ユウリィ。  
薄い茶の、きれいな髪。  
濃紺のワンピース。  
あれはユウリィだ。遠目でも、後姿でも、見間違えるはずがない。  
ここはどこなのか、周囲の様子はどんななのか──不思議と、  
そんな疑問は浮かばない。ただ、少女のもとへ行かねばと、思うだけで。  
駆けていく。濃い霧がかかったような空間を…そうとは知ろうともせず。  
ユウリィが振り返る。  
ちょっと驚いた表情をして…微笑う。  
それは、やがて視界いっぱいに広がって──  
 
「うわぁぁぁッ!」  
「どわぁッ!?」  
ジュードは自分の叫び声で目を覚ました。  
シャツの背中が寝汗ではりついていて、気持ちが悪い。  
「どーしたお子ちゃま。怖い夢でも見たのか?」  
アルノーが、ジュードをからかう時専用の笑顔を浮かべて言う。  
「そんなんじゃないよッ!ただ…」  
「ただ…なんだよ?」  
「…よくわからない」  
「ハァ?なんだよそりゃ…俺はちょっと出掛けるからな。  
トイレにはちゃんと独りでいくんだぞ、お子ちゃま」  
「出掛ける?こんな遅くに?」  
後半はとりあえず無視して問う。  
たしかにアルノーはすでに上着を着て、そわそわと出掛ける準備をしていた。  
いつもより身なりに気をつけているように見えるのは、気のせいだろうか。  
「散歩だよ。…大人のな。ついてくるんじゃねえぞ」  
 
残されたジュードは寝付けなかった。  
目を瞑ると、さっきの夢が甦る気がしたからだ。  
「なんでこんな落ち着かない気分になるんだろう…」  
ただの、ユウリィの夢なのに。  
「…のどが渇いてるから眠れないんだ。きっと」  
そう決め付けて、ベッドから降りる。  
寝巻き──といっても、普段の格好からタイを外したくらいだが──  
の上にジャケットを着て、外の井戸に出る。  
「生水は飲んじゃいけないって言われてるけど…ちょっとくらいならいいよね」  
手漕ぎ式の井戸から出る水を、手ですくう。  
ひんやりとした感触が心地いい。  
ひとくち飲んで、ついでに顔を洗って…ますます眠れない。  
「弱ったなぁ…明日も村のお手伝いがあるのに」  
「ジュードも眠れないのですか?」  
すぐ間近で聞こえる声。  
「うわッ!?」  
「ごめんなさい…ビックリさせちゃいました?」  
いつものとは違うゆったりとした、いかし色だけは同じ紺のワンピースの上に  
白のカーディガンを羽織ったユウリィが立っていた。  
たぶん、この格好で寝ているのだろう。そんな想像が掻き立てられる。  
さっきの夢のこともあって、対応は自然、ぎこちないものになった。  
「い、いや…別に…」  
「そうですか?てっきり…──」  
何かに気づいたように、言葉を途中で切る。  
「なにか──」  
いたの?と尋ねようとした瞬間、有無を言わさず  
垣根の中に押し込まれた。  
 
「いきなり何を…!」  
「しっ…静かに…」  
口に人差し指をあてながらユウリィが言う。  
仕方無しにユウリィの見つめる方向に首を向けるジュード。  
そこには、いかにも親しげな様子で歩いてくる一組の男女がいた。  
「あれ、アルノーとラクウェルだ。…なんで隠れるの?」  
「しーッ!」  
わけがわからないながらジュードが黙っていると、  
夜風に乗ってふたりの話し声が聞こえてきた。  
「…それで、あのふたりにはもう話したのか?」  
「いんや。出発する日までは黙っとこうと思ってな」  
「そうか…まあ、お前は顔に出やすいからな。  
黙っていても気づかれるだろう」  
「さあて、それはどうかな。  
最低でもジュードの奴にだけは、気づかれない自信があるぜ?」  
「…それは自慢にはならないのではないか?」  
そういって、お互いに笑う。  
「チェッ、見てないと思って好きなこといってら」  
と、ふくれっつらのジュード。  
「フフ……──!コホ、ゴホッ」  
「おい!?」  
急にせきこんだラクウェルに、アルノーは血相を変える。  
「…少し笑いすぎただけだ。大事無い…」  
「へたくそな言い訳するんじゃねえよ…そんなに俺は頼りないか?」  
「そうだな…」  
そう言って、アルノーに半歩近寄る。  
 
「へへ、今日はズイブンと積極的だな?」  
「馬鹿者、こんな時に茶化すな。…支えてくれるのだろう、アルノー?」  
「ああ…俺が一生ついててやる」  
きつい抱擁。  
事ココにいたって、ようやくジュードは隠れた理由に気づく。  
なるほどこれは邪魔しては悪い。  
(だけど、このままここにいるのも良くないんじゃないかな…?)  
そう思って、ユウリィの方をうかがうと  
ほんのりと頬を染め、食い入るようにふたりの様子をみつめている。  
…だめだ。これではとても「帰ろう」とは言えない。  
無理矢理にでもひっぱって帰ろうか、などと思案していると、  
いきなり視界が暗転した。  
「(ユウリィッ!?)」  
「(見ちゃダメですッ!)」  
じゃあユウリィはどうなんだ、などと言っている場合ではなかった。  
目が塞がれている分、他の感覚が強調される。  
顔に回された腕、背に当たる柔らかな感触、間近に香る甘いにおい…  
おまけに、遠くかすかにだが、くぐもった荒い吐息も聞こえてくる。  
それが深いキスを交わす恋人達のものである、とは少年には知る由もないが。  
続いて聞こえるのはゴソゴソと何かをまさぐる音。  
「…ン…コラ…!こんな所で…!」  
「大丈夫、大丈夫。誰も見ちゃいないさ」  
「そういう問題では……は、…やめ…」  
「イヤだったら、振りほどいたっていいんだぜ?」  
「んん…!…はっ、はっ、ん…ぁ…!」  
苦しそうな、だがどこか愉悦の混じったその声と、  
次第に強く押し付けられてくるユウリィの身体が、  
ジュードの身の内の、自らはいまだ気づかぬ衝動を煽る。  
「ん、は……あぁっ!」  
押し殺しきれなかった、ひときわ大きな声。  
ユウリィの全身が緊張し、これでもか、とジュードに密着してくる。  
それらに堪えきれず、ジュードは大きくみじろぎをした。  
 
垣根が揺れ、吐息以外に聞こえるものとて無かった静寂を破る。  
ふたりの世界に没入していたアルノーとラクウェルは  
途端、はじかれたようにふり返った。  
「…誰かいるのか?」  
アルノーは音のしたあたりをうかがう。  
ジュードとユウリィが脱兎のごとく逃げ出した後のそこには  
当然ながら誰もいない。  
「誰もいないぜ。動物かなんかだろうよ…って、あー…」  
着衣の乱れを直してしまったラクウェルを見て  
アルノーはガックリと肩を落とす。  
「くっそー、せっかくいい雰囲気だったのに結局、おあずけかよ…」  
「妙な声を出すな。聞いてるこっちが情けなくなるぞ」  
「へいへい。そんじゃ、ご寝所までエスコートいたしますか、お姫様?」  
「…もう少し、歩いていかないか?」  
アルノーがやや意外そうにふり返る。  
「その…なんだ。このままでは……寝付けそうに無いからな、お互いに。  
…先に仕掛けてきたのはそっちなのだから、それなりの責任はとってもらわねば…」  
赤面しつつ、ぼそぼそと言い訳がましく言った。  
 
一方、神行法もかくや、のスピードで逃げ出したジュードとユウリィ。  
村のはずれ、材木を切り出す林のあたりで座り込む。  
しばらくは呼吸の乱れで口も利けなかった。  
「…ご、ごめん、ユウリィ。僕のせいで見つかるところだった」  
「いえ…あのまま覗いていたらふたりに悪かったですから。  
…わたしも、いけないって、思ってたんですけど…つい…」  
「うん。僕も帰ろうとは思ったんだけど」  
ユウリィが夢中だったから、と続きをいうほどにはジュードは迂闊ではない。  
「…ジュードは…ああいったコトに、興味は無いんですか?」  
しばらく間を置いたあとに、意外な事を訊かれる。  
 
「ああいうコト…って?」  
「で、ですからその…同じ年頃の女の子と………仲良くしたり」  
妙に歯切れ悪くユウリィが言う。  
「どうなのかな。村を出る前は、女の子なんて見たこともなかったし。  
出た後は…それどころじゃ無かったし。ユウリィはあるの?」  
「わ、わたしですか?…わたしも、小さい頃は施設でしたし、  
その後はパラディエンヌの修行で…」  
「そっか。アルノー達、大人だよね。  
僕も大人になったら誰かとやることになるのかな」  
興奮冷めやらぬ、といった調子で、紅潮した顔を輝かせながらジュードは言う。  
あくまでも無邪気な好奇心が、子供である証明になっていることには気づかずに。  
「…わたしと、してみます?」  
「…え?」  
なんのことだかわからないジュード。  
「わたし達…キス、したことありませんよね。  
…こんな近くにいるのに。ずっと、一緒にいたのに」  
「ど、どうしたの、ユウリィ?」  
座ったまま、無意識にあとずさる。  
「…イヤですか?」  
膝でいざっていき、ジュードがあとずさった分、間を詰める。  
「イ、イヤじゃないけど…」  
こういう状況でどっちつかずの返事は命取りである  
…などという知識は、もちろん少年には無い。  
「なら、いいですよね…」  
紅潮した頬、瞳に自分を映した潤んだ目が、せまってくる。  
 
(このままだと、さっきの夢の続きに──ッ!?)  
こうなれば立ち上がって逃げよう──そう思った矢先、背中になにかがぶつかる。  
慌てて振り向くと、切り出した材木が積んであった。  
逃げ場を失ったジュードに馬乗りにのしかかり、ユウリィは優しく頬を両手で包む。  
少年の瞳は大きく見開かれている。興奮…怯え…驚愕…それとも恐怖?  
幸か不幸か、迫る少女にそのことを鑑みる余裕は無い。  
いよいよ唇が迫ってくる…ジュードは強くまぶたを閉じる。  
しっとりと、生暖かく、柔らかい感触。  
荒い鼻息がこそばゆい…これはお互い様かも知れないが。  
ずいぶん長い間のように感じたが、実際には一瞬だったかも知れない。  
ゆっくりと離れると、ユウリィは訊いた。  
「どう…でした?」  
「ど、どうって…」  
恐る恐る目を開けると、ジュードは訊き返す。  
ユウリィの顔は、まだ息がかかりそうなほどの距離にあった。  
「ドキドキしたとか…」  
「うん…し、したけど」  
「それだけですか?」  
「…よく…わからない。頭の中が真っ白になって…  
なんだか身体がむずむずするような…ヘンな感じが」  
「わたしも…身体が、火照ったみたいに……」  
羽織ったカーディガンを、パサリ、と地に落とす。  
「ユウリィ…?」  
「あつかったから…ジュードも、脱ぎませんか?」  
訊いておいて、ユウリィは答えを待たずジュードのジャケットをはだけると、  
シャツのボタンを上からひとつ、ふたつ、ゆっくり丁寧な手つきで外していく。  
「ジュード…」  
「今日のユウリィ、なにかヘンだよ…」  
 
「そうですか…?」  
「…うん。いつものユウリィは、こんなこと…しない」  
それには答えず、シャツの前をはだける作業を終わらせる。  
少年らしい小さな…しかし、訓練と冒険によって鍛えられた胸板が露わになった。  
愛おしげに指でなぞる。  
その度に、ジュードの背筋にはまたあの──悪寒とは違う、決して不快ではない感覚が走る。  
「ユウリィ…ッ!こんなの…!」  
「フフ…息が荒いですよ、ジュード」  
滑らかな指先が、つつつ、と胸をなぞる。  
かと思えば、“の”の字を書くように乳首のまわりでもてあそぶ。  
最初は頬擦りするだけだった頭が、口づけをするようになり、  
やがて、遠慮がちにだが、舌を這わせ始める。  
「あぁ…ダメだよ、こんなの…ユウリィ…!」  
ジュードは必死に快感に耐えながら言葉を紡ぐ。  
その様子が、彼女の嗜虐心をそそるとは知るよしもなく。  
「なんでダメなんですか…?ジュード…」  
ユウリィのふとももが、少年の脚の間に差し入れられる。  
ジュードは、あの部分に当たるのだけは避けようと動くが、  
体重をかけられていて自由が利くはずも無い。  
あっという間に熱く、硬くなった部分をとらえられて、優しく擦られる。  
「なんでって、そんなの…!ぁあ…は…ダ、ダメだぁッ!ダメだったらッ!」  
ジタバタともがこうとするジュードを、ユウリィは愛撫して制する。  
「わたしの中には、獣がいるんです…ジュードを、食べてしまいたいって」  
妖艶とさえ言える笑みを浮かべ、  
言葉を発する吐息をふれさせるようにジュードにささやく。  
「ジュードの中には…いないのですか?」  
両手を後ろに回し、背中のファスナーを下ろす。  
その音が、ジュードにはやけに大きく響いて聞こえた。  
襟ぐりをはだけ、袖から腕を抜き…  
淡いブルーの下着が、かろうじて乳房が露わになるのを防いでいた。  
 
月が雲に隠れたのか、あたりが少し暗くなる。  
その中で、ジュードの目はユウリィに釘付けになっていた。  
なだらかな曲線を描く白い肌…くらがりで、そこだけうっすらと浮かんで…  
少年は、思わず生唾をのみこむ。  
「触れてみたく、ありませんか…?好きにしていいんですよ、ジュード…」  
「え…そ、…いや…」  
ジュードは言葉になっていない喘ぎをもらすだけで、あとはパクパクと声にならない。  
今度こそ嫣然と微笑んだユウリィはジュードの右手をとって導いていく。  
左の乳房に、そっとそえさせた。  
「わかりますか…?わたしの心臓が、動いているのが」  
「う、うん…すごく速く動いてる。それに、とてもあったかい…」  
「フフ…ジュードの手、ひんやりしてて気持ちいいです…」  
そう言われて、ジュードは耳はおろか首筋まで真っ赤に染まる。  
「そ、その…ごめん」  
「なんで謝るんですか…?わたしはジュードに触れて欲しいのに」  
「そ、そんなこと…!」  
「大丈夫ですよ、ジュード。怖くなんかありませんから…」  
「そ、そう…?」  
巧みに誘われて、ジュードは抗えずフラフラとユウリィの胸に顔をうずめる。  
「ね…ほら…大丈夫よ…」  
「うん……やわらかい。ユウリィ、お母さんみたいだ…」  
「くす。…じゃあ、ジュードは赤ちゃんですね」  
「ユウリィまで僕を子供あつかいしないでよ」  
状況も忘れてムキになるところが微笑ましい。  
「それなら、わたしの背中のホックが外せますか?」  
わざと悪戯っぽく、挑発するように言ってみる。  
「ホック…?」  
キョトンとするジュード。  
ユウリィは器用に後ろに手を回して、再びジュードの手をとった。  
 
「これ?」  
「そうです…あ、ひっぱっちゃダメです。最初は内側に…」  
「…ん…こう…?…あ、できたよ」  
パチッという音と共に、乳房自体に押されるように下着がはだける。  
「ありがと…ジュード」  
ユウリィが肩紐を下ろすと、下着はひとりでにスルスルと落ちていってしまった。  
下着から完全に開放された乳房が重たげに揺れ、  
先端は、突然に外気にさらされてツン、と頭をもたげる。  
辺りを漂う甘い香りがいっそう強くなった気が、ジュードにはした。  
しばしお互いに言葉もなく見つめあった後、ユウリィが言った。  
「…なにか言ってください、ジュード。恥ずかしいです」  
「ごっ…ごめんっ…その…キ、キレイ…だよ。とっても」  
「嘘はいわなくていいんですよ?」  
「ホントだよッ!嘘じゃない──」  
あせってなおも言い募ろうとしたジュードの口を、唇がふさぐ。  
さすがに、今度は動転したりしなかったが、  
遠慮がちに唇の中に入ってこようとする  
ユウリィの舌の動きに応えられるほどには、まだ慣れていなかった。  
それはユウリィもわかってか、無理に入り込ませようとせず  
おとなしく…しかし名残惜しそうにゆっくりと、唇を離した。  
「ありがとう…ジュードに褒めてもらえると、嬉しい」  
「うん…。あのさ…触っても…いい?」  
ジュードの台詞に、ユウリィはクスッと笑う。  
「いつになったら触ってくれるのかと思ってました」  
「…!じゃ、じゃあ…さ、触る、ね…」  
「はい」  
律儀に宣言する少年に笑みをかみ殺しつつ答え、  
ユウリィは触りやすいようについ、と胸をつきだした。  
 
恐る恐る、手を伸ばしてみる。  
いきなり真ん中の乳首は怖いから、少し端の辺り。  
そこから外縁を伝って、下へ。  
持ち上げてみると、意外なほど重みがある。  
そこから、いよいよ中心へ指を伸ばそうとした時、  
頭上からクスクスと笑い声が降ってきた。  
「…ごめんなさい、くすぐったくて。もっと強くしても大丈夫ですよ?」  
「う、うん」  
言われたとおりに、少し…ほんの少しだけ、指に力を加えてみる。  
指は見る間のうちに、真っ白な乳房に吸い込まれていく。  
(すごい…やわらかい…)  
指を動かすのに夢中になるジュード。すると、  
「っ、んッ!」  
短く叫び、ユウリィの身体がぴくっとはねた。  
「ごめん、痛かったッ!?」  
「ううん…違うの、ジュードが…上手だから。気にしないで、続けて」  
「うん…」  
再びジュードは指を這わせる。  
今度は、力を入れすぎないように、ゆっくり…  
外から内へ円を描くようにして、徐々に半径をせばめながら。  
それが中心へ近づくにつれ、ユウリィの身体は緊張に硬くこわばり、  
背中は弓なりにそっていく。  
いよいよ、先端に触れる、となった時、ジュードはふと思った。  
(あそこはなんだか敏感そうな気がする…指だと、また力が入りすぎるかも)  
一瞬の思案。  
ジュードは、ユウリィが自分にした愛撫のことを思い出した。  
 
前触れ無く、乳首を口に含まれる。  
「きゃ、ジュー…ぁんっ…はぁああッ」  
完全に不意打ちだった。そのせいで、声が漏れてしまう。  
「ア、アレ…?痛くしないようにって思ったんだけど…ごめん」  
「はぁ、はぁ……何を…?  
…ジュード、あれは…痛くて言ってるんじゃ、ないんですよ?」  
乱れた息を正しながら、ユウリィ。  
「え…そうなの?」  
「あれは…その…ジュードが、……気持ちよかったから…」  
「そっか…じゃあ、今のも気持ちよかったんだ?」  
答えは無い。  
「ユウリィ?」  
「ジュードのバカ…!そんな恥ずかしいこと、何回も言えません…ッ!」  
耳まで真っ赤になったユウリィに  
ジュードは得心した、といわんばかりの満面の笑顔でいった。  
「じゃあ、もっと気持ちよくしてあげるねッ!」  
「きゃ、待って、ジュー、ド……!」  
要領を得てきた少年の指が、無遠慮に、縦横に、動き回る。  
全体を優しく手のひらで包んでもみしだき…  
かと思えば先端をひとさし指で掻くようにもてあそぶ。  
「ぁん……ッ!──ッ!んッ!…ダ、ダメ、ジュー、ドこ、えが、…!」  
「いいよ、ユウリィ。声を出しても」  
言い終えた口で、軽く乳首をついばむ。  
「そんな…ッ…ふぁ…ぁあ…ッ!──ッ!!…………はふ…」  
ユウリィの身体がひときわ大きく弓なりにしなったかと思うと、  
くたり、とジュードに寄りかかった。  
 
腕の中で急に動かなくなったユウリィを不審に思い、呼びかけてみる。  
「…ユウリィ?」  
「……です」  
うまく聞き取れずに、首をかしげるジュード。  
「ずるいです。ジュードばっかり、わたしを…」  
「ご、ごめん…」  
よくわからず、迫力に押されて謝るジュード。  
「わたしだけ……なるのはイヤです。今度は、ジュードも一緒に…」  
「うん…でも、どうすればいいの?」  
ユウリィは恍惚と微笑う。  
この無垢な少年を自分の手で教育する、という行為に  
怪しい快感を感じはじめていた。  
ズボンのファスナーに手をかけ、一瞬の躊躇の後、ひき下ろす。  
そこから手を差し入れると、形を確かめるように撫ぜた。  
「ぅあ…ッ…ダメだよ…そこ、いじっちゃ…」  
「…じゃあ、ジュードがしてくれますか?」  
そう言って、右手をスカートの中に導く。  
「ユウリィ…?」  
「ジュードが脱がせてください…わかりますよね?」  
ジュードは唾を飲み込もうとして、口の中がカラカラなのに気づく。  
ユウリィが見ている。不安と、羞恥と、…期待の入り混じった瞳で。  
少年は覚悟を決めると、まばらに雑草の生えた大地に脱いだジャケットを敷いた。  
その上に、ユウリィをゆっくりと仰向けに横たえる。  
「ジュード…キスしてください」  
横たわったまま、ユウリィが両手を伸ばしてせがむ。  
 
顔を近づけていくと、両手を首にまわされた。  
そのまま口づける。ユウリィの舌が唇をくすぐり、  
それに応えようと口を開けるが、そこから逆に入り込まれた。  
歯の付け根をなぞられ、たまらずにこちらも舌で応戦しようとすると  
それはするりとかわされて代わりに頬の裏をこね回される。  
舌の付け根を絡めるようにねぶられて、歯の裏側にまわり…  
そこで息が続かなくなり、いったん離れる。  
透明な糸が一筋、ふたりの唇の間に引いた。  
それをたぐるように、今度はジュードのほうから、  
逆に向こうの口内を蹂躙すべく、唇をあわせる。  
だが、文字通りの舌戦はユウリィに分があるらしかった。  
だからというわけでもないが、ほどほどにきりあげて  
ジュードは本来の目的に戻った。  
わきばらに右手を置く。ユウリィの身体がぴく、と緊張するが  
それはあえて無視して…そのまま指先をくだらせていく。  
滑らかな肌の感触をしばし楽しんだ後、目指す物にひっかかった。  
そのふちに沿って少しばかり左右に指を動かし、  
ちょっとした隙間を見つけて、中にすべりこませる。  
瞬間、首にまわされっぱなしのユウリィの腕に力が入る。  
左手でユウリィの腕をあやすように撫でつつ…ジュードは浸入を続ける。  
ゆっくりと、だが確実にジュードの指は下着とともに降りていく。  
ついに、丸みを帯びた臀部にさしかかると  
それまでの亀の歩みのような速度から一変して、後ろの部分だけを  
するっと脚の付け根までおろされてしまう。  
悲鳴をあげる間もあらばこそ、ジュードはそのまま  
両膝を、抱きかかえるときのように差し上げてしまう。  
 
「きゃ…ッ!ヤダ、ジュード…!」  
高々と上がった自分の膝頭が見える。  
たぶん、半脱ぎになった下着をつけた下半身は丸見えだろう。  
恥ずかしさに、両手で顔を覆う。  
ジュードは、ユウリィの脚をくの字に折りまげたままにしてしまう。  
「こうしないと、脱がせにくいから…」  
あまり悪びれた調子の無いジュードの声が聞こえる。  
ややあって、スルスルとまくりかえった下着が脚を降りていく感触。  
ふとももをつたって上り、てっぺんの膝頭で少し足踏みしたあと、  
脛を駆け下りる。最後、足首を過ぎて甲を抜いて…  
「脱げたよ、ユウリィ」  
「…もうッ!なんであんな恥ずかしいやり方で脱がせるんですか…!?」  
「ごめん。でもさ、なんだか…キレイだったよ。  
ユウリィの……まわりに髪とおんなじ色の…キラキラ光っててさ」  
「い、言わなくていいですッ!いいからジュード…最後まで…」  
そういって、少年の股間に手を伸ばす。  
「見たんなら…わかりますよね?そこに…ジュードのそれを…」  
「うん…なんとなくわかる気がする…」  
ジュードは、下着を押し破らんとばかりに膨張したものをとりだす。  
それまでも知識としてなら知っていたはずだった。  
だが、目の前にある「実物」はとても巨大に見える。  
「怖い…?ユウリィ」  
その想いを見透かされたかのように、ジュードに真上から問われる。  
「…全然怖くないって言ったら、嘘になります。  
でも…それよりも、ジュードとひとつになれるのが嬉しい」  
「僕も嬉しいよ。…なるべく、怖くないようにするから」  
こくん、とうなずくユウリィ。  
そうして、どちらからともなく、唇を合わせた。  
 
ジュードの先端が近づいてくる。  
本能的に逃げよう、逃げようとする身体を、意思の力で押さえ込み、  
逆にジュードの背に、腕をまわした。  
「……ん…ぁ…」  
ユウリィにとってはこれ以上ないほどの長い──しかし、  
客観的にはわずか数十秒の間をおいて、  
火傷しそうに熱いものがユウリィの女性に触れる。  
たったそれだけの感触で、快感でどうにかなってしまいそうだった。  
ジュードが、入り口を探して上下にさまよう。  
手伝ってあげなきゃ、と思考だけが先走り、  
快楽に支配された身体はいっこうに言うことをきかない。  
「ぁあ……ん、ジュード…もうちょっと、下……」  
かろうじて出せる声で、必死になって教えるが。  
「はっ、はっ、こ、こう、…?」  
「そう…です…そのまま……ぁぁあんっ」  
彼女自身があふれさせる愛液で、ジュードはぬるぬるとすべってしまう。  
その度に、ユウリィの身体には突き抜けるような愉悦が走る。  
そうした事を何度か繰り返し、ユウリィがもう何も考えられなくなった頃に  
やっとジュードはたどりついた。  
「あ…ユウリィ、ここ…だよね?」  
「ぅん……ん、ジュード…早く……」  
もはや返事ともいえない返事を返すユウリィ。  
仕方無しに、ジュードはゆっくりと腰を進める。  
背を抱いたユウリィの指先がかぎ爪のようにまがり、  
ジュードの肌に食い込んだ。  
 
「ユウリィ、大丈夫?抜こうか?」  
背中をひっかかれた痛みなどおくびにも出さず、ジュードが言う。  
眉根を寄せ、苦痛に耐える表情のまま、ユウリィはただ首を横に振る。  
「うん。あと少しだから…頑張って」  
ジュードは彼女の頭を抱いて、髪をすくように撫ぜた。  
それで安心したのか、すこしユウリィの緊張がほぐれる。  
その間にゆっくりと進めて、ようやく半ばまで入った。  
突然に未曾有の快楽がジュードを襲う。  
燃えるように熱く、ぬるぬるとした感触が幾重にも自分を包み、  
奥へ、奥へといざなうような感覚。  
その誘惑に従って思い切り突き上げたくなる衝動を、  
唸り声をあげながらも必死に抑える。  
「ぅううッ…はぁっ、はぁっ、はぁっ」  
「…ジュード…?」  
気がつくと、組み敷いたユウリィが心配そうに見上げている。  
「大丈夫。ユウリィの中が気持ちよかっただけだよ」  
そう言って、安心させるように頬にかるく唇をあてる。  
あせって痛くしちゃいけない。  
立ち止まって痛みを長引かせるのはもっとダメだ。  
新たにそう心に決めて、腰を進める。  
だが、それは言葉ほど簡単なものではなかった。  
ただでさえ狭いのに、少し進むたびに反応してきゅうきゅうと締め付ける。  
十分に濡れているから進むこと自体に支障は無いが、  
快感にすべてを吐き出してしまいそうだ。  
それでもどうにか進むと、一段強い抵抗感に阻まれる。  
 
「ユウリィ…」  
「…貫いて、ください。ジュード…」  
「うん。…できるだけ力を抜いて、ユウリィ」  
「はい……──ッ!んん…うううううッ!」  
何かが切れたような感触とともに、抵抗が弱まる。  
「────…ぁぁあああッ!ジュードッ、ジュードォッ!」  
「全部入ったよ…ユウリィ…」  
ぐったりとした少女はぜいぜいと息を継ぐだけで返事が無い。  
眉根は苦痛に寄せられ、首にまわされた腕には力が抜けている。  
これ以上ユウリィを苦しめまい、と少年は中から出て行こうとするが、  
気がつくと少女の脚がかにばさみのように腰を挟んでいて、抜けられない。  
ふとももに手をかけてゆっくり振りほどこうとすると、ようやく少女から声がした。  
「ダメです…ジュード…」  
「大丈夫?……ごめん…苦しい想いさせて。いま、抜くから」  
だが、ジュードの言葉にユウリィはぶんぶんと首を横に振る。  
「ダメ。…抜いちゃイヤです、ジュード。そんな気を使って欲しくありません。  
このまま、ジュードのを全部ください…ッ!」  
「ユウリィ…でも……」  
「ジュードの、したいようにしてください。  
…それがわたしの、して欲しいことです」  
その言葉に応えるように、ユウリィの中の動きが活発化する。  
射精を促すようにうごめく少女の体内。  
ジュードは、もはや立ち止まってはいられなくなった。  
だが、退路は塞がれている。ならば行く道はひとつしか無い。  
「ううッ…ぐあああッ!」  
唸りとも叫びともつかぬ声をあげて、ジュードは渾身の力で突き上げた。  
 
瞬間、凄まじい衝撃がユウリィを襲う。  
身体を千々に引き裂かれんばかりの鋭い痛み。  
だがそれでも、ユウリィは一声の呻きすらあげない。  
少年のため…いや、少年とひとつになりたいという強い想いが、  
少女を揺ぎ無く支えている。  
「ぅぅ…ッ!もう──……ダメ……ぅぅッ!」  
身のうちで暴れる少年がひときわ大きく膨張したかと思うと、  
燃えるように熱い液体が、ユウリィの中心に降り注いだ。  
ぐったりとユウリィの上に倒れこむジュード。  
そのひとつことをなし終えた安らかな顔を見ていると  
ユウリィには、さっきまでの痛みなどまるで無かったかのように思えてくる。  
「う…ん………ごめん、ちょっとクラッときちゃった」  
「いいですよ、ジュード…このまま眠っても」  
「そういうわけにはいかないよ。抜くね、ユウリィ」  
「はい。……んんッ!」  
少年のものが引き抜かれると同時に、  
幾筋か赤い流れの混じった白濁液がどろどろとながれでてくる。  
「ユウリィ…血ッ…血がでてるよッ!」  
「女の子は、はじめてだとそうなるんです。もう平気ですから…」  
ユウリィはそう言ったが、ジュードはあまり聞いていなかった。  
下敷きになっているジャケットからなにやらゴソゴソと取り出す。  
「きゃッ…ふ、拭いてくれなくても…自分でやりますから…ッ」  
「いいから、まかせてよ。ユウリィ、まだ動くと辛そうじゃないか」  
仕方なく身を任せる。ジュードのほうも気を使って  
なるべく見ないでやってくれているのだが、  
それでも恥ずかしさに全身が焼かれるようだ。  
 
「…もう、そのくらいで…」  
「ん……うん」  
半ば以上脱げてしまったワンピースを直す。  
散乱した下着をひろおうと腰をあげるが…  
少しも下半身に力が入らない。  
なんとか立とうともがいていると、ジュードにひょい、と抱えあげられた。  
「連れてってあげるよ。  
…さっきのだけじゃ、まだ気持ち悪いでしょ。お風呂?」  
突然の浮遊感に目を丸くしていたユウリィだが、  
ジュードの台詞にくすり、と笑った。  
「お風呂に連れて行って…どうするつもりですか?」  
首をジュードの胸に預けながら、言う。  
「ええッ!?いや、そ、……な、何もしないよッ!」  
「今日は、もうダメですよ。でも…」  
ジュードの首元まで顔を寄せる。  
「でも…──きっとまた、してくださいね」  
 
 

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