活気と背徳が混在する不夜城ギャラボベーロ。
淫猥な空気漂うこの街に到着した一行は、肩に圧し掛かる疲労も忘れ、それぞれの反応を見せた。
すなわち、ジュードは好奇心に目を輝かせ、ユウリィは困惑気に肩を小さくし、ラクウェルはあからさまに眉を顰め、アルノーは小躍りせんばかりに喜色を満面に浮かべた。
「……随分と楽しそうだな」
「おいおい、気のせいじゃねぇのか?」
アルノーは、殺気の篭ったラクウェルの視線に内心ビクつきながらも、街往くソレ系のお姉さんから目を背けず強がってみせた。
「なに怒ってるの、ラクウェル?」
「別に私は怒ってなどいない」
ジュードの純真すぎる瞳に真っ向から見据えられた彼女はバツが悪くなったのか、プイと視線を逸らすと今にも噛み殺さんばかりに距離を詰めていたアルノーから離れ、苦虫を噛み潰した声でボソリと呟きを洩らす。
「――ただ、ハッキリいって、この街の猥雑な雰囲気は好きではない。それで先程のような態度を取ってしまったのかもしれない。許せ、ジュード」
「俺には謝らんないだな……」
再びラクウェルの刺すような眼光。ヘタレは小柄なユウリィの背に隠れると、長身を折って顔を伏せた。
「うーん、そうかな。僕は、自然の緑や湖の青さも好きだけど、この街もいろんなものがキラキラ輝いていて楽しいと思うよ。ねぇ、アルノーもそうだから喜んでたんでしょ――って」
ジュードは言葉を途中で止めると、辺りを見回しながら青年の姿を探すが、雲か霞の如くその場から消え失せていた。
「あの。アルノーさんなら、情報収集だといって知らない女性の方と一緒に歩いて――っ!?」
ユウリィの表情。咄嗟に恐怖で歪んだ。向かい合っていたジュードは、何事かと咄嗟に背後を振り向いた瞬間――。
「……あいつという男は」
激しく怒りに打ち震える、鬼の如き形相のラクウェルを見た。
「おい、ホントに最初の料金だけなんだろうな!」
「あら、お兄さん。随分疑い深いのね。もっとも、この街ではその方が長生き出来るのだけれども」
アルノーは客引きの商売女に腕を引かれながら、淫売宿の扉を開ける瞬間まで定額料金に拘る遊びなれた男の――フリをしていた。
(今夜こそ、絶対に――!!)
アルノーは童貞だった。おまけに仮性人である。彼の渡り鳥人生は、この妙なコンプレックスと思春期特有の羞恥心と初めての相手はせめて素人で、という雑多な物が入り混じり容易にこのような類の場所を避けていた過去があった。
だが、それも結構逃げ切れない位置に追い込まれている。何となく、ラクウェルとやれそうな気がしていたのだ。この度の途中で。半ば直感ではあるが、彼はそう信じ願っていた。
未経験。
この三文字が彼を苦しめていた。もし、自分がラクウェルとそういう状況に陥った場合、冷静に対処しえるであろうか。――正直、自信が無かった。
『なんだ、アルノー。おまえ、不能なのか?』
まだ見ぬ白い裸体と光り輝く重たげな銀色の乳房(妄想)にしゃぶりつきながらも、まったくもって反応しない男根を自分の腹の下に組み敷いたラクウェルが冷ややかな目付きでやわやわと扱く少女の姿が容易に想像出来た。
(初めての時って、勃たない事があるとかいうもんな。うぉおおおおっ!! ンな事になったら俺はもう立ち直れねぇ――!!)
「――あ、あの、お兄さん? 大丈夫?」
自己世界に没入し、頭髪を掻き毟る青年の姿を遠巻きに見つめる客引きの娼婦の表情。
薄暗い街頭からでも理解できるぐらい、ドン引きだった。
アルノーはわざとらしく咳払いをすると、これ以上無いぐらいの良い顔で、胸ぐりの開いた扇情的なドレスを纏った夜の蝶に微笑んで見せた。
淫売宿の一階は、アルノーが想像していた場所とは違い、取り立てて普通のバーと変わるところの無いものであった。
彼がスツールに座ると同時にいかにも寡黙ですっ! といったバーテンが、グラスに注いだ琥珀色の液体を滑らせてくる。アルノーが喉を湿らせながら、突き出しのナッツを齧っていると、手元には写真の貼られたアルバムが如才なく置かれている。
(へぇ……サービスいいじゃん)
「わっ、アルノー! この人たち服着てないよっ!! ここって、そういうお店?」
「どわっ!?」
アルノーがじっくりと今晩のお相手の品定めを始めようとした瞬間、聞きなれた変声期前の少女にも似た甲高い声が耳元を聾した。確認するまでも無く、ジュード・マーヴェリック(13歳)である。
「おこちゃまっ……お前にゃ十年早いんだよって……もしかしてわかってて聞いてるのかよ!」
アルノーの魂の叫びをひたすら無視し、ジュードはひゃーとかうはーとか顔を真っ赤に染めつつも、姫の在籍表を果敢にも捲っている。そういう類に興味津々な十三歳。あなどれない。
「――って、そういう店でしょ」
「だから、どういう」
「お酒を飲みながらエッチな写真を見る店」
脱力しまくったアルノーは、長い腕をだらんと垂らすと面を伏せ、低い声でいった。
「――もういい。お前は先に宿に帰ってろ。俺も、二、三時間したら帰るからよ」
「ダメだよ! ラクウェルもユウリィもアルノーの事心配で探してるんだからっ!」
「あー、もお、わかんねぇおこちゃまだな。俺はこれから、この店で綺麗でキツ目なお姉ちゃんと楽しい事すんのっ! あいつらに聞かれたら、ちゃんと真面目に情報収集してたっていっとけよっ。ラクウェルもお前の事なら馬鹿正直に信じるだろ!」
「ほー、誰が馬鹿正直に信じるのだ」
地獄の底から無理矢理引き出されたような、背筋が凍結してもおかしくない狂気の混じった声。
「そ、その声は……ラクウェルさん?」
ラクウェルは、グラスの中身を一息で空けるとカウンターにそっと置き、八分目まで残った酒瓶をジュードに手渡すと、半目でアルノーを睨みながら軽やかに指の関節を鳴らした。
「お前の生活態度には少々意見しておかねばならないようだな。……ジュード、宿には先に戻っていてくれないか。――今夜は遅くなるやもしれん」
「その台詞、別の状況で聞きたかった」
「安心しろ、そんな日は永遠に来ぬ」
ジュードは店外にそっと抜け出すと、扉を閉め切る直後に聞こえた青年の断末魔の叫びに良心の疼きを感じ、そっと足を止めるがやがて思いなおしたように頭を振ると、酒瓶を抱えながら、後ろ髪を引かれる思いで呟きを洩らした。
「生きて帰ってきてね、アルノー」
「――と、いうわけでふたりとも今夜は遅くなるってさ」
「はぁ……」
わかったようなわからないような返事をしたユウリィを前に、ジュードは事のあらましを説明するとベッド上に腰掛けた。ユウリィ途端に、落ち着きを失くしたように隣り合って座るジュードから微妙に離れると、潤みがちになった瞳で恥ずかしげに少年の顔を見上げた。
「ふたりっきり、ですね」
「そうだね」
「――そういえば、わたしたちって出会ってからふたりっきりになったことって、今まで一度もありませんでしたよね」
「だね!」
「だねっ、て……あの、ひとつ聞いてもいいですか」
「うん、なになに。なんでも聞いてよ!」
余程退屈であったのだろうか、ジュードは躊躇なくユウリィに顔を近づけると、無心な瞳を力強く輝かせながら、続きを促す。
「その、どうして、ジュードはわたしを守ってくれるの」
「え?」
正直な所、ユウリィはジュードを意識せずには居られなかった。
歳が二つほど下とはいえ、事あるごとに自分を守ろうとする少年を好ましく思わない筈も無かった。
また縋る物の無き逃避行の日々において、彼女にとってジュードはもっとも頼れる存在であり、そして一番重要な部分であってのは男だった。
パーティの中で、自分より年上の男性といえばアルノーであるが、青年は精神的にも存在的にもあまりに頼りなかった。
もちろん時折、見せる思考の鋭さには感謝しているし、それに助けられた事もあったが、本能的に彼は埒外だった。
客観的に考えれば、パーティの支柱はラクウェルと考えるのが妥当であるが、彼女はあくまで女性だ。
何やら消去法じみているが、それでもパーティーの行動方針を無軌道なほどに引っ張っていくジュードには、頼りがいのある男らしさがあり、ユウリィは無意識的に惹かれつつあった。
だから純粋に気になった。少年が自分の事をどう思っているのかと。
幸いにも、現在はほとんど奇跡的に邪魔の入らない状況であった。
そして、今この瞬間聞いておかなければ、後悔してしまうような気がする。
「どうしてっていわれても――」
固唾をのんで返事を待つ、少女の耳に入った最初の声は、
想像していたよりも、酷く曖昧なものだった。
「もしかして、後悔してますか。わたしのこと」
「えぇ!」
「そうですよね、してますよね。ジュードは優しいから、
途中で降りられなくなったって事もありますよね」
「そんなこと無い!」
「――わからないんです。ジュードの事が」
「僕が……わからない、だって?」
「だって、そうでしょう。わたしのことなんか放っておけば、村を落とされる事も、
こうして逃げ回る事だってなかったはずです。ずっと、ずっと考えていました。
でも、わからないし理解できません。わたしは、ジュードにしてあげるられることなんて、
何も無いのに」
「ちょ、ちょっと待ってよ、ユウリィ。どうしていきなり、そんなこと言い出す――」
狼狽したジュードはベッドから飛び降りざまに足を取られ、見事なほどに横転すると、
したたかに冷たい板張りの床に頭を叩き付けた。ゴロゴロと何かが転がるような鈍い音が、
朦朧とした意識の隅を走り去っていく。痛みに顔を顰め、腕を伸ばすと、
そこには確かに先程まで相当な量が残っていた空き瓶が、無慈悲なまでに軽く、
その身を横たえていたのだった。
「――って、ちょっと、もしかしてこれ全部呑んじゃったのっ!?」
「もしかしなくても飲んじゃいました」
「いや、マズイでしょ、それは……」
「話、微妙に逸らしてません?」
「う」
熱っぽく真っ赤に染まった頬のユウリィに詰め寄られ、ジュードは幾分逡巡しながらも、考え考えようやく口を開く。
「どうしてって聞いたよね。――うん、たぶん、理由なんかないんだ。ただ、
僕はそうしたかったんだ。だって、初めて会ったときのユウリィの顔。なんだかとても、悲しそうに見えた。そして、それは、今でもそんなに変わってないよ」
「わたしが――悲しそう?」
「うん。だから、僕がユウリィを守って、守り続けて、いつか心の底からユウリィが笑えたら、
それはすごくいいなって、そう思った」
「――ジュード!」
「うわぁっ!」
感極まった少女は、ジュードに抱きつくと、桜色に染まった唇を重ね合わせると、
刹那の速さでベッドに押し倒した。
ちゅくちゅくと、唾液を交換する音が淫靡に響く。
初めはわけが判らない状態できつく歯を閉じていたジュードも、
やがておずおず応えるように舌を突き出すと、ふたりは軟体動物のようなそれを絡め合わせつつその作業に没頭し始めた。
やがて、お互いはどちらともなく唇を離すと、示し合わせたように微笑んだ。
「ユウリィ、その……」
「ジュードは守ってくれますか」
「ユウリィ……」
とろんとした、少女の目つき。完全に視線が飛んでいた。彼女は夢見るようなうっとりした顔付きで、
少年に馬乗りになったまま、切なげに両手を胸の前で組み合わせると、祈るように目を閉じ、尋ねた。
だから、ジュードは。
「うん。僕が守るよ、ユウリィを。これからも、これから先もずっと。――だって、ユウリィのことが好きだから」
屈託の無い笑顔。
「あぁ、ジュード――」
――もちろん、少年の未成熟な精神ではそれほど深いニュアンスを込めて言った訳ではない。
彼は不安定に酔った精神状態のユウリィが、夢うつつに語っていると解釈して――もちろんキスは少々行き過ぎたが――最大限に、
仲間としての親愛の情を込めた気持ちでそういったつもりだった。
その結果、彼女がどのような行動を取るかということまで斟酌できなかったのも無理は無かった。
だが、半ば心神喪失状態であり、
なおかつこの閉鎖状況で精神的にジュードに対して濃すぎる恋愛感情を押し込めていたユウリィには、
あきらかにそれが起爆装置の作動を促したのも事実だった。
「ジュード、わたしもジュードの事、愛しています」
「え? え? アイシテル? って、わぁ――!! ちょっと、何いきなり脱いでるの!?
ちょ、ちょっと待って、ちょっと待ってってば!」
ユウリィは、ふうと酒精に塗れた溜息を洩らしながら、衣服を脱ぎ捨て、
極めて清潔的なホワイトのブラとショーツのみになると、馬乗りになったまま、少年に跨った。
「暑いから、脱ぎました」
「いや、脱ぎましたっていわれても」
「ん、あっ!」
「頼むからヘンな声出さないでよーっ」
「でも、そんな事いって、ジュードのここ、すっごく元気ですよ」
ユウリィは熱っぽい瞳で舐め上げるように、少年の股間に視線を注ぐ。
「わたしの、大事なところに、こんこんって当たってます」
「それは、その――もう、いいからどいてって」
「だめったら、絶対にダメです」
うふふと、娼婦さながら艶の篭った鼻声で笑いながら、ユウリィは硬く隆起したそれを取り出すため、ジッパーに手を掛けた。
「すっごく、窮屈そう。いま、楽にしてあげますね」
「いい! いいって、遠慮するから!」
「ジュード、そんなにわたしに触れられるのが、いやなのですか?」
「う――」
捨てられた子猫が、慈悲を請うような瞳を向けられると、無下に拒むことも出来ず、ジュードが精神の均衡を保てなくなった一瞬の隙を狙い、ユウリィは勢い良く、それをジーッと引き下ろした。
「それー♪」
「あ――!?」
ぼろんと飛び出したジュードの男根は、毛こそちょろちょろ程度であったが、中身は完全に大人だった。
「その、苦しいですか」
「う、あ、う、うぅ」
ユウリィはゆるゆると根元から雁首を扱きながら、ジュードの耳元で囁く。息がくすぐったいのか、少年は子猫のような甘い声をたまらず洩らした。
「じゃ、今すぐ、楽にしてさしあげますね」
「え、ちょっ、どういうこと?」
ユウリィは少年の胸元から下へと滑るように移動すると、解れて目元に掛かった横髪をかきあげ、そっと少年の先っぽを舐め上げた。
「はぁんっ」
「ジュードの声、かわいいですぅ、ん――ちゅっ」
ユウリィは亀頭をそっくり飲み込むと、そのままの状態で舌をぐるぐると動かし、敏感な部分を刺激しだす。
「だめ、だよ。ユウリィ。そこ、汚いよ」
「ん……むっ……んちゅっ……ん、ジュードの身体に汚いところなんかありません。もし、そうだとしても、わたしはまるで気にしませんから、
ん、んぁっ」
ちゅぷちゅぷと絡めた唾液と、先走り汁か絡み合い、シャフトの動きは次第にスムーズになっていく。
ジュードは、モノが包まれている生暖かさと、今まで経験したことの無かった快楽の波に身を委ねながら、
繊細すぎるほど細やかな少女の頬が、自分の男根で時折醜いほどに形を露わにするたび、黒い炎のようなものが燃え上がって来るのを感じた。
「あぁ……すごい、僕、ユウリィにおちんちん食べさせてる」
「ん……んあぁっ……おいしっ……ジュードのおちんちんっ、おいしいですっ」
おいおい、そんなものがうまいわけないよ、と心の中で冷静に突っ込むジュードであったが、このよくわからない背徳の遊戯を止められる術も無く、徐々に先程まで強張らしていた身体の力を抜いている自分が居る。現実感というものは既に皆無だった。
「そ、そう……そこ。さきっぽ、いいよぉ……吸って、みてよ」
「んんんっ……あ、はい。さき、ですね。吸います、ちゅーちゅーします……ん、ちゅーちゅちゅちゅっ」
「ふあああっ」
掃除機が塵埃を吸い込むような音をかき鳴らし、ユウリィは頬をへこませながら雁首を唇で締め付けると一気に吸い込む。ジュードは快感の余り、自由になっていた両手でユウリィの両胸をブラの上から、鷲掴みにした。
「ああぁんっ!」
「わ、ご、ごめんっ。痛かったっ!?」
「ん、んっ。そんなこと無いです。その、好きにしても、いいですよ」
艶然と微笑む少女の顔に、安堵すると、ジュードは解き放たれた獣のような勢いで、ゴムまりを捏ねるようにしてブラの上から、乳房をやわやわと揉みし抱き始めた。
「あぁっ……ふ……あぁんっ」
「ユウリィのおっぱい、すごく、大きくてやわらかいや。マシュマロみたい」
「やんっ……ああぁ、ごめんなさい。今から、ふぁっ……続けますね、んうっ……」
ジュードは寝転がった状態から身体を起こすと、あぐらをかき、股間に顔を埋め奉仕を続ける少女の頭を優しく撫でる。
「あっ」
「どうしたの?」
「――その、撫でられるの……好きです」
「うん、じゃあずっとこうしてるね」
ユウリィの鼻息が、時折まだ生え揃わぬ陰毛を揺れ動かし、くすぐったさを覚えたが、次第に例えようも無い波が、身体の芯に近づいてくるのを感じ、ジュードは低く呻いた。
(ああ……なんか、頭がぼーっとしてきて……でも、僕こんなことしてていいのかな……)
「あ、ああっ、なんか来るっ、ユウリィっ、僕っ、なんか出しちゃいそうだよっ!」
「――っ、出してっ、ジュードの精液っ、わたしのお口に出してぇええっ!」
激しさを増す、ストローク。後頭部の何処かで、白熱する光が閃いた瞬間。
少年は全てを、官能の渦が集約された一点から、これでもかと云うほどに開放した。
「んっ、んん――ッ」
膨らみきった亀頭は、弾けんばかりに少女の咥内を暴れまわり、銃口からでゅくでゅくと白濁液を放出し続ける。ユウリィは、整った眉を僅かに顰めると、恍惚の表情を隠そうともせず、瞳に濃い淫蕩の色を浮かばせた。
少女は、ゼリー状に近く黄ばみかかった濃い精液を口腔内の下で器用に受け止め気管に詰まるのを防ぐと、目尻の端に涙を浮かべながら、白い喉を鳴らし、ぎょくぎょくと嚥下する。桜のように可憐な唇の端からは、受けきれぬ精が糸を引き垂れ落ち、細い顎先を濡らした。
「ああ、すごいよぉ……ユウリィ、全部飲んじゃった」
「――ん。だって、わたし、ジュードの事愛してるから。ジュードのためなら、なんだって出来るし、してあげたいんです」
少女は口先から滴り落ちた、精液を指先で拭うとにっこり微笑む。
その瞬間、ジュードの頭の中で、何かが弾けた。
「ユウリィ――っ!」
「きゃっ」
ユウリィの瞳。自分だけをいとおしげに、見詰めていた。理解出来ない感情に突き動かされながら、ジュードは衝動に従うまま、少女をベッドに押し倒すと、血走った目でブラを剥ぎ取り、凝り固まった乳首に吸い付くと、嘗め回し、ねぶり始めた。
「ああぁっ……んんんっ、気持ちいい、です」
「きれいだよ、ユウリィの身体」
乳輪に添って舌を滑らすと、少女は口を引き結んで目を閉じ、甘い喘ぎ声を洩らした。少女の身体はその幼さの残る容貌とは裏腹に、不釣合いなほど育った感があった。ジュードは片手に余る乳房を、五指をふんだんに使ってこね回し、首筋に吸い付く途中、傍と思った。
(この後、どうすればいんだろう……)
少年に想像できたのは、精々キスと胸を嘗め回す事ぐらいしか無かった。だが、己が股間はいっそうに強張りを増し、時折膝や内側の自分の腿に当たる少女の秘所は、燃え立つような熱を持ち、垂れた液体はシーツをしとどに濡らしている。
少年が戸惑いを見せたのを、咄嗟に感じたのか、少女は熱の篭った眸子のままにこりと笑みを浮かべると、
極めて自然な所作で男根を握り締めると、自分の女に導くようにして当てた。
「え、えと――ここで、いいんだよね」
「はい、ジュード」
先端は、狭い肉壁を掻き分けるとゆっくりと進んでいく。
次第に強い抵抗が表れ、腹の下の少女の顔に苦悶が刻まれていくにつれ、この行為が正しいのか、それとも正しくないのか。
ジュードは恐怖にも似た、悔恨に僅かながら侵され始めた。
「その。……すっごく、痛そうだよ」
「――っ、痛いです。でも、やめないでっ……わたし、がんばるからっっぅ!
がんばるから、絶対にやめちゃだめですっ」
「くっ、狭い――」
「ダメです、絶対にやめちゃ……あああああああああああああああっ!!」
ぐちゅり、と最後の壁を押し破った瞬間、激しい叫びが、ジュードの耳朶を打った。
「痛い、痛いよね、ごめん、ごめんよ、ユウリィ」
「あやまらないでくださいっ。わたしはっ……今、すっごくうれしいんですからっ」
ユウリィの酔いは、とうに醒めていた。だが、こうなった事に後悔はしていない。
少女は、今、生まれて初めての強い安堵と帰属感に包まれながら、しあわせな気持ちでいっぱいだった。
少年の指。少女の涙をゆっくり拭う。ユウリィは、両手をジュードの肩に回して引きつけると、
強く唇を押し付け、キスを交わした。軽やかに。
「わっ、血、血が出てるよっ!」
「純潔の、証です」
「純潔?」
「――つまり、わたしはずぅーっとジュードの物って事です」
「よくわからないけど、僕はずっとユウリィの事を守っていいってことだね」
「守ってくださいね」
「その、悪いんだけど……その」
「動いて、いいですよっ」
「ごめん」
ジュードは正上位の状態で、ユウリィの長く伸びた足を折りたたむと、
両脇に抱えて、突き込んだ男根をずりぃと引きずり出す。
「――っ」
濡れが充分だったせいなのか、ユウリィは次第に痛みよりも遥かに強い甘い
痺れを奥底に感じつつあった。必死で声を噛み殺しながら、額に汗を浮かび上
がらせながら運動を続ける少年の顔を覗き込んだまま、押し上げてくる快感の波濤に喘ぎ声を洩らし、ただただ、その身を委ねた。
「ふあぁっ、ジュードっ、ジュードっ――わたしっ、わたしっ!」
「すっごく、中っ、ユウリィの中っ、締め付けてくるっ!」
ジュードは、伸しかかるようにして、顔をユウリィに近づけると、ぴちゃぴちゃと音を立て唇を合わせ、唾液を貪り、引きつけた腰を押し出すようにして、少女の蜜壷を丹念にかき回していく。
「あああぁっ、すごっ、すごいですっ!! ジュードのがっ――わたしのおなかっ、掻きまわしてるっ!」
「ユウリィっ、あああぁっ、もうっ、僕のおちんちんっ、ユウリィの中で溶けちゃいそうだぁっ!」
「おくぅ――おくにっあたるのぉーっ! こつん、こつんってぇ――!!」
「ああっ、すごい、すごいよっ! ち、ちぎれそうだっ!」
「ジュードっ、もう、ダメっ……だめでっ、すぅ! イク、わたし、もうっ!」
「僕もっ、よくわかんないけど、あのっ、白い奴がっ、なんかっ――あぁ――っ! なんか、でるぅうぅうううう――!!」
「出してっ、ふぁっ……出してくださいっ――ジュードの濃い、精液っ、わたしの子宮の中にたくさんっいっぱあぃ――!! そそいでぇええええええええっ!!」
無慈悲に屈曲させられた少女の背が、寝台の中でくの字に反り返る。
ユウリィは子宮を満たす瀑布のような精液の波濤に快感をたゆたわせながら、
掴んだ少年の手を強く握り締め、それから迸りを一滴も逃さぬよう、細い足をジュードの腰に絡ませた。
「くっ、まさかホントに一晩中説教聞かされるとは。……恐るべし、ラクウェル」
一晩かかって、ようやく小言から開放されたアルノーは、疲労困憊に至った身体を引きずりながら宿屋の入り口を潜った。
帳場のクラークと、瞬間目が合う。
徹夜明けなのか、三十半ばの親爺の目元は、宵闇の名残か、どす黒く変色している。
アルノーが咄嗟に、目を伏せると、朝帰りを当然の如くそうと解釈したのだろう、親爺は卑猥な笑みを浮かべる。
アルノーは、いろんな意味で辛かった。
螺旋階段を、ぎしぎし音を立て登るにつけ、陰鬱な気分が胸の内に黒々と渦巻いていく。
(クソッ……今日は一日、フテ寝してやるっ! 絶対、午前中は起きないっ! )
資金節約の関係から同室であるジュードは、おそらくまだ寝ているだろうと、
アルノーがいらだちまじりに部屋の扉を開けた途端、寝台の上に驚くべき格好をした少年の姿があった。
ジュード。
これは居て当然だ。居なかったら逆に困る。
――だが、何故だ。
どうして、全裸のまま、あちこち変な汁塗れになって、
虚ろな瞳で天井を見上げているのだ?
そして全身に刻まれたキスマークのたぐいは何なんだ!?
それは、あれか? 俺に対する、挑戦なのか!?
応えろっ、いや……答えて下さい、お願いします。ジュードさん。
「ねぇ、アルノー。これで僕、かっこいい大人に、なれたかな?」
「――ジュードォオオオオォ――――!!」