋がったままのペニスは、少女の狭く熱い肉に包まれて硬度を取り戻しつつあった。
その上で、彼女に口付けして――ゆっくりと腰を回転させると、すぐに勃起は最大限にまで戻っていく。
「あ……ふ、ぅッ……」
中を満たしている精液を以っても、その太さは少女の中を押し広げ、強い刺激を与える。
すぐに熱さを取り戻している彼女の吐息を聞きながら、ジェットは自らも包まれて締められる快感を受
け取っていた。
激しく出し入れは出来なくても、元々が狭い彼女の中である。
少し動くだけで、その身体全体にペニスの硬さが響き、少女は喘いだ。
「ん、またッ……ジェットさんの、大きくてッ……ひッ……」
耳元に囁きかけるような、細い声。
しかし、そこに含まれる熱さは本物で、事実膣肉はよりいっそう強くジェットに絡みつく。
「お前もッ……さっきより、なんかッ……凄い、なッ」
「は、はいッ」
反射的に応えながら、少女は必死でジェットにしがみつく。
せっかく抱き合う形になっているのだから、そうしなければ何か損をした気にもなる。
それに、抱きしめていなければ、繋がっている場所から響く衝撃に振り落とされてしまいそうで――
「ひぁッ!」
ジェットが腰を突き上げた。ぐ、ぐ、と奥を貫く勢いだ。
その一撃はまさに全身に響いて、少女の声は高く響く――と。
「……な、なんだ、こりゃ?」
少女の肉を味わいながら、ふっと彼女の頭を見たジェットは――そこに、ありえないものを見つける。
普段は帽子で隠れていたその場所から見えたもの。それは、ふさふさと柔らかそうな毛皮に覆われた―
―
「み、耳……だよな? けど、なんでこんな……」
獣のように大きな耳が、彼女についている。
「あ……ッ」
慌てた様子で、少女は頭に手をやった。けれど、これだけ激しい交わりをしていたのだ。
とっくの昔に帽子は落ちて、むしろ今まで気づかれなかったことこそ珍しい。
「み、見ないで下さいッ……こ、これはッ……そのッ」
「……えーっと……」
まだ彼女を貫いたままで、ジェットはしばし考え込んだ。
「……お前、人間じゃ……」
「私ッ……そ、そうじゃないんです、あのッ……」
今までになくひどくうろたえながら、少女は言葉にならない弁解を紡ごうとする。
「あー……まあ、いっか」
「え」
うろたえたままなのだが、彼女は一瞬止まった。
「どうせ俺だって人間じゃないし、よくあることだろ、そんなの。
預言者みたいな連中に比べりゃ、全然可愛いもんだしな」
「あ、あの……?」
一人で納得して、ジェットはうんうんと頷いた。予想外の展開に、まだ止まったままの彼女を置き去り
にして。
「まあなんだ。ちょっとしたアレっていうか……お前、魔族じゃないんだよな?」
「はい、それは確実にそう、ですけど……」
「だったら別にいい。続けるぜッ」
「ジェットさん……ん、あぅッ!」
また、腰が円運動を始めた。
中のペニスも動いて、膣肉をかき回し少女を刺激する。
「本当に、何も気にならないん、です、かッ……!? や、ひ、ふぁうッ」
「当たり前、だろッ――っく」
ぴくぴくと震えて、少女の秘肉はジェットを締め付ける。
「……やっぱり……ん、あッ――ジェットさんも……」
快感に再び溺れかけながら、彼女はきゅっと抱きしめる手を強めた。
そうやって交わりながら、ジェットも少女を抱きしめる。
――その折に、目の前で揺れる彼女の耳に目がとまった。
ふさふさと実にさわり心地の良さそうな耳である。
「ちょっと……試してみるか」
「あ、あの……?」
はむ、と耳を口に含む。
「ひぁぁッ!?」
その瞬間、びくびくと彼女の身体全体が震えた。
「そ、そこはッ……び、敏感すぎて、だ、駄目なんですッ……や、あッ!」
「……そっか。そりゃいいこと聞いたな」
「え……あ、や、やめッ――」
歯は立てないようにして、その耳を柔らかく食む。
軽く噛むだけでも、その都度少女は
「やああッ! や、そ、そこは駄目ッ……で、ひぁッ!」
激しい程に身を震わせて、全身を痙攣させる。
秘所からは過剰なまでに愛液が零れ、シーツの上に染みまで作ってしまいかねない。
「敏感なんだな……っくッ。こっちもそんなこと言ってられねえ、かッ……」
それは同時に膣肉の締め付けも強める。
調子に乗って段々噛む力を強くすると、少女はオーバーな程に身をよじらせて応えた。
「だ、駄目、駄目ですジェットさッ……ああぁッ! も、もう、私、すぐッ……う、あッ!」
膣肉の震えはひどくなり、ペニスにも過剰な刺激が与えられる。
ぐちゅッ……ぐちゅ、と動きは小さいが、お互いが受ける快感は尋常のものではない。
「だ、駄目、でッ……や、やあ、やあッ……ッ」
少女が喋ろうにも喋られなくなった時には、ジェットもまた限界に近づいていた。
「んッ……く、悪ぃ、俺もそろそろッ……」
「あ、あうッ……あ、はぃッ……ん、もう一度、私の、中でッ……え、出してッ――」
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅッ。
奥を細かく刺激して、仕上げに一番奥まで突き刺す――
「……出るッ!」
「んッ……あ、私ッ――もッ、んぁぁぁああッ!」
びゅるッ……びゅる、びゅ、びゅるッ……
もう一度、彼女の奥の奥――子宮にまで届かせるほどに、精は飛沫く。
「私のッ……中にッ……んッ。たっぷりと、種を埋めて……」
「……あ……っく」
頭の中は真っ白になって、ただ相手の全てを想い出とする為に――
ジェットと少女は、お互いを強く抱きしめあって精液をやり取りした。
そっとペニスを抜き取ると、そこからはとろりと名残が零れ出た。
「……中に出しちまったよな、俺」
「そう……ですね」
「子供……出来ない、よな? 俺はなんたって――」
「……ふふ」
少女は、何故だか小さく微笑んだ。
「な、なんだよ」
「ファルガイア全ての生命の想い出から生まれたジェットさんなら、あるいは――」
「え? お前、何を……」
「いいえ……大丈夫です。もし生まれても、その時は――」
微笑みは変わらない。彼女の愛する花のように、柔らかく穏やかな笑み。
「私も、きっと強く生きていけると思います」
「つまり、その。責任取らなくても……いい、訳ないよな……?」
「その時はその時ですけど、あ、でも……ジェットさん。もう、着替えた方がいいですよ?」
呆然としたままのジェットに、少女は優しく忠告した。
「あ、ああ。後始末してからだけど……でも、なんでだ?」
「多分、もうすぐヴァージニアさんが迎えに来ると思いますから」
「……よく分かるな」
微妙に冷や汗をかきながら、ジェットはその言葉に従った。
彼女の予測通り、そのすぐ後にはヴァージニアが小屋に姿を見せる。
「もう、また一人で勝手な行動して……」
「いいだろ、別に」
「よくないよッ」
例によって例の如くのやりとりをしていると、少女が不意に微笑む。。
「あ……い、いや、その……ジェットが色々迷惑かけちゃった、かな……?」
口喧嘩を見られてやや気まずそうにヴァージニアが問いかけると、少女は首を振って答えた。
「いえ。こちらも沢山相談に乗ってもらいましたから。ジェットさんは、やっぱり優しい人です」
「そうかな……ま、まあ、それならわたしもいいんだけど……」
残されたジェットは、一人むすっとした顔をしている。
「……もう、いいだろ。じゃ、今日は世話になったな」
そう言って、ジェットはさっさと帰ろうとするが。
「あッ。もう……ごめんね、ホントッ」
ヴァージニアも、慌ててその後を追う。なんだかんだで、忙しいらしい。
「はい、また出会う時をお待ちしています……あの、ジェットさん」
「……あん?」
馬に乗りかけていたジェットは、その声で少女に振り返る。
「最後に、一つだけ……いいですか?」
「別に構わねえけど」
「……あの。よろしければ、いつか、また……今日みたいに、想い出をお願いします」
「あ、ああ……」
と、そんな意味深なやりとりに、ヴァージニアが眉を顰めた。
「……ちょっと? それ、どういう意味?」
「お、お前にゃ関係ねえッ」
慌てて誤魔化そうとするジェット。また毎度毎度の口喧嘩――かと思われた、その瞬間。
「ヴァージニアさんも一緒でいいと思いますけど」
「……なッ」
「……ええッ!?」
時間が止まる。ように思える。
「大丈夫です。昔はもう一人多かったですけど、それでも十分――」
「なッ……お、お前ッ――」
「ど、どどどどどッ……どういう、それはッ――」
思い切り困惑する二人を余所に、少女はくす、と微笑んだ。
こうしてまた誰かと交わることになるとは、数百年も予想しえなかったこと。
けれどもそれ以上に、いつかのような友を作れた――それが、彼女にとっては何より嬉しくて。
「……待つのも、辛いことばかりじゃありませんよね」
混乱し始めた二人はそのままに、少女は幸せそうに微笑みを浮かべていた。