夜半の宿の一室に、アームを手入れする少年が一人。  
心を繋いで操るこの兵器――アームは、極めて高度な技術力の結晶であるという。  
それゆえに、常日頃から整備を行っておかなければいざという時に使えなくなる可能性もあるのだ。  
悪魔の兵器と言っても、こういった部分では極めて細やかで、繊細な扱いを必要とする。  
撃てばそれだけで敵を抹殺せしめるような、それほど便利な道具でもないのだ。  
 
それを扱う少年、ロディ・ラグナイトはそのことを良く分かっているから、今日もこうして整備に余念がないのであろう。  
その手に握るアームによって、仲間や自分の命を守るのだと思えば尚更のこと。  
それに、今日はとある凶悪な敵と戦ったということもあって、一層指先に力が篭もるというものだ。  
心を込めて手入れを続ける、そんな少年の背中に――不意に、声がかけられた。  
「ね、ねえ、ロディ。ちょっといい?」  
手を止めて、後ろを振り返る。今、扉の向こうから聞こえた声は、少年の仲間であるところの――  
「え、ジェーン?」  
――ジェーン・マクスウェル。それに間違いはない。  
「そう、あたし。……忙しい?」  
「いや、そんなこと無いよ。もうほとんど終わりかけたところだったし」  
――じゃ、失礼するわ。そう言って入ってきたのは、声で予測した通りの少女だった。  
クセのある金髪に飾った大きなリボンが印象的な、一度出会ったら忘れられない『カラミティ・ジェーン』。  
けれど、今の彼女の顔はどこか赤くて――熱っぽいように見える。  
「……あれ、風邪でも引いた?」  
「べ、別にそんなこと無いわ……そ、そうだッ。ロディ、それ……整備やってたんだ? ね、ちょっと、見せてくれる?」  
何か誤魔化すように大声をあげたジェーンだったが、とりあえずロディは不審にも思わず従ってみる。  
「へえ、凄く細かい仕事がしてあるのねえ。パパでもここまで出来るかどうか……」  
と、少女は、ハンディキャノンを見るに感嘆してため息をついた。  
手入れが命のアームなだけに、今までどんな風に扱われてきたかは見ればすぐに分かる。  
「爺ちゃんが手入れしてくれてたから……そのお陰なんだ」  
「お爺さんって、ゼペットさんのことね。なるほどねえ……」  
同業者だから通じる話で盛り上がりながら、少しの時間が過ぎて。  
やがて、一瞬話が止まったその時に、ジェーンはごくんと息を呑んでから声を出した。  
 
「……それで、本題なんだけどさ」  
「本題って……何の話?」  
軽く首を傾げるロディに、ジェーンはどこか引き気味で口を開く。  
「あの……ほら、今日戦った相手のことなの」  
「今日……あ、いや、それはッ……そ、そのッ」  
途端に、ロディの顔が真っ赤に染まった。随分と唐突である。  
「ご、ごめんッ。あんなことになるとは思ってなくて、いやそれ以前の問題って分かってるんだけど、そのッ」  
しどろもどろになるロディを、少女は伏目がちに見つめながら――昼間のことを思い出していた。  
 
風の海の墓標。かつて、この地にてあるアームマイスターとその弟子達が風の海を目指して研究を続けていたという。  
その研究も実を結ぶことはなく、今はただ遺跡のようにかつての名残を残しているだけの場所――だが。  
こんな場所でも何かの宝が残っている可能性を信じて、ロディとジェーンらの一行はここを訪れたのである。  
そうして、宝を探して上の階、下の階と巡ってみたものの。  
「うーん、やっぱり二度目じゃろくなお宝は見つからないわね」  
と、ジェーンが呟く。その言葉は皆の気持ちを代弁しているようで、周囲の仲間は一斉にうなずいた。  
実際、以前に一度ここを探索して、その時はルーンドライブという『お宝』を見つけているのだ。  
あわよくばとも思ったが、世の中というのは中々そう上手く行くものでもないらしい。  
「あ〜つまらんつまらんッ。こんな何も無い塔なんて歩いてたら青春の時間の浪費にしかならんだろーがッ!」  
そんな不平が、一緒にいたある魔族からも出る始末である。  
 
――しかし。『お宝』は、意外なところに残っていた。  
ロディ、ゼット、ザック。男三人が本棚から見つけた、最後の秘宝。  
「う、ううむッ……これはッ。魔族にない文化の欠片ではないか少年ッ!」  
「おお、こいつはなかなか……中級くらいってとこだな」  
ゼットとザックによる、宝を発見したことの感想である。  
残ったロディは、その宝を見つめ――  
「…………ッ……」  
声も無く赤面するばかりだ。  
誰もが驚愕する、その宝の名。それこそは、半ば伝説と化していた――  
 
スケベ本。  
 
――そんな微妙にアレな冒険を繰り広げたのが、今日の昼間のことだった。  
その後、開いたスケベ本は襲い掛かってきて、大変な苦戦の末に辛うじて撃滅せしめたのである。  
男どものスケベ心から起こった無意味な戦いに、当然ジェーンら女性陣の冷たい視線が彼らを襲ったものだった。  
その話を、ジェーンが蒸し返そうというのだから――ロディも、自然と身構えてしまう。  
「あ、ああいう本に興味があったっていうかその、俺も……いや、えっと、何て言ったらいいのか……」  
どちらかというと、他の二人が無理やり読もうとして、ロディは巻き込まれた形ではある。  
ただ、読みたいという気持ちがまったく無かったのかと聞かれると、それもまた微妙であって。  
「……ごめん」  
結論として、謝ることしかロディには出来ないのだ。  
ところが――  
「あの……ロディって、ああいう……ムチムチな女の人が好きなの?」  
ジェーンは、予想外な言葉を返してきた。  
 
「え……?」  
「だからッ! やっぱり、スタイルのいい人が好きなのッ!?」  
何故か怒ったように聞いてくるジェーンは、いつもと少し違うように見える。  
「べ、別にそういうんじゃ……」  
「だったら、なんであんないやらしい本なんて読もうとしたのよッ」  
詰問口調だ。やはり怒られているのだろうが、何か奇妙である。  
「そ、それは……その、ごめん……」  
「謝ればいいってもんじゃないのッ。……ああいう人が好みじゃないんなら、さては……エッチなことがしたいんでしょ、ロディッ!」  
「えええッ!?」  
――したくない、と言えば嘘にはなるが、だからといって何が何でもしたいという訳でも――  
「だったらッ!」  
ジェーンは、ぐいっとロディに顔を近づけた。  
吐息がかかる距離にまで密着して、不意に少年の鼓動が高鳴ってくる。  
「……あたしがその、エ……エッチなことさせてあげるから。もうあんなの読まないでよ」  
空白。  
彼女の言葉を聞いた時、まずロディの頭に浮かんだのは――空白であった。  
 
「……ちょ、ちょっと待ってよ、ジェーン」  
「何がッ!?」  
また顔を近づけてくる。少し気を抜けば、お互いの顔が密着してしまいそうで――ロディは焦りを覚える。  
「あ、あの、落ち着いて……なんで、そんなこと……」  
「そりゃ、だって……」  
 
ロディがスケベ本を読んだのを見た時、最初にジェーンに巡った思考は『不潔』。これのみであった。  
(あんないやらしい本読むなんて、ロディもやっぱり最ッ低……!)  
少女らしい、ある意味で潔癖な考え方だ。  
内心ロディに好意を抱いていたというのに、あんな本を読むなんて――と。  
そのまま、もやもやとした怒りを抱いて宿に戻った、のだが。その夕食の席で、仲間の一人のエマにあることを言われたのである。  
なお、男性陣は昼間のこともあって同席できなかった。  
 
「しかし意外ねぇ。ザック君にゼット君はともかく、ロディ君ってああいうのに興味無さそうだと思ってたんだけど」  
ここまでは、まだジェーンと同じ感想だったから、少女もうんうんと頷く。けれど、エマは続けるのだ。  
「ってことは、彼にも色仕掛けって通用するのよね。つまりホムンクルスにも性欲ってあるのか、うん――」  
そう呟くなりエマは手元のメモ用紙に何かを書きつけていたようだったが、これを聞いてジェーンは衝撃に襲われた。  
(……え? じゃあ、そういうやり方なら、ロディともっと仲良くなれるの?)  
愕然としてしまう。何しろロディは――本人はあまり気づいていないようだが、実にモテるのである。  
ジェーンもそうだが、他にもセシリア、マリエルなど――ライバルは多い。  
(……じゃ、じゃなくってッ。そんなロディだって、ああいういやらしいとこがあるんだから――)  
慌てて頭を振って妙な考えを追い出そうとする。が、更に追い討ちをかける言葉が、今度はエマとは違う席から放たれた。  
「……それなら、私が……って、やだ、そんなはしたないこと……」  
独り言のようで、あまり意味が繋がらない言葉だが――ジェーンには、はっきりと理解できた。  
何しろそれを呟いたのは、恋のライバルにあたるセシリアだったのだから。  
 
(このままにしておいたら、セシリアに先越されちゃうッ……それくらいならッ!)  
いじましい思考の推移である。  
無論、まだ『いやらしいこと』への抵抗は、これを決心した時点ではまだあったのだが――  
 
食事の後、その溢れかけている思いのままにジェーンは一冊の本を手に取った。  
「い、一応……回収したお宝の確認はやっておかないとね……」  
――実のところ、密かに持ってかえって来ていたのである。例の本、スケベ本を。  
嫌ってはいても、無視が出来ない。いや、嫌っているからこそ気にせずにはいられないのか。  
「べ、別に、興味があるんじゃないからねッ!」  
誰に聞かせるでもなく呟いて、少女はページをめくる。そこには、  
「ちょッ……な、これッ……!」  
予想を圧倒的に上回る、淫靡でグロテスクなまでの男女の姿――  
「……んッ……」  
知らず知らずのうちに、ジェーンの右手は自らの下着へと伸びていたのであった。  
 
「や、やっぱり、こんな本読むなんて……最低よ……」  
指先が、下着の中へともぐりこんでいく。  
まだまばらにしか生え揃っていない陰毛を、無意識のうちに少女は弄んでいた。  
――その目が追うページの先には、女性の秘所に顔を埋めて舌を使う男性、という図が載っている。  
修正などというものはなく、女性器もはっきりと描かれていて、これは明らかにやりすぎなものだ。  
ジェーンも、そんなものを見るうちに――指先は、陰毛から動いて自らの入り口をそっと撫でていた。  
「ん……あ……」  
いつしか、そこが僅かに湿っていることに少女はうっすらと気づく。  
「な、何……これ……」  
慌てて指を引き抜き、目の前に持ってくる。  
少し粘り気のある液体――おもらしとは違う、知らないものが自分から出てきているのだ。  
「……こ、これ……これが……?」  
もう一度本を見てみると、そこに描かれている女性の秘所からは――溢れるように、とろとろの液体が流れていた。  
「これが、愛液……?」  
覚えたての単語を呟き、また指を潜らせる。  
確かめてみると、自分のそこも僅かに湿ってきていて、ぴちゃ……と小さな音を立てた。  
「こんなのが出てくるなんて……あ、あたし……」  
怯えながら――少女は、指に力を入れて、少しだけ自分の中へ押し込んでみる。  
ぐちゅ……と鈍い音を立てながら、指は自らの肉壁をつついた。  
「あ、や、な、何、これッ……」  
――まるで分からない。一度も感じたことのない、まったく分からない感じ。  
それなのに、不快ではない。  
「わ、分かんないよ……分かんない、のに……なんで、あたしッ……」  
僅かに入った指を、前後へと動かしてみる。  
ぐちゅ、ぐちゅ、と小さな水音を立てながら、指先は熱い刺激を胎内へと送り込んできた。  
「や、やだ……ッ。あ、あたしこんなことッ……分かんない、のにッ……!」  
はぁ、はぁ、とジェーンの息も僅かずつ荒くなってくる。  
やがて、そうやって動かしていた指の中で、肉壁に包まれずに外をさ迷っていた一本が――不意に、上にある小さな突起を擦った。  
その瞬間、  
「ひぁッ!?」  
びくんッ――と、少女の身体が跳ねる。  
 
「……な、何なの、これ……この感じ……」  
クリトリスを擦った刺激は、まだ幼い少女の性感にも響いたようだ。  
膣口を刺激するだけでは飽き足らなくなりかけていた、その時の一撃――  
「こ、ここ……が……」  
もう一度、その場所を触ってみる。恐る恐る、といったつたない指先で。  
「あんッ!」  
期待通りに、その場所は痺れるような快感をもたらしてくれた。  
こうなると、もうジェーンの頭は快楽に塗りつぶされてしまう。  
「あ、ひ、あ、ひぁッ……あ、あッ」  
ヴァギナを擦り撫でる指は動きを早くして、時折自らのクリトリスも慰める。  
覚えたての快感のままに、少女は思う様自らを高めていく。  
くちゃ、くちゃッ……そんな、いやらしいはずの音が下着の中から聞こえて、ジェーンはぼんやりとした思考のまま指を動かしていた。  
「止まらない……止まらないのッ……」  
朦朧としたまま、そんな呟きを漏らして。  
それでも、目線はまだスケベ本の上にあった。  
「ん……ん、は、あッ……」  
零れ出る愛液も、最初に比べると遥かに量を増して下着を濡らしていく。  
黒い染みが出来るほどに零れながら、まだ秘肉は自らの指でほぐされ、とろけていった。  
「あぁ、あッ……あぅ、ロディッ……ん、はぁッ……!」  
その視線の先にある男女の絡みは、何時の間にか自分の秘所をロディの舌でほぐされるというものに変わっていた。  
彼女だけの妄想――だが、彼女にとっては現実の光景として映る。  
そうやって、舌で弄ばれる自分の姿、そして自分を弄ぶロディの姿が――また一つ、少女の意識を溶かしていった。  
指先は、もっと激しく秘肉を擦る。  
「あ、やだ、やだぁッ……ロディ、そんな、そんなとこッ……!」  
ぐちゅッ……と。奥へと指を突き刺して、また同時に突起を捻るように強く擦ったその瞬間――  
「うあッ……ん、ひあああッ!」  
びく、びく、と身体を震わせながら――ジェーンの下着からは、とろりと液体が零れ出していた。  
 
「……はぁ、はぁッ……」  
行為の後の虚脱感と充足感を味わいながら、ジェーンはスケベ本を床に落とす。  
そのまま、壁に身体を預けて少女は息をついた。  
「……ロディ、あたし……」  
これは偽りの感覚。不潔でいやらしいこと――でも、ロディ本人にしてもらわなければ――  
「……あたし、多分……ロディに嫌われちゃう……かも……」  
呟きながら、少女はどうにか起き上がり、  
「でも……やっぱり、我慢……できない、みたい……」  
――そうして、少年の部屋に向かって覚束ない足取りのまま歩き始めた。  
 
 
そして、今。  
「ジェーン、だから落ち着いて……」  
そんな事情があってジェーンがこの部屋に来たとは、当然ながらロディが知るはずもない。  
だから、必死に押し留めようとするのだが――  
「……渡り鳥として、パーティの一員がああいうことに手を出すのは無視できないのッ!  
 だから、ロディはちゃんとそういうの処理しなきゃいけないんだからッ……!」  
理論が無茶苦茶になっているせいで、どうも会話が成り立たない。  
「だ、だけど、そういうのは好きな人とッ……!」  
「……好きな人?」  
それを聞くと、ジェーンはもう一度顔を近づけて――今度こそ、身動きすればキスできるまでに接近した。  
「……だ、だから……」  
それでも弁解しようとする少年に、熱い吐息を噴きかけながら――少女は、言う。  
「ロディはあたしのこと、嫌い?」  
「そんなことッ!」  
「……じゃあ、いいじゃない。嫌いじゃないんなら、証明して」  
「で、も――」  
言いかけたロディの唇に、ジェーンは不意打ちのように自らのそれを重ねる。  
「んッ!?」  
それはすぐに離れてしまったが、ロディを沈黙させるには十分だった。そして、  
「……ごめんね、ロディ。あたし、今凄く卑怯なことしてる……」  
謝ると、もう一度ジェーンは――唇を、重ねた。  
 
そのまま、身体ごとこちらに預けてくる少女を受け止めて、ロディはどうにか持ちこたえる。  
ジェーンの唇は柔らかく、そして暖かくて――その感触に、思わず抱きしめてしまいたくなる程だ。  
けれど、ロディは辛うじて衝動を制することに成功し、そっと彼女を引き離した。  
「あ……ロディ……」  
唇が淋しそうに、自分の舌でぺろりと舐める。  
その仕草が妙に扇情的で、またロディの背筋に欲望の衝動が生まれた。  
それでも、まだなんとか――理性は残っている。  
「今日のジェーン、ちょっとおかしいよ。そんなこと言うなんて」  
「ん……でも……」  
潤んだ瞳で見つめられると、なんだかいたたまれない気分になってしまう、が。  
「やっぱり風邪とか引いてるんじゃないかな……だから、部屋に戻って休んだ方がいいと思う。  
 今日のことは、俺も忘れるから、それで……」  
「……忘れる?」  
じ、とジェーンはロディを見つめた。  
「う、うん。こういうのは、そのッ……恥ずかしいことかなって……」  
「……そりゃ、恥ずかしいわよッ! 恥ずかしくない訳無いじゃない、こんなことッ!  
 でもダメなの、もう、身体が熱くて……ここで帰れなんて、そんな残酷なこと言わないでよ……」  
その言葉からは、焦りと熱が伺える。  
つい先ほど味わった、初めての快感が――今まで言いたくても言えなかった言葉を、心の底から引きずり出しているのか。  
「あたし、ロディのことが好きなの。……こんないやらしいこと言って、嫌われるって思うけど、でも。  
 それでも……お願い、今だけでもいいから……」  
そこまで言われると、ロディも返す言葉がなくなっていた。  
直接好意をぶつけられる、などということに戸惑っていたというのもあるし、ロディ自身にだって彼女を抱きしめたいという欲望もある。  
それに――カラミティ・ジェーンなどといっても、まだ一人の少女なのだ。  
この小さな身体に沢山の想いを背負って、今こうして全てを預けてきてくれている。  
「……ジェーン」  
誰かを守ることが、この力の意味なら――あるいは、これも。  
「……うん。大丈夫、俺……ジェーンのこと、嫌いになんてならないから」  
「ロディ……ッ!」  
そうして、二人は再び唇を重ねた。今度は、ジェーンからの一方的なものでなく。  
 
自分の意思で口付けをすることで、ロディも少しだけ大胆になったようだ。  
閉じられたジェーンの唇をこじあけ、そっと自らの舌を差し入れる。  
生暖かい、少年の唾液が流れ込んできたことでジェーンは目を見開く――が、異様なまでの心地よさで、すぐにとろんと瞼が下りた。  
くちゅくちゅと音を立ててロディの舌は動き、少女の口内は好きなように嬲られる。  
それと同時に、お互いが身体を押し付けて――温もりを伝え合いながら、情熱を込めたキスを続ける。  
まだ年若いゆえに、ジェーンの身体は女性らしい柔らかさを完全には得ていない。  
それでも、その若さからのしなやかさが、ロディの身体に染み渡るように響いた。  
「ん、ふぅッ」  
やっと唇が離れると、ジェーンは少しの間朦朧としていたものの――はっと目を見開いた。  
「ちょ、ちょっとちょっとロディッ!」  
「な、何?」  
「な、なんなのよこれッ……!」  
翻弄されるような口付けは、どう考えても熟練の技のようである。  
ロディは、その手の話に疎い疎いとばかり思っていたのに――  
「何って……言われても。ほとんど無意識でやったようなものだし……」  
「無意識って、ロディ……」  
才能というのは怖いものだ。ロディの天性は、アームを扱うばかりでもないらしい。  
「色んな意味で恵まれてるのねぇ」  
「それってどういう……」  
言葉を遮って、ジェーンはそっと身体を離した。  
「よくわかんないけど、気持ちよかったってこと。あんまり気にしなくていいわ」  
「なら……いいんだけど」  
安心してほっと息をつくロディの顔を見ながら、少女は不意にぷっと軽い笑いを浮かべる。  
「ジェーン?」  
何か失敗でもしたのかと、少年は少しだけ不安になる――が。  
「もう、そんなにビクビクしなくてもいいってばッ。  
 あたしだって十分気持ちいいんだから、変に気は使わないでよね」  
そう言ってにやりとした笑いを浮かべるジェーンにつられて、ロディも少しだけ微笑んだ。  
――その笑顔を見た途端、またジェーンの顔が赤くなったが。  
 
ベッドの上に移動して、ロディはその端に腰掛ける。  
ジェーンもまた、そのロディに寄りかかるように動いて――足の上をまたぐように抱きついた。  
「ねえ、もう一回キスして?」  
「うん……」  
すぐに、二人の舌が絡み合う音が響き始める。  
だが。不意に、ロディはズボンの上のジェーンから湿ったものを感じ取った。  
それはスカートの中から零れてきているようで、暖かい感触がある。  
「あれ? ジェーン……これは?」  
「え……あ、その、これは、えっとね……」  
唇を離して問いかけると、少女は顔を背けてしまう。  
「おもらし?」  
無邪気に尋ねたロディの頬を――一発、きついビンタが直撃した。  
 
そんなに力の無いはずのジェーンの一撃に、涙目になりながらロディは謝る。  
「ご、ごめん」  
彼女の方も照れが入っているようで、ふん、と鼻を鳴らした。  
「何バカなこと言ってるのよッ。これはそういうのじゃなくって……」  
そこで、ロディの表情を見る。  
じゃあ、一体何なのか、とでも言いたそうな、純真な瞳でこちらを見ている。  
「う……」  
こういう目にはジェーンは弱い。  
「そ、そんなに知りたいんなら教えてあげるわよッ……ちょっと、手貸しなさいッ」  
僅かに腰を浮かせると、彼女はロディの手を取って自分の方へと引っ張った。  
「あの、何を……」  
「触れば分かるでしょッ」  
そのままスカートの中へと導いていく――と、ロディの指先に、肌のぬくもりとざわりとした感触が伝わってくる。  
下着ではないそれに――少年は、ジェーンに向かって顔をあげた。  
「ジェーン、あの、何も履いてないって……ッ」  
「さっき濡れちゃったから脱いだの。……ん、そこじゃなくって、もっと下よ」  
 
言葉通り、少し下に動かしただけで潤った場所へとたどり着いた。  
「こ、こんな感じになってるから、あたし……」  
「これって、おもらしじゃ……」  
「無いわよッ!」  
一喝した瞬間、ロディの指も慌てて前後に揺れる。  
その刹那、僅かに膣口の熱い肉にも触れて――ジェーンは、軽く身をよじった。  
「んッ!」  
先ほど自分で触れた時よりも、熱くて激しい刺激があった。そんな気がするのだ。  
一方、触れたロディは。  
「あ、ごめんッ」  
ジェーンの様子を見て、何かまずいところにでも触ったかと指を引こうとする。  
「違うの。今の、ちょっと気持ちよかった」  
その指を引き止めて、少女はむしろ少年の指を押し留め、奥へ誘うように腰を動かす。  
「だから、もっと触って、ね?」  
「……それで、ジェーンのためになるなら……うん」  
こくんと頷くと、ロディは指に力を入れる。  
くちゅり……と小さな音を立てながら、その指は僅かにジェーンの膣口へ潜りこむ。  
「あ、はッ……」  
さえずるような高い声が漏れた。  
そしてロディは、暖かく湿ったそれに導かれるまま指を動かし、軽くかき混ぜてみる。  
「や、んんッ……そ、そんな感じでいいの、ロディッ……」  
「じゃ、じゃあ、続けてみる……」  
「うんッ」  
少年の指の動きは、まだあくまでゆっくりとしたものだ。  
ゆるゆると秘肉の入り口を触り、奥を突こうとはしていない。  
それでも――ジェーンは。  
「あ、はぁ、はんッ……やだ、なんで……?」  
不思議な思いを抱えながら、ロディの――恋しい相手の指の刺激に、身を任せていった。  
 
先ほど自分で慰めたばかりの場所を、ロディによって触られている。  
たったそれだけのことで、しかも動きとしては自分がやった方が激しいくらいだったというのに――  
「やッ……ロディ、すごッ……凄い、あたしッ……気持ちいいッ」  
「ジェーン……なら……」  
「うん、うんッ……もっと、もっとしていいから……ッ」  
指を動かしている人物が、ロディであるというそれだけのことで――  
ジェーンの快感は、先ほどとは比べ物にならないくらい高まっていた。  
「あう……ロディの、凄く気持ちいいよぉッ……なんで、こんなッ……」  
「そんなに……?」  
問いかけに答えるかわりに、ジェーンは身体をロディに押し付けて、腕を回した。  
それでも腰は揺れるように動き、少年の指先を味わおうとしている。  
「あぁ、あ、ひぁッ」  
男の指が、自分の秘肉を割って入ろうとする。  
昼間にスケベ本を見た時は、こんな行為自体が破廉恥で、いやらしくて、近寄りたくも無いと考えていたというのに――  
「ロディ……あたし、変なのかな……?」  
「変って、ジェーンは変なところなんてないよ」  
そう言いながら、ロディの指は段々と慣れてきたようにぐちゅぐちゅといやらしく音を立てていく。  
「あふうッ! ……だって、あの本みたいなこと、あたし……嫌だって思ってたのに……」  
「……正直に言うんだけど、ジェーン……」  
そっと、ロディはジェーンを見つめた。  
「……俺、ああいう本読んで、こういうことしてみたいって思ったんだ。その……セシリアや、ジェーンに」  
「え……そ、そう……なの? あたしにもしたいって?」  
「勝手にそんなこと、思うだけでも失礼だからッ……絶対、こんなこと言えないって思ってたんだ、でも――」  
本当に申し訳無さそうなその告白に、ジェーンは一瞬衝撃を受けたようだが。  
「……やっぱり、ロディったらエッチなんだから……仕方ないわね、あたしがされてあげるんだから、ちゃんと感謝してよッ!」  
「あ……う、うんッ!」  
それでも――快楽に火照った顔のまま、少女はにんまりとした笑顔を浮かべた。  
その笑顔が愛しくて、ロディは空いている腕で彼女を抱きしめる。  
そして、もう片方の手ではぐっと奥を突きたてた。  
「ひやあッ! ……も、もうッ!」  
喘いでから、ジェーンは軽く叱るようにロディを睨む。  
 
ジェーンの秘所から零れる蜜は、その量を増してすっかりロディのズボンを濡らしてしまっている。  
いいように弄ばれて、すっかり身体から力が抜けた少女は、また秘肉を触ろうとする少年の手を遮る。  
「ん……も、もういいよ」  
「い、いいの?」  
「これ以上やられちゃったら、おかしくなっちゃいそうなの……」  
そうして一旦離れると、ジェーンは自らの服に手をかけた。  
「……ん……」  
一つため息をついて、ゆっくりと脱ぎ始める――  
「…………」  
その光景を、ロディは声もなくじっと見つめていた。  
やがてぱさりとスカートが落ちて、少女の裸体が目の前に晒される。  
「ふう……」  
「……あ、え、と、えと」  
じいっと見つめる目線の先には、健康そうに日に焼けた肌と、少しの膨らみ。  
そして、未だにとろりとしたものを分泌する陰った秘所が――  
「……ちょ、ロディ? なんでまだ服着てるのよ?」  
「なん……え? な、何?」  
その美しさ――美しいというよりは、まだ可愛いといった部類ではあるが。  
そんな肌に見惚れていたロディは、ジェーンの問いかけに間の抜けた声しか返せない。  
「あたしが脱ぐなら、ロディも一緒に脱ぐのが筋でしょッ?  
 それなのに、フツーにそうやってるのは自分でもおかしいって思わないの?」  
「あ……」  
『こういうこと』をする以上は、やはり脱ぐものではあろう。  
気がつかなかったのは不覚というしかない。  
「す、すぐに脱ぐよ」  
「……もう、見てらんないんだから。いーわよ、あたしが脱がせてあげる」  
「そ、そんな……俺だって、子供じゃないんだから……」  
「面倒かけるとこがね……いいから、あたしにお任せッ」  
 
まるで幼い子のように、ロディはジェーンの手によって服を脱がされていく。  
その際、必要以上に彼女が身体を密着させてくるので――とっくに硬くなっていた、彼のものは、余計に力を滾らせていく。  
「結構ややっこしい服ねえ、これ」  
「だ、だから、自分で出来るから……」  
「いーからいーから」  
それでもどうにか上半身を裸にして、そして下半身も――と、下着をずるりと下ろしたところで、ジェーンの手が止まった。  
ロディの動きも止まっている。つまりは、二人とも、露出したものを見てしまい。  
「あ……こ、これ……」  
「う……」  
隆々と立ち上がって、ロディ自身の一見すると頼りない外見よりも強力そうに見えるほどだ。  
「こんなの……あ、あたしに入るのかな……」  
「それは……その、ど、どうだろ」  
絶句していたジェーンに、ロディは少々考え込むと――彼女を一気に抱き上げて、ベッドの上に寝かせる。  
「あ、ロディッ?」  
「……やっぱり、こういう時は男が頑張らなくちゃって……そう思うから」  
今しがた、服を脱がせられたあたりでプライドに響くものがあったのか。  
そう言ったロディは、なんだかいつもより力強く――そう、ジェーンには見えた。  
「な、なら、任せてあげる……」  
急に高鳴ってきた胸の鼓動を気にしながら、少女は答える。  
それを受けて、ロディはこくんと頷くと――その両手を、彼女のなだらかなふくらみに置いた。  
「……あんまり、スタイル良くないでしょ」  
「そんなこと……無いんじゃないかな。俺、あんまりこういうの知らないけど……」  
「良くないの。お姉ちゃんと比べても全然……」  
そのことを気にしているという口ぶりに、ロディはなんと言っていいのかしばらく考え込む。  
考え込んで、それでも結局答えは見つからなかったから、  
「あ……ん」  
そっと、その膨らみを揉み始めた。  
 
若さからの硬さと、成熟していく女の柔らかさが同時に存在する――まだ硬さの比率が大きいようだが。  
そんなジェーンの乳房を、ロディは優しく揉みしだく。  
「あふ、んッ……や、やっぱりその……あんまり、気持ちよくないでしょ、ロディ……」  
まだそんなことを気にしながら、ジェーンは上目遣いでロディを見つめた。  
ふるふると首を振るだけで返して、少年は僅かに手に込める力を強くする。  
「はぁ、んうッ……」  
熱っぽい吐息を漏らすジェーンの顔を視界に捉えつつ、ロディはアームを扱うかのような繊細さで包み込んでいく。  
「ジェーンの言うこと、間違ってるとこがあるよ……」  
「え……何?」  
弾力と柔らかさの両方を、その両の手で味わいながら、ロディはそっと囁く。  
「こうやって触っているだけで、俺も凄く……その、興奮して……」  
「ホ、ホント? 気持ちいいの、ロディも?」  
「うん……お世辞なんかじゃないよ」  
心から安堵しているような彼女に、ロディは笑顔を見せてあげた。  
「良かった。あたしじゃ、ちゃんとできないかもって思ってたから……ん、ふぁッ」  
そうしてジェーンを導きながら、少年は左手を離す。  
その手を、下へと持っていき――無意識のうちに閉じられていた、両足を開こうとする。  
「あ……そ、そこは……」  
「大丈夫だから……任せて」  
不思議な信頼感のある言葉だ。戦いの中で垣間見る、ロディの芯からの強さを知るからだろうか。  
「そ、そうね。任せてあげるって言ったんだしね……」  
だから、素直に従って――足を開いて、その場所を彼の目に晒した。  
何度かの刺激で開いたそこは、とろとろとしたものを零しながら震えている。  
肉の色が、肌の色とコントラストを作っていて――ロディは、しばらく目を奪われてしまう。  
「ぅ……ど、どう、ロディ……?」  
「……すっごく、エッチだと思う」  
「あ、あたし……その……」  
いやらしい子だと思われたのか、と少しだけ不安になる。  
 
「だから、俺も……エッチな気持ちになってくる、かな……」  
「う……や、やだ、そんなこと言って……」  
真っ赤になったジェーンをよそに、そのひくひくと震えている肉の園にロディは唇をつけた。  
そのまま軽く啜る――すると。  
「ひぁぁぁッ!?」  
予想外の大きな反応が返ってくる。  
それと同時に流れ出る愛液も増えてきて、それを余すことなく啜ればますますジェーンを刺激することになるのだ。  
「あ、ひぅッ……ロディ、きゅ、急にこんなのッ――や、やあッ!?」  
うろたえながら身悶えるジェーンの姿を、なんだか可愛く思いつつ、乳房を揉み、そして秘所を舌でつついていく。  
自分でも不思議なほどにその作業は上手くいき、ジェーンを快感で翻弄させることがひどく容易く思えた。  
「こ、こんなに上手だなんて、変よッ……あ、くうんッ……」  
「自分でもそう思うんだけど……何でだろう?」  
「し、知らないってばぁッ……あ、あ、あぅああッ!」  
悲鳴のような喘ぎをあげて、少女はロディの舌に嬲られる。  
右手は乳房を揉みながら、舌は秘所を弄び――残った左手は、ぷっくりと膨らんだヴァギナの上にある突起を軽く摘む。  
「や、そこッ……そこ、ダメなの、ロディ……ッ」  
慌てて止めようとするジェーンだが、彼は珍しく悪戯めいた笑みを浮かべると――優しく、それを擦りたてた。  
「ひぅッ……くあ、ふあああッ!」  
びくッ、びく、と身体をのけぞらせて、少女の矜持は快感の前に陥落する。  
同時に舐められている場所からはぴゅ、ぴゅ、と愛液が飛び、はっきりとした証拠を残した。  
「あ……あ、うあ……」  
「ん……ジェーン……」  
朦朧とするジェーンから手や舌を離して、ロディは一息ついた。  
 
「……だからなんでこんなに上手なのよ……」  
意識を取り戻した彼女が、真っ先に呟いたのがそれである。  
「なんでって、その。……自然に身体が動くんだ」  
ロディとしては、嘘は言っていなかったりする。  
こんな行為など初めてだというのに、身体はまるで熟練しているかのような動きでジェーンを翻弄してしまっているのだ。  
それはまるで、自分の意志のままに動かせる、そんな――  
「うー。ロディの自由自在に扱われるなんて、あたしはアームじゃないってのに……」  
――アームを扱う時と同じような。  
その感想は、何かの偶然作用によってかジェーンが先に口に出していた。  
「お、俺は別にジェーンのこと、アームみたいだなんて思ってないからッ!」  
「……誰もそんなこと言ってないわよ。それに、そんなことはこの際置いといて――」  
自分の指で、そっとヴァギナに触れてみる。とろとろにとろけて、指はすぐに液体に包まれてしまった。  
「もう……そろそろ、いいわよね……」  
「……あ、その……」  
ジェーンの瞳は、ロディの股間に勢いよくそそり立っているものを見ている。  
ロディ自身としても、あられもないジェーンの姿が興奮を呼んで、痛いほどに滾っていたから、  
「じゃあ……なるべく、優しくする……」  
「ホントに頼むわよ、ロディ」  
完全に身を任せているジェーンのその言葉に、余計に滾るのが分かったが――引けるものではない。  
自分の手でペニスを掴んで、ゆっくりと位置を補正して。  
ジェーンが足を開いてくれているお陰で、よく見えるその場所へとあてがうと、そこでまたため息をついた。  
「……痛くても、我慢するから。一気にやっちゃっても、構わないからね」  
健気な言葉をかけられて、ロディは少しばかり頭がくらくらとした。  
思いにあてられた、とでも言うべきか。  
「……なるべく、痛くないように……出来るなら、そうするよ」  
それが気休めに過ぎないことは、二人ともに分かっていたのだろうけれども。  
抑えきれない感情は、そんな躊躇いなど軽く消し飛ばしてしまって――  
 
ぐッ……ぐち、ぐちゅッ……  
狭い肉の孔へ、ロディの滾ったペニスは突き刺さっていく。  
入ろうとすると拒むように蠢く肉を、半ば強引に掻き分けて――  
「あ……あ、あッ……」  
怯えたようなジェーンの声を聞きながら、それでも止まることなく突き進み。  
やがて、ある一点を――  
「いッ……く、ぅんッ……!」  
ぐちッ……  
鈍い感触を、ペニスの先に味わいながら――  
「んッ……ジェーン、俺ッ……!」  
二人は、確かに、  
「あッ……く、あ、んッ……だ、だい、だいじょぶ……だいじょぶだから、ロディ……」  
身体の奥で。繋がりを感じていた。  
 
「本当に……痛くない、ジェーン?」  
「だ、だい、じょう、ぶ……こ、これくら、い、どってこと、ないわよッ」  
肉壁に包まれたペニスは、その全体をきゅうきゅうと締め付けられ――いや、押し返そうとするように肉が押してくる。  
その窮屈さと、胎内にあるということの暖かさ。二つが揃って、たまらない快感をロディは感じる。  
――ただ、ジェーンの方は。  
「あ……く、ぅぅ……」  
まだ未成熟なその器官に、年齢に比べると大きめなロディのものを受け入れたことは、彼女にとっては災難でさえあるのかもしれない。  
身を裂くような痛みは、それほどに大きなものでもなかったのだが――身体の中を貫かれている異物感、圧迫感がひどい。  
「……痛いなら、抜こうか?」  
「大丈夫ッ! 大丈夫、だから……でも、ちょっとだけ頼んでいい?」  
「なんでも言ってよ、その……俺に出来ることなら」  
「それなら、ロディ……」  
探るように動くジェーンの手が、ロディのそれをきゅっと掴んだ。  
「……握ってて」  
「それだけで……いいの?」  
「うん。それだけでも……安心できるの」  
そのまま、しばらくは二人とも動かず、波が去るのを待つ。  
 
しかし、そんなにすぐに痛みが消え去るものでもない。  
ずきずきとした鈍い衝撃は、まだジェーンの下腹部に残り続けているのだ。  
ロディの方では、そんな彼女の膣内にいることで暖かい快感を味わえているのだが。  
かといって動く訳にはいかず、少年は気遣うように握ったままのジェーンの手に軽く力を込めた。  
「んくッ……う……」  
本人が必死で痛みを隠していても、僅かに漏れる声は誤魔化せない。  
ますます心配そうに顔を覗き込んでくるロディに向かって、それでもジェーンは引きつった笑顔を見せる。  
「い、今のはちょっとその、痛いとかそういうんじゃなくって、そのね……」  
「……うん、分かってる」  
痛々しささえ垣間見れるそんな言葉に、ロディは握っていない手を少女の髪に絡ませた。  
そうして、優しく頭を撫でてやる。  
「あ……」  
その仕草に、ジェーンの身体の力が抜けてゆく。  
優しい手触りと、何より優しいロディの心が伝わってくるようで――  
「あ、あ、あの……こ、子供扱いしないでよねッ!」  
とはいえ、素直にそれを満喫できるほど、ジェーンの心も大人ではなかった。  
自分の弱いところを見られた気がして、慌ててその手を跳ね除けようとする。  
けれど、そうしようとしてようやく思い出したことが、あった。  
「あたしはそんなことされなくてもッ……あ」  
自由になる手は片方だけ。もう片方は、今でもそっと――ロディに握られている。  
「……あ、う」  
そのことを思い出して、少女はばつが悪そうに呻く。ロディは、その時になってやっと声をかけた。  
「あんまりジェーンが辛そうだったから……でも、気に障ったなら謝るよ」  
「……い、いいわよ。それくらいは許してあげる」  
それでも強がりを見せようとするジェーンを、優しい瞳で見つめながら。  
 
そんな中、仕草が緊張をほぐして、ジェーンの身体は僅かにゆるむ。  
そのことを、彼女の胎内に埋め込んだペニスの先で感じ取ったロディは、視線をちらりと結合部に向けた。  
「……ロディ?」  
少年の視線の方向を追って――その先に気づいて。  
「そこは……あ、そっか、あたし……」  
ジェーンも自分の身体の変化に気づく。  
今なら、ロディの欲望の発露も、受け止められることは可能かもしれない。  
「なんなら、動いても……」  
「あの、動いていいかな?」  
ほとんど同時にその声を出した。二人とも一瞬戸惑ったが、一度深呼吸をして落ち着く。  
そしてまた、ほとんど同時にこくんと頷き――  
「じゃあ、出来るだけ傷つけないようにするから……痛くなったら、あんまり、我慢しないですぐに口に出して」  
「そのつもりだけど、でもお医者さんにかかってるんじゃないんだから。変な言い方しないでよね」  
軽く言ってみせたジェーンに向かい、ロディは一度こくんと頷いてから――止まっていた腰を、僅かに進めた。  
ぐちゅりと響く音とともに、少女の膣肉は更に抉られる。  
「ふぅッ……!」  
まだ、痛むものは痛むようだ。ただそれでも、先ほどよりは苦悶の色は深くない。  
「ん、大丈夫。痛いけど、今度はまだ我慢できるレベルだから」  
ロディが不安になる前に、先手を打って少女は宣言をしてやる。  
何しろ目の前の少年は、優しさのあまり時として引きすぎるきらいがあるのだから。  
ついさっき、やる気になったところを見せてくれたのだ。その勢いのままに、自分を奪ってくれてもいいというのに。  
だから、発破をかけてやらないといけない。ジェーンの控えめな胸には、いつしかそんな使命感が生まれていた。  
「ほら、止まってないでッ。この調子じゃ、朝になっても終わらないじゃない。そんな姿、みんなに見られたら大変よ?」  
「そう……だね」  
やっとロディにも火がついたのか、今度は一思いに――突いた。  
 
「くぁうッ!」  
この一撃もまた、処女から女へと移ろっていく最中の少女にとっては痛打である。  
子宮口にぐっと響く重さが、身体をバラバラにしてしまいそうなほどに駆け巡るのだ。  
「ジェ……」  
「いいからッ! もう、さっさとロディのやりたいようにしてよッ!」  
言いかけたロディを遮って、ジェーンはほとんど自棄のように叫ぶ。  
と、それが引き金になったのか――ロディは、ゆっくりと腰を引いていき。  
「う……くッ……」  
ジェーンの小さなうめき声も、吹っ切れたように気にせず――  
入り口近くまで引き抜いて、圧迫感から開放された彼女に向かって小さく告げた。  
「これから、辛くしちゃうけど……」  
「謝らないでッ。……そんなにゆっくりされちゃうと、かえって辛いんだから」  
「うん。……正直に言うと、ジェーンの中、凄く気持ちいいから……我慢するの、結構大変なんだ」  
気持ちいい。その言葉に、少女は軽い勝利を覚えた。  
「じゃ、我慢なんてしなくていいわッ。好きなだけあたしの中で動いてみせてッ」  
「……うんッ」  
言葉は火種となって、ロディの心に燃え上がる。  
その炎の赴くままに、少年は――ぐッ、と腰を突き出した。  
ずちゅッ……と、肉と肉が擦れながら膣奥へとペニスが突き刺さる。  
ジェーンの秘所からは一筋の血が流れて、二人が確かに繋がった証を示す。  
「はぁッ……ん、強ぃッ……!」  
痛みから、硬くなってしまいそうな身体の力を抜いて、ジェーンはそれを必死で耐える。  
「……ごめ、ジェーンッ……」  
そしてロディは、懺悔の気持ちを僅かに残しつつ――少女の胎内を、存分に味わう。  
その膣肉は、最初こそ拒むように押し返す動きをしていたが、なじんできたせいか段々と奥へ誘おうとしてきてさえいる。  
これが、ジェーンに受け入れられていることの証拠に思えるから、ロディは余計に突く動きを早くしてしまう。  
ぐちゅッ。ぐちゅッ。ぐちゅッ――そうして、耐えるジェーンを気遣う余裕も失いながら、少年は子宮口を叩いて嬲る。  
「はぁ、あ、あぅッ……!」  
――苦痛に歪む少女の顔が、僅かに緩みかけた、その瞬間。  
 
びゅるッ、びゅるッ、びゅッ。  
ほとんど不意打ちのように、ロディのペニスの先から――白い命の液体が、ジェーンの中へと注がれる。  
「うぁッ……!」  
その感覚に少年自身も戸惑って、高い悲鳴のような声となって漏れ出た。  
受けているジェーンもまた、体奥に異物が流れ込む感触に、痛みを忘れてロディにしがみつく。  
「こ、これぇッ……! ロディ、あたしの中にッ……!」  
「あ、くぅッ……」  
びゅく、びゅ、びゅるぅッ。  
子宮口から、それは少女の中へ――子宮の中へしっかりと送り込まれ、溜まりを作る。  
「う、はぁッ……あぅ、あ……」  
奥に感じる熱さが、ジェーンの『女』の部分を起こそうとしている。  
直感でそう感じながら、彼女はぐったりとして手から力を抜き、だらりと脱力した。  
 
「う……ん……、あ……」  
はぁ、はぁ、とジェーンの息は荒い。  
それはロディも同じだったが、まだ彼女よりは意識をはっきりとさせている。  
「大丈夫? ……強くしすぎちゃって、それに最後は……」  
「ん……ん?」  
半覚醒の状態で、少女はその言葉を聞いていた。  
痛みの極致と、心地よさの極致。その両方を、同時に味わったような気がして。  
「ん……ロディ、ありがと」  
「だから、俺……え?」  
「痛いばっかりだったけど、それでも……ちょ、ちょっとは良かったからね」  
「よかった……って、ジェーンも……気持ちよくなった?」  
「だ、だからちょっとね」  
すると、ロディは安心したようにほう、と息を吐いた。  
「それなら、まだ大丈夫かな……?」  
「え、何の話?」  
呟いたその言葉を聞き返そうと、ジェーンが身体を持ち上げた。その瞬間――  
「ちょっと、我慢して――」  
「だから何って……えッ?」  
その背中に少年は手を回して。二人が抱き合うようなかたちに持ち上げた。  
 
「ロディ、こ、これはッ……」  
身体が密着して、肌全体がロディとくっついている。  
それだけでも、ジェーンは奥から熱くなるような気がした。  
「こういうのも、ちょっと恥ずかしいんだけど……一回じゃまだ、全然収まらないみたいなんだ」  
ここでようやく気づいたが、まだ少女の胎内に残っているペニスは――力強く、滾っている。  
「それで。あたしも痛いだけじゃないんなら、もう一回やりたいってことね?」  
「……駄目?」  
ん、とジェーンは唇を軽く舐めると、いつもの人を食った顔で言葉を返す。  
「ロディがそう言うんなら、特別に許してあげる。貸しにしとくから、覚えておいてよ」  
そして、目の前のロディを力いっぱい抱きしめた。  
弾力のある乳房と、その先端の乳首が押し付けられて、ロディの身体がぞくりと震える。  
「……返すのは、早いうちにするよ……」  
――同時に、少年はゆっくりと腰を動かしていった。  
 
お互いが向き合って繋がるこの体位では、上下動よりも円運動の方が相応しい。  
緩やかながら、力強く膣肉をかき回し――ロディも、息を荒くしていった。  
「はぁ……ん……ん、ちょっとだけ痛いみたい……」  
時折傷の残る場所に擦れるせいか、ジェーンの顔は苦痛と陶酔を行き来する。  
先ほどのような痛みのみではない感触が、少しの余裕を生み出す。  
それを見て取って、ロディは耳元に囁きかけた。  
「ジェーンのなか、さっきよりも動きやすいよ」  
「あ……ん、ホント?」  
「本当に、滑りがよくなってて……」  
くちゅう……ず、ちゅ……  
熱いペニスは、はっきりと存在感を誇示しながら少女の胎内でますます硬くなる。  
貫かれたまま、ジェーンはその感覚を味わい、熱い吐息を零して言葉に代えた。  
「ん……くぅ……ッ」  
少女が目を開けると、そこには快感を耐えるために瞳を閉じ、歯を食いしばっているロディの顔がある。  
自分自身も貫かれながら、半分ぼんやりとしてそれを見ていたが――少女にはある衝動が生まれて、そして行動へと写す。  
唇を、食いしばっている少年のそれへと重ねて――舌で、その中へと体液を送り込むのだ。  
「……ん?」  
気づいたロディも、すぐに応えて舌を絡ませる。  
くちゅ、と繋がった舌によって奏でられる音と、  
「ん、あ、うッ……!」  
ずちゅッ、ずちゅッ、と繋がった二人の性器から奏でられる音が和音となって響いた。  
「……はぁ、あッ……」  
二つの場所から伝わるロディのぬくもりが、ジェーンの意識を高く高く押し上げていく。  
――ロディの熱いものが、こうやって胎内に確かにあり、そして今にも精を吐こうと震えている。  
その事実を思うだけで、ますます膣肉からは愛液が零れ、震える程にたまらなくなってしまう。  
そして、キスの味も。  
唾液とともに、奥深くへと流れ込んでくるものが、ますます身体を熱くさせる。  
 
ゆっくりとしたままだったロディの動きが、少しずつ早くなる。  
気づいて舌を離したジェーンは、それによって身もだえをしながら問いかけた。  
「あぅッ……ど、どうしたの……?」  
「今のキスで……我慢が、ね」  
「そ、そうッ……あ、んぅッ!」  
痛みは、今となってはほとんど気にならなくなっていた。  
消えてしまった訳ではなく、慣れただけなのだろうが――だとしても、気にならない程に小さく感じる。  
(多分、心の底から、あたしッ……)  
速さと激しさを増して、円運動でも強い力で突き上げられながら、ジェーンは思う。  
(ロディのこと、受け入れる覚悟が出来たから、だから……ッ)  
「……痛くないの、ロディッ!」  
「え?」  
ぐちゅッ、と大きく身体が跳ねる。  
「んあぁッ! ……全然痛くないから、激しくしてもッ……うあ、あ、くあッ!」  
「ならッ……!」  
心得たとばかりに、ロディは一層強さを増した。  
上下動の動きが加わり、子宮口を僅かに叩く。  
「ひぁあ、あ、ふあッ! んぁ……あ、あッ……!」  
もう遠慮なく声をあげて、ジェーンは必死でロディにしがみつく。  
あまりに激しすぎるから、そうしていないと吹き飛ばされてしまいそうに感じて――  
「んー、んんッ! も、も、ダメぇッ……あたし、ダメになっちゃうよ、ロディッ……!」  
「俺もッ……!」  
「なら、ね、一緒にッ……一緒に、ねッ……!」  
ロディが、その言葉に頷いたのかどうか――それは、ジェーンには分からない。  
ただ、少なくとも感じられたことは、一つだけ。  
「はぁッ……あ、んあああああッ!」  
「うッ……くぅッ!」  
びゅるるるッ! びゅ、びゅッ!  
彼女が『ダメになった』その時と同時に、熱いものがまた身体の中を満たしていったこと。それで――それだけで、十分だった。  
 
「あ……う、ロディ……」  
「ジェーン……俺……」  
目があった途端、二人は同時に唇を求めた。  
くちゅくちゅと激しい勢いで舌を交わらせ、唾液が零れるのを気にもしない。  
その下、繋がっている部分では、ぽたぽたと逆流した精液が零れ落ちている。  
「気持ち……よかった、ロディ……でも貸しは、まだ……残ってる、からね……」  
「ん……」  
ベッドに倒れこんで、二人はお互いを見つめた。  
「貸しは、また……その。あのね……」  
「こういう形で、返せばいい?」  
先に言われて、ジェーンは少しむくれたが。  
「……そ。物分りがいい人は嫌いじゃないわ」  
「他の形でって言われたら、どうしようかって思ったよ……」  
それを聞いて、くくッ……と小さな笑いを浮かべる。  
「もう、変なことばっかり気にするんだから……」  
そうして、二人の息がようやく穏やかになって――  
 
 
その隣の部屋では。  
「……後で、シーツからロディ君の精液採取しておかなきゃねー」  
モニターだのスピーカーだのを前に置いて、エマがにんまりと笑っていた。  
その傍らでは、風ネズミのハンペンが呆れた顔をしている。  
「盗聴に盗撮なんて、博士のやることじゃないよ」  
「博士だからやれるのよ、ネズミ君。ホムンクルスの少年に性欲があるのなら、生殖能力はあるのか――  
 これは、研究に値するテーマだと思わない?」  
「……そういうこと。研究対象だなんて、本人に言うと気にするよ」  
「私だってゼペット爺さんのお孫さんを変な目で見るつもりはないわよ。ただ……」  
女博士は、眼鏡に指をやって持ち上げる。  
「せっかく夕食時から、あの二人のライバル心を煽って仕込んでおいたんだもの。  
 我が青春の結晶、ワルプルギスの夜――のもう一つの顔、スケベ本。あれまで使ってね。  
 それなら、好奇心を満たすことはむしろ人間としての義務よね。ほら私の理論ってば完璧ッ!」  
自画自賛しながらうんうんと頷く博士の姿を、ハンペンは慄然としながら見るだけであった。  
「オイラ、魔族を相手にするよりこの人を相手にすることの方がおっかないって思うなぁ……」  
 
――とはいえ。対象の二人が幸せならば、何はともあれ結構なことなのかもしれなかった。  
 

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