アブリルは悩んでいた。恋人のディーンが浮気しているのではないかと。
アブリルの記憶の中から帰還した後、艦長が気を利かして医務室にディーンと
二人っきりにしてくれた(レベッカは猛反対していたが、
最終的には艦長が力ずくで他の人たちを追い出して廊下側から鍵を掛けたのだが。
そしてディーンに愛の告白をして、彼はそれを喜んで受け入れてくれたのだ。
それを聞き、アブリルは氷の女王時代、たくさんの部下たちを無理やり犯して身に着けたエロテクで
ディーンを心身ともに夢中にさせたのだ。
………隣の部屋からなぜか壁をドン!ドン!と蹴る音がしたが、アブリル、気にしない。
それ以降は、毎日毎日ディーンと体を求め合った。屋内だろうと屋外だろうと。
寝室だろうと、便所だろうと。この間なんか鉄道の連結部で連結式を行ったりもした。
いつまでもこの関係が続けばよいのにとさえも思った。
しかし、どうも最近は彼の様子がおかしい。アブリルの体をここ1週間ほど全く求めてこなくなったのだ。
アブリルカら交尾の誘いをすると、あまり乗り気ではなく、執拗に誘うとなんとか合体!までこぎつけたのが3回だけ。
それ以外は、がんばったところで素股が10日、フェラが20回だけなのだ。
要するに、『本番行為』を避けたがっているのだ。
キスさえも、求められればちゃんとしてくれるのだが、なんだか唇を重ね合わせるときにはすこし躊躇しているのだ。
「………、まさかそんなことはありませんよね……」
ハウムードのホテルの女性用3人部屋にいるアブリルの視線の先には、赤髪の三つ編み少女が一人。
(………あ!)
アブリルは感づいてしまった!
彼と恋仲になってからは彼と所構わずキスをするようになり、いちゃいちゃもしたりした。
ディーンの事を昔から好いているレベッカに見せ付けるように。あのレベッカに勝っている、
いとしい人の心は完全に私に支配されている、レベッカなんか眼に入っていない、
そう思うとアブリルの心の中に暗く輝く屈折した優越感が芽生え、エクスタシーに似たものを感じるのだ。
そしてさらにはレベッカに聞こえるか聞こえないか暗いの音量で、SEXの誘いもするようになった。
つい最近までは、ディーンは何も嫌がることもなくむしろ喜んでOK!と言ってくれたのだが、
ここ一週間ほどはそういう誘いをすると、近くにレベッカがいるときは特に嫌がることが多くなったのだ。
「ディーンは優しい人ですから、幼馴染のレベッカの事を気遣っているのでしょう」
「ちょっと、アブリル、さっきから何独り言いってんのよ」
「!レベッカ!ごめんなさい、ちょっと私はいろいろと疲れているようです…」
「あら、そう?私、他の4人とレストランに昼食を食べに行くから、疲れているならベッドで寝てなさいよ」
アブリルは実際疲れていたので「わかりました」と答えた。
そういうと、レベッカはキャロルをつれて男部屋に行き、どうやら海老看板のレストランへ行ったようだ。
「ふーっ、悩みすぎて疲れました。寝ましょう」
窓際のベッドに横になり、ふと真ん中にあるレベッカの寝ていたベッドを見るとレベッカの旅日記帳(元ポエムノート)が
置いてあるのが見えた。
(あれは…、『私の大事な思い出が詳細に記されている日記帳よ』とレベッカがい言っていたものですね…)
(…つまりレベッカの身の回りに起こったことが詳しく書かれてあると。)
(…もしあの日記帳に、ディーンと浮気しちゃった(はーと)なんて書いてあったりしたら…)
(いえいえ、この日記帳を勝手に見ちゃうなんていけません!覗き見は犯罪です。
それに、私アブリルは覗き見なんてしない、と信用して日記帳をここに置いていったのですから、
レベッカの信用を裏切るなんて駄目です)
5分後…
「仲間の考えていることを知ることはとても大事です。拝見させてもらいましょう」
そう言うと、アブリルは日記帳を開こうとした。しかし、日記帳にはデュプリケーターでも開かない鍵が掛かっていた!
「鍵の掛かっている日記帳にはまともな事が書いてありません!『テロリストグループに資金提供して裏から操った』
なんて事が書いてあるだなんて到底考えられませんが、何らかの問題があるはずです!」
アブリルは氷の女王として身につけた知識をフル動員した結果、
日記帳に挟んである栞に記載された確認文の答えをパスワードとして、鍵が開くことが判った。
全部で2問だけ。1〜8桁の数字(0〜9の数字)を
声に出して答えねばならない。
答えは複数ある場合があるらしい。
「さあ問題文を見てみましょう」
Q1:私が今一番会いたい人は誰ですか?
「へ、誰でしょう?知りませんよそんなこと」
「警告スル。1分以内ニ答エラレナイ場合ハ撃退装置ガ作動スル!」
「あうあう…、撃退装置ってなんですか…。レベッカの会いたい人、あうあう…、
ふ、ふ、ふう、風船おじさん、ですか?」
「間違イデス」
「間違いですか…。一体誰なんブッッッッ!!!!!!!」
なんと、近くの箪笥の戸が突然開き、パイが飛んできた!
やるせない猫型パイ投げマシーンが仕掛けてあったようだ。
「ううぅ…、いくらなんでもこれは酷すぎます」
「もう一回、パスワードの回答チャンスがあるようですね。
でも、今回はもうひとつのパスワードを答えねばならないようですね」
Q2:私が、さっきディーンにしてもらったことを数字2桁で2つ。
「へ、何ですかこの問題は?答えが数字しかないんですよ?
肩もみ、料理、肩車、荷物持ち…どれも数字だけでは表記できませんね…。
「アト、30秒」
「ああ、なんでしょういったい…、パイが飛んできるのはイヤですよ。
ディーンが重苦を背負ったから19、とか髪に櫛を掛けたから94とか、
つまり19と94ですね」
「間違イデス」
「流石に無理がある答えでしたね…(ゴン!!!!!!!)ふぐぅッ!?」
今度は天井から金だらいが落ちてきたようだ。
「痛いです…」
「パスワード認証ニ2回モ失敗シマシタ。不法侵入ノ恐レ有リと判断シテ、持チ主の レベッカ・ストライサンド ニ通報シマシタ」
「ああッ!?それだけは勘弁してください…」
その瞬間だった!ブーンという轟音とともに寝室の前に『誰か』がやって来たのは!
「私の日記帳を覗き見するのは誰だ!死刑よ!」
「ああ、どうしましょう、 死刑にされるのはイヤです…」
そして物凄い勢いで扉が開かれるとそこには
顔を真っ赤にさせて、鼻息荒く、肩から息をする、烈火のごとく怒った顔のレベッカがいた。
「誰!私の日記帳の鍵を開けてまで覗き見をしたのは!!!!」
「あ、あ、あっ…」
「ひょっとしてアブリルなの…」
「あうあう、ごめんなさい、魔が差して覗き読みしちゃいました…」
すると、レベッカはさらに鬼の形相で、それこそ魔王アンゴルモアの如く怒りアブリルに詰め寄った!
「ひっ!ごめんなさい、ごめんなさい!」
「どうして鍵を開けようとし…、え、アブリルは、あのぅ、そのぅ…」
突然、レベッカは、まくし立てる勢いを無くし、鬼の形相がまるで借りてきた猫のように弱々しくなった。
「ねえ、アブリル、どこまで読んだの?正直にお願い」
「パスワードエラーで全く読めませんでした」
「あ、あらそう?じゃあ良かった!もう!人の日記を勝手に読んじゃ駄目よ、アブリル!」
「御免なさい、レベッカ。ところで、改めてお願いします。
貴方の日記帳を読ませてください。貴女の考え方に興味があります」
「許可を得ようとしてもダメー!」
そのとき、アブリルはレベッカのベッドに紙切れがあることに気づいた。
なにかペンで走り書きしてある。
69 92
「何ですか、この69と92って?あとでディーンに聞いてみましょう」
「ああ、ダメーだってばー!」