「わたしね、フィアースが好き。大好き。だからね、その…」
たどたどしい、用意されていなかったであろう言葉とは裏腹に、彼の襟を掴む手はきつく握られていた。
クラリッサはフィアースに膝立ちで股がっていてちょうどフィアースからはクラリッサを眺める形だった。
月明かりを頼りに垣間見る彼女の頬はほんのりと朱に染まり、母親譲りの蜂蜜色の髪はキラキラと星の様に輝いた。普段あまり目に触れる事の無い彼女の肌はとても白く、微かな明かりが女性特有の丸みを帯びたラインを現した。
「…クラリッサ。お前は一体何がしたいんだ」
少しの動揺を胸に彼女に尋ねる。
「あ、あのね…ラブライナ色々教えて貰ったの」
そう言うとクラリッサはフィアースの腕をそっと掴むと彼女は自分の胸までもって行った。少し前屈みになりフィアースの掌に完全に触れさせる。
「なっ…!!」
「男の人の…悦ばせ方。わたし、フィアースの為なら何だってするわ。繋ぐのは、手だけじゃ嫌なの。…だから」
大き過ぎず小さ過ぎない、服の上からでも解る形の良い胸。
触れている掌が彼女の体温と鼓動をしかと感じた。
「…やめろ、クラリッサ」
彼女の誘惑に負けそうになる。
…いけない。
このまま流れに身を委せてしまえば彼女が傷つくのは目にみえている。
それだけは避けないといけない。
いい加減にしろ、とクラリッサの手を振り払う。彼女を退かそうと上半身を起こすが、再度クラリッサによってベッドに押さえ付けられる。
「クラリッ―…」
声が途切れた。
彼の唇にクラリッサの唇が押し付けられたのだ。
暫しの静寂。
唇が僅かに離れる。 「わたし、もう子供じゃないんだよ?フィアース」
フィアースの唇をぺろりと舐めると再び口付けた。
舌を浸入させていく。ぎこちない動き。
しかしそれは確実にフィアースの理性を奪っていった。
いけない、頭では判っている。
しかし半壊した理性で何が抑えられるというのか?
―――否。
…もう、駄目だ。
頭の中で何かが切れた。
フィアースはクラリッサの腕を掴み引き寄せ、自分の身体をずらす。
クラリッサの背にシーツの感触。
立場が逆転した。
今度はフィアースがクラリッサに覆い被さる状態になる。
シーツに散らばる彼女の髪を一房摘まみ上げ口付けた。
「フィアース…」
情欲に潤む瞳。
どちらのものか解らない唾液で濡れたぷっくりとした唇。
指をクラリッサの唇に這わせゆっくりと形をなぞり、口付けた。
その瞳は自分以外を見なければ良い。
その唇は自分以外の男の名前を呼ばなければ良い。
溢れ出た感情。
抑えていた独占欲。
箍が外れた。
もう止める事は出来ない。
「んん…ッ!ふ…」
今度はフィアースからのキス。
それはクラリッサからのものとは違い大胆なものだった。
フィアースの舌が唇をこじ開け、口内を巡る。
為されるがままだったクラリッサも応える様に舌を絡めた。
クチュクチュと舌と唾液が絡み合う音が耳に届く。
きっと正常な意識なら恥ずかしくて仕方ない筈なのだが、情欲に溺れた二人には更なる興奮の促進剤だった。
ようやく、唇を離す。「ん…っは、ぁ」
クラリッサは大きく肩で息をした。
フィアースは休む事無く、クラリッサの服の裾に手を掛ける。
ワンピースの様な形の、頭から被って着る寝巻きだったので首元まで一気に捲り上げた。…驚いた事に、下に身につけていたのはショーツのみ。
誘う目的からか。…そうでは無いのか。
外気に晒された小振りな乳房がふるりと震えた。
「ひっ、ひああああ!!!!」
いきなりかん高い声を上げあたふたし出すクラリッサ。
「どうした?」
「どうしたじゃないわよ!は、恥ずかしいじゃないッ」
顔を林檎の様に真っ赤にして反論する。
「…迫って来たのは誰だ?」
「わ…わたしだけど…」
「なら何を恥ずかしがる必要がある?」
「うぅ〜…」
返す言葉が無く、思わず口ごもる。
クラリッサは恥ずかしさのあまり、顔を手で覆い隠してしまった。観念した様だ。そんな様子を見てフィアースは小さな笑みを浮かべそっとクラリッサの手を退ける。
「隠すな…心配せずとも直ぐに恥ずかしいだなんて思わなくなる」そういうとフィアースは上着を脱ぎ捨てた。久しぶりに見た、フィアースの身体。思わず見とれてしまう。
ムキムキって訳でもなく、それでいて力強く締まりのある無駄の無い身体。
よく見ると肌には幾つもの傷がある。
この世界に来てから負ったものか。…フィアースの故郷で負ったものなのか。
ひとつひとつがフィアースの生き様を語っているかの様だった。
「これでおあいこだ」「んッ…!」
クラリッサの胸を形に沿うように優しく両手で包み込む。
力を入れすぎ無いようにゆっくりと揉む。 肌が粟立つ。
乳首を指の腹で擦り捏ねてやるとクラリッサは切ない声を漏らし身を捩った。
片方に舌を這わせ、固くなった突起を中心に攻める。
「ひぅ…ん…ッ!」
漏れる声を必死に堪えるクラリッサ。
我慢するクラリッサもまた可愛らしいが男として、啼かせたいという欲望もフィアースにはあった。
「…」
無言のまま乳房に這わせていた手を下腹部にずらして行く。
すべすべとした肌を堪能していく様に。