「もう…ジュードったらこんなに部屋を散らかして……」  
呆れ顔でジュードの部屋を見回すユウリィ。  
脱ぎ散らかした服から原型が分からないほど変わり果てた物体まで、様々な物が部屋に散らばっている。  
ジュードはそんなに無精者じゃ無い筈なのに、塵も積もれば山となるとはよく言ったものだ。  
「はぁ……よしッ!頑張って綺麗に片付けますかッ!!」  
ユウリィは萎えそうになる心に活を入れると、張り切って部屋の掃除をし始めた。  
 
1時間後、部屋は元の姿が思い浮かばない程綺麗になっていた。  
「ふぅ…やっとここまで片付いた……あとはベッドの下と机を綺麗にすればあらかたおしまいね…」  
そう呟くと、ユウリィは未だ手付かずのベッドの下に目をやる。  
ベッドの下もまた、様々なものが埃をかぶっていた。  
しかしその中に、周りの物と比べて明らかに埃のかぶっていないものがあるのに気付く。  
「あら、これ何かしら………ッ!!!」  
取り出した物を確認したユウリィは固まってしまった。  
その本の表紙には艶かしい女性の水着姿が印刷されている。俗に言うスケベ本だった。  
 
「ジュードったら、こんなものを………」  
こんなものがあるのは知っていたし、10代の男の子が持っていても何等おかしくないシロモノである事は頭では理解しているつもりだった。  
しかし、現実を、自分の好きな男の子がこんなものを持っていたという現実を目の当たりにして、  
何だかんだでうぶなユウリィはショックを受けずにはいられなかった。  
とりあえず、半ば放心状態になりながらも、ユウリィはその本を開いて読み進めてみる。  
「うわ、大きいおっぱい……何よ、私だって……」  
等とぼやいている内に、ページの一部が不自然にごわごわしているのに気付く。  
「?これって何だろ…………あ…」  
それがジュードの体液がかかった跡だと気付くのにさして時間はかからなかった。  
「ちょっと何よ…こんなので……ジュードが……もうッ!!ジュードのバカッ!!!」  
ユウリィは顔を真っ赤にして本を壁に叩きつけた。  
静かな部屋に、大きな音が響き渡る。だが、ユウリィはその音すら耳に入らないほど完全に放心していた。  
 
しばらくそんな状態になっていたユウリィだったが、その内のっそりと立ち上がると静かに部屋の掃除の続きを始めた。  
ただ無心に掃除をし続け、ベッドの下も机の上もあっという間に綺麗になっていく。  
こうして部屋が片付くと、ユウリィはくだんの本を拾い上げ、机の上に置いてふらふらと部屋を出て行った。  
 
 
「ただいまッ、と………ん?」  
ジュードが部屋に戻ると何か違和感があった。  
その違和感の原因は何なのか、ジュードは程なく知る事となる。  
「……あッ……」  
整然と片付けられた机の上にあからさまな異物が置かれている。  
密かに手に入れた巨乳モノのスケベ本である。  
艶かしい表紙は周りの空気から明らかに浮いていた。  
「ちょっと、何でこれ…え?」  
思わぬ事態に狼狽するジュード。  
「これ確かベッドの下に……えぇッ?」  
「おかえりなさいジュード」  
「わぁッ!!!」  
気がつくと真後ろにユウリィが立っている。  
不意をつかれたジュードは飛び上がった挙句、着地に失敗してもんどりうって転がった。  
「ジュードの部屋汚れてたから片付けておきましたよ」  
「そ、そうなの、そ、それはありがとう、うれしいなぁ、あはは…」  
本を必死に後に隠しながら、裏返った声で礼を言う。  
「ちゃんと部屋を綺麗にしないとダメじゃないですか。ジュードの部屋とても汚かったですよ」  
「あ、ご、ごめん、今度からちゃんと片付けるから…」  
(……という事はこの本はユウリィに見つかったって事?  
机の上にこの本を置いたのはユウリィって事かぁ…あっちゃー……)  
「じゃあまた晩御飯でね」  
「うん、ありがとうね」  
動揺を隠しながら何とかお礼を言う。  
ジュードは激しく動揺しながらも、スケベ本について触れられなかった事には内心ホッとしていた。  
が、その安堵はすぐに裏切られる事となる。ユウリィはドアのノブに手をかけながら言った。  
「あ、そうだジュード、そういうのがいいんなら……私に言ってくれていいんですよ?」  
「!@☆○×◎?★」  
予期せぬ言葉にジュードは言葉を失う。その一方でユウリィは、顔を真っ赤にして走り去ってしまった。  
「えっと…私に言ってくれって……えぇッ!?!?」  
 
(わぁぁぁ言っちゃった言っちゃった!!!どうしようどうしようどうしよう……)  
ユウリィはテンパりながら小道を駆けていく。  
やがて家に帰り着くと、ベッドに大の字になって寝転がった。  
(あんな事言っちゃうなんて私どうかしてる……)  
ようやく落ち着いてきた頭で、彼女はさっきの行動を省みた。  
正直言って、嘘を言ったつもりは無い。あれは紛れも無く本心だ。  
どこの馬の骨とも知れない女の写真で快楽を得る位なら、ジュードの事が大好きな私が彼に快楽を与えてあげた方がよっぽどかいい、  
と言うか私の事をさしおいてそんな写真であんな事するなんてッ、  
そんな事を考えていた。  
しかし、それを行動に移すとなると話は違う。  
ユウリィの心はそんな思いやジュードへの憤りではなく、  
あんな不潔なモノを前にして、自分は果たしてジュードの望む事をしてあげられるんだろうか、  
ジュードが気持ちよくても私はどうなんだろうか、  
等といった、未知の行為への不安で埋め尽くされていた。  
それを考えると、やっぱり無謀極まりない、という結論しか導き出されなかった。  
「あーあ、私一体どうしたらいいんだろう……」  
 
「ジュード」  
「わぁッ!! あ、ユウリィ、えっと、何?」  
「ごはん、できましたよ?」  
「あぁ、そう、ありがとう」  
2人とも昼の出来事を引きずっているのか、どことなく不自然な、ぎこちない会話が続く。  
「うん、おいしいよユウリィ。流石はユウリィだね」  
いつもは心から嬉しそうに言うのに、誰かに言わされているようなそんな口調で語りかけるジュード。  
「そうですか?嬉しい」  
それに答えるユウリィもまた同様だった。  
「……やっぱりユウリィの料理は世界一だよ!こんなおいしい料理が食べられるなんて僕は幸せだなぁははは…」  
「そう言ってくれるととても嬉しいです……」  
文面だけ見ればアツアツの、しかしその実は2人ともセリフを棒読みしているような、そんな喜劇のような会話が続いた。  
「……ごちそうさま」  
「あ、ユウリィ…」  
そんないたたまれない空気から最初に脱したのはユウリィだった。  
食べかけで箸を置くと、逃げるように部屋から出て行く。  
そんなユウリィをジュードは呆然と見つめていた。  
 
ユウリィは、逃げるように静かな川岸にやってきた。  
あのたまらなく閉塞的な空気から逃げたい、という一心からだ。  
「…どうしよう、このままじゃもうジュードと普通に話せないよぉ……」  
そう呟くとさめざめと泣き始めた。  
今の自分にあの話を切り出す度胸は無い。ジュードとそんな事になるのを考えた時に、  
期待よりも不安の方がどうしようもなく大きいから。  
ジュードもきっとそんな事は言い出したりしないだろう。  
なら、これからずっとこんな微妙な会話を続けていかなきゃならないんだ、2人とも忘れてしまうまで、  
そう考えるとたまらなく悲しかった。迂闊な事を言ってしまった自分がたまらなく嫌だった。  
どうしようもない状況を前に、彼女はただ泣く事しか出来なかった。  
 
 
「ユウリィーーー、どこ行ったのーーー!?」  
その頃ジュードは、部屋を出て行ったユウリィが心配になって、彼女を探してさまよっていた。  
「ユウリィ、ユウリィーーーーッ!!!    ……いないなぁ」  
がっくりと肩を落とす。  
「そもそもあんなものが見つからなければなぁ……ユウリィ怒ってるだろうなぁ」  
ジュードは、ユウリィとは違った観点で自分のヘマを悔いていた。  
(あんな物持ってる、って知ったらそりゃ怒るよなぁ、気持ち悪いとか思ってるんだろうなぁ、  
だからあんな態度とるんだろうなぁ……はぁ…)  
そう考えていた。実際その考えはほとんど間違っているのだが。  
何故ユウリィは怒っているのか、その理由をちゃんと理解していないし、  
また、決して怒りからあんな態度をとってるわけでもない、という事も彼には分からなかった。  
ユウリィが思わずこぼした本音も、ユウリィがそんな事を言う筈が無い、という思い込みからか、  
結局は自分に対しての嫌味、蔑みとしてしかとれず、  
彼女はその為に苦しみ続けているという事を、彼は全然分かっていない。  
とにかく、ユウリィに謝りたい、許してもらいたい、こんなぎこちない関係はもう沢山だ、  
そんな気持ちから彼女を探し続けていた。  
「早く謝らないと…………ユウリィーーーーーーッ!!!!」  
 
「ユウリィーー……」  
どこからともなく自分を探す声が聞こえてくる。  
その声は次第に大きくなっていく。  
「ジュードだ…」  
(どうしよう、ジュードと会ったらまたあんな感じで話しなくちゃいけない、どこかへ逃げないと…)  
等と考えおろおろするユウリィだったが、それを行動に移す前にジュードはユウリィの姿を視界に捉えた。  
「あ、ユウリィッ!!おーいッ!!!」  
(あぁ、バレちゃった、こっちに向かってくるよどうしようどうしようどうしようどうし  
「はぁ…はぁ…やっと見つかった……探したんだよ……」  
「ぁ、そ、それはすみませんでした」  
「はぁ……あのさ、ユウリィに言いたい事があってさ、それで探してたんだ…はぁ…」  
「そ、そうなんですか。で、何ですか?」  
ジュードは既に素の口調なのに(それどころじゃないのもあるが)、相変わらずぎこちない口調で受け答えするユウリィ。  
「うん……あのね……ふぅ……ごめんッ!!!あんなもの隠し持っててッ!!!!」  
「ッ!?」  
「ほんの出来心だったんだよッ!!おつかいに行った時に見つけてさ、表紙に惹かれてつい買っちゃって、  
で、その、えっと………あの…………とにかくッ!、ユウリィは僕があんなものを持ってるなんて不潔だ、  
とか思ってるんだろッ!?だから怒ってあんな態度を僕にとるんだよねッ!?  
だから謝りたいんだッ!!!もうあんな態度は本当ごめんだよッ!!本当にごめんッ!!!」  
 
「………」  
思いがけない渾身の謝罪にユウリィは驚き、呆然としていた。  
だが次第に状況が飲み込めてくると、慌てて釈明する。  
「そ、そんなのじゃないんですよッ!えっと…私は別に怒ってないし、不潔だなんて別に……思ってないし(ボソッ 、  
と、とにかくッ!わ、私はジュードの事怒ってないですからッ!!」  
「え…?そうなの……?じゃ、じゃあさ、「私に言ってくれてもいい」てどういう事なのッ?  
あれって僕への嫌味じゃなかったのッ!?」  
「ッ!!!!」  
思いがけず事の核心を突かれ激しく動揺する。  
(嫌味って……私そんなつもりじゃ………でもそういう事にしといた方がいいのかな…  
このままそういう事にしておけばジュードと仲直り出来るし………でも……)  
「ねぇ、ユウリィ?どうしたの?黙り込んで」  
突如黙り込んでしまったユウリィを不思議そうに見つめるジュード。  
そんな彼を見ていると、いとおしくてしょうがない気持ちにさせられた。  
(かわいい……ううん、やっぱり怖い、でも今を逃したら……  
あぁどうしようどうしよう……今はチャンスなのかな、それとも……)  
「あの……やっぱり怒ってる?」  
返事をしないユウリィに、ジュードが更に申し訳無さそうにうかがいをたてる。  
その純粋な表情を見た時、ユウリィの中で何かが壊れた。  
 
「……やっぱり怒ってッ!!!!!!!!」  
沈黙に耐え切れず、再び話を切り出したジュードだったが、皆まで言う事なくそれを遮られてしまう。  
突如抱きついて、彼の口に唇を重ねてきたユウリィによって。  
「………」  
全く予測していなかった展開にジュードは固まってしまう。  
しばらくしてユウリィは体を離し、意を決したようにジュードに語りかけた。  
「その……文字通りの意味ですよ」  
「え?」  
「………私であんな事、えっちな事しても、いいんですよ、って……  
だって…あんなのにジュードをとられるなんて悔しいんだもの……」  
「…………えぇッ!?!?!?」  
キスで興奮してしまったユウリィは、半ば開き直り気味に本音をぶちまける。  
ジュードはそこでようやく彼女の発言の真意を理解し、顔を真っ赤にして慌てふためいた。  
「ぇ、だって、その、ユウリィはさ、そういうの嫌いだろうし、それに、あの、えっと」  
「したいんですかしたくないんですかッ」  
おろおろするばかりのジュードに、ユウリィはあえて凛とした口調で話しかけた。  
自分はもう一線を踏み越えてしまった、ここでジュードが引いてしまったらもう自分の立場は無い、  
ならば捨て身で当たるのみッ、  
そんな悲壮な覚悟をしていたのだがそんな事ジュードは知る由も無い。  
そして、その行為は幸運にもプラスに働いた。  
 
「………………いいの?本当に」  
さっきまでうろたえ続けていたジュードの目に欲望の炎が宿る。  
「…はい」  
互いの意思を確認し合った2人は濡れた瞳で見つめ合っていた。  
 
「わ…ユウリィの体って真っ白なんだね」  
ユウリィの裸体があらわになる。メリハリのある体はモデルのそれを彷彿とさせた。  
「そんな事言わないでよ……恥ずかしいじゃない…」  
「あ、ごめん……その……本当に………いいんだよね……?」  
ユウリィの艶かしい裸体を前にして、既にジュードは理性が飛びかけていた。  
だが、辛うじて残った理性と、そして実際どうすればいいのかよく分かっていない、という不安とで、  
ジュードは次の行動を起こせずにいた。  
その様子を見て、ユウリィは少し考え込むと、おもむろにジュードの服を脱がせ始めた。  
(このまま終われるわけないじゃないッ 私が脱がせてでも…)  
「ッ!!!い、いいよッ!!自分でやるからッ!!!!」  
だがユウリィは手を休めない。すぐにジュードは裸にされてしまった。  
「うわ……」  
いざ怒張したものを前にしてひるむユウリィ。  
(こんな大きなものが…私の中に……怖い……)  
その目には明らかに恐怖と怯えの色が浮かんでいた。  
「……やっぱりやめようよ」  
そんな様子を見てとったのか、ジュードがユウリィを気遣って声をかける。  
「ううん、いいの」  
ユウリィは涙声になりながらそれを否定した。  
 
(ここまできて何も無しで終わったらやっぱりまた微妙な関係のまんまになっちゃう……  
それにこれは私が望んだ事だもの……怖いけど、けど……)  
ユウリィはジュードを押し倒した。  
「わッ!」  
「……ジュードの、好きなようにして………」  
そう言うと、ジュードの胸に顔を押し付けた。  
(うわぁ……やわらかい………)  
程よく肉付いたユウリィの柔らかな体が自分の上にある、そして全身に、ユウリィの柔らかく温かい肉の感触が伝わってくる、  
そんな未曾有の快感で一瞬理性が飛んだジュードは、ユウリィの体を強く抱きしめた。  
「ッ、痛い…」  
「あ、ごめん…あんまりきもちよくてつい……」  
慌ててユウリィから離れるジュード。が、そうは言ったものの、ユウリィも満更ではないような表情だ。  
「ううん、私もきもちよかった…」  
「え?」  
「だから、遠慮しなくてもいいんですよ?」  
そう言うと今度はユウリィがジュードを抱きしめる。2人の息遣いはだんだんと荒くなっていった。  
 
「じゃあ……いくよ…」  
体位を変えると、ジュードはユウリィの濡れた秘部に自分のそれを押し当てた。  
遂に至ったその行為への恐怖からか、無言で目を閉じ、歯を食いしばったまま小刻みに震えるユウリィ。  
そんなユウリィを見て軽い罪悪感を覚えたものの、燃え上がる欲望に最早抗う事は出来ない。  
本の知識を頼りにユウリィの体を押さえつけ、何度か失敗した後に一気に貫いた。  
「あああああああああああああッ」  
その刹那、ユウリィの体に凄まじい激痛が走り、思わず悲鳴があがる。  
その声に驚いたジュードは一瞬我に返り、思わず挿れた生殖器を引き抜いた。  
「ちょっとッ!!大丈夫ッ!?」  
「ううッ、痛いよぉ……」  
大粒の涙をこぼして泣きじゃくるユウリィ。  
だが、そんなユウリィを見ても、もう彼女を気にかける余裕は全く無くなっていた。  
「いい?続けるよ?」  
彼女を気遣う声は出てこない。ただ、自分の欲望に付き従った言葉が発せられるのみだった。  
「うん…私の事は気にしないで……」  
ジュードとの交わりを想像して多少なりとも興奮はしていたが、それはさっきの激痛ですっかりさめてしまっていた。  
でもジュードと遂にこういう行為に至ったという、その結果については凄く幸せだった。  
(凄く痛いけど…痛いのは最初だけだって言うし、今は耐えよう…)  
 
「はぁ…はぁ…」  
既に完全に理性が飛んでしまっているジュードは、欲望のおもむくままに腰を振り続ける。  
(あったかい…きもちいい…あぁ、ユウリィを抱いてるなんて夢みたい……)  
怒張したそれを包み込むユウリィの温かい臓器からだけじゃなく、全身に触れる柔らかい肌からも、  
後ろに回した手に触れる柔らかな髪からも、ジュードの体に圧迫された豊満な胸からも、  
少年の体に触れる全ての部分から快感を感じ取っていた。  
「ユウリィ…ユウリィ……う、うぅ……」  
声にならない快感に身を悶えながら、苦痛に顔を歪ませるユウリィを蹂躙し続けた。  
 
(痛い、苦しい……誰か、助けて………)  
その一方で、ユウリィは止め処なく与えられる苦痛で意識が飛びかけていた。  
異物が抜き挿しされる感触に多少酔いはするものの、その結果もたらされる苦痛はそれ以上に大きかった。  
(もうダメ…死にそう……お願いジュード、早く終わって…)  
「う、うああッ、うああああああああああああッ!!!!!!」  
そう思ったまさにその時、ジュードはユウリィの中で果てた。  
ユウリィの体に、灼ける様に熱い体液が大量に注ぎ込まれる。  
「あ、ああああぁ………」  
ユウリィはその未経験の感覚に、思わず奇声をあげた。  
酔うほどの快感では無いにせよ、苦痛の後にもたらされたこの感覚に少なからず快感を感じたのは確かだ。  
「はぁ……きもち、よかった………」  
未だ快感に酔っているジュードが幸せそうにこぼす。  
ユウリィはそんな様子を見て、達成感と同時に軽い嫉妬を覚えた。  
(ジュードばっかりいい目見るなんて不公平よ……私はあんなに痛い思いしたのに……)  
非難の目で見つめるユウリィにやっと気付いたジュードは、思い出した様にユウリィに話しかける。  
「ユウリィ、すごく気持ちよかったよ……ありがとう…」  
お礼を言ってはいるものの、未だ心ここにあらず、と言った雰囲気だった。  
そんな様子が、更にユウリィの嫉妬をかきたてる。  
耐え切れなくなったユウリィは、ジュードを抱き寄せ唇を押し付けた。  
思わぬ行動に驚いたジュードの口に舌を滑り込ませると、ジュードのそれと濃密に絡み付ける。  
 
「……ふぅ」  
「ちょ、ちょっとユウリィ、何するのさ」  
もう越えるところは越えてしまったのに、その一歩手前の行為にジュードは照れていた。  
「だって…ジュードばかり気持ち良さそうにしてて悔しいんだもの…  
私は死にそうだったのに……」  
同じく赤面したユウリィがふてくされた様に応える。  
「そ、そう、ごめん…」  
謝ってはみたものの、ジュードは今まで見せた事の無かった様を見せるユウリィに驚いていた。  
「だから私の好きな様にさせてッ」  
そう言い終わるや否や、またジュードの唇を奪い、舌を入れる。  
「ん……んふぅ…」  
恍惚とした表情を見せるユウリィ。夢にまで見たジュードとの熱いキスを十二分に堪能している様子だった。  
 
一方ジュードは、彼女の大胆な行為と、不意に見せられた意外な一面とで早くもまた興奮し始めていた。  
そしてすぐに理性が飛ぶと、接吻に酔っているユウリィを無理矢理組み伏せた。  
 
「きゃっ! 何するのよジュードッ」  
「何って……決まってるじゃない…」  
思わぬ行動に驚くユウリィに、ジュードは驚くほど冷めた口調で語りかける。  
「え、ちょっと…もうやめてよ…?……まだ痛いのにッ!!!!!!!!!」  
そして、彼女の言も耳に入らないままに怒張したそれを挿れると、再び腰を振り動かし始めた。  
「あッ…痛ぃ…うあ…おねが……やめ……」  
ユウリィが必死で苦しげな声をあげる。しかし、ジュードにとってそれはもう雑音でしかない。  
耳障りな雑音を消そうと、ジュードはさっきユウリィがしたのと同じ様に、彼女の口を塞ぎ、舌を絡めた。  
「ッ!」  
何より驚いたのはユウリィ自身だった。  
実際ジュードは、ユウリィのしてきたそれがあまりに気持ちよかったから、こうしているに過ぎないのだが、  
ユウリィは、自分が痛がってるのが分かったから、せめてこうして私を気持ちよくさせてくれてるんだ、  
こう受け取って凄く幸せな気分になっていた。  
(凄く痛いけど、こうしてジュードとキスできるんなら死んだっていいかな……うッ…)  
そんなけなげな事を思いつつ、ユウリィはジュードに犯され続けた。  
 
 
時々喘ぎ声が漏れるものの、殆ど無言の行為が続く。  
辺りには、ジュードが抜き挿しする卑猥な音と、2人が舌を絡め合う音だけが響き渡っていた。  
そんな中、不意にジュードが顔を離し腰を休め、ユウリィに話かける。  
「ねぇ…ユウリィ」  
「なぁに?」  
「やっぱりさ…まだ痛いの…?」  
「……うん」  
痛みは大分和らいできたとは言え、やはり痛い事には変わり無かった。  
ジュードとの接吻に酔っていた事で、それは大分紛らわせる事が出来たのだが、流石にそれは言わない。  
「ごめんね……僕が好きな様にしちゃって」  
押し寄せる快感にようやく慣れたのか、ある程度理性の戻ってきたジュードはやっと本心からユウリィを気遣う声をかけた。  
「ううん、いいの…私はジュードと出来てとても幸せだもの……だから最後まで続けて…」  
痛そうにしながらも、満面の笑みを浮かべて答えるユウリィ。  
その表情を見て、何とも言いがたい感情が湧き上がる。  
「ユウリィッ」  
「うッ…」  
思わずユウリィの体を一瞬強く突き、強く抱きしめた。それにともなって、ユウリィの顔が苦痛に歪む。  
その表情の変化に凄まじい倒錯的な快感を感じ、再び理性が飛んだジュードは、  
おもむろにユウリィの口を塞ぐと腰を律動させ始めた。  
「ん、んんん……」  
ジュードの突然の豹変ぶりに驚いたものの、すぐにユウリィもまたその行為に酔い始める。  
辺りは再び静かになった。  
 
それから間もなくして、ジュードは自分から顔を離した。  
「うぅ、ユウリィ…僕、もう、いきそう……あぁぁ…」  
声をあげずにはいられなくなったジュードは、段々と腰の動きを速め始める。  
「いッ…あ…やめ、て……」  
接吻で紛らわせなくなった事と、ジュードが動きを速めた事で、再びユウリィを激しい苦痛が苛み始めた。  
「ぁぁあぁぁ…ユウリィ、きもちいい、よぉ……うあぁあぁぁ」  
「ちょ…ジュ、ジュード…そんなに、速く…うごか…なぅぁッ!……おねが…」  
「は…はぁッ……ユウ…リィ……う…ユウ…ぐぁッ」  
最早何も聞こえていない。ユウリィの意思に反して動きは更に速く、力強くなり、それとともに痛みも激しさを増す。  
だが、それは段々と感じ始めた快感も同様だった。  
「うああ……くぅぅッ……痛い、よぉ……でも…きもち、い……あ…あぁ……」  
「あ、あぁぁ、あああ……も……げんか………だす、よ……ユ……リ…」  
「ん……く…も…う……すきに……し…ふあぁぁあッ……ジュー…ドォ………ぅ」  
「はぁ、はぁ、はぁ…ッ、ぐッ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ユウリィイイイイイイイイイッ!!!!!」  
絶叫と共に果てるジュード。再びおびただしい量の体液がユウリィの体内にほとばしる。  
「うああああ熱いいいいいいいいいああああああああああああああッ!!!!!」  
と同時に、ユウリィの体を再び不思議な快感が駆け巡る。その快感が呼び水となり、遂にユウリィも果てた。  
2人の絶叫が辺りの静寂を切り裂く。  
そして互いに力尽きた2人は、恍惚の表情で互いを抱きしめたまま、そのまましばらく動こうとしなかった。  
 
「ねぇユウリィ……その…ありがと」  
先に声をかけたのはジュードだった。  
大量の精を放ってすっかり落ち着いたところで、改めて自分のした行為が恥ずかしくなり、  
今更ながら赤面しつつの告白だった。  
「うん…ありがとう……ジュード…」  
ユウリィも同様に顔を赤らめていた。  
2人して照れながら見つめあっている内に、どちらからともなく笑い始める。  
お互い相手の様子が面白くて仕方がない、という様子だった。  
静かな夜空に2人の笑い声だけが響いていた。  
 
 
後日  
 
「さーてッ、今度はこれどこに隠そうかな……」  
ジュードはくだんのスケベ本を手に、綺麗に片付いた部屋をうろうろしていた。  
あの後ユウリィに捨ててくれ、とソフトに言われたものの、それでもまだ未練は捨てきれないらしい。  
「ベッドの下とかはまたバレそうだし、布団の下も危ないし……引き出しに鍵かけて入れておこうかなぁ…」  
「ねぇ、ジュード」  
「多分ユウリィは鍵開けないと思うんだけど……鍵どこへやったっけなぁ?」  
「ジュードってば」  
「……思い出せない………ッ!そうだ、引き出しの裏に貼りつければッ」  
「ねぇッ、ジュードッ!」  
「もう誰だよさっきからうるさってわあああッ!!!!!!!」(ガンッ  
振り向くと真後ろにユウリィが立っていた。  
驚いたジュードは思わずしりもちをつき、頭を机の角にしたたかに打ちつけた。  
「ちょっとジュードッ!大丈夫ッ!?」  
「う、うん……だいじょあいたた…」  
「もうッ、ドジなんだから……」  
呆れた様にジュードを見下ろすユウリィ。  
「で、どうしたの? いたた…」  
「どうしたの?じゃないですよ。ポートロザリアに買い物に行く約束してたじゃないですかッ。  
ずっと来ないから呼びに来たんですよ」  
「あ、あぁ、ごめん……すっかり忘れてた…はは…」  
「はぁ……で、忘れた挙句その本の隠し場所を考えてたわけですね。  
私が来たのにも気付かない位必死に」  
突然声のトーンが変わる。その変化に、ジュードは慌てふためいた。  
「え、いや、これはその、あのッ……この本をね、その…」  
「そうなんでしょう?」  
「えっと、その………ごめんなさい…」  
結局言い訳が思い浮かばずに素直に謝るジュード。そんなしょんぼりする様を見て、ユウリィは笑いかけた。  
「私じゃ満足出来ないんですか?」  
予想外のストレートが飛んでくる。ジュードは、思わず顔を赤らめながら必死で否定した。  
「そ、そんな事無いよッ!!無いけど……(もったいないなぁ…)」  
「じゃあ、いいじゃないですか」  
「ッ」  
そう言うと、ユウリィはジュードに軽くくちづけをした。そして、2人してぽっ、と顔を赤らめる。  
晴れてバカップルの仲間入りを果たした2人は、互いに楽しそうに笑い合っていた。  
 
 

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