(いいかいフィア……できるだけ多くの人間に同調して、潜伏してる魔法士を見つけて欲しいんだ)  
 某所発電プラント跡地。  
 人口1000人足らずのこの村に、先の戦闘で逃げた敵魔法士が潜んでいるということだった。  
 フィアは錬の言葉を思い出して決意も新たに、真剣な眼差しを行き交う住人に向ける。  
   
 ――私の能力なら同調すれば魔法士さんも見つけられるはず。確かに……一度に10人程度が限界ですけれど……私にしかできない仕事だから……がんばります!  
   
 フィアの意気込みは相当なものだった。  
   
「はぁ……いませんねぇ」  
   
 まばらに行き交う人々を見回して、小さくため息をつく。  
 村人はみな疲れてくたびれたような表情をしていた。  
 それもそうだ、ここはだいぶ前に壊れて使えなくなったプラントを、なんとか修理して騙し騙し使って命を繋いでいるだけの場所なのだ。  
 明日の生活の保障はどこにもない。  
 この滅び行く世界に在って、最も終わりに近い場所のひとつだった。  
   
 ――潜伏しているなら……家の中も調べた方がいいかもしれません。  
   
 光の翼を民家の奥へと向ける。  
 フィアのI−ブレインは2人の人間の存在を捉えた。  
   
 ――同調……しますね  
   
 心の中だけでこっそり断る。未だにフィアは他人に同調するとき、少なからぬ罪悪感を感じるのだ。  
    
「……えっ!?」  
   
 同調したとたん、突然フィアの体を異変が襲った。  
 フィアの同調能力は、他人の痛みや体調をそのまま自分にフィードバックしてしまうという欠点があった。  
 痛覚処理を持たないフィアのI−ブレインを、未知の感覚が襲う。  
   
「はぁっ! ……あああん……なんですか……これぇ!」  
   
 痛みとは全く違う感覚。突然体が火がついたように熱くなり、抑えることもできずに大量に発汗する。  
 汗が一番多く出るのは、なんと股間だった。  
 性器……知識でしか知らなかったが、確かに自分のその部分から最も多く汗が出てくるようだった。  
 アソコがムズムズしてまるで別の生き物のように存在を主張し出す。  
 そして未知の感覚はどんどん大きくなり、次第にフィアの意識を真っ白に埋めていった。  
   
「いやぁ……いやっ……あはあああああ!」  
   
 フィアは民家裏の路地で、一人だけで絶頂に達してしまった。  
 荒い息をついて汚い砂利の地面に倒れる。  
 光の翼は消え、能力は強制的に解除されてしまっていた。  
 フィアは知識でしかしらないが……ひとつ思い当たった。  
    
「もしかして……このお家で……」  
   
 セックス。この家で、愛の営みが行われているのは間違いなかった。  
 では自分は覗き見した変態ではないか。しかも、その快感だけで達してしまうなんて……。  
 
「ごめんなさい……」  
   
 泣きながらポツリと呟く。  
 でも――。  
 あの快感は簡単に忘れられるようなものではなかった。  
 アソコからは愛液がよだれのように垂れ流しになり、秘唇は何かを求めるようにヒクヒクと蠢く。  
   
「あ……あ……」  
   
 フィアは無意識のうちに光の翼を展開していた。  
 一瞬我に返り、自分が何をしているかに気づく。慌てて能力を解除しようとして――。  
   
「あっ……!」  
   
 触れてしまった。  
 取り込んでしまった。  
   
「ああああああああ!」  
   
 快感が爆発する。  
   
「あううううん。ああっ……あはっ……いい……」  
   
 もう一度味わってしまえば後は流されるだけ。  
 経験のないフィアにとってそれは、絶対に抗えない悪魔の誘惑だった。  
   
「あ……気持ちいいです……あっあっ……あっ……」  
 ――来る!  
 そう思った瞬間。  
 急激に快感が引いていく。残ったのはかすかな倦怠感。  
 同調している男女の行為が終わったのだ。  
 でもフィアは絶頂の寸前に突然快感をとりあげられたのだ。我慢などできるはずがない。  
   
「いやあああ! 欲しい、欲しいんですぅ……」  
   
 まるで這うように、ゆっくりと手の指がアソコへ降りる。  
 優秀なI-ブレインを持つフィアとて、今なぜ自分の手が動いているのか意識できなかっただろう。  
 やがて指先は、快感のすぼまりに到達する。  
 溶けてしまいそうな、柔らかい秘肉に吸い込まれていき――。  
 
「ふぁぁぁあああああああっ」  
   
 今までで一番の快楽に目を見開いて舌を突き出す。  
 地面に突っ伏した状態でひたすら自慰に没頭する。  
   
「なんで……なんでぇ! 止まらない。止まらないんですぅ」  
   
 泣きながらアソコをめちゃくちゃに掻き回す。  
 快感だけはフィアの脳に容赦なく押し寄せ、I-ブレインを白く染め上げる。  
 恐怖に駆られたフィアは、ふと錬の顔を思い浮かべた。  
 ――助けて! 錬さん……。  
 しかしフィアは知らなかった。なぜ今錬のことが浮かんだのか。  
 錬を思い出しただけで自分がどうなるのか……。  
   
「ああああああああん! ひぁぁぁああ!」  
   
 錬のことを考えるだけで快感が倍化した。まるで錬とひとつになっているような錯覚。  
   
「ああ錬さん……錬さん……。ごめんなさい、私……私……!」  
   
 経験のないフィアは、快感の天井も低い。生まれて2度目の快楽の極みに向けて、あっという間に上り詰めていった。  
   
「だめ……いい……気持ちよすぎて、ああイっちゃう! あああああああああはああっ!」  
   
 ビクンビクン。  
 体が跳ねるように痙攣する。  
 思いっきりエビ反りに硬直したあと、全身から力が抜けた。  
 フィアの意識はそのまま闇へと埋もれていく………  
   
 
 

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