最近、フィアの様子がおかしい。なんだか妙によそよそしいし、時々上の空になっている。
錬が、心配だ、と二人の兄姉に相談しても、月夜は「あんたが何かしたんじゃないの?」と
取り付く島もないし、真昼は「女の子だからねぇ。そういう日もあるよ」と茶化して月夜に
蹴りを入れられている始末。
――この間の"仕事"のとき、何かあったのかな――
一緒に暮らしている弥生なら何か知っているかもしれない。食事の後に訪ねてみよう。
錬は、月夜の『分子配列変換システム・改mk-Uアサルトシュラウド』の、煙を上げている
コンデンサを取り替えながら、一人頷いた。
かちゃり。
ドアを締めると同時に、鍵をかける。
こんなもの、魔法士である錬や、その兄姉にかかればなんの役にも立たないけれど、
それでもかけずにはいられない。
弥生は往診に出かけたから、今、家にはフィア一人きりだった。また、自然に胸の動悸が
速くなってきているのがわかる。
"あの日"以来、フィアは一人になれる時間が来ると、すぐに自分の部屋に戻っていた。
いつも、余った時間は錬と一緒にいることが普通だったから、周りには当然、不審に
思われるのだろうが、そんなことすら冷静に判断できなくなっていることに、当人が気づく
余裕がなかったのだ。
学習用に、と月夜が作ってくれた、シティのデータバンクへの割り込み回線付き端末
に向かうと、有機コードの束を引き出し、うなじに当て、Iブレインとのリンクを確立する。
データバンクと言っても、所詮は一般人の使うものなので、セキュリティなど皆無だった。
――……ここと……っ…こっち。
カテゴリ[娯楽]の奥。ゲームや物語、映画など普段のフィアなら珍しさに目を
輝かせるものを無視して、一直線に、"そこ"に向かう。
――あった…。
まだ何もしていないのに、熱い吐息が漏れた。
21歳未満は閲覧禁止、となっているその区画は、絡み合う男女の映像や音
その他様々な大人向けのデータの宝庫だった。
すぐさま、そのうちのひとつをIブレインに転写し、再生を始める。データの中で
一組の男女の濡れ場が始まった。
「……っんきゅっ!」
じわっと股間からいやらしい液体がこぼれるのを感じる。
一般人はただ、映像や音声、設備があればバーチャルで五感を通じて、
仮想体験するだけだが、フィアは違った。
それらデータの中にある状況を事細かに解析し、自分の神経とリンクさせることができる。
「……あっ……ふあぁっ…」
データの中で男の指が、女陰を嬲り、豊かな乳房をねぶりあげる。生み出されるであろう、
快楽のパルスが次々に脳に直接流し込まれ、フィアはもう目の焦点が合わなくなってきていた。
何も、触れてすらいないフィアの慎ましやかな胸の乳首はあっというまに硬くしこり、肌着との
僅かな摩擦が更に追い打ちをかける。
「んくっ……だめ…。だめぇ…」
初めて絶頂に達したあの日以来、恐ろしくて自分の体を直接慰めたことはなかった。
自分の体が変わってしまうようで、とてもそんな気になれなかったのだ。
だが、これならば。
「ん……うきゅっ……はぁ…」
これならば、自分の体に何かするワケじゃない。そう言い訳ができてしまう。
男の手が、女のお尻をなで回し、揉み付けてくる。フィアは背筋を走る刺激に
たまらず仰け反った。
「はぁ…はぁ…。だ、だめ……も、もぅ…だめです…ぅぅ」
わけがわからない。データの中の女性はまだ絶頂にはほど遠い様子なのに、
フィアはもう与えられる刺激に溺れそうだった。
震える足で椅子から立ち上がり、有機コードを引きずりながらベッドにふらふらと向かう。
くちゅり、と音がして、こぼれた愛液が足を伝った。
ベッドまであと一歩というところで、データの中で男が背筋を舐め上げると同時に、
愛液の絡んだ親指を花弁に、そして人差し指をあろうことかお尻の穴にねじ込んだ。
「!?!? んきゃああああああうっ!?」
排泄の感覚と挿入の刺激が同時に襲いかかり、ベッドに上半身を倒れ込ませ、フィアは達した。
震える手で、スカートをまくり上げたそこはもう大洪水だった。
フリルのついた、可愛らしいショーツは股布の部分どころか、大半が愛液で濡れそぼり、
幼げな肢体を包むという本来の役割から逸脱した背徳的な淫蕩さでぐちゃぐちゃだった。
「っ!!!!っ!!っっぅ! んはぁっ…!はぁうっ…」
打ち上げられた魚のように空気を求めて喘ぎながら、重い体をベッドに引き上げる。
「…ううっ。こ、こわいです。ひっく…ゃ…あああああ!」
指の次にとうとう男が逸物をねじ込んだ。実際に異物を挿入などしたことのないフィアだが、
高性能なIブレインは擬似的な刺激を生み出せてしまう。
「ああああぅっ!! だめですっ! ゃあっ、くぁあああっ!」
フィアの小さなお尻がベッドの上で跳ね上がり、暴れる腰を押さえつけるように回された手が
股間を押さえる度に、ぐちゅぐちゅと湿った音と、新たな愛液が溢れていく。
「だ、だめ! やっ!あああああ! うあっ、れ、れんさ、ひあああああああぅっ!」
ぷしゃああああ。
限界に達した瞬間、手のひらと股間を暖かい液体が濡らした。データのロードと強烈な刺激に
翻弄され身体制御がおろそかになったせいもあり、フィアは盛大にお漏らしをしてしまったのだ。
「ぅぅ…あ……あ…ひっく…ひっく…」
だらしなく開いている足を閉じることも忘れ、涙とよだれでべちゃべちゃになった顔のままフィアは
泣き出してしまった。
「うぅ…れんさん…わたし……ひっく。おかしくなっちゃいました…」
つづく?