「はぁぁ…」  
 錬は落ち込んでいた。  
 明らかにフィアに避けられている。それはもう、久しぶりの一緒の食卓  
なのに目も合わせてくれない程に。  
(やっぱり嫌われたのかなぁ…)  
 思い当たる節が無いわけではない。  
 フィアがIブレインを同調させて"入って"くる事は、毎日、というほどでもないが、  
結構多い。出来る限り、錬は邪な思いは遮断しているつもりではあるが、その  
全てを常に、完璧に隠しきれるか、と問われれば、沈黙せざるを得ないのだ。  
 今日の買い物の時、フィアの手を握った時のあの反応…。  
 錬は、暗澹たる気持ちでIブレインの中のデータライブラリを開く。  
 そこには真昼の部屋からこっそり持ち出したいわゆるポルノ動画、それも女優を  
見事にエメラルドグリーンの瞳と金髪の少女――ぶっちゃけどう見てもフィア  
――にコラージュしたデータがあった。  
 軽蔑するなかれ。  
 健全な青少年の、抑えがたい欲求はどうしようもないのだ。  
 しなやかでまだ細い、けどどうしようもなく柔らかい躰を四六時中ひっつけてくる  
無防備なフィアに、邪な意識で触れないよう身体制御しているのは、錬ぐらいの  
年齢ではむしろ誠実に過ぎるくらいである。  
 しかし…。  
(こんなの見てるって知ったらそりゃ嫌だよね…)  
 食器を片づけながら魂が抜けたように放心する錬。  
 もはや、さんざん"お世話"になった動画も空しいだけだった。  
 溜め息と共に削除コマンドを叩き――  
 
(微弱な情報制御を検知――)  
 
 Iブレインがごく僅かな、なんらかの情報制御を検知した。  
 冷や水を浴びせられたような感覚。即座にIブレインを索敵モードに切り替える。  
 月夜も真昼もいないこの状況で、気を抜きすぎていた。  
 多少なりほとぼりは冷めつつあるにせよ、自分たちは立派な逃亡者なのだ。  
 戦闘行動中の魔法士の高密度な情報制御ではない。これは――偵察…いや  
情報の海ではなく、通常のネットワークへの侵入か?  
(第一次解析終了。位置特定)  
 Iブレインが示した、異常発生源を見るなり、錬は今度こそ血の気が引いた。  
 
 弾丸のような速度で、錬は弥生の家の2階にしつらえられたフィアの部屋まで  
駆け上がった。  
 間違いない、この中…おそらくはフィアの学習用情報端末が発信源だ。  
 簡易常駐させた「アインシュタイン」から伝わる空間認識からは、敵らしき人の  
質量は無い。  
 
 バァン!  
 力任せに鍵もろともドアを蹴破り、部屋に転がり込んだ!  
 
「フィアっ!」  
 ベッドに横たわるフィアに駆け寄ろうとして──  
「ぁ…。ぅああああああぅっ!」  
 その瞬間、フィアの躰が激しく痙攣した。そして悲痛な叫びと共に…  
 ぷしゃあぁ…。  
 両手で押さえた、吊りスカートの股間の部分からじんわりと大きくなる染み。  
「!?!?!?」  
 錬は頭の中が真っ白になった。  
 
(ふぃ、フィアが倒れててまくれ上がった服から有機ケーブルで端末に  
おもらしが接続してピンクの肌着の隙間からハッキングがもっとピンクの  
ちっちゃな乳首が敵の可能性!?!?)  
 
 考えがまとまらない。そのくせ、視線だけは完全にフィアの痴態に  
ロックオンしてしまっている。  
「ぁぅ…! ぁぁ……ぃゃぁ……っ!!」  
 更に、また魚のように跳ねる小さな肢体。ぬちゃっ、という水音が錬の  
耳に響き、スカートの裾から細い足が晒される。  
 染み一つ無い陶磁のような太股は、明らかに汗じゃない何かで濡れ光り、  
無機質な蛍光灯の明かりで煌めいていた。  
「ぁっ!… た、たすけ…れ、れんさ…!」  
 フィアのうわごとのようなその言葉を聞いて、錬は…  
 
(選択肢)  
 1.ハッ、と我に返った。「だ、だいじょうぶ!? フィア!!」  
   慌ててベッドサイドに駆け寄る。  
   
 2.まるで、明かりに誘われる羽虫のようにふらふらとベッドに近づいた。  
 
 
↓選択肢決定どうぞ  
 

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