――事の発端は、少し遅めの昼食の準備をしているときであった。
「―――――。・・・火、消えちゃいましたね。」
ぷすぷすと煙の起っている焚き火の跡を眺めながら、ユウリィは呟いた。
それに私は相槌を打つ。
「・・・そのようだな。―――――まだ、完成ではないのか?」
「はい、そうですね。・・・・・・計算外でした。
あれだけ沢山あったから大丈夫かな、と思ったんですけど。
やっぱり何事もしっかりと準備を調えてから臨まないとってことでしょうね。」
ユウリィはそう残念そうに言う。
私の目から見たら殆ど完成品に見えるそれは、ユウリィによるとまだ未完成らしい。
「そうだな。・・・・―――アルノー。
お前は魔法使いなのだろう。火の一つくらいポン、と出せないのか。」
そういって膝を抱えて恨めしそうな目をしているアルノーに声をかける、
「・・・いや、魔法つーか魔術な。
てか、何か魔術を滅茶苦茶都合の良いモンだと勘違いしてないか?
そもそも魔法は、それこそお伽話にでてくるようななんでもありって感じのもんであって、ほとんど空想の域だ。
魔術は一定の法則に基づいたうえで行使する力だから、自ずと出来ることやら不可能なことがだな・・・」
何やら魔術について講釈―――言い訳か?―――を垂れてくるアルノー。
そんな事を言われても、剣を使う身としては魔導の知識の蓄えなど無いし、あまり意味のあるものではない。
だから、今この場で重要なことは出来るか否かなのだが、彼の口ぶりだとどうやら答えは否のようだ。
「ようするに出来ないのか?」
「―――う・・・、その・・・すまん。
火を起こす程度ならともかく―――長時間連続して出しつづけるのは、無理だ。
なんか燃す物を用意しないと――――・・・・
・・・・・・・っていうか、お前ら、何でこんな勿体な・・・変なことすんだよ!
折角の戦利品だってのに!!
――いや、待て!決してやましい気持ちなんて無かったんだぞ!
俺はジュ―ドの今後のため、将来のためを思って持ってきたわけで!!」
(・・・嘘を吐け、嘘を。・・・・・・まぁ、しかし)
それは確かに、世の健全な男子がこういうものに興味を持つのはごく自然なことだ。
私だって別にそのことを蔑んだりはしない。
けれど――――そのような低俗な物を見せずともジュ―ドには私が・・・。
ああ、いやいや。そうではないだろう、私。
「あ・・・、コホン・・・いや・・・何を言っている。ジュ―ドはまだ13歳なのだぞ。
そんなものは、まだ早すぎる。」
――その13歳相手に色々され・・・しているのは何処の誰だ、という突っ込みは却下。
(・・・・・・とはいえ、燃やすというのもどうかと思うのだがな。)
そう心の中で呟き鍋の下の燃えカスに目をやる。
手頃なものが無かったので、ユウリィが
「これ、薪代わりしますから」
と、にこやかな笑顔を浮かべアルノーが、
ある一件のときこっそりくすねてきていた(そういえば、あの時何やらこそこそとやっていた。)
・・・その、『すけべぇ本』とやらを使ったのだ。
・・・どうも途中で火が消えることをわかっていてやったとしか思えないのだが。
ユウリィは私のように割り切った考え方は出来ないらしい。
「まあ・・・どの道、あと20分くらいは煮込まないと駄目ですから・・・。
その間火を出しつづけてもらう訳にもいきませんし。
やっぱりどこかから薪を調達してこないとですね。
出来れば男手があったほうがいいんですけど、ジュ―ドは疲れて眠ってますから―――
すみませんけど・・・アルノーさん、お願いできますか?」
――――ちなみにジュ―ドが酷く疲れているのは日々の疲労の蓄積もあるとは思うが、
夕べ色々と頑張ったからというのが一番の理由だと思う。
以前までは毎日のように、その、交わっていたが、お互いの体が持たない――主にこちらの――ということで
多くても週に二回までしかしないという取り決めを最近になって交わした。(昨夜のは既に二回目だから、次回するとしたらそれは来週までお預けだ。)
しかし、その分一回の、いや一晩の密度が濃くなってしまっているので結局のところあまり意味が無いような気がする。
「・・・・・あ、ああ・・・・そりゃいいけど・・・俺一人でか?」
「あ、いえ。私も付いていきます。
ついでに食べられそうな食材があったら採ってこようかなあ、と思ってるので。
これだけだと・・・ちょっと具が寂しいですから。」
確かに。
ユウリィが作ろうとしているのは―――多分シチューだと思うのだが、
ジャガイモと人参しか入っていない。
欲を言えば肉が欲しい所だが生憎と今は持ち合わせがなかった。
生物は日持ちが良くないので、買っても直ぐに片付けてしまうのだ。
だから肉が無いのは良いとしても、シチュー――もう面倒なのでそういうことにしておく――の具が
二つしか入って無いという現在のこの状況はちょっとした食糧難と言えるかもしれない。
「それじゃあそういうわけで、私達行ってきますけど・・・。
―――ラクウェルさん。ちょっと。」
「む・・・どうした?ユウリィ。」
「私たちが帰ってくるまで
くれぐれも何事もないように気をつけて下さいね。」
「―――・・・・?」
――――ああ、なる程。
私は一瞬ユウリィの言葉を額面どおりに受け取りそうになったが、
直ぐに彼女の言わんとしていることを察した。
「う――む――・・・・・・・わかった。」
ようするにユウリィは私に対して
「料理には手を加えることのないように」
と、釘を刺したのだろう。
たとえ彼女の作った料理でも、私が手を加えると数十ランクは質が落ちてしまう。
今は食料が底を尽きかけているので無駄なことは出来ない。
まあ、今日中には近くの街に到着することが出来るとは思うので
それほど心配は無いのだが、どうせ食事を摂るのなら美味いほうがいいに決まっている。
・・・色々と考えているうちに、段々と虚しくなってきていた私に対して
ユウリィは「これが本題」といった感じで付け足してきた。
「それから・・・帰ってくるまで少し時間がかかるかもしれませんけど
その間にジュ―ドにあんまり変なことしちゃ駄目ですからね。
二人きりにすると絶対何かイケないことしてるんですから」
そういってユウリィはやれやれと溜息を吐いてみせた。
「っ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
失礼な。
それでは私が日頃から常にジュ―ドに欲情しているみたいではないか。
しかし、ここで躍起になって反論しては逆効果だ。
―――ここは落ち着いて、冷静に対処、返答せねば。
「・・・それは杞憂というものだ。大体先に手を出すのはいつもジュ―・・・・・・・」
「はい。そういうことにしておきます。それじゃあ、お留守番お願いしますね。」
ユウリィは私の言葉をさらりと聞き流して、
アルノーと二人さっさと出かけていってしまった。
「ド・・・・・・・。」
「・・・・・・・―――――いや、あの・・・・最後まで聞いていってくれてもいいではないか・・・」
あまりにもあれすぎるユウリィの態度に少し拗ねてみる私。
いつもいつも彼女は、事ジュードに関する私の言い訳は全く聞き入れてくれない。
そして、もはや私もそんな彼女の対応には慣れてしまってきつつあった。
しかし。
「――――――――。」
今、私はジュードと二人きりだ。
この「彼と二人きり」という状況だけは未だに耐性がつかない。
先程まで正常だった心音が、僅かに乱れるのを感じた。
ちらり、と脇に目をやる。
ジュ―ドはくぅくぅと寝息を立てながら眠っている。
その寝顔を見て、思わず私は頬を緩めた。
(・・・・・・・やはり、ジュ―ドは可愛い―――・・・ってそうではなく。)
緩んだ顔を引き締め、ぶんぶんと首を振る。
こういう状況になるとすぐ思考が誰かさんの事で一杯になってしまうのが私の悪いところだ。
「・・・・・・ユウリィはああ言ったが。」
やるな、と言われるとやりたくなるのが人の性というものだ。
ああ、違う。
ジュ―ドにあれこれするというわけではなくて。
――いやその気持ちも無いわけではないが・・・って、ああもう、しっかりしないか、私。
・・・・・・私が言っているのは料理のことだ。
私も、今までに何度か「練習」ということで食事の担当をさせて貰う事があったのだが
それが全て、ただ一つの例外もなく溜息のでる出来で。
・・・・・・・・無論悪い意味で、だ。
気を遣って一応完食はしてくれるのだが、無理矢理浮かべている笑顔には大抵涙が浮かんでいる。
そしてまたアルノーが、それをおかわりまでして食べるものだから
ジュ―ドとしてもそれに負けるわけにはいかないと思うのか、
何回もおかわりをして終いには気を失ってしまったこともあった。
余談ではあるが・・・
ある日ジュ―ドが気絶した晩、
彼の部屋に(本当はその日は野宿する予定だったのだが急遽近くの街に引き返したのだ)
謝罪にいったところ、例のごとく夜の営みへとなだれ込んでしまい―――・・・
―――――・・・いや、その。断じて。断じて期待していたわけではない―――――
私の料理には精力を増強させる効果でもあったのか、
ジュ―ドはいつもよりハチャメチャで、
私はいつもよりメチャメチャにされてしまった。
―――・・・・ああ、話が逸れてしまったが。
まあ、このように自分に料理の才能が無いのは判っている。
けれど一度くらいは、自分にとって特別な人が己の手料理を
美味しそうに食べてくれているところを見てみたい。
・・・・・・卵酒の件のときも結局失敗のようなものだったし。
と、そこで美味しそうな香りを漂わせている鍋に目を向ける。
どうして今日に限ってそう思ったのか判らない。
とにかく私は
――この料理に少し手を加えて仮初の満足感に浸るくらい、いいのではないか。
ついそんな衝動に駆られて、折角ユウリィが作ってくれた料理に
毒物を混入するような真似をしてしまったのだ。
・・・・・・・・・
そしてそれから約五分後。
わずか五分後。
たったの五分後だというのに。
もはや取り返しのつかない状態になってしまったシチュー(?)を前にして
私はだらだらと脂汗を浮かべながら立ち尽くしていた。
「―――これは・・・・一体何と言う料理なのだ。」
気合を入れすぎるというか、力を込めすぎるというか、加減を知らないというか・・・。
そんな自分の性格が災いした。
精がでるようにと、元気ドングリを砕いて混ぜたり
ハーブっぽいから、という理由でアンチドーテをいれてみたり
あとは――手当たり次第に香辛料を入れてみたり。
あれやこれやとしている間に、もはや少し手を加える程度の話ではなくなっていた。
その結果、数分前まであれほど食欲をそそっていた筈の鍋の中の料理は――――――
―――今は見るも無残な死臭漂う謎の物体へと進化を遂げてしまっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
――――本当に・・・・・・なんだろう。
確かシチューか何かだったと思うのだが――――
「さて・・・どうしたものか。これは。」
これは既にシチューとかこの星の料理に形容できる代物ではないと思う。
誤魔化してどうにかなるレベルでもない。
その辺に捨ててしまったら、さらにこの星の荒野を増やしかねない。
いや、しかし・・・
今までが見てくれだけはそれなりで、味のほうが駄目だった事を考えると
今回は味に関して成功したという可能性だって無くは無いのでは。
そう思い立った私は、覚悟を完了してそれを恐る恐る器に盛った。
「・・・・・・」
スプーンでひとすくいして『それ』を凝視する。
―――何故かやたらと、とろみ―――というより、粘度があった。
どろどろとスプーンから滴るその様は、見ている者の食欲を更に削いでいく。
(ま、まあ・・・いくら不味かろうと、流石に人体に悪影響がでるほどではないだろう。)
私は腹を括って、ゆっくりと『それ』を自分の口へと運んでいった。
ぱく。
「っ・・・・・・・・――――――――」
舌へと襲い来るであろう衝撃に備えて、目を閉じる。
だが私の予想とは裏腹に――――――――
「――――――――――――――――む・・・・・・・・・・・・・これは―――。」
――――――うまい。
視覚的なことに目を瞑れば、
味覚的には問題は無かった。
いや、むしろ中々美味と言える。
それに、アンチドーテ等の香りのよいものを混ぜたことが功を奏したのか、
その点に関してだけは進化前より良くなっている・・・気がする。
本当に見た目だけ。
それさえ我慢できれば、ユウリィの作ったものほどではないが
彼女の料理で舌の肥えたジュードでも、満足のいく味に仕上がっているのではないだろうか。
ほんの味見のつもりだったのだが、私自身空腹だったことも手伝って
気が付けば改めて「それ」を器に盛って尚且つ完食してしまっていた。
途中、何やら軽く目眩のようなものを覚えたが、恐らく疲労からきたものだろう。
無理もない。
夕べは殆ど寝ていないのだから。
・・・・・・・・・そういえば、夕べは――――。
――――ああ、そうか。だから私は今日に限ってこんな・・・。
「ん―――・・・」
と、そこで鍋から放たれる瘴気――匂いに当てられたのか
今まで傍らでうとうと眠りについていたジュードが目を覚ました。
そのことに気が付いた私は彼に声を掛ける。
「――ジュ―ド。目が覚めたのか。」
「ん〜〜・・・。なんか、いいにおいがする・・・。」
すんすんと鼻を嗅ぎながらジュ―ド。
「ああ、今丁度―――そうだ。
ジュ―ド。腹は空いてはいないか。
食事の準備なら大体出来ている。少し味見をしてみないか?」
まあ、見た目に問題は在りはしたが、私は「この味ならば」と考えてジュードに鍋の料理を食べてみないか提案した。
――――多少見た目に抵抗を示すかもしれないが、何とか説得してみるとしよう。
また同じ物が作れるとは限らないのだし。
「・・・ほんと?う〜ん・・・。
・・・・それじゃあ、ちょっと味見してみようかな・・・・・。」
どうやら睡眠欲よりも食欲が勝ったようだ。
ジュードは眠たそうに目を擦りながら立ち上がり、
とてとてと鍋のほうへと歩み寄ってくる。
そして彼はその中を覗き込むと――
「わ――――――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅわ・・・・・・・・・・?」
そのままぴた、と固まってしまった。
「ラクウェル。あの。これ。その。――――・・・・・・・・・ねえ。これラクウェルが作ったの?」
鍋の中を凝視したまま、困惑した様子で
こちらに問いかけてくるジュ―ド。
「あ、え、えぇと・・・。う、うむ。そうだ。(・・・・・・・・・・・・半分は。)
っま、まあ気持ちは判る。
しかし、見てくれは確かにあれだが、私が毒―――――いや味見したところ、味のほうは全く問題は無かったぞ。」
そう言って、先程自分が使った器にシチュー・・・・?を盛ってジュードに手渡す。
「それ」は相変わらず、何か、こう、禍々しいオーラのようなものを放っている。
鍋から視線を離さずに、黙って器を受け取るジュード。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「――――――――――――――――――――――――――」
彼は暫く「それ」と睨めっこをしていたが、
じーっと眺めてくる私の視線に耐えられなくなったのか意を決してスプーンを掴んだ。
「あ―――。」
と、そこで私はあることを失念していたことに気が付いた。
(―――――――――――しまった。)
「え・・・?何・・・?やっぱり(色々)まずいとか―――?」
「―――いや、そうではなくて。その。なんだ。
そのスプーンは先程私が使ったものでだな・・・・。新しいスプーンだってあることだし、
敢えてそれを使うという理由も、ないであろう・・・・・・?」
ごにょごにょと口篭もる。
よくよく考えてみると、今ジュ―ドが持っているのは先程私が使用したスプーンだった。
ようするに。
このままだと、彼と間接的に、その・・・、接吻をしてしまうことになる。
だから遠回しに――――
「―――あ・・・そっか。『かんせつきす』ってやつになっちゃうのかな。これ。
いいよ、別に。気にしないで、ラクウェル。」
―――使うのを止めさせようとしたというのに、コイツは・・・。
(・・・・・〜〜〜っ気にするに決まっているだろうが・・・!!)
それはお前は気にしないだろうけれど、私にとっては
――今更何をと思われるかもしれないが――こういう直接的ではないことのほうが、逆に、その、恥ずかしい。
・・・けれど、あまりしつこく言うのも意識しているようで更に恥ずかしかったので
私はそれ以上は何も言えずに、彼にスプーンの使用を了承してしまった。
「――・・・そ、そうか。ならばもう何も言うまい・・・。」
「(うーん・・・。それよりも、これを食べることのほうが
ためらわれるんだけど・・・。―――、でも・・・ラクウェルが作ったみたいだし・・・。)
ところで、これ何の料理なの?」
「む・・・?――――あ、えぇと、(多分)シチューだ。・・・ジュードの好物であっただろう?」
「―――・・・・・そりゃ、シチューは好きだけどさ・・・・・・ん、いや、何でもない・・・。
―――じゃ、改めて・・・・・・・・・いただきます。」
そう言うとジュ―ドは、祈るように目を閉じて、ぱく、とスプーンを口に含んだ。
「――――――――――――――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
静寂が訪れる。
「・・・・・・・・・ジュ、ジュ―ド?」
まあ、月並みな台詞だがこんな時は普通上目遣いに「おいしい?」なんて聞くのだろうが
とてもそんなことが言える雰囲気ではなく―――もとよりそのような可愛げも無く―――。
そんなことよりも私は反応が無いことが心配になって彼に声を掛けた。
『これ』は私には美味しく感じられたが、もしかするとジュ―ドの口には合わなかったのかもしれない。
―――やはり不味かったのだろうか。
そんな考えが頭を過ぎったが、それは無用な心配であった。
「・・・・・・・・・・・・・あれ?・・・・・・・おいしい。
――――――うん、おいしい!ラクウェル、おいしいよこれ!」
「―――そ、そうか・・・・・良かった・・・・・・。」
『これ』という呼び方が少々気になったが、確かに『これ』は『これ』という他に呼び方が思いつかない。
ともあれ、「おいしい」という心からのジュ―ドの言葉を聞いて
私は胸を撫で下ろして・・・
「――――――・・・・・・・・・・・・・・・?」
・・・何か、違和感を感じた。
あるべきものがないというか、しぼんでしまっているというか。
まぁ、大したことではないだろう、と。
ジュードの言葉が嬉しくて、私はそれを気に止めることをしなかった。
顔がにやけそうになるのを懸命に抑えながらジュードを見つめる。
彼は今度は何の躊躇いもなく二口目となるそれを、ぱく、と口に含んだ。
「―――うん、ほんとおいしいよ、ラクウェル。これなら何杯でも・・・・。」
そう言いながらこちらに顔を向けてくるジュード。
――――途端、彼の表情から喜色が消え失せ、訝しげなものへと変わった。
「・・・?どうした、ジュード。何か――――。」
・・・・ああ。
――――やはり、何かおかしい。
どうして先程から私は、座っている彼をこんな低い位置から見下ろしているのだろう。
「――――ねえ、ラクウェル。なんか・・・・・・。」
ジュ―ドがそう言って立ち上がってから、ようやく私は不確かだった違和感を確かなものにした。
私が見下ろし、彼が見上げてくるという普段のお互いの目線の高さが、今は何故かほぼ水平だった。
簡単に思いつく理由は二つほどあるが、どちらも考えられない話だ。
いくら育ち盛りとはいえ、私に追いつくほど急激にジュ―ドの身長が伸びるなど
まずありえないし、ましてや私の身長が彼と同じくらいまで・・・・・・・
「うん・・・やっぱり、縮んでるよ―――。身長・・・・。」
「――――――――――」
・・・・縮むなんてありえる筈がないのだけれど
裾の余りまくっているコートやらなんやらが、突きつける様に今の私の現状を物語っていた。
・・・・・・・・・・
(一体どういう事だ、これは・・・?)
ぐるぐると思考を巡らせる。
いつからこうなったのかわからない。
とりあえずユウリィ達がここを離れるまでは特に何も無かった。
それからジュ―ドが目を覚ますまでの間にも――鍋の料理以外は――変わったことは無かった筈。
こんな、身体が縮むなど・・・そんな理由全く心当たりが――――
(っ・・・・・・・まさか)
――――あった。
鍋に視線を向ける。
(まさか・・・。これの、せいなのか・・・?)
そうだ。
何か原因があるとするならば、この(元)シチュー以外にはありえない。
いくらなんでも非常識的というか非現実的すぎるが他に理由が思いつかないし、
確かにあの物体ならば、私の身体にこのような異常を引き起こしてしまったとしても信じられない話ではない。
もそもそ・・・
(・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、どうする。)
・・・・・・取り乱していても仕方がない。
とりあえず事態の収拾が急務と言えよう。
料理のことも気になるが、一番の問題はこの体だ。
二人が戻る前にこれだけは何とかしなくては。
ごそごそ・・・
・・・取り敢えず鍋には蓋をしておこう。
全く問題の解決には繋がらないが。
幸いな事にジュードは二口しか食べていないからか特に異常は無いようだ。
それだけでも良しと思うしよう。私のせいで彼に何かあったら・・・
もそもそ・・・
・・・・・・・・・―――それにしてもうるさいな。
何故先程から衣擦れの音が――――――・・・・・・。
「・・・・―――って」
そこで思考を中断する。
色々と考え込んでいる間に、私はジュードの手によって
だぼだぼになってしまっているコートをするすると脱がされていっていた。
「う〜ん・・・前から思ってたけどさ、ラクウェルの服って脱がしにくいよね・・・。」
「―――ちょ、こら、ジュ―ド!!な、何をっ!?どうして服を脱がしている!?」
「ん・・・。えと。結局ご飯食べてないから、ちょっとお腹空いてて・・・。」
「・・・・・・それは、その・・・すまないと思っているが。」
その上この分だと街につくまでは食事はお預けになる。
その点では皆には大変申しわけない事を・・・・
「それに―――ラクウェルの料理のせいかな。何かむらむらしてきちゃって・・・。」
「・・・・・・おい、それは。」
――――・・・いや、その流れは変だろう。
「だから、ラクウェルを食べちゃおうかなあ〜って思って。」
「っ何故そうなるっ!?空腹というのも関係ないし!!
だ、大体、夕べあれだけしておいて、またするというのか!?
それにサカるなら、時と場所を状況を考えてサカ―――・・・・ん――――!」
いつものことながら唐突過ぎるジュードの「えっちしよう」発言に、
間髪いれずに抗議の声を上げた私の口は、全ての言葉を紡ぎだす前に塞がれた。
塞いだのは勿論、彼の唇。
今は身長差がない分、私は簡単に彼に唇を奪われてしまったのだ。
彼は、引き剥がそうとする私の事なんてお構いなしで口内を蹂躙してくる。
私は「こんなことをしている場合ではないと」と、それに抗おうとしたが
今の私の力は幼い少女のものであり、抵抗など全くできなかった。
いや―――それは違う。
ジュ―ドの口付けは少し強引だったけれど、
甘くて、柔らかくて、暖かくて、優しくて―――
―――――それに抗うなどたとえ普段の私でもできなかったと思う。
「――こ、こら―――、ん、む………ぁ、ジュード、やめ・・・・」
―――なんて拒絶するようなことを言えたのも最初の内だけで。
情け無い話だが私は彼の口付けにいとも簡単に篭絡されてしまったのだった。
「―――んっ――――ん、ぁん……は、っ、………ん」
「は・・・ん、んむ、ちゅ・・・は―――。」
お互いの口から、吐息が漏れる。
私のそれには、熱でうなされているような切なげな韻も混ざっている。
――――舌を絡めとられ、唾液を吸い取られ。
理性を奪われ、思考を奪われ、奪われてばかりだというのに――――。
それでも、体の昂ぶりだけはどんどん与えられて、高まっていって。
「はむ……ん、はっ、ん……じゅー、・・・ど………」
気が付けば――――。
ジュ―ドが私を貪るのと同じように、
私も彼を求めてしまっていた。
ぬちゅ、くちゅ、にちゃ、ぬちゃ。
ちゅる、ちゅ、ぴちゃ。
互いの唾液を交換しあう。
淫らな音が耳に響く。
まだ、口で交わっているだけだというのに――――――。
その重なりはひどく深く、とても甘く、
私は彼と既に体が繋がってしまっているような錯覚を覚えていた。
――――まずい。
どんどん私の中から抑止力が失われていっている。
このままでは本当にキスでは―――
キスだけなんかでは、足りなくなってしまう――――。
「ん、ふ―――ぁ――――は」
そんな気持ちが溢れそうになって。
完全に歯止めが利かなくなってしまうというところで
ジュードはゆっくりと私の唇を解放した。
「・・・・・・―――――えへへ。とりあえず、キス・・・。ごちそうさまでした。」
そういってほんのりと顔を紅くしながら無邪気な笑顔を浮かべるジュ―ド。
その顔からは一切悪びれたものは感じられない。
だから―――
「っ――――――――――――――――――――――――――」
―――そんな顔をされたら私だって怒れないだろうが。
まったくコイツにはいつもいつも―――。
ああ、もう。
私はジュ―ドに関することで弱点ばかりある。
もうこれは一生克服なんて出来そうに無い。
・・・・・いや。というよりしたくないのかもしれない。
「・・・っ馬鹿――。」
思えば―――こんな風にジュードとキスをするのは初めてな気がする。
普段彼と口付けを交わすのは、その、ベッドの上ばかりだから。
・・・・・・普通に立ってキスするには、彼の身長が低すぎるのだ。
「―――――ジュード・・・。あの・・・その・・・・・・・。」
その先が言えず口篭る。
『続きは』、なんて恥ずかしくて言えるわけない。
尤も彼は私の心中なんて完全に見透かしている。
だというのにジュードは、今度は意地悪そうに笑顔を浮かべて私にその言葉の続きを尋ねてきた。
「ん?なあに?何か言いたいことでもあるの?ラクウェル」
「っ・・・・・・。」
―――――――このすけべ。
えっち。
いじわる。
ばか。
何で、いつもこんな・・・。
自分から仕掛けておいて一々私から求めてくるように仕向けるのだ・・・―――――――。
ああ、でも。
「―――・・・・・・続き。責任。・・・・一度食べるといったなら残さずにしっかり食べろこの馬鹿・・・っ。」
・・・・・うう。私も馬鹿だ。
ジュードにはやめろだのなんだの言ったくせに・・・。
結局は流されてしまう。
彼は私の言葉を聞くと「やっぱりラクウェルは可愛いね」などと言って、私の身体をぎゅう〜、と抱きしめてきた。
それが、行為の再開の合図だと理解した時には彼は再び私の唇を奪っていた。
「は、ん―――こ、こら・・・そんな強く、抱きしめ・・・ん――――――は、ふぅ、・・・んっ」
くちゅくちゅと舌を絡ませる。
それで、収まりかけていた熱が再び身体に戻ってきた。
しかし。
このまま本格的に行為に突入しようとしたところで、
「な、なあ―――っ!は、はあっ・・・ぜー、はー・・・やっぱ、まだ怒ってるだろ――!?」
「怒ってないです!!ただ、あんなやらしいモノをあんなに沢山持ち歩く 無・駄・な・活力があるのなら、
それをもっと有効に活用して欲しいだけです!!」
「―――――――――――――――――!?」
二人の声が、聞こえてきた。
声の聞こえ方から察するに、アルノーはまだ結構遠くにいるようだが
ユウリィはもう直ぐ近くにまで来ている。
――なんて迂闊。
人気が無いとはいえ、ここは屋外で、まだ日は高くて、
二人がいつ戻ってくるかもわからない状況だったというのに。
おまけにこの状況をどう説明しよう。
火照った顔をした二人。
乱れた呼吸に乱れた衣服。
鍋の中の謎の料理と、縮んでしまった私の身体。
これを上手く説明できる方法などあろうか。
ああ――――うむ。そんなもの多分ないだろう。
というか、何も解決せぬうちにユウリィが帰って来た際の言い訳を私は全く考えていなかった。
「まったく、アルノーさんは本当にもう・・・。
ラクウェルさん、ジュード、今戻りました・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
「あ・・・・・・・・」
―――――・・・・・結局、解決策も言い訳も。
何の考えも浮かばぬ内にユウリィが戻ってきてしまった。
彼女は抱き合っている―――色々考えていて離れるのを忘れてしまった―――私たちを見て目をぱちくりさせている。
そして彼女は、しばらく間を――10秒程か――おいて、ようやく思考を再開した。
「――――――――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えーと。
まあ私もラクウェルさんたちを二人きりにして
何事もないなんて欠片も思ってませんでしたけど。
だから二人が抱き合ってるのは全然想定内の事です。ええ。
大方またジュードに流されたんでしょう?
服を既に何枚か脱いでいるのもまあ、そういうことするんですから当然ですよね。
それでキスされてる内に段々乗り気になってきて、えっち突入って時に私が帰ってきたってところでしょうか。
つまり・・・どおいうことなんですか。これ。」
・・・どこからか監視でもしていたのか。彼女は。
ほとんど説明の必要がないくらい状況を理解しているのだが。
取りあえずユウリィは私たちが何かしているであろうということは、承知していたらしい。
――信用のない事だ。・・・まぁ実際、私はそんな彼女の期待にしっかりと応えてしまったわけだが――
だから彼女の疑問は「何故私の身体が小さくなっているか」ということで。
けれど、それが一番話しにくいのだ。
こんな話、にわかには信じられぬだろうし、何よりこの件に関しては完全に私の自業自得だし。
・・・うう。仕方ない。
何とかここは、穏便に事を進めてくれるように交渉してみよう。
「ユウリィ。――ちょ、こら、ジュード、腕を放さないか。状況の・・・
や、やめろ!頬を擦り付けるな!!
あ・・・っ!・・・え?ちょ、ちょっと・・・・・・・――――
ュ、ユウリィ、ふぁっ・・・その、状況の、ついてに、ん・・・説明・・・
ば、馬鹿、そこは・・・っ・・・だが・・・正直に、ん・・・話す・・・っから、どう・・・か、冷静に聞――――
・・・やめ・・・そんな、とこ・・・くぅぅっ・・・!」
ユウリィへ弁明している最中だというのに、あくまでマイペースに私の身体を貪ってくるジュード。
・・・どうも本当に、本気で私の料理のせいで欲情してしまっているらしい。
完全に性行為に没頭しているときの彼は何を言っても聞き入れてくれない。
今もユウリィが帰ってきたことには気付いていないようで
私のスカートの中に潜り込んで何やら色々やっている。
「・・・わかりました。話せるうちに話しちゃってください。
・・・・・・・・このままだとラクウェルさん、まともに会話できなくなっちゃいそうですから。」
私の申し出に対して、頬を赤らめながら返してくるユウリィ。
彼女も、こうなってしまったジュードが簡単には止まってくれないことをよく理解している。
「ん、は・・・・・・、う、む・・・わかった、その・・・はーっ、はあーっ・・・
信じられないかもしれないが、私が、・・・・お前の料理に、その、少々手を加えてそれを食してみたところ・・・ん、ふぅぅっ・・・
こうなって、ん、身体が縮ん、で・・・しまったの、だ・・・はぁん――――」
「そんな――。ちょっと待ってください。いくら何でも、料理を食べただけでそんな・・・。」
信じられないといった口調のユウリィ。
いや、私とて半信半疑だが他に理由が思い当たらないのだ。
「ひぁっ、あ、あ・・・はっ、はあ――、いや、その少々では、なかったかもしれぬ・・・。
色々、と、して、・・・いろ、いろ、と、・・・・・・じゅ、・・・ど・・・、舌を、そんな、そんなしないで・・・――!
は・・・く・・・、ふ、ぅん・・・いろい、ろっ、て、手を、加えすぎてしまったみたい、でっ・・・
じゅーど、も、少々・・・あっ・・・わたしを、食べたのだが、あ、ぅん・・・!!ちが、それ・・・それを食べて・・・
は――、は――ッ・・・・け、ど・・・特に、異状は・・・あっ・・・いや、違う・・・何故か、このように、酷く欲情、してしまっ・・・んっ!
あ!や、んく、あっ、あ!あ!あっ、あぁああああああああ・・・・!!」
ジュードの責めで、ユウリィへの話も途中の内に達してしまった私は
立っていることができなくなってその場にぺたり、と座りこんだ。
・・・勿論下には私に色々していたジュードがいたわけで。
私の秘部が彼の顔に、ぎゅううと押し付けられる。
その接触は、絶頂に達したばかりの私の身体には酷く堪えた。
「ん・・・・・・――――――――!」
「っ痛っ、いたたたたたたたたた!
ラクウェル、ちょ、どいて、首、首が・・・!!」
スカートの中からジュードの悲鳴が聞こえてくる。
ああもう・・・!そんなに密着した状態で口をもごもごさせるな・・・!!
「は、ふぁ・・・ん、ああ・・・っあ、暴れるな!!
というかお前がスカートの中に潜り込みなどするからだ、馬鹿者が!!」
このままでは色々まずい、と思い
私はうまく力の入らない身体を何とか動かすと、のそのそと彼から離れた。
私が退いた場所から、首を押さえながらジュードがむっくり起き上がる。
「もぉ〜・・・痛いよラクウェル・・・。――――あれ?ユウリィ。何処か行ってたの?」
――――本当に気付いていなかったのか、こいつは。
「はい。ちょっと。お昼ご飯作るのに色々準備が必要になったので。」
まるで何も見ていなかったという感じでにっこりと笑いながら答えるユウリィ。
しかし私は彼女が自分の身体を抱きよせるようにきゅうぅ、と抑えつけていることに気が付いた。
恐らく。
私がジュードに身体を弄られているのを見て昂奮を覚えたのだろう。
「はぁっ・・・はあ・・・――――。と、とにかく。アルノーが戻り次第直ぐに出立しよう。
それで医者に診てもらうのが一番・・・・
って・・・ユウリィ。ところであいつは何をもたついているのだ?まだここから随分と遠く離れたところにいるようだが・・・。」
いや、まあ遠くにいてくれて助かったが。
「・・・・・・ユウリィ?聞いていたか・・・?アルノーが戻ったら・・・・・・。」
「ええ、聞いてました。・・・それにしても。ふ〜ん。そうなんですかぁ・・・。
つまり―――――。ラクウェルさんはどちらの言いつけも破ったってことなんですか・・・?」
「――――――――――――う。」
まあ、そういうことになる。
確かに料理の件については完全に私が悪いし、言い訳のしようも無い。
彼女が怒るのは当然のことだ。
―――しかし。
ジュードと色々していたというのは私のせいだけでは無いと思うのだがな・・・。
・・・けれど、彼を拒めなかったというのも事実といえば事実である。
そういった意味では結局どちらも私の責任なのだろうか。
ユウリィは暫くむぅ〜っと私を睨み付けたあと、溜息をついて視線を落とした。
「・・・はぁ。・・・怒っててもしょうがないですね。
今はラクウェルさんを元に戻してあげないと・・・。」
「ん。そだね。このラクウェルはラクウェルで小さくて可愛いけど。
でも、治すっていってもどうするの?
原因がわかってても、治し方なんて全然わからないし。」
・・・小さいってお前も大してかわらないではないか。
ああ、それにしてもジュードはこんなに背が低かったのか、と
こんな小さな男の子に弄ばれてばかりいる自分が少し情けなく思えてきた。
「――それは私たちが考えていても埒があかないだろう。
・・・・・・あまり当てには出来ぬが、やはり医者に診てもらうしか・・・。」
「――――――あ、そうだ。」
と、そこでユウリィが何か思いついたようだった。
「ユウリィ?どうかしたの?」
「はい。ちょっと。
えっと――・・・・・・。あの辺りがいいでしょうか。」
ユウリィはジュードに軽く返事をすると、軽く目を閉じ意識を集中し始めた。
「ん〜〜〜〜――――――――――――・・・・・・・・・。えいっ。」
最後に控えめに掛け声をあげる。
・・・・・・何か起こるのかと黙ってそれを見ていたが、
特別何かが起こったという気配はない。
「・・・・・・ユウリィ。今何かしたのか?」
何をしたのかまったく解らずに、その事を彼女に問いかけてみる。
彼女は深く息をつくと、くるりと振り返ってそれに答えてきた。
「はい。やる事が出来たのでちょっとそれの準備を・・・。
あまり慣れないことだったんで、ちょっと疲れましたけど。
でも、それももう終わりました。
さて――――。それじゃ、ラクウェルさん。」
っ――――――。
こちらに視線を向けてくるユウリィの顔は、ひどく淫蕩な笑みを帯びていた。
ああ・・・。まさかこの流れは・・・。
「えっち、しましょうか。」
いや、だから。
なんでそうなるのだ――――。
「っだから!!!なんでそうなるのだ!!!!」
「何となくです。流れ的に。」
彼女の返答に、私はがくりとうな垂れる。
「流れ的にって――――・・・・・・。ユウリィ。お前――――――。」
「――っていうのは冗談で。
ちょっと考えてみたんです。ラクウェルさんの身体を治す方法を。
仮にお医者さんにかかるにしても、近くの街までは大分距離がありますし、
それまで魔獣に襲われない可能性だってありませんし・・・。
このままの状態だと無事到着するのは難しいと思うんです。」
「――――。」
それは・・・。確かにその通りだ。
今の私では普段どおりの戦闘行為は不可能だし
ユウリィの言うように、近くの街まではまだかなりの距離がある。
暇はあるのにお金が無いとか、身長はあるのに可愛げは無いとか、
ある、ないが逆転してくれれば良いのに、と思えるものがこの世には
なんと多い事だろうと私は心の中でしみじみと嘆息した。
・・・まあ、それは置いておくとして。
先程は不覚にも完全にその気になってしまったが、
冷静に考えると・・・というか冷静に考えなくても今は性交などしている場合ではない。
そんなことでこの身体が治るなど絶対にありえないし。
・・・それに。
やっぱりユウリィは今日の事を怒っているだろうし。
このまま三人で・・・なんてことにでもなれば、ジュードと彼女の二人から
めちゃめちゃに虐められるに決まっている。
・・・・二人に責められるのは、それはそれで、その・・・まあ、確かに、気持ちよくはあるのだが
その分耐え難い程の恥辱を味あわされる羽目になる。
だから、どうにかしてこの場は別の治療方法を提示しなくては。
「いや、だ、だからだな、何故そこで性交―――」
「いいじゃないですか。どうせする気だったんでしょう?さっきだってあんなに感じてたじゃないですか」
「な・・・ち、違う!あれは、ジュードが勝手に―――!!」
「え?でも、ラクウェルだってキスしたあと『続きして』って言ってきたじゃ・・・」
「〜〜〜〜――――っああもう!!馬鹿ッ!!馬鹿馬鹿!!
だからそういうことをほいほいと言うなと言っているだろう、この馬鹿者ぉッ!!」
真っ赤になってジュードに怒鳴りつける。
・・・まったくどうしてお前はそういらぬ事ばかり言うのだ・・・。
「けど、あながち全くの間違いってわけじゃないと思うんです。
この前のジュードの件だってHしたら解決したじゃないですか。
可能性があるなら試してみてもいいでしょう?」
「あ、あの時はジュードに異常があったのであって私に異常があったわけではないだろう!!
それにこんな無茶苦茶な方法で治ったら苦労はない!!もっと別の・・・!!」
「でもですね、ラクウェルさん。
そもそもこうなった原因というのが無茶苦茶なんですから普通の方法じゃ治らないと思うんです。私。
――――それにほら、あれって見た目ミルクみたいですから、いっぱい、いっぱい、ラクウェルさんの中に出したら、
ぐーんって身長が大きくなって元に戻るかもそれませんよぉ?」
「どこの家庭の医学だそれは!?」
「この前」というのが、いつのことを言っているのか解らないという様子で
しばらく私たち二人のやりとりを聞いていたジュードだったが、やがて彼は
「・・・えっと、なんだかよくわからないけどHしたら治るんだね。」
と言って、ズボンのファスナーを下ろした。
「ッ―――――――――――――」
ぶるん、と。
見慣れた「筈」の彼の性器が露わになる。
その大きさに気圧され、思わずごくり、と唾を飲みこむ。
―――その音が自分のものだけではなく、もう一つ聞こえてきたのは果たして私の気のせいだったのだろうか。
いや、そんなことより―――。
彼の性器は、いつもより一際大きく感じる。
こんな――――こんな大きなものが・・・私の中に入るのか?
これでは・・・こんな小さな身体では受け入れることなどとても・・・
「それじゃあ、ラクウェルの下も見せてね。」
ジュ―ドは、そういって呆けている私の下着に手を掛けた。
彼の行動に私はハッ、と意識を取り戻す。
「――ばっ、ばかもの!私は、まだするとは言ってはいな――」
私の言葉を気にも留めずに、ジュードは私の秘所を暴いた。
「―――――――――・・・・・・・・・・・・・ッ!!」
そこは、先程ジュードに弄られたせいで既にびちょびちょに濡れていて、そして――――
「――――ツルツルですね。ラクウェルさんのアソコ・・・・・・。」
「うわー・・・ほんとだね・・・・さっきは暗くてわからなったけど・・・。
・・・あ、でもそういえば確かにいつもみたいに、しょりしょり、ってしてなかったっけ。」
・・・ああ、そうだった。
今の私は、下のほうの毛も生え揃ってはいない程に幼くなってしまっているのだった。
二人の反応に、私の顔が、かあぁ、と真っ赤に染まる。
いや、顔だけではない。
私は二人に見られているという羞恥心から、身体全体がそれはもう真っ赤に染まり上がってしまっていた。
うぅ・・・お前だって生えていないくせに・・・・・・。
「――――――――――や、やめろ!じろじろと見るなっ!!馬鹿ぁっ!!」
私は二人の視線に耐え切れなくなって必死に足を閉じようとしたが、
その抵抗もユウリィによって抑え付けられる。
「駄目ですよ。ラクウェルさん。
しっかり足を開いてないと、ラクウェルさんのあそこに
ジュ―ドのアソコを入れられないじゃないですか。
だから、―――ね?ちゃんと奥まで見えるくらい足を開いてください。」
「〜〜〜っし、しかし―――!」
「・・・・ああ、もう!じれったいです!ほら、ちゃんと広げてください!」
「――――――――っい・・・ゃ――――――――・・・・・やめ・・・・!」
抵抗の姿勢を崩さない私に業を煮やしたユウリィによって、私は両足を思い切り開脚させられた。
慌てて私は、まだ自由になっている両手で下半身を隠そうとしたが
今度はジュードがそれを押さえつけてしまう。
「は、はなせ・・・・・・・っ!!この・・・っ―――!!」
「だ〜め。そんな風に隠してたら、気持ちいいことしてやれないし、できないでしょ?
だからラクウェルのえっちなところ、僕たちにもっとよく見せてよ。」
ばたばたと暴れる私に対してジュードはからかうように声を掛けてくる。
「〜〜〜〜っお、お前達・・・・・・っ!」
私は、瞳に涙を一杯に湛えながらキッと二人を睨みつける。
が。
いつもいつも、こんな反応がかえって二人の嗜虐心を煽ってしまうということをこの時私は失念していた。
「ん・・・ひくん、ひくんってしてます――ラクウェルさんのあそこ・・・。」
「う〜ん・・・。いつもなら、もう入れても大丈夫だけど、
今日は沢山濡らしておいたほうがいいかもね。そうしないとラクウェルも痛いだろうし。」
「そうですね。しっかりと濡らしてから――――――あれ・・・・・・・?
・・・・・・くす。
――――――ジュード。ラクウェルさんたら、お尻の穴まで濡れてきてるみたいですよ。」
「なっ――――――――――――」
ユウリィの言葉を聞いたジュードは、私の股間に顔を埋めると
ほんの少し潤いを帯びた菊を、ぺろり、と舐めた。
「っ・・・!ひゃ、う・・・・・ん・・・!」
「ん――・・・・・・ほんとだ。あはは。ラクウェルったら、僕たちに見られてるうちに
こんなところまで濡れてきちゃったんだ?」
クスクスと笑いながら私の顔を見上げてくるジュード。
「ちが―――――そんな、濡れて、など――――ん、は、ンッ・・・!いな――、く、ぅん・・・っ!」
「誤魔化さなくていいってば、ん・・・―――――でも、ごめんね。
・・・お尻でするとか、あんまり無茶なことはできないと思うんだ。今のラクウェルには。」
「・・・あ、当たり前だっ!!というか何故そこで謝る!?
それでは私がそのようにして欲しいみたいではないか!!なんだその申し訳なさそうな瞳は!?」
・・・・・・・・・・色々と喚いて抵抗しているが、私とてジュードに抱かれれるのが嫌なわけでは、もちろん、ない。
・・・・勿論恥ずかしくはあるが。
ただ・・・幼い、少女としての身体を彼の前に曝け出すのは凄く抵抗があった。
――――胸なんかは、いつもと比べると全くと言っていいほど無いし。
「いや、そんなことよりも―――――こんな身体を抱いても面白くもなんともないであろう?こんな・・・子供の身体相手では・・・。」
「ううん――――
小さくなってもラクウェルはラクウェルであって、僕の大好きな女の子って変わりはないから。
それにラクウェルが困ってるのなら何とかしたいと思うし、何とかしなくちゃいけない。
だから僕の力でどうにかできるんなら――――――・・・うぅん。
それが、僕の力でどうにもできない事だとしても、ラクウェルの為になにかしてあげたいんだ。」
「――――――――――――――――――っ」
羞恥とは違う、別の感情で私の顔が熱くなる。
えぇと・・・・・・その。
何気に彼は凄く嬉しいことをいってくれているけれど
性交をすることで治ると決まったわけではないのだが。
「・・・・・・・・・そんなことを言って、ただえっちしたいだけではないのかお前。」
「――ち、違うよ!僕は本気で・・・っ」
「―――――――う、うるさい!それはそれで恥ずかしいわ!このけだものめ!」
「・・・う〜〜〜〜〜・・・・。なんだよぅ・・・。せっかく恥ずかしいのがまんしていったのに・・・。」
ジュードは拗ねたように頬を膨らませる。
と、そこへユウリィが割って入ってきた。
「というかですね。
一応治療って名目ですけど、どちらかといえばこれはお仕置きなんですから。
拒否権なんかないんですよ?
でもまあ・・・ラクウェルさんにとってはお仕置きにはならないかもしれませんけど。」
「―――――――ぅ」
「?どうしたの、ユウリィ。なんか機嫌悪そうだけど・・・。」
「・・・・・それは悪くもなりますよっ・・・。料理のこととかもありますけどっ・・・!
ふ、二人ともいちゃいちゃしすぎですっ!!今はラクウェルさんの身体を治すのが先でしょう!!」
「あ・・・そうだったね。じゃあ――――――――――」
「んっ―――――――――――――――」
ユウリィに促され、ジュードは小さくて可愛らしい舌を私の秘裂に埋没させる。
突然のことに、びくん、と身体が痙攣する。
「は、あ、―――――こ、こら・・・い、いきなり―――――・・・・・・!」
身体をよじり、ジュードの舌から逃れようとする。
が、後ろからはユウリィに抑え付けられており、それもままならない。
・・・しかし、果たして本当に私には彼の責めからの逃げようなどという意思はあったのだろうか。
結局は―――――抵抗する力を弱め、彼にされるがままとなっている。
「ん、ちゅぱ――、あ・・・。すごい・・・。ラクウェルのあそこ・・・、またえっちなのが溢れてきた・・・。」
ジュードの言うとおり、私の秘所からは透明な、淫らな蜜が新たにとろとろと零れだしてきている。
・・・恥ずかしくて頭がどうにかなりそうだ。
今私の秘所を隠すものは何もない。・・・――恥毛すら。
ピンク色に充血した、愛液を分泌し続ける私のいやらしい肉壷を、彼に舐められ、見つめられている。
その事実だけで――――――気が触れてしまいそうだった。
「あ、はっ――――、たのむから・・・、お、願いだから・・・、いちいち、くちに、出さないでくれ・・・・・・っ」
「ん――ぷはっ・・・―――どうしてさ?
ほんとの事言われたら、もっと感じちゃうから?
でも、いいんだよ?もっともっと―――・・・たくさんたくさん、らくうぇるのえっちなお汁、だしちゃってもさ・・・」
そういって今度は、舌でなく指を・・・・・・何本だろう。
一本だろうか、二本だろうか?
・・・とにかく、ジュードは指を私の中へと挿しいれてぐちゅぐちゅと掻き回し。
「は、ンっ・・・・!だ、だからっ・・・・!!
やっ・・・、そん、な・・・っ・・・ゆび・・・なか、かきまわす、な・・・・・・っ――――!?」
そして舌先で、私の一番敏感で、最も感じやすい部分を刺激してくる。
彼に言われたからではないが、彼の言葉を聞き入れたかのように私の膣はますます淫らに濡れていく。
にちゅ、にゅち、きちゅっ
「は、んあ、っ、あああぁあ・・・・!・・・・は、ぁ、はぁ・・・だめ、―――だめだっ、・・・たら・・・―――・・・・!
そこ・・・、そんな、しげき・・・っ・・・されたら――――――・・・・!」
「ん、は―――――ねぇ・・・・・これ、きもちいい―――――――――・・?いつもみたいに、おかしくなりそぉ・・・・?」
「あっ・・・、はっ・・・・ん、ん、おかしく・・・・おか、ひく・・・・ひぁ、あううううううううう―――!」
声を押し殺すことも忘れ、ただただ快楽に身体を震わせる。
見れば、ジュードの顔は私の愛液でびちょびちょになっていた。
しかし彼はそんなことなど全く意に介せずに一心に私を吸い上げ、舐めあげ、掻き回す。
「ん、は、ん・・・・・・!ジュード・・・あ・・・っ・・・わた、し、わたし、また・・・・――――!!
あ・・・・んあ、っ・・・・・・・・あ、ふぁ、ああぁあああ―――――っ!!」
―――― 一際大きい嬌声。
ぶうぶると小刻みに震える私の身体。
強張っていた身体から緊張が途切れ、力が抜けて。
くたり、と後ろで支えていたユウリィへと私は寄りかかった。
「はーっ、はぁー・・・っ、ふ、う、ぅん・・・・・・・・・ん・・・・・・・はっ・・・・」
「わ――――――・・・。すっごく、ぬれちゃいましたね、ラクウェルさんのあそこ・・・。
・・・・あ、あのぅ。・・・ジュード。
でも別に、ここまでやらなくて良かったんじゃないでしょうか・・・・・・?」
そうだ。
確か、痛みを和らげる為にと、私の秘所を濡らすのが目的だったと思うのだが。
・・・・・それならば別に、私が達してしまうほどやらなくても良かったのでは。
「・・・あ、そっか。ん、べつに最後までしなくてもしなくても良かったんだっけ・・・。
・・・ごめん。ラクウェル。
ちょっと、やりすぎちゃったみたいだね。」
「あ――――――――――――ぅ」
顔に纏わり付いた私の愛液を指で拭い、舐め取りながら言うジュード。
・・・・・・いや。見事なまでに謝罪の意思など伝わってこないぞ。
けれど、私が、というより、私の身体が欲しているのは謝罪の言葉などではなくて――――――。
「・・・それじゃあ、気を取り直して・・・。
もう準備のほうは大丈夫ですようね・・・・。お注射、しちゃいましょうか。」
「ん・・・・・・、それじゃ、始めるよ、ラクウェル―――――」
「―――――や―――だ、・・・だめ―――まだ、いれな――――――――――」
また、そんなことを口にする。
だって・・・・・・こんな、意識の定まらぬ状態で挿入などされたら気がどうにかなってしまう。
しかし。
弱々しい制止の声は彼に聞き入れられることはなく。
普段よりはやんわりとした強さで、ジュードは私の中へと進入してきた。
「っ――――――!・・・ぁ、はあ、は――――――――――――」
狭い狭い私の中を、ゆっくりと押し広げ、猛り狂った性器を埋没させてくるジュード。
異物の進入に私の身体が再び強張る。
「――――――っあ、ア、あっ、あ゛、あうううっ―――――!!」
「・・・・・―――――っ、く、ぅ、・・・・き、つ―――――」
ジュードの顔が苦悶で歪む。
よほど私の中が窮屈とみえる。
「っ・・・・!あ、くう、う・・・・・・・!!」
けれどそれは、苦しいのは私とて同じだ。
それに―――――。
彼と繋がっている。
その感覚だけで、私はいっぱいいっぱいだというのに――――――。
「は・・・・、あ、あうぅ・・・んっ、もっと、ゆっくり・・・・・
っ!!ゆ、ユウリィ・・・・やめっ・・・ちく・・・―――びっ、さわらな―――」
今度はそこにユウリィが介入してくる。
「ん・・・・小さいから、その分感度が高くなってるんでしょうか。
あん・・・・・・・・っもう。
とっかかりが無いから、すぐに服がずり落ちてきちゃいますね。」
上をユウリィに弄られ、下はジュードに犯されつづける。
もはや痛みなどなく、快楽を伴うだけ――
・・・いや、それと羞恥もか――となっていた彼との接合は身体が縮んでまっていることで
まるで彼と初めて繋がったときのような痛みを引き起こしていた。
別に――その・・・処女に戻ったわけではないのだが
やっぱり彼の太くて大きな肉棒を受け入れるには今の私の身体では負担が大きすぎる。
「ん―――、は、ラク、ウェル―――、だい、じょぶ―――?」
「――ぶ、じゃ、ないっ・・・!!っ・・・・ぬ、いて、―――
ん・・・はぁっ、はー、はっ、こんな、壊れ、て――ん、こわれて、しま・・・・う・・・!
「で――、も、――そういうけど、さ・・・ラクウェルのあそこ、
すごく、ぎちぎちって僕のこと、締め付けてっ・・・きて、るよ――?
これって、きもち・・・いいから、だよね――?」
「―――――――――――――ッ!!」
ジュ―ドの言う通りだった。
抜いて、ほしいのに――――。
痛くて。
痛くて、痛くて、苦しいのに。
私の子宮はジュードのものを圧迫して逃がそうとしない。
「くす――――。ラクウェルさんの下のお口、
ジュードのを凄く美味しそうに咥えこんでますね。
そんなにジュードのミルクが欲しいんですか?」
耳たぶを舐めながら、小声で私に囁いてくるユウリィ。
そんな・・・。
そんなことは―――――。
「ちっ・・・・が、こん、な――、違う、ちがっ・・・・う!
こんな・・・私の意思じゃ、ないっ・・・・―――――!!」
「ええ、わかってます。・・・そうですよねぇ。ラクウェルさんの、この―――」
ユウリィの細い指が体をなぞってゆき――――
「ひぅうっ・・・!?」
再び、きゅ・・・と小さな膨らみの先端にある突起をつまむ。
「――えっちなからだが自然に反応しちゃってるんですよねぇ?
ジュードのみるくがほしい、ほしいって・・・。
まったくもう・・・。小さくなってても相変わらずやらしいんですねぇ・・・ラクウェルさんは」
クスクスというユウリィの笑い声。
・・・うう。・・・例の如く意地悪な性格になっている。
―――――けれど、私は確かに感じ始めている。
彼に。
彼女に。
この子悪魔たちに、貫かれ、弄ばれることに悦びを感じている。
―――認めたくないが、私はジュードに、ユウリィに無理やりに、意地悪にされることで一層の快楽を覚えている。
彼らもそれを理解しているから執拗に私の事を苛めてくる。
しかし、心の奥ではそれを望んでいるとはいえ恥ずかしいことをしたり、要求してくるのはもう少し控えて欲しい。
悔しいけど、二人の言うとおりなのだ。
彼らのせいで。
特にジュードのせいで。
どうしようもなく淫らで、いやらしくて、彼に対して酷く貪欲で。
虐められるほどに昂奮してしまう、そんな、彼から見て弱点だらけの体になってしまった。
「あっ、ん・・・・あ、あっ!ひくッ――あ゛、あうっ・・・・っジュード、じゅー、どぉっ・・・!わたし、わたし、もう、もぉっ・・・!」
嬌声をあげながらジュードにしがみつく私。
彼はそれに応えるように私に口付けをしてくる。
ちゅる、ちゅぱ、くちゅ、ず、ずちゅ。
舌を絡ませる音と、互いの性器が擦れあう音。
荒々しい吐息と、ぐちゅぐちゅと湿ったいやらしい音があたりに響く。
「ん、――――ぼく、も・・・そろそろ、でちゃいそう――――んく
は・・・はっ、ねっ・・・ぇ、ラク、ウェル、い、・・・っしょに、いっしょに、いこ――――?」
「はっ――はぁ――――――、んむ、いきたい、わたしも、じゅーどと、いっしょに、いきた―――
あっ、あ、んあ、あ、ぁあ、あっ、あ、ああああああ――――・・・・!!」
最早恥も外聞も、当初の目的すらも無く。
ただひたすらに私はジュードを求める。
「んはっ・・・はーっ・・・はー・・・じゅーどっ・・・、じゅーどっ・・・、じゅーどぉ・・・っ!!」
半ば朦朧とした意識で彼の名前を叫ぶ。
彼は私を突き上げ、
私は彼を締め付ける。
その勢いは、強さは、どんどん大きくなっていって。
視界が白く。
身体は紅く。
深く、色濃く染まっていく。
一際強い、腰の突き上げ。
そこで。
とうとう、二人に限界が来た。
「ん、は、・・・・くうぅっ――――!!」
「あっ、はっ、あ、んっ、んあああああああああ・・・・――――!!」
私の中の。
一番奥に。
ジュードの熱く迸る衝動が、どくどくと吐き出されていく。
「ふぁ―――ぁ、っぁ……、っ……」
ぶるぶると痙攣を繰り返しながら、私はそれを受け止める。
あ・・・・。・・・・・・・・・でてる・・・・・・―――。
じゅーどの、あついのが・・・いっぱい、わたしのなかで――――――。
顔も、身体の中もあつい。
頭がぼぉっとして、意識を失いそうになる。
やはりあの体で二人の責めをに耐えるのは少々きつすぎたようだ。
涙で視界が霞み、脱力感が体を支配する。
深いまどろみが私を襲う。
しかし半ば闇に落ちかけていた意識は、ジュードとユウリィの声によって呼び戻された。
「ラクウェルさん――――。体が――――――――。
「――――ラクウェル。なんか―――――からだ、元に戻ってるよ。」
「な、に――――――。」
言われて自分の体を観察してみる。
・・・・・・・・信じられない。
本当にジュードと交わって、彼の・・・・を受け入れただけで、
私の体は普段通りの状態に戻っていた。
たまたま料理の効果が失われたのか、
あるいは本当に性交による治療が功を成したのか。
元に戻った理由は判らないが、いくら何でも都合が良すぎではないだろうか。
まあ治ったのならそれで―――
「良かったあ・・・・・・―――」
いいかと思っていると、唐突にジュードが膨らみを取り戻した私の胸にポフっと顔を埋めてきた。
「お、おい、ジュード、何をっ・・・・」
「良かった・・・ラクウェル・・・元に戻ってくれて。」
「・・・・・・・・・・・・・・・ジュード。」
どうやら――彼は本気で安堵を覚えているらしい。
(あまり心配そうに見えなかった気もしたが・・・)そこまで心配してくれていたのか、彼は。
「・・・・・・現金な奴め。先程は小さくて可愛いだのなんだの言っていたくせに・・・。」
本当は嬉しいくせに悪態をつく。
こんな風に抱きつかれるのは確かに悪い気はしないけれども――
「――ちっちゃいラクウェルのふにふにした感じも好きだけど、
大きいラクウェルのぽにゃぽにゃした感じも僕は好きだもん。
柔らかくて、あったかくて、ふかふかしてて―――。」
・・・・ぽ、ぽにゃぽにゃ。
「―――――――――っ」
―――ジュ―ドの言う事する事は、一々嬉しくて恥ずかしくて
私の思考をめちゃくちゃにしてしまう。
「〜〜〜〜〜〜〜・・・・・っこのエロガキ!!
どうしてそういう恥ずかしい表現ばかりするのだ!!お前は!!」
ジュードがぐりぐりぐりと私の胸に頭を擦り付けてくる度に
むにゅむにゅむにゅと私の乳房の形状が変化する。
だから―――――――
少しはこう、躊躇いとかそういうものを・・・・・・
と、そこで何かが自分の下腹部に当たっていることに気が付いた。
目にせずとも、それが何か、そしてそれがどんな状態なのか感覚で判る。
彼のモノは衰えてはおらず、依然屹立を保っている。
「ラクウェル、どうしたの?」
「―――ジュード。その、当たってる。」
――――嫌な、予感がする。
彼は一度達した程度では、余韻に浸るなど到底許してはくれない。
自分の、えぇと・・・恋人ながらなんて男の子だと思うが・・・
一度目の挿入はジュ―ドにとって愛撫――前戯のようなものだ。
ならば、次の流れは当然―――
「あ、ごめん・・・。・・・うんとね。実はさ―――まだお腹いっぱいじゃないんだ、僕・・・・。」
いつものお約束だった。
「―――そ、それは確かに、今日はまだ一回しか出していないが
夕べあれだけしたのだから、お前とて疲れているだろう!?
いくらお前が絶倫でも、いい加減限界があるだろうに!!」
「さっき言ったでしょ?
なんかあの料理食べてからモヤモヤが収まらなくなってきたって・・・。
・・・それにさ。僕、ラクウェルが相手だったら、何回だっておかわりできちゃうよ。」
そういって火照った顔をして語りかけてくるジュード。
「〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・だ、駄目だ!
もう目的は果たしたのだからする意味がないだろう!!大体、これ以上はこちらの体がもたん・・・!!」
「・・・ちょっと、待ってください。
ラクウェルさんのせいでジュードはえっちな気分になっちゃってるのに、放っておくんですか?
体がもたないからって見捨てるんですか?」
「っ・・・・・・・・・。」
突き刺すような彼女の視線。
状況は・・・まあ、こんなだが、彼女の言いたいことは解る。
己の保身の為にジュードのこと見捨てるのか、と。
「――――――――――――――――――。」
『それが、僕の力でどうにもできない事だとしても、ラクウェルの為になにかしてあげたい』
―――さっきの彼の言葉を思い出す。
別に。
確かに今はそんな切迫した状況というわけではない。
けれど、彼がひどく欲情しているというのは事実であって。
なら、この身を捧げ、その欲望の捌け口になってジュードの気持ちを静める程度の事ができないで、
本当にそのような状況になった時に彼に何ができるというのだ。
いや、まあ。
そんな大げさなことか?、とは思うが・・・・・・。
「・・・・・・・・・なら、仕方ないですね。
私がラクウェルさんの代わりにジュードとしますからそこで見てて下さい。」
「っ――――――・・・・・・・・・そ、それも駄目だ・・・!!だって・・・・・・・・・!!」
だって。
私が今日ジュードの気を引きたい、彼に何かしたいなんて思ったのは。
夕べの行為の際ジュードが、私よりユウリィの中で達した回数のほうが多かったからなのだ。
・・・我のことながら、なんと強欲でなんと贅沢な理由だろう。
けれど、そのような些細な事でも私はそれを不平に思うし、不安に感じる。
元々ジュードが好きだったのはユウリィだけだったのだから。
だけど、今は。
このような関係になったからには。
彼女以上とは言わないまでも、彼女と全く同じだけの感情を私にも持ってほしいから。
「――――だって・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、もう!
そのように言われて傍観などできるか!!わ、私が責任を取る!!」
・・・結局、こうなるのか。
「――まったくもう。素直じゃないんですから。」
そう言ってユウリィはくすり、と微笑んだ。
くそ――――なにやら巧く言いくるめられた気がする。
私の言葉を聞いて
ラクウェル、もういっかいしてくれるの?と、
子犬のような目を向けてくるジュード。
――――――この場合子犬は子犬でも発情した子犬だが。
ああ、解っているのだけれど。その愛くるしさの下に隠された彼の本性を。
「――――――まったく。仕方のない奴だな・・・。」
本当に一回だけで済むのか、かなり怪しいが。
「ただし。・・・その、お前は横になっていろ。・・・わ、私がお前に、乗りかかってするから・・・。
お前に好き勝手やらせていては、身体がいくらあっても足りん・・・っ。」
そういって、私はジュードを仰向けに倒して、その小さな体の上に自身を這わせた。
・・・・・・・
「んっ、は、んん――――――――――――」
淫裂が、完全にジュードの肉棒を包み込む。
反り返った肉棒が私の下腹部を圧迫してくる。
腰を動かすとじゅくじゅく、と中で擦れあう音がした。
多分――――――先程のものも混ざっているであろう。
接合部から漏れてくるのは、どちらのものとも知れぬ愛液。
ユウリィはジュードの上で四つん這いになりながら、その繋がっている部分に舌を這わせる
スカートがめくれ、形のよい、弾力のありそうなお尻が、ぷりんぷりん、と揺れている。
「ん―――・・・凄い、です。どんどん、どんどん、ラクウェルさんのあそこから、ジュードのと
ラクウェルさんのが溢れてきてます・・・・。」
「――――――――――――っは、あ、こら、余計な、ことを、するな・・・!!
ん、は、んっっ・・・・!私がすると、言ったのだから、おまえは、横で・・・・・!!」
「なに、言ってるんですかぁ・・・ん、は―――わたしだけ、見ていろなんて、
意地悪なこと、いわないで下さ―――ひあっ!」
私に対し不平を洩らすユウリィの言葉が途中で途切れる。
見れば、ジュードが彼女の秘所になにやらちょっかいを出していた。
「―――なぁんだ。ユウリィのあそこだって、びちょびちょになってるじゃないか。」
「やん・・・・・・
―――だ、駄目ですよぉ・・・ジュードぉ・・・そんな、ひゃっ・・・舐めないで、・・・っ」
「何、言ってるのさ・・・。僕の目の前で、ん―――ユウリィがお尻を、こんなに揺らしてるから悪いんじゃないか。」
「っだ、駄目ぇっ・・・・・・・なか、かきまわ、さないで・・・くださいっ!!」
ジュードの責めにユウリィの腰が高く浮き上がる。
彼女も大概ジュードのすることには弱い。
・・・・・・―――――――――む。
なにか、こう、むっときた。
――――こら。今お前としているのは私なのだぞ。
嫉妬のような感情が込み上げて来る。
けれどそのような事ジュードに言える筈も無く・・・・・・
代わりに、そんな拗ねたような言葉を私は行動で表した。
「はっ・・・・く―――ん、うぅン――――――っあ、あはっ、んぅうううっ・・・・・!」
「ん――――――――――っ?!――――――・・・ちょ、らくうぇる、腰、うごき、
はげし・・・っ――――――はげしすぎる、よぅっ・・・・――――」
快楽を求め、腰を動かす。
一層強く、ジュードへと体を預ける。
それに応えるように、彼の生殖器は私の中で益々膨れ上がっていく。
「はあ、ん、あは、んっ・・・!・・・・・・ッん、ふぁ、・・・・ジュードのっ・・・・ジュードの
わたしのなかで、もっと、おおきく、なって・・・・・・!!」
「あ、は、ぁう――――――ら、らくうぇる、ちょ、まって、もうちょっと、ゆっくり――――――――――――」
そんな、普段私が言うような台詞を、そのまま返してくるジュード。
・・・・・・私だって、こんな激しい動きは正直きつい。
けれど。
彼にもっともっと私を見て欲しかったから。
もっともっと、私を感じて欲しかったから。
自身の許容量をこえ、意識が飛びそうになりながらも私は
ジュードのモノをぎちり、とくわえこんだまま上へ、下へと、懸命に腰を動かす。
「ね、らくうぇる―――はっ・・・ぅ、ね、ちょ、ちょっと、どうし、たのさ・・・!?
きもち、・・・いけど、ん、は・・・・っ・・・こんな・・・そんな、はげしくされたら、ぼく―――・・・・!」
「う、っ・・・・るさい・・・!この、八方美人・・・!!・・・しき、欲魔・・・・っ!!
ん、く・・・・・・はっ、は、・・・!!っああもう・・・!!ばかっ・・・、ばか・・・、ばかぁ・・・・!!」
罵りながらも腰を振ることは止めない。
こんな快感を中断することなんてできない。
「ん、はぁ・・・・・は、ぅぅ、――――ほ、らぁ・・・・じゅーどが、わたしにあんなことするから
らくうぇるさん、やきもち、妬いちゃったじゃ、ないですかぁ・・・・」
ユウリィもジュードに秘所を責められながら
ぴちゃぴちゃと私たち二人の――主にジュードの――性器に舌を這わせる。
「はっ――――、ん、くぅぅ・・・・・・・。ぁ・・・・ほ、んとだ。じゅーどの、らくうぇるさんのなかで、
びくんびくんって・・・・。あは―――・・・・いい、な・・・、らくうぇる、さん・・・。
わた、し、ちょっと・・・ううん・・・すっごく、うらましい・・・です」
うつろな、それでいて羨望に満ちた瞳でそんなことを呟いているユウリィ。
・・・・・・でも。
彼女には悪いけれど。
今だけはジュードは私のものだ。
―――頼まれたって渡してなんかやらないんだから。
「―――らくうぇる、はっ、ぁ、ぼく、こんな、・・・おかしくっ、おかしく、なるよぅ・・・!!」
「は、あんっ!……んぁ……は、っ、あっっ、っあ……じゅーどっ・・・、
わたし、もう・・・っ・・・・・また・・・・・・・・・・―――――――――!!」
「は、ぅ・・・・ん、あ・・・・っ!うん、うん・・・!ぼ、くも・・・っ、ぼくも、また、いっちゃ、うよぉ・・・・!!」
「―――っ・・・・なら・・・また、また私のなかに、いっぱい、ジュードの、あついの
い、っぱい・・・注い・・・・・で・・・・っ!!」
ジュードに対して私はなにやら大声で物凄く恥ずかしい事を口走っている。
絶対あとで自己嫌悪に陥るのだろうな、と他人事のように思いつつ。
「らくうぇる・・・、ゆうりぃ・・・っぼく、も、いっちゃ、あ、ふぁ、あうう―――っ・・・・!!」
「ああっ、く、ぁぅっ―――じゅーど、……なかに、おく、にぃ・・・・ふぁ、 あ、んあっ、あ、ああっ、
あああああああああ!!!!!!」
下から駆け上ってくるような、こちらの方から吸い上げているような、どちらともとれぬ感覚。
ぶるぶると震えながら。
私は今日何回目になるかも忘れた絶頂を味わいながら、
ジュードから吐き出された白濁液を身体の奥深くで受け止めた。
「は――――――・・・・ん、ふぅ―――っ・・・・」
「・・・・・・ん―――っ・・・・は――、はぁ・・・はあ。」
「――――――――――――――――――っ」
―――少々無理をしすぎた。
これは、ちょっと、もう・・・さすがに、体力が。
ぬぷん、と音をたててジュートとの繋がりを絶つ。
彼から腰を引き抜くと、私の秘所から受け止め切れなかった彼の精液が
ごぷ、と溢れてきた。
それを見てかぁ、と顔が熱くなる。
と、そこへユウリィが
「あ・・・・・。じゅーどと、らくうぇるさんの、えっちな、おしるだぁ・・・・・。」
と呟いて、私の性器に吸い付いてきた。
「――――――っ・・・・ふ、ぁ!?ばっ、ユウリィ、おまえ、なにを――――――っ・・・・!!」
いや。
いやいやいや。
もう本当に、限界なんだが。
「は、ン―――らくうぇるさんの、いやらしい液と、じゅーどの、こくてぇ、ねばねばしたえっちな液が
まざりあってて、ん、は―――・・・・すごぉく、おいひいれすよぉ・・・・・。」
「あ、ふぁ、あ、はう、ぅん、ふぁああ―――・・・・・・!」
じゅるじゅる音をたてながら私の性器を吸いたててくるユウリィ。
やがて、彼女は私の中に残っていた愛液をほとんど吸い上げてしまった。
ねっとりとした目つきでこちらを見つめてくる。
「ん、ぷはぁっっ・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、と。
それじゃあすっきりしたところでぇ―――――・・・・・・。もういっかいしちゃいましょうかぁ、らくうぇるさん?」
まずい、な・・・・これは。
完全にユウリィの中で何かのスイッチが入ってしまっている。
あ、あうぅう・・・・。
だから、もう・・・本当に・・・・・。
・・・・・ジュードのモノを一瞥する。
やはり、というかなんというか、それは未だにいきり立っている。
(こいつも・・・・・・相変わらずか・・・・・・まったく、本当に――――――――――)
・・・・・・・結局。
一回だけでは終わらなくて私はまた二人と、その―――・・・・・・。
色々とする羽目になってしまった。
・・・・・・
――――――行為が終わり、ぶつぶつと文句を洩らしながら服を着なおす。
「まったく―――私にも非があったとはいえ、散々な目にあった。」
「あ、あはは。ごめんね。・・・・・でも。」
「―――・・・・・?」
「今日は、ありがと。
ちょっとしか食べられなかったけど――――美味しかったよ。
ラクウェル。」
「・・・・・・・・・・っ」
無論彼は料理の事を言っているのだろうけれど―――
確かにいつもより回数が少なかったとはいえ結局は数回に渡ってえっちしてしまったし。
「―――馬鹿・・・!先程私を食べるだのなんだの言った後では
何の事を言っているのか判らぬではないか・・・っ。」
頬を赤らめながら顔を背ける。
本当に散々な目にあったけれど。
ジュードとの年齢の差を少なからず意識している私にとって、
彼と同じくらいの年に戻りたいという願望は確かにあった。
だから彼に相応しいくらいの年頃の少女の姿になれた事は
私にとってはそんなに――少なくとももう一回くらいならば味わってみたいと思う程度には――
悪い事ではなかったのだ。
それに、嬉しかった。
今日の私の行動はユウリィに妬いていたからというのもあったが、
やっぱり私は日頃から常に思っていたのだ。
彼に何かしてあげたい、と。
彼は・・・・・・ジュードは、馬鹿が付くほど正直で、呆れるほどに気持ちに素直で
飾ったことなんてなにも言えないある意味不器用な男の子。
でも、だからこそ彼の言葉は心からのもので。
相手をさせられるこちらは振り回されてばかりだけれど、私は彼のそんな純粋なところがとてもとても好きなんだ。
私はこんな性格だから。
無愛想で欲張りで心配性だから。
自分は恥ずかしくて出来ないくせに、相手からは好きだってことを口にして、体で示してもらわないと不安になってしまう。
彼は・・・、ジュードはそれをしてくれる。
好きだといって抱きしめてくれる。
好きだといってキスしてくれる。
嬉しい気持ちとか、幸せな気持ちとか、照れくさい気持ちとか、恥ずかしい気持ちとか、
・・・・・・・・・・・あと・・・その・・・快感とか。
彼からはそんな幸福ばかり貰っているから。
一人で生きてきた私が久しく忘れていたものを与えてくれたから。
だから、私は何か少しでもジュードに返すものが欲しかったんだ。
だから、彼が『おいしい』といってくれたことが嬉しかったんだ。
・・・・・・結局は今日も残念ながらあれな結果に終わったけれど。
焦らないで。
恥ずかしいけれど。
頑張って。
照れくさいけれど。
これからも。
もっともっと時間をかけて、ジュードにその感謝の気持ちを、
この好きだという気持ちをいっぱいいっぱい伝えていこう。
それは拙いものだとは思うけど、こんな自分を好きだと言う彼に対して出来る
私の精一杯の愛情表現なんだから――――――。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ちなみにアルノーだが。
休息場所から街に向かってしばらく歩いたところに(料理はもう鍋ごと置いてきた。)、ぐったりとした様子で倒れていた。
聞けば、行為をする際邪魔が入らぬようにとユウリィが普段使う転移の魔術、
それの応用を用いてアルノーをこの辺りに飛ばしたのだそうだ。
アルノーは自分の体重ほどはあろうかという荷物を括り付けられており
(しかもご丁寧に結び目が自分では解けぬ位置にあり)
結局私達がいた場所に戻ることができずに力尽きてしまったらしい。
彼女がここまで怒った理由というのは色々あるようだ。
『すけべぇ本』の一件の際、戦闘中敵に見とれてまったく何もしなかったというのに
そのくせ貰うものはちゃっかり貰ってきていたりしたこと。
あまつさえそれをジュードに見せようとしていたこと。
・・・・・・何より一番の理由は、先程出かけた際、すけべぇ本の内容と比較されて子ども扱いされたことなんだと。
うむ。
やはりあいつは馬鹿だ。
この面子で怒らせたら一番怖い人物がわかっていなかったと見える。
・・・いや、私もしばしば彼女を怒らせてはいるから人のことは言えぬか。
まあ・・・・・私の場合彼女を怒らせた際に待っているのは・・・・・・その、気持ちいいことなのだけれど・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・はぁ。良かった。
ラクウェルが、ちゃんと元に戻ってくれて。
そりゃあ、小さなラクウェルだって可愛いかったけどさ。
でも・・・。
確かにあれだってラクウェルだし、同じくらい愛しく思えたけど、
見た目が全然違うから、なんか少し「うわき」してるような気分になっちゃったし・・・。
街へと向かう道の途中ぼんやりとそんなことを考えてたら、ラクウェルが僕に話しかけてきた。
「・・・・・ジュード。・・・今日・・・も、その、失敗に終わってしまったが・・・・・。
・・・・・・・・今度こそ。今度こそお前にちゃんとしたものを食べさせてやるからな。」
「―――――――」
もちろんラクウェルは料理の事をいってるんだろうけど―――
どこか照れくさそうに言ってくるラクウェルはやっぱり可愛くて、つい僕はからかってしまう。
「それって、今度するときは、もっと沢山ラクウェルのこと食べさせてくれるってこと?」
僕の言葉にラクウェルは
「た、たわけ!どういう思考回路をしているのだお前は!!
料理のことに決まっているだろうが・・・っ!!」
って、いつもの反応をした後、
「・・・なんにしろ、私の料理が下手なままでは、その、将来、困るだろうし。」
と、恥ずかしそうにもじもじしながら、そんな言葉を付け足してきた。
「?どうして?」
僕はその言葉の意味がよく解らなくて、思わず聞き返した。
・・・・・・何で料理が下手だと将来困るんだろ?
「――そ、そこでそれを聞き返すな、馬鹿者っ!」
僕の反応に、ラクウェルはしまった、という顔をして
「ば、馬鹿か私は・・・っ。何を言っているのだまったく・・・!・・・ああ、くそ・・・今のは大失言だ・・・!」
とか呟きながら真っ赤になっている。
うーん・・・。どうしてラクウェルがこんなに照れてるのかよくわからないけど。
「あ、ええと、ごめん。んとさ。なんかよくわからないけど、
僕はラクウェルがあんまり料理が得意じゃなくても全然困らないよ?
そういうとこも、全部全部ひっくるめて、僕はラクウェルのこと大好きなんだから。」
フォローとかそんなんじゃなくて、これは僕のほんとの気持ち。
ん・・・。僕、恥ずかしいこと言ってるかな。
なんか、すごーく顔が熱い気がする。
みればラクウェルも顔をさっきよりもっと真っ赤にさせて口をぱくぱくささせている。
・・・あ、隙あり。
僕はそう心の中で呟いて、うんと背伸びをしてラクウェルの頬っぺたにちゅ、って軽くキスをした。
・・・・・・やっぱり、もう少し大きくなりたいなあ・・・。あ、えと・・・・・・身長のことだよ?
そしたらユウリィだけじゃなくてラクウェルともいっぱいキスできるのに。
ラクウェルは僕がキスしたほうの頬をおさえてしばらくぼおってしたあと
「ば、ばかっ・・・!もう知らぬ・・・っ!勝手に言っていろ・・・!!」
って怒ってるのか照れてるのかよくわからない感じで呟いてそっぽを向いてしまった。
ぷんぷん怒って、てれてれ照れて。
そんなラクウェルの様子を見てたら、なんか僕のほうまで照れくさくなってきた。
・・・ていうか、ラクウェルちょっと馬鹿馬鹿言いすぎだよぅ。
確かにラクウェルに「ばか」って言われるのは好きだけどさ・・・。
そんなに馬鹿馬鹿って言われたら――
「ね、ラクウェル。宿に着いたらさ――――」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もっかいえっちしようね?」
「・・・・・・・・・・・・・―――――――――――っ!!!」
―――また意地悪したくなってきちゃうじゃないか。
もう。そんな風に言ってる時の自分がどんなに可愛いか全然わかってないんだから・・・。
「外だったからいつもより少なかったし、ラクウェルも物足りなかったでしょ?」
「〜〜ば、馬鹿っ!!!!!!い、いい加減しろっ!!!誰がそのように思うかっ!!!」
ラクウェルは今度こそ完全にそっぽを向いて
僕が、何度ねー、ねー、って声を掛けても
何にも返してくれなくなっちゃった。
・・・・・・ん、やっぱり顔が熱いや。
顔紅いのラクウェルにもばれちゃったかな・・・・。
ま、いいや。
僕もラクウェルの照れ顔見れたし。
――――何度見ても可愛いな、ラクウェルの照れてる顔って。
顔をほころばせながらそんなことを思っていたら、いつの間にかそっぽを向くのをやめたラクウェルが
「っ・・・・・・何をにやついている馬鹿・・・!」
って言って、僕の頭をぺちんと叩いてきた。
・・・・・・・・・
夜。
宿に着いてからも、なんか昼の時の体のモヤモヤが抜け切れなくて、
(ちょっと夜の散歩にでも行こうかな・・・・・)
と思ってドアを開けたら―――
―――部屋の外でラクウェルがびっくりした顔で固まっていた。
えっと・・・。何やってるんだろ。
僕の部屋の前で。
「えと、なんか、ようだった?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ラクウェルは答えない。
「・・・・・・ねえ、ラクウェル。なにかぼくに用事でも――――――」
右腕をクイクイと引っ張りながらもう一度尋ねてみる。
すると今度はラクウェルは
「っ・・・・昼間、宿についたら・・・・しようと言っていたろうっ・・・!!
だ、だからこうやってお前の部屋にわざわざ出向いてやったのではないか・・・っ」
って真っ赤になりながら僕の質問に答えてきた。
あ・・・・・・。
てっきりしないのかなって思ってた。
・・・まあ、やるっていうのならさ。
僕のほうならいつだって準備おっけーだし。
―――なんかもう、はやくも興奮してきちゃったし。
「―――――なんだ。やっぱり、したかったんだ。」
「ちがっ・・・!!だ、だから、さっきも言ったように、お前がしたいと言ったからでだな・・・!!
・・・というか、どうせお前のことだから、まだあの程度では足りなかったのだろう?
まぁそれも少なからず私に責任があるわけだし・・・。だから――――。」
「・・・ん。実は・・・今もちょっと寝付けなくてさ。・・・そっか。僕のこと気にしてくれたんだ・・・・・。
ありがとね・・・。・・・すき・・・・・・・・うん―――あいしてる、ラクウェル。」
「・・・・こ、こらっ・・・・・・!!抱きつくのは部屋の中に入ってからにしないか!!誰かに見られたらどうするのだ!!
というか、そういうことを恥ずかしげも無く唐突に口にするな!!・・・・・・・・・・・いや・・・私も、その、何だ。お前のこと、す、好き―――・・・」
「え?なにかいった?」
「――――――な、何でもない!!・・・それより、その・・・早く」部屋の中に・・・
「あ。うん、そだね。ぼくのベッドにいこっか。」
「―――っそーいうはっきりした表現は止せ!!馬鹿!!」
・・・・そんな会話をしながら、ラクウェルを部屋の中に招き入れた。
結局こんな感じで僕たちは二人きりでお昼の続きをすることになったんだけど、
まぁ、それはまた別の話ってことで。