「不審な通信ログ?」  
 徹夜明けのコーヒーブレイクを邪魔されたのと、穏やかじゃない言葉に、真昼は眉を顰めた。  
「そーなのよ。ここのところ毎日。時間は夕方から深夜ね」  
 そう言いながら月夜は、真昼がお茶請けに出していたクッキーをかっさらった。  
「……被害は?」  
 真昼が、続きを促した。事が事だけに寝惚けても居られない。  
「ああ、そーいうのは一切無し。一般回線だし、こっちの情報はなんにも」  
 真昼達が"仕事"に使う回線や演算装置は、当然、一般回線とは別に敷設してあるし、  
系統やエネルギーラインも完全に独立している。月夜の言葉に真昼は肩の力をいくらか  
抜いた。  
「シティがこの町に目を付けてきた、ってこと?」  
 シティの外に住み、廃棄されたプラントやシティから電力などをいわば『盗んで』いる彼ら  
アウターは、いつシティから攻撃を受けるかと、怯えながら生活している。  
 もっとも、大半の集落は小規模であるし、裏家業の人間の居場所やブラックマーケットとしての  
利用価値もあるため、そういきなり攻撃するということはないはずだが──。  
「…だとしたら…」  
「あー、それも違う違う」  
 月夜は面倒そうに手をパタパタと振った。  
「じゃあ何なのさ」  
「実はね──」  
 
「フィア? どうしたの?」  
 急患で今日も弥生さんは、飛び回っている。錬はフィアと連れだって、そんな弥生さんに  
頼まれた買い出しに来ていた。  
「……え? あっ、な、なんでもないです!」  
 慌てるフィア。まただ。何かおかしい。  
 ここ最近、フィアは急にぼーっとしたりすることが多くなった。  
 特に話しかけなければ、すぐに部屋に閉じこもってしまう。月夜の"あんたが何かしたん  
じゃないの?"という言葉が、錬の頭をぐるぐる回っていた。  
(年頃の女の子はやっぱり多少情緒不安定になるものよ)  
 錬は、先日弥生にフィアの様子がおかしい、と尋ねた事を思い出した。  
 白衣の似合う女医が言うには、思春期の女の子では当然だし、何より、フィアは"促成  
栽培"された人間なのだから、体と心のバランスをとるのが難しいのだという。  
 だからこそ、離れすぎず、くっつきすぎず、しっかり見守らなければダメだ、とも。  
「…そう? じゃ、帰ろっか」  
 何気なく、錬はフィアの手をとった。  
 びくんっ!  
「!?」  
 まるで、猫が突然の物音に驚いたように、フィアが大きく震えた。  
 見ると、顔が、熟れすぎたリンゴのように真っ赤になっている。  
「…ど、どうした…」  
「ご、ご、ごめんなさいっ!!」  
 まさに脱兎。ぴゅーっ という擬音が聞こえそうな勢いで、フィアは一目散に走り去っていった。  
「……僕、嫌われたのかな…」  
 行き場を失った手でぽりぽりと鼻の頭をかきながら、一人取り残された錬は溜め息をついた。  
 
 
「──というわけよ」  
 とうとうと、不審なアクセスログについて語り終え、鼻息荒く月夜はテーブルを叩いた。  
「…すると、月夜は、錬が夜な夜な、僕たちの目を盗んで一般回線を使って、  
いかがわしいデータを鑑賞し、自慰に耽っている、と?」  
 呆れた顔で、真昼。  
「じ、自慰かどうかはともかく!! アダルトデータのセクションだけ閲覧のアクセス記録が、  
毎回ごっそり消されてるの!! こんなことするのはアイツだけよ!」  
「そうかなぁ…」  
 力説する月夜に対して、どうも真昼は納得できなかった。  
 錬は少なくとも、電子戦の心得がある魔法士なのだから、閲覧アクセスを軒並み消したりは  
しないだろう。そんなことをしたら、アクセスした事がバレバレなのだ。  
 それになにより、フィアが来て以来、"そういうこと"に目覚め始めた錬には、真昼が適度に、  
秘蔵のコレクションを与えている。そんじょそこらの、一般データベースで見つかるようなもの  
に必死になる、とも思えないのだが…。  
「とにかく、こーいう不健全なことを見過ごせないわ! 断固、懲らしめないと!」  
 ヒートアップする月夜に、興味を持たないほうが不健全だ、と言いたい真昼だったが、これ以上  
付き合わされるのはごめんだったので黙っていた。  
「……。どうやって?」  
 嫌々そう返した真昼に、月夜は、悪戯を思いついた子供のような顔で口を開いた。  
 
 
 うなじに潜り込ませた有機ケーブルの感覚に、体が熱くなる。フィアは、震える指でコンソールを  
叩くと、意識をIブレインに移し、そのままベッドでこてん、と横になった。 まだ何もしていないのに、  
幼い体はすでに快楽を受ける準備をしつつあった。  
(……今日、錬さんに触られた手…)  
 うっとりと、拙い欲望にとろけた目で、自分の右手を見つめた。  
(振り解いて逃げちゃって、変だと思われちゃったでしょうか?)  
 ちろり、と自分の右手を舐める。  
 なんとなく、錬を舐めたような気がして、一層体の火照りが増した。  
 今日は、弥生だけでなく、月夜と真昼も仕事に出かけたので、錬と一緒に夕食を食べたが、  
まともに目を合わせられなかった。  
(こんな、いやらしいことに夢中になってる、なんて知られたら…)  
 恐怖にも似た感情がフィアを包んだ。不潔だ、といってもう口も聞いて貰えないかもしれない。  
 が、そういった感情とは裏腹に、体はさらに熱くなり、股間にむず痒いようなもどかしさが募っていく。  
(──今日、今日が最後、です…)  
 いつもと同じ言い訳を心の中でして、フィアはデータベースの中を探り出した。  
 幾度も同じ事をしているうちに、フィアは、同じアダルトデータでも、登場する女性が自分に  
似ている部分があればあるほど、より大きな快楽を得られることに気づいていた。  
 人種、体型、身長、体重、血液型からエトセトラエトセトラ。  
 自分の体に近ければ近いほど、Iブレインが擬似的な感覚を創出しやすいのだ。  
(コレ…、ううん、ダメ…もっと…)  
 データの海を泳ぎながら、より、自分に近い女性が出ているものを探す。  
 無論、フィアの年齢、体型と同じ少女が出ているアダルトデータなど、法律で規制されて  
いるため、そうは見つからない。が、フィアは半ば無意識のうちにIブレインの強力な演算能力  
を利用して、データベースの中でも、よりアンダーグラウンドなほうへと進んでいった。  
(……はぁはぁ…。じゃまです…)  
 暗号化や、簡易ウィルスといった、知識の無い者をふるい落とすブービートラップを、小さな天使の  
羽で無理矢理叩き落としながら、どんどん奥へ。  
 一般人の作ったトラップ程度では、話にならなかった。  
(ありました…。ふふっ…)  
 そこにならんだデータは何れも、年端のいかぬ少女たちのものだった。映像のサムネイルを見て、  
そのうちの一つ、自分と同じ、白人の少女のデータに目をとめた。  
 肩までの髪は金髪。目はブルーだが、自分と体型や肉体年齢もほぼ同じ。  
 ぱっちりとした目が、微笑みかけていた。  
(…こ、これにします…)  
 ふわりと、天使の羽で包み込む。  
 刹那、普段より、より明確に、データの中の少女の感覚が伝わってきた。  
(やっぱり…。……自分の体みたいです)  
 少女がカメラに軽く手を振る感覚が分かる。  
 体のサイズが違うと、脳の中でのみ刺激のやり取りを行なう事しかできないが、今回は、自分の  
体の神経に対して、ダイレクトにデータ通りの刺激を再現できそうだ。  
 少女が、ぺろん、と肌着をまくり上げ、その中に片手を突っ込んだ。  
「…んっ! ……ふうっ…」  
 やっぱり、違う。  
 少女が自分の胸をまさぐる感覚が、より明確に感じられる。あくまで神経に走る刺激だけだが、  
自分の体に直接刺激を受けるのは、新鮮だった。  
 疼いていた股間がさらに熱くなるのを感じ、フィアは体を硬くした。  
(きもち……いいです…)  
 先ほどまでの罪悪感はもう快楽に押しつぶされ、瞳が欲望に濁った。  
 そのとき、変化があった。  
 
   データの中の少女の動きが止まった。  
 直後、後ろから羽交い締めにされる。  
「きゃっ…!?」  
 少女と同じ感覚を自分に与えていたフィアは、目を見開いた。  
 疑問に思うまもなく、少女は腕をねじり上げられうつぶせに押し倒される。  
 男──それも醜悪な中年太りの男が、後ろから襲いかかったのだと、データを見ていた  
フィアは気が付いた。  
『な、なに…?なんなの?』  
『はぁ…はぁ…はぁ…ひひひ』  
 少女の怯えた声に、息を荒げながら答える男。  
 フィアは混乱した。  
 フィアのこれまで見てきたアダルト作品は、何れもいわゆる"和姦モノ"で、こんな展開はなかった。  
 しかし、これは──。  
『きゃあっ!』  
 下着をむしりとられる感触。男は少女を組み伏せたまま、下着を引き下ろした。  
 さらに息を荒くしながら、肌着にまくり上げる。  
『や、いたっ!』  
 乱暴な扱いに悲鳴を上げる少女を気にすることなく、男は汗ばんだ手で少女の胸に掴みかかった。  
 ぐにっぐにっ!  
 まだささやかなふくらみしかない乳房を、汗で粘つく指が蹂躙した。  
「あうっ! つっ!」  
 フィアもたまらず悲鳴を上げた。  
 男はさらに、僅かなふくらみを押しつけると、ふくらみの奥にある乳腺をすりつぶすかの如く強く嬲った。  
「あああうっ!!」  
(こ、こんな痛いのいやですっ…)  
 フィアは、慌てて、データ再生と神経リンクをしているプロセスを強制終了しようとし──。  
 
(エラー:当該プロセスへの現権限でのアクセスは許可されていません)  
 
 唖然とした。慌ててIブレインを動かす。通信や各種制御系は問題はないのに、なぜかデータの再生  
プロセスとリンクしている神経制御だけ、まったく反応がない。  
 男がさらに凌辱の手を強める。  
 右の乳房を握り潰すかのように強く揉みしだき、左の乳房にねっとりと唾液をなすりながら吸い付いた。  
「んああああうっ!」  
 僅かな快感と、強烈な痛み、そしてねっとりとした唾液の感触にフィアの思考は中断させられた。  
(……なっ……なん…で……?)  
 少女は痛みにとうとう泣き出すが、それでも男は手をゆるめようとはしなかった。  
 顔を更に醜く歪ませて、唾液を絡めた指を股間へと運ぶ。  
 ぐりぃっ  
 荒々しい、愛撫とは言えない蹂躙では、少女の秘所は、到底準備など出来ていなかった。唾液のぬめりを助けに、  
ドリルのように回転しながら、中指が突き込まれる。  
「ひぃいっっ! っっはっ…かはっ…!」  
 体は傷ついていない。なのに、あそこが…股間が引きつれ、裂かれるような痛みに、フィアは息を詰まらせた。  
「や、やめ……やああああっ!」  
 それは少女の叫びか、自分の声か。  
 男が傷口を広げるかのように乱暴に出し入れする指の衝撃で、フィアはベッドの上で体をしならせた。  
『ひひっ…これからだよ…』  
 男の残忍な笑みが見えたような気がした。  
 ねぶるように接吻される感触。  
「んっ…。ぷはっ…んんーーーーっ ぐっ!!」  
 ねちゃりとした男の舌と、唾液の生々しさまで、Iブレインは忠実に再現する。  
「いやぁ…。もう、やだ…きもちわる…い…」  
 これまでとは違い、嫌悪感にまみれ、フィアは泣いた。  
 少女もまた泣き続ける中、男は執拗に胸を痛めつけ、乳首を噛み、顔を唾液で汚した。  
(きっと…ばちがあたったんだ…。いやらしいことばっかり考えてたから…ごめんなさい…ごめんなさい)  
 痛みと気持ち悪さに朦朧としながら、フィアは誰にともなく謝罪する。  
 
 男が、少女の腰を抱え上げ、力ずくで足を割り開く。  
 震える少女の、無毛の股間に吸い付いた。  
『「んあああああっ!」』  
 これまでの痛みに比べれば柔らかい刺激に、フィアと少女の声がハモる。  
 何度も舌先で秘所の穴をつつきまわし、大きさを確かめている。  
「だ、だめです…。いや…。いやぁ……!」  
 少女に比べ、(ここ数日間で)性知識を持ったフィアは、男が何をしようとしているか気が付いた。  
 アレを…。股間でいきり立っているアレを入れるつもりだ。  
『はぁ、はぁ、はぁ、いくよ…っ。いくよっ…!』  
『な、なに、なんなの?! やだ、やだあっ! パパっ、やめてっ!!』  
 少女の抵抗を無視し、唾液を絡めた剛直が、秘所にあてがわれる。  
 疑似感覚が告げる、絶望的な大きさに、フィアは青ざめた。  
「い、い…や…。た…たすけ…。れんっ…」  
 フィアが少年の名を口にした直後。  
 データの中の少女は、父親に犯された。  
「あああああああああああぅっ!!」  
 痛い。股間が焼けるように痛い。  
 フィアはこれまで感じたことのない激痛にあられもない悲鳴をあげた。  
 男は哄笑しながら腰を打ち振るいはじめ、引き裂かれた秘所からぬるりと出血したのがわかった。  
 痛覚は忠実に、処女を散らされた苦痛を再現していた。 脳に叩きつけられる強烈な刺激を受けて、  
フィアの体が防衛反応のために愛液を生み出しはじめる。  
「やっ、あああっ いたい! いたいの! やめてくだ…あああああ!」  
 通常ならこれほど思考に支障をあたえる痛みがあったら、Iブレインは強制的にリンクを切断する。  
が、今は、何らかの力で完全にプロセスがロックされていて、フィアが何度狂ったように切断を指示  
しても、まるで言うことをきかなかった。  
「やだっやだあっ!! たすけて…だれか…たすけてぇええっ!」  
 フィアの私室に悲鳴が響く。  
 男は、ようやく半分ほど埋まった剛直をさらに押し込むため、少女をさらに押さえつけた。  
「ひぎぃいいいいっ!」  
 さらに奥まで、犯される感触。  
 フィアが必死になって股間を抑え、掻きむしるように動かした指の間から、さらに愛液が溢れ散った。  
 フィアの体が潤っても、データの少女はそれどころではなかった。そして、まるで濡れない秘所を  
抉られ続ける痛みがどんどんとフィアに送られる。  
「あぐっ…! あっ!! いぁっ! …っあっ…っ!」  
 目は焦点を失い、フィアの心はもう焼き切れる寸前だった。  
 もし、フィアに錬ほどの実戦経験があれば痛みの中でも冷静に対処出来たかも知れないし、痛覚  
処理が上手ければ、なんとか感覚を騙して、状況を打破できたかもしれない。  
 が、フィアは実生活ではまだ1年と、外で暮らしていないのだ。  
 絶対的な経験不足の中、襲い来る未知の苦痛の前では無力そのものだった。  
『ふっ!…ふっ!…ふっ!』  
 男の腰の律動のスピードが上がる。  
 少女は既に失神しているのか、白目を剥いているにもかかわらず、男は細い腰を掴み、まだ青い  
果実のようなお尻を跡が付くほど激しく揉みしだきながら、腰を打ち付けた。  
 実の娘の小さな体は、この男にとってよほどの快楽を産んでいるのだろう。  
 失神しだらしなく開いた娘の口に唾液を流し込み、腰を振り回す様は、さながら、オナニーと呼ぶに  
ふさわしい狂態だった。  
「あぅっ! あぎっ! ゃ…いあっ! たす、け、やあああっ!」  
 やがて男の律動が限界に達し──。  
『うおおおおおおおっ』  
 どくっ!びゅくびゅくっ!  
「……ぁ…ぁああ…。…あぅ…」  
 下半身に広がる熱く、どろりとした感触。  
(…こ…れ……が…、せいえ…き…?)  
 全身を、体の中まで汚し尽くす感覚に、フィアの意識が闇に落ちようとする。  
『ひ、ひひひっ』  
「ぁっ…ああ…。ぁあああああっっ!」  
 男は一度果てながら、まだ、満足していなかった。  
 娘の中を貪り尽くそうと、今し方はき出した自分の精液を潤滑油にして、さらなる凌辱を加え始める。  
「や、やだあああああっ!もう、いやあああああっ!」  
 データの再生時間は、まだ半分以上残っていた。  
 

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