目当てのオイルを無事購入し、ARM工房から出てきたロディの耳によく知った声が飛び込んできた。  
「じゃーなッ!次回の参拝もこのアイドル、ゼット様にお任せだッ!」  
町の奥へ去っていく家族連れにゼットが大きく手を振っていた。  
(仕事してたのか)  
守護獣神殿に詣でに来た者達の護衛を済ませたところのようだ。  
星の力の回復の表れか、あの神殿に手を合わせに来る人間も少しづつ増えてきた。  
そして彼らを道中と神殿内の魔獣から守る仕事はこの町の渡り鳥にとって日帰りで気軽にこなせる定番クエストになりつつあった。  
「おお、また会ったか少年。オレは今労働の喜びというものを噛み締めていたところだッ!それはもうスルメも丸ごとふやかせる勢いで」  
(…よし、ザックはいないな。今度こそッ!)  
こちらに気づいて手を上げるゼットに再度教えを請うべく駆け寄る。  
「さっきの話…」  
「おおっと!あそこから先はお前には早いぜッ!オーバーエイティーンオンリー!青少年に有害な表現がてんこ盛りだッ!!」  
「……」  
ばっさり瞬殺された。  
結局ザックが止めなくてもゼットにはあれ以上先を語るつもりはなかったらしい。  
(くうッ!確かに俺はクラン修道院の見学も未だにギリギリ許されてしまう16歳…)(※あれから皆ひとつ歳を取りました)  
「さて、金も稼いだことだしアウラちゃんにお土産買って帰るか…」  
(じゃ、じゃあせめて俺とセシリアのこと相談に乗って…)  
背を向けたゼットの肩を慌てて掴んだ瞬間。  
(え…)  
静電気のような痺れが右手から脳天に駆け上った。  
振り向いたゼットは目をぱちくりさせていたがやがてニヤニヤと笑い出した。  
「コネクト&インストールとは恐れ入った。へぇ〜〜ほぉ〜〜。お前とあのヤキソバ姫がチューまでいってたとはねえ」  
どうも「相談に乗って欲しい事」そのものを象徴する記憶がゼットの中に流出してしまったらしい。  
真っ赤になって俯くロディを散々からかった挙句、とうとうゼットは高笑いしながら町から去ってしまった。  
しかしロディが赤面していたのはからかわれたからではない。  
ゼットは気づいてないのだ。彼の記憶もまた、ロディの中に流れ込んでいたことを。  
 
 
『ゼットさん……ん、あ、あ……ああっ』  
テーブルの上に仰向けに乗せられたアウラがゼットに貫かれながら喘いでいた。  
はだけられた服から覗く乳房は特別大きいわけではないが、小柄な体と幼い顔立ちには不釣合いなほどに成長していた。  
形の良さと張りの具合からこれまで幾度もゼットの手で愛でられていたことが伝わってくる。  
大きく開かれた脚の間にあるべきショーツは千切られ、アウラの秘められるべき部分が丸見えだった。  
痛々しいほどに広がってゼットの分身を受け入れる花弁から溢れる白濁が内腿を汚している。  
汚されているのは下半身だけではない。  
乳房の谷間はもちろん、顔にも、テーブルの上で扇形に広がる金髪にも…欲望の発露たる白い粘液が支配の証のようにまぶされていた。  
アウラの唇の端からも一筋、白い線が伸びていた。  
言葉を発する方の唇にも精を注ぎ、飲ませてあったのだ。  
それよりもロディを驚かせたのはゼットがこの上ない激しさでアウラを攻めていた事だ。  
彼女の壊れやすそうな身体を気遣うそぶりも見せず、のしかかって捕らえているような体勢で腰を振り続ける。  
アウラが身をずり上げて逃れようとするときつく掴んである両手首を荒々しく引っ張ってさらに結合を深める。  
陵辱。  
ふと、こんな二文字が思い浮かんでしまう。  
実際二人の仲を知らぬ者が見たら無理矢理犯しているとしか思わないであろう交わり方だった。  
それなのに。  
『あああぅッ!!んッ……くぅ…っ』  
アウラは決して嫌がってはいない。  
焦点を持たぬ瞳をさらにまどろませて強姦まがいの仕打ちを恍惚とした表情で受け止めている。  
 
やがてゼットの口から心底愉しそうな声が上がった。  
『嬉しそうな顔しやがって…魔族のオレにメチャメチャにされるのがそんなにイイのかよッ!』  
『はい…』  
『こういうヤられ方も、一人でするときに想像してたのか?』  
『はい…ゼットさんが来てくださらなかった日はこんなことばかり考えて…』  
『いやらしい……なッ!』  
『ああぁぁぁっ!!』  
言葉と同時に勢いがつけられた突き込みに高い嬌声を上げるアウラ。  
ゼットがもたらすものなら、恥辱や痛みさえも快楽に転ずるのだ。  
『お願い…です…次は、どうか一緒、に……』  
『じゃ、もっと魔族らしい抱き方をしてやるかなッ!』  
繋がったまま、ゼットはがばとアウラの上半身を抱え込み、口を開けて白く柔らかなふくらみの片方に牙を突き立てた。  
ぷつ。  
皮膚の爆ぜる小さな音。  
『あーーーーーーーーーーーっ!』  
いつまでも続くかに思える、アウラの悲鳴。  
弓なりに反り返った後に脱力する細い身体。  
白い乳房に浮かんだ真っ赤な点がひとつ。  
子宮も膣もとっくの昔に限界まで満たされていたのか、ゼットが吐き出したそのままの量の精液がだらりと下がった脚を伝って床に落ちた。  
『これでもう…ニンゲンのオトコじゃ満足できねえな』  
血の珠をねっとりと舐め取りながらゼットが呟く。  
『初めからゼットさんじゃなきゃ駄目です…愛されるのも犯されるのも、ゼットさん以外の人じゃ嫌ぁ…』  
『オレもアウラちゃんじゃなきゃダメだ…』  
『それなら私のこと、いつでも好きにしてください。私の体、全部ゼットさんの物です…』  
『……全部、か』  
未だ硬さを失っていない陽根が引き抜かれる。  
『うん…?』  
喪失感からか眉を顰めるアウラ。  
気がつくと、花弁の後ろの窄まりにゼットの人差し指が第一関節の辺りまで埋まっていた。  
『そんなこと言ってるとこっちの初めてって奴も貰っちまうぜ?』  
アウラの潤んだ瞳がまるで贈り物を前にした子供のように輝きだし、口元にはどこかしたたかな微笑みが浮かんでいた。  
 
 
(はは…絶倫なんだね、ゼット)  
なんとか落ち着こうと記憶の持ち主を冷やかしてみたが、あまりうまくいかない。  
くらくらする頭を抑えながらこの現象について考えをまとめようと努める。  
(やったよおじいさん!俺の力で心と心がつながった!…ってこれは違うだろッ!!)  
今日も冴え渡る一人ボケツッコミ。  
確かにあの日共にARMを構えてくれたサーフ村の人々の勇気や励ましの気持ちが流れ込んできた感覚に似てはいる。  
しかし先ほど見たものはそれとは比べ物にならないほどの鮮明なイメージを伴っていた。  
ARMは元々魔族の身体構造を模した武器であって。  
それへの精神接続に長けたロディが魔族の体にも何らかの干渉が可能かもという仮説はあながち笑い飛ばせるものでもなく。  
そしてさっきは偶然、互いの機械の心の記憶と回想を司る部分が繋がってしまったのだろう。  
いや、過去映像の類とするにはあまりにも臨場感がありすぎて、あの二人が互いに互いの愛の奴隷となった瞬間をその場で見届けてしまったも同然の感覚だった。  
(まずい…)  
急速に熱が集まりだした下腹部を宥めながらロディは今夜の宿が取ってある酒場に足を向けた。  
 
ザックは自分の場所をカウンター席に変えていつもの様にウェイトレスに挑んではあしらわれていた。  
その肩の上で丸くなってるハンペンの姿も見える。  
幸い、ロディが戻ってきたことには気づいていない。  
挙動不審にならないように努めながら二階に取ってある客室に向かう。  
「う……」  
階段の半ばでバランスを崩し、壁にもたれかかってしまった。  
体の中心の熱さを抑えようと呼吸を整えてみるが、気を抜くとまたさっき見たものを思い出してしまう。  
あの後続いた記憶も、それは残酷で淫らな光景だった。  
初めて穿つ部分であるにもかかわらずゼットはアウラの後孔を激しく攻め立て、アウラもその暴虐を至福として受け入れていた。  
ゼットでもあんな陰湿な物言いをすることがあるというのは少しショックだ。  
依存とは無縁そうなアウラがあんな隷属的な発言をするということも。  
本来、あれは彼らがお互いにしか見せない顔なのだろう。  
決して自分がこんな力を使って覗き見ていいような領域ではないのだと罪悪感で胸が痛くなった。  
しかし今は一刻も早くこの高ぶりを解放しなければ。さもないと…  
(狂ってしまう!)  
無理矢理膝に力を込めて階段の残り半分を駆け上がり、自分達の寝床となっている部屋に転がり込んだ。  
 
「うう…はぁッ」  
ベッドに転がり、ジーパンから取り出した肉棒を扱く。  
同室のザックがいない時間を使ってこんなふうに精を抜くのは別に初めてのことではない。  
それなのに今のロディはこの行為にかつてない焦燥を伴いながら没頭していた。  
枕元には例のスケベ本を広げてある。  
自分がオカズにしているのはあくまでもこの本であって、先ほど見てしまった仲間のプライバシーではないのだと言い訳するかのように。  
しかし紙面を追うはずの目はきつく閉じられ、瞼の裏には再びアウラの痴態が再生されていた。  
元々金の髪に白い服という共通点を持つ彼女の姿をセシリアにすり替えるのは容易だった。  
セシリアの開かれていない部分もあんなふうにこじ開けて…思いのままに貪ったら、彼女はどんな顔をするのだろう?どんな声を上げるのだろう?  
(ごめんッ!ごめんよ…ゼット…アウラ……セシリアッ……!!)  
冒涜している者達にひたすら謝っている間も手を止めることは出来なかった。  
隣の部屋にセシリアが戻っているかもしれないと思うと手の中の分身はさらに熱さと硬さを増す。  
ロディは粘ついた欲望が体外に排出される瞬間まで、瞼の裏ですすり泣くセシリアを犯し続けるしかなかった。  
 
(セシリア……)  
掛け布団を頭まですっぽりと被った状態で、ロディはうずくまっていた。  
やっと熱が引き、醒めてきた頭が導き出した結論は彼にとってあまり認めたくないものだった。  
先ほどしでかしてしまった行為によって、自分がずっと彼女に対して抱えていたもやもやした欲望の正体に気づいてしまったのだ。  
(人じゃない俺が、公女の、セシリアを…)  
自分もゼット達がしていたように、異種の交わりという背徳の蜜を味わいたかったのだ。  
しかも相手はアーデルハイド公女にして守護獣の巫女でもあるセシリアだ。  
この星で一番神聖な存在ともいえる彼女が人外の自分によって穢される様を想像するだけで…。  
(また、大きくなってきた……)  
しかしさっきと同じ行動に走ろうものなら今度こそ自己嫌悪で再起不能になりかねない。  
今日はこのまま眠り込んでしまうよう、自分の身体に強く願いながらロディはひたすら目を瞑り続けた。  
 

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